研究職といっても、実際にはどのような仕事内容なのか分からない方も多いでしょう。研究職は一般に基礎研究・応用研究・開発研究に分かれており、それぞれ仕事内容が異なります。
理系学生の中には、どの研究職のタイプが自分に合うか判断がついていない方もいると思います。そこで当記事では、理系学生・大学院生向けに研究職について徹底解説します
専門性の高い職種だからこそ、詳しい仕事内容や年収などを確認して就活を進めていきましょう。
研究職の種類について
まずは、研究職の種類と仕事内容について紹介します。研究職は専門性の高い職種であるため、ひとくくりに言い表すことができません。
研究分野によって仕事の内容は変わりますが、「どの段階の研究をするか?」によっても仕事の進め方が大きく変わってきます。
今回は見落とされがちな「どの段階の研究をするか?」という観点から、研究のタイプと内容を見ていきましょう。
基礎研究
基礎研究とは、新しいものや未知なものを探索し理論的に理解していく研究のことです。基礎研究の特徴としては、物事の本質を深く追求・探求していく側面が強いことが挙げられます。
研究職の中で最も思い浮かべやすい基礎研究ですが、時には先行研究が乏しいなかで法則などを発見し生み出していく力が求められるため、一つのことをやり遂げる忍耐力やある種のこだわりが必要になってきます。
研究成果がそのまま社会実装されることは少ないですが、スペシャリストとして一つの研究を極めたり、勉強したりすることが好きな方にはピッタリの職業と言えます。
応用研究
基礎研究が新しいものを追求していくのに対し、応用研究とは既に存在する研究結果を用いて、どうやったら他のことに応用していけるかを考えるような研究のことです。
基礎研究の研究結果を用いて、より実用的な研究を行うため、基礎研究の成果を理解することができるだけの知識が必要になります。基礎研究にない特徴としては、うまく行けば自分の研究結果が製品として世の中に出回る可能性が高いということが挙げられます。
応用研究で評価されるためには、世の中の動きに合わせた研究結果を出していく必要があるため、社会のニーズを汲み取る力も求められます。
また、基礎研究の働き方との大きな違いとしては、時間的制約の中で研究を行っていく必要があるということが挙げられます。
基礎研究のように時間がたくさん与えられて研究に没頭できるということは少なく、予め決められた期日までに基礎研究を応用させるような働き方が多いです。
そのため、優先順位をつけてスピーディーに研究を行う必要があり、スケジュール管理能力が求められる職種になります。
開発研究
開発研究とは、基礎研究と応用研究を利用して新しい材料や装置・システムなどを生み出したり、既存の材料・装置・システムなどを改良していくような研究です。
社内や既に世の中に出回っている研究結果を使って、製品化を進めるような仕事になります。基礎研究についても応用研究についても理解する必要があり、さらに製品としての完成度も求められるため、難易度が高い職種と言えます。
開発研究の主な特徴としては、自分の研究したものが実際に一般の人の役に立つことや、多くの企業で使われる材料やシステムをより良いものにしていくような実用性が求められることが挙げられます。
市場やユーザーも意識する必要があるため、研究職の中でも特にゼネラリスト的な能力やマーケティングの能力も求められます。そのため、「自分の研究で世界を良くしていきたい!」「人のためになるモノづくりがしたい!」という方には向いていると言えます。
研究の種類や特性についてはこちらの記事もチェックしてみてください。
研究職の主な就職先は?仕事内容について紹介
研究職は、就職先の企業によって仕事内容や年収が異なります。研究職が活躍できる職場をいくつかチェックしていきましょう。
- 民間企業の研究部署
- 大学の研究室
- 公的機関
民間企業の研究部署
民間企業の研究部署とは、企業の商品開発や基礎研究などの研究を行う仕事です。研究職とはいえ、あくまで民間企業の社員なので会社の利益に貢献することが求められます。公的機関や大学における研究職と比べると、年収が高い傾向にあるのも特徴です。
自分のやりたい研究を行うというよりは、企業のもっているリソースを使い、社会のニーズを満たす製品を開発するためにはどのような研究をすればよいかを考えていくことが求められます。
どちらかと言うと年収を重視したいという方にとっては民間の研究部署が最適です。また、個々の研究者ではなく企業活動の一環として行われる研究であることから、経営判断により研究プロジェクトが突然打ち切られたり、研究成果を自分自身の業績として外部で発表することに制限が設けられるといったケースも少なくありません。一方で、大学など学術研究機関と比較して研究成果が最終製品に繋がることも多く、やりがいを感じたい、実用化や社会実装に繋がる研究をやりたいという人に向いていると言えます。
また、独立した研究所を設置している民間企業や財団も存在します。例えば、豊田都市交通研究所や三菱総合研究所などが挙げられます。こうした研究所では企業の利益とはある程度距離を取って学術研究なども行っており、研究機関の研究という色合いが強いと言えそうです。
大学の研究室
大学の研究室でポスドクや助教として研究職に就くのは、大学院生・理系学生にとっては最もイメージしやすいのではないでしょうか。
一般的には博士課程を修了後に、ポスドクのポジションに就きます。ポスドクはポストドクターの略で、基本的に2〜3年間の任期になっており、ポスドクの期間に研究成果を出すことで助教などの大学教員として採用されます。
