「地方理系×ジョブ型」への挑戦。研究室の隣で学生に出会えるアカリクラウンジ

課題
- 地方拠点での理系院生の採用
- ジョブ型移行に伴う専門人材の採用
- 拠点と大学の物理的距離
導入の決め手
- 院生が隙間時間に参加できる
- ターゲット層との親和性が高い
- 学内常設で距離の課題を解消
効果
- 専門性の高い院生と多数接触
- インターン参加へ動機付け
- 現場主導のジョブ型採用モデルを確立
富士通株式会社は、世界をリードするDXパートナーとして、社会課題解決を起点としたビジネスをグローバルに展開しています。2024年より、同社は採用方針を「ジョブ型人材マネジメント」の考え方に基づくものへと大きく転換しており、27年卒の学生に対しては完全に移行しています。その中で課題となったのが、ターゲットである高度理系人材との接点作り、特に地方学生との物理的な距離でした。
その解決策として、広島大学の「アカリクラウンジ」にて単独のイベントを実施した同社。実施の背景から、対面イベントならではの熱量の高いエピソード、そして見据える「現場主導」の採用ビジョンについて、Employee Success本部 人材採用センターの中井様にお話を伺いました。
アカリクラウンジとは
大学キャンパス内に設置された大学院生・理系学生向けの会員制コミュニティスペースです。研究の合間に気軽に立ち寄れる「学内」という立地を活かし、学生の日常動線上で自然な接点を創出します。ラウンジ内での求人掲示や対面イベントなどを通じて、多忙な優秀層への認知拡大から母集団形成までをご支援いたします。

「ジョブ型」への完全移行。マス採用からの脱却と“ペルソナ”重視の戦略
ーーまず、貴社の現在の新卒採用における方針と、抱えていらっしゃる課題についてお聞かせください。
現在、富士通グループ全体として「ジョブ型人材マネジメント」に基づく採用形態へのシフトを進めています。特に27卒の採用からは、この方針へ完全に移行します。これまでの日本的な「一括採用」を廃止し、学生の方々には、入社後の具体的なジョブディスクリプションや配属先職場を提示した上で、ご自身のスキルやキャリアビジョンに合致する「ジョブ」を選んでエントリーしていただく形になります。
この変革に伴い、採用活動の手法も見直しが必要になりました。従来のようなマス向けの画一的なアプローチでは、それぞれの職場が求める細かな「ペルソナ」に合致する学生に出会うことが難しくなっています。特に、高度な専門性が求められる職種や、特定の地域への配属を前提としたポジションでは、どうしても応募の偏りが生じてしまうのが悩みでした。
ーーそうした中で、今回は具体的にどのような学生をターゲットとされていたのでしょうか。
理系の大学院生の採用支援に強みを持つアカリクさんを通じて、高いICTスキルや論理的思考力、課題解決能力を持つ学生をターゲットとしていました。具体的には、ソリューションエンジニアやデータサイエンティスト、インフラエンジニア、研究開発職といった専門性の高い職種に関心を持つ層をターゲットとしてイベントを実施しました。
地方採用の最大の壁は「移動時間」。多忙な理系院生の“隙間”を活用
ーーターゲットである理系院生へアプローチする上で、「アカリクラウンジ」でイベントを実施された理由をお聞かせください。
最大の理由は、地方採用における物理的な「距離」の壁を解消し、多忙な大学院生との接点を作るためです。
弊社には広島市内にも事業所がありますが、広島大学の理系学部が集まる東広島キャンパスからは、移動に約1時間かかります。過去に広島市内の自社拠点で対面イベントを開催したこともありましたが、授業や研究活動で多忙な理系学生にとって、往復2時間という移動コストは非常に大きな参加ハードルとなっていました。
そこで、学内であれば参加がしやすいのではないかと考えて、実施を決断いたしました。
ーーそのための場所として、具体的にアカリクラウンジのどのような点に魅力を感じられたのでしょうか。
会場の手配や設営といった「準備の手間」がかからない点と、学生が構えずに話せる「リラックスした雰囲気」です。自社で対面イベントを開催する場合、どうしても会場の確保や設営準備に大きな工数がかかってしまいますが、常設のラウンジを利用することでそのハードルを下げることができました。
また、当日はスタッフの方が学生にコーヒーを勧めてくれるなど、カフェならではの柔らかい空気感があったことも魅力でした。オンラインの説明会では、どうしても心理的なハードルが高くなり、学生も「これを聞いていいのかな」と質問を躊躇しがちです。しかし、ラウンジのような日常に近い空間であれば、そうした壁を取り払い、学生の本音や深い質問を引き出せるのではないかと期待しました。
ーー実際に実施をされてみて、学生の参加状況はいかがでしたか。
狙い通りでした。6月上旬に開催したイベントでは、多くの大学院生から「研究活動の合間に参加できて良かった」という感想をいただきました。平日のお昼休みや授業終わりのタイミングで実施したことで、これまで接点を持てなかった層に確実にリーチできたと実感しています。学生の日常の動線上で接点を持てたことが、満足度の高いイベントに繋がったと感じています。
ーーこれまでの地方イベントと比べて、何か違いは感じられましたか。
従来は本選考直前の1-2月に実施していましたが、今回はインターン前の6月という早期に開催したことで、まだ業界や企業を絞り込んでいない学生層に対し、フラットな状態で接触できたことが大きな違いです。その分、純粋な興味喚起や魅力付けがしやすく、非常に有意義な機会となりました。

「研究の合間」に生まれた熱量。対面・少人数だからできる採用コミュニケーションとは
ーー当日のイベント内容はどのような内容だったのでしょうか。
当日は2部構成で実施しました。第1部はお昼休みの時間帯に、誰でも参加できるカジュアルな会社紹介を実施。第2部は、より深い対話を目的とした座談会形式の交流会を行いました。
工夫したのは、OB社員だけでなく、入社1年目の若手人事メンバーも参加してもらったことです。年次が近い社員を配置することで、学生が構えずに質問できる雰囲気づくりを心がけました。
ーー実際に参加された学生の方々からの反応はいかがでしたか。
効果はてきめんでした。参加者は14〜15名ほどでしたが、その質と熱量が非常に高かったです。
オンラインの説明会では、どうしても一方的な情報発信になりがちで、学生も「周りの目」を気にして質問を控えてしまう傾向があります。しかし、ラウンジというリラックスした空間での対面座談会では、双方向の活発なコミュニケーションが生まれました。
「今、こういう研究をしているのですが、御社で活かせる事例はありますか?」といった技術的な質問から、「なぜ富士通を選んだのか」といったキャリアに関する質問まで飛び交い、学生のキャリア観が既に醸成されていることを肌で感じることができました。
ーーアカリクラウンジのスタッフや環境についてはいかがでしたか。
アカリクの土屋さんには、ポスターの準備や広報といった事前の段階から手厚く支援していただきました。特に、実施のタイミングについては広島大学特有のスケジュール感を踏まえてアドバイスをいただき、最適な時間帯に実施できたと感謝しています。
当日の運営においても、学生が堅苦しくなりすぎないよう細やかな配慮をしていただき、非常にコミュニケーションがとりやすい環境を作ってくださいました。

たった20分の対話が未来を変える。インターンへ繋がった学生とのエピソード
ーー今回のイベントを通じて、特に印象に残っている成果やエピソードがあれば教えてください。
肌感覚として確かな成果を感じています。特に印象に残っているのは、イベントでの出会いがきっかけで、その後に実施した夏の長期インターンシップやワークショップに参加してくれた学生がいたことです。
彼とはイベント当日に密にコミュニケーションを取ったので、よく覚えていました。AI領域を専攻している大学院生で、「自身の研究や専攻を活かして活躍したい」という強い思いを持っていました。すでに自分の中でキャリアイメージがある程度明確で、「富士通グループであれば、具体的にどのような形で実現できますか?」といった本質的な質問を投げかけてくれたのが印象的でした 。非常に優秀で未来志向な方だなと感じ、私も熱が入ってしまい、気づけば20分ほどマンツーマンで相談に乗っていました。
その後、夏に実施したワークショップのインターンシップの会場で、彼の方から「中井さん、覚えていますか?」と声をかけてくれたんです。たった一度、ラウンジで立ち話をしただけですが、対面でしっかりと向き合い、彼のキャリアへの悩みに親身に答えたことが、富士通への共感や志望動機に繋がったのだと感じました。オンラインでは、ここまで個人の印象に残り、関係性を築くことは難しかったのではないかと考えています。「対面で会って話すこと」の価値を改めて実感できた、非常に嬉しい出来事でした。
人事から「現場」へ。リクルーターが自ら動く「自律的採用」のモデルケースに
ーー今回の実施を踏まえ、今後の採用活動の展望をお聞かせください。
今回の取り組みは、単なる母集団形成以上の意味を持っています。それは、「現場主導の採用」へのモデルケースになったという点です。
ジョブ型採用においては、人事だけでなく、実際に人材を受け入れる現場の各職場が「自分たちのチームに必要な人材」を定義し、自ら獲得しに行く姿勢が求められます。私たちは、各職場のリクルーターにもっと主体的に動いてほしいと考えています。
しかし、現場社員がいきなり「大学へ行って学生と話してきてください」と言われても、足がかりがなければ動けません。
アカリクラウンジのように、「行けば学生がいて、フランクに交流できる場所」があることは、現場社員が採用活動に参加するための強力なインフラになります。今後は、人事主導のイベントだけでなく、現場のリクルーターが自ら企画し、研究室やラウンジを訪問して学生と語り合う、そんな「自律的な採用活動」を広げていきたいと考えています。