ただし、助教への就職は競争率が高く、狭き門となっています。助教の後は講師→准教授→教授とキャリアアップが可能で、最低でも助教や講師として3年〜5年、准教授として5〜10年の期間を過ごした後、最終的に大学教授になるのが一般的です。
博士課程修了から教授になるまでには、早くても10年〜15年ほどかかると考えておけば良いでしょう。ボスである教授の研究のサポートを行いながら自分の研究を積み重ねる必要があるため、どうしても教授との相性が重要になってきます。
もしも教授との相性が合わない場合は、つらい研究生活で成果も出にくくなってしまうため、別の教授の研究室の空いているポストを探すことが大切になってきます。大学教員に興味がある方はこちらの記事もご覧ください。
公的機関
公的機関の研究職とは、国が運営主体である省庁に付随する研究所や地方公共団体の研究所として研究を行う仕事になります。公務員としての研究職は、より広く日本のためになるような研究を行えるのが特徴です。
具体的な例としては、公設試験研究機関と呼ばれる研究所の研究者が挙げられます。○○県産業技術研究所などといった名称で開設され、民間中小企業からの技術相談や指導、製品の試作、依頼試験などを行っています。また、研究機関で所有する装置を利用して自分自身の研究を行います。
公務員の研究職の一つとしては、警視庁や道府県警察本部に設置された科学捜査研究所(科捜研)や警察庁に設置された科学警察研究所(科警研)といった機関にも調査分析を行う職種があります。
DNA鑑定や法医学、事故の再現実験、サイバー犯罪の解析などの様々な依頼があり、得られた結果をもとに事故や事件などの原因究明が行われています。特徴として、化学や物理、法律、心理学など幅広い知識が要求されることが挙げられます。
警察官と議論をしていくこともあり、時には裁判の証拠として自分の分析結果が扱われるため、正確な判断が求められます。
省庁の研究職として就職するためには、国家公務員総合職試験への合格が必須になり、国家公務員総合職試験の倍率は大学卒業者の場合10.5倍程度、大学院修了者の場合は2.5倍程度となっており就職難易度は高いですが、大学院修了者の方が合格率が高くなっています。
地方公共団体の研究職として就職するためには地方公務員試験への合格が必要になりますが、一般的には国家公務員総合職試験より難易度が低いとされています。
参考:2022年度国家公務員採用総合職試験(春)の合格者発表
高い専門性が求められる
研究職として採用された場合、高い専門性が求められる業務を担当することが多くなっています。研究成果の報告や他部署との連携、顧客ニーズの取込みなどの局面においてプレゼンテーションやコミュニケーションの能力が求められることは当然ですが、前提として自身の研究分野における突出した知識や研究遂行に必要なスキルを持っていることが重視されます。
アカリクが実施した調査によれば、就活生の半数以上が入社後の仕事内容と自身の専門性との結びつきを重視していると回答しています。
- 調査方法:2024年新卒の理系学生261名(内訳:博士在学中64.4%、修士在学中:32.6%、学部在学中3.1%)
- 調査期間:2022年11月11日から11月24日
研究職に就きたい人が有利になる資格
ここからは、研究職に就きたい人が有利になる資格を紹介します。
研究職への就活においては、専門知識の深さや専門性の高さなど、研究遂行能力を示すことができる資格を持っていると効果的にアピールすることができます。
修士号
理系学生の場合、研究職に就職したいかどうかに関わらず多くの学生が修士課程を修了しています。
実際、研究職の求人では、修士以上を応募条件としていることが多いです。研究職への就職を目指すなら、修士課程で研究の経験を積んでおくのがおすすめです。
学歴と研究職への就職についてはこちらの記事で解説しています。
博士号
修士課程を修了した学生の多くが就職する中で、一部の学生は博士課程に進学します。
博士後期課程の研究では、研究計画の立案から進捗管理、最終的には原著論文の執筆といった高度な研究を主体的に行う必要があり、博士号はこうした研究遂行能力を示すことができるめため、研究職として就職する際には強力な武器となります。
医師
医師免許を持っていれば、研究職として就職できなかった場合でも安定した収入を得られるというメリットがあります。
しかし、研究職として就職するには研究実績が重視されるため、博士号を取得している方のほうがより需要があります。
医師免許があるからといって全ての分野で有利になるというわけではありませんが、キャリアの幅が広がるという点で有利と言えます。
獣医師
動物の研究に携わりたいのであれば、獣医師の資格が有利に働きます。しかし、研究職として働くためには研究実績が必要になるため、博士課程を修了するなどして研究成果を挙げることが大切です。
薬剤師
薬剤師の資格を持っている場合、化学系の研究に携わりたい場合に有利に働きます。
また、もし研究職に就職できなかったり向いていないと思った場合でも、薬局へ就職するなどキャリアの方向転換ができる点で有利と言えます。
専門性を活かした就活ならアカリク
研究職への就活においては、研究業績が重要であるということがお分かりいただけたのではないでしょうか。特に博士後期課程での忙しい研究の合間を縫って計画的に就活を進めるのは容易ではありません。
アカリクでは、長年蓄積してきたノウハウで大学院生の強みを活かす就職をサポートしています。ご自身のご希望はもちろんのこと、大学・大学院での研究内容、業績や研究成果も伺い、出来る限り様々な可能性をご提案しています。
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研究職に向いている人
研究職に向いている人はどのような人なのでしょうか。まずは、研究職に就職するために必要となるスキルを見ていきましょう。
- 知的好奇心や探求心が強い
- 得意分野を極めている
- コミュニケーション能力を培う(周りと協力することも多い)
知的好奇心や探求心が強い
探究心の強さは研究職として仕事をしていくために最も求められる能力です。好奇心や探求心は研究の原動力とも言えるもので、興味さえ持ち続けることができれば、ある程度の難局を乗り切ることにも繋がるのではないでしょうか。
反対に研究対象そのものに興味を持ち続けることが難しい場合、研究職に就いて働いていくのはつらいと感じることも少なくないかもしれません。
得意分野を極めている
研究職は専門性が高いため、自分の専門分野を持つことで他人と差別化することができます。
唯一の人材になることができれば様々な会社・研究機関から声がかかり、転職のときにも有利になります。
コミュニケーション能力を培う(周りと協力することも多い)
研究は一人で行うものではなく、チームで力を合わせて行うことがほとんどです。そのため、チーム内でスムーズに情報や研究結果を共有できるようなコミュニケーション能力が求められます。
研究職に向いていない人
一方で、研究職で成果を出しにくい人には、どんな特徴があるのでしょうか?「研究職はやめとけ」と言われることも多いですが、どういった理由なのか見ていきましょう。
- 飽き性である
- 転職前提のキャリアプランを考えている
- 閉鎖的な環境が好きではない
飽き性である
飽き性の方は、研究職に向いていない場合が多いでしょう。根気強く研究に打ち込み、同じ作業を何度も繰り返し行う必要があるため、すぐに飽きてしまう人には向いていません。
また、失敗をすることが当たり前ですから、すぐに結果を求めるような人も向いていません。
転職前提のキャリアプランを考えている
研究職で培ったスキルや経験は研究職のみで生きることが多いです。他の職種への転職については、どうしても不利になってしまいます。
もし、多くの業界を渡り歩くようなキャリアプランを考えている場合、研究職の経験が上手に活かせない場合があります。
とはいえ、現在は金融やITを含め、研究職のバックグラウンドを持つ人が重宝される場面も増えてきました。
「自分は何ができるのか」「どの分野で専門知識を活かせるのか」を適切に把握しておけば、活躍できる場所はきっと見つかるはずです。
閉鎖的な環境が好きではない
先程のキャリアプランの話にも関わるかもしれませんが、研究職では基本的に、同プロジェクトに所属する人としか関わることがありません。
常に同じ人たちと空間を共にして仕事をすることになるため、他の職種に比べれば、人間関係に大きな変化は起きにくいといえます。
他業界の人と積極的に関わりたい、自分の対人スキルを活かしたい、といった思いを持っている人は、閉鎖的な環境を苦に感じるかもしれません。
ただ、仕事の環境面の悩みは自分の工夫次第でなんとでもなりますから、「この研究がしたいんだ!」という熱い思いを持っている方は、ぜひ研究職になるべきだと思います。
研究職に就職したい場合は、早めに対策と行動をしよう
この記事では、研究職での就職について解説をしました。研究職には色々な仕事がありますが、狭き門であるということがお分かりいただけたかと思います。
そのため、もしあなたが研究職として就職したいのであれば、理系の就職に強い専用の就活サイトで情報を集めるのがおすすめです。23卒・24卒の就職活動は早期化しているので、インターンシップの参加や就活の情報収集に早めに動き出しましょう!
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よくある質問
研究職の就職が難しい理由は?
研究職は募集が少ないため、倍率が高くなりやすく、就職が難しい傾向にあります。研究職は専門性の高い仕事であり、一度就職すると腰を据えて研究を行う方が多いため、なかなか空きが出にくいのです。
その反面、研究職は理系学生からすると花形であり、今までの知識や経験を生かして仕事ができるため、人気が高くなっています。しかし、自己分析や企業分析、面接対策を行えば、希望通りの就職が出来る可能性は十分にあります。
また、理系の院卒の場合「推薦利用」という道があります。選考で有利になったり、選考ステップが少ないことが特徴で、利用している学生も一定数存在します。
研究職の平均年収は?
研究職の年収ですが、国税庁の調査によると、研究職の平均年収はおよそ521万円です。企業によって待遇が変わる可能性はありますが、一般的な研究職の年収相場は500万ほど。日本人の平均年収である443万円と比較すると、研究職のほうが80万円近くも高いことがわかります。
研究職は理系の大学院卒であることが条件だったり、専門的な知識が必要とされたりします。その分、他の職種に比べて給与水準は高いと予想されます。
特に、有名なメーカーになれば、年収が約1,000万円を超える場合も。年収面が気になる方は、企業規模や売上高などの観点から就職先を考えると良いかもしれません。