研究職以外の就職先として、URAという大学の役職があることをご存知ですか。本記事では、URAとはどんな職業でどんな仕事をするのか。実際に求人はどうやって探すのか、また、URAの資格認定制度など就職に有利な資格の活用などを詳しく解説します。
URA(University Research Administrator)とは?
URA(University Research Administrator)とは、文部科学省の定義では、『研究者の研究活動活性化のための環境整備及び大学等の研究開発マネジメント強化等に向け、大学等における研究マネジメント人材』とされています。
URAの業務は多岐にわたるのですが、大きく以下の3つが挙げられます。
- プレ・アワード業務
- ポスト・アワード業務
- 研究戦略推進支援
プレ・アワード業務
URAの業務のうち、研究プロジェクト開始を支援する業務です。
● プロジェクト企画立案
● 関係者等との折衝・調整
● 外部資金の獲得 など
ポスト・アワード業務
URAの業務のうち、研究プロジェクト実施を支援する業務です。
● 進捗管理・予算管理
● 評価対応
● 報告書の作成 など
研究戦略推進支援
URAの業務のうち、研究を戦略的に支援する業務です。
● 政策動向の調査・分析
● 研究力の調査・分析
● 研究戦略の策定 など
このほかにも、URAには、研究を多面的に支援することが業務として求められ、URAの業務は「点」で捉えるのではなく「線」や「面」としての連続性を意識することが重要です。最近では、URAがIR(institutional research)や大学運営に関わることもあり、研究倫理・コンプライアンス・研究広報など、多角的な視野を持った取り組みを求められることも多くなってきています。
参考:文部科学省「リサーチ・アドミニストレーター(URA)を育成・確保するシステムの整備」
URAに求められるスキル
東京大学では、URAに求められる能力として、「学術研究に係る諸活動を幅広く推進するための「俯瞰力」、「高度な専門性」、「主体性」といった能力をバランス良く備え、状況に応じて適切に組み合わせて使うこと」としています。
俯瞰力
URLのスキルにおいて、活動を方向づけるものとして、俯瞰力が挙げられます。俯瞰力とは、学術研究をとりまく状況をどのように認識し、どのように自らのURAとしての活動を方向付けるかといった能力のことです。専門分野のこととなると視野が狭くなりがちですが、この俯瞰的なものの見方ができることが、URAとしては重要です。
高度な専門性
URAの持ちうる知識や技術として、高度な専門性が挙げられます。URAにおける高度専門性とは、ある特定のジャンルに関する専門知識だけではなく、何を理解し、そして理解したものをいかに適切な場面で活用するかといったスキルが求められます。
主体性
主体性はどんな職業でも求められますが、URAとしての仕事の向き合い方として、仕事と向き合った上で、研究の付加価値を生むために主体的に動くことができるかといったスキルが求められます。
参考:東京大学 リサーチ・アドミニストレーター推進室「URA(University Research Administrator)制度のすべて(パンフレット)」
URA資格認定制度
URAの業務は多岐にわたるため、URAについてはさまざまな定義がありますが、リサーチ・アドミニストレータースキル認定機構(以下、URAスキル認定機構)では、URA人材を定義し、その人材像に合致するかどうかを評価するURAスキル認定制度というものを運用し、スキルを認定しています。
URAスキル認定制度は、URAに必要な研修の受講と業務経験または実績に関する審査を行った上で、レベルごとにURAに必要とされるスキルの質の保証を行う制度です。
レベルによって「認定URA」「認定専門URA」として認定されます。
認定URA
認定専門URAの審査はURAスキル認定機構によれば、認定URAの資格要件として以下の2つを挙げています。
● 大学等においてURA業務あるいは類似の業務の経験が現在を含め3年以上あること
● (URAスキル認定機構が定めた)Coreレベルの研修を修了していること
実務経験とURAスキル認定機構の独自の研修を受けることが必須となっています。
認定専門URA
認定URAに認定されたら、さらに上位資格の認定専門URAを目指すことも可能です。
認定専門URAの審査はURAスキル認定機構によれば、「URA(あるいは類似職)として十分な実績を有しており、一つ以上の中核的業務(当該URAが主として従事している業務)に関する卓越した能力を備え、組織内外の関係者と協力して研究者、研究グループの研究活動の活性化に重要な位置付けで寄与するとともに、組織の機能強化に貢献できる人材」であるかをどうかを提出された書類及び面接に基づき審査する」とされています。
認定URAに認定されたら、さらに上位資格の認定専門URAを目指すとよいでしょう。
参考:リサーチ・アドミニストレータースキル認定機構「URAスキル認定制度」
URAの求人はどこにある?
URAの業務内容は多岐にわたるため、できる限り自分に合ったポジションや研究分野の求人を探したいですよね。
実際に、URAの求人はどのように探せばよいのでしょうか。
まだまだめずらしい職種なので、URAの求人は大学の就職課に来ることはごく一部の場合かもしれません。
URAの求人を探すには、JREC-IN Portalを使うことがおすすめです。
参考:国立研究開発法人科学技術振興機構「JREC-IN Portal イノベーション創出を担う研究人材のためのキャリア支援ポータルサイト」
URAの今後
文部科学省「令和2年度 大学等における産学連携等実施状況について」によれば、全国の大学等で、URAを配置している機関(有効回答数計1,037機関)は、182機関となっています(令和3年3月31日現在)。
まだまだ全国の大学等の機関に多く在籍するといった状況にはまだなっていません。
URAの仕事の定義などこれからさらに整備が進んでいくことが予想されますが、まだまだ新しい職種であることもあり、いろいろな方面からかかわることも可能です。
参考:文部科学省「令和2年度 大学等における産学連携等実施状況について」
まとめ
本記事では、
●URA(University Research Administrator)とはどのような職業なのか。
●URAに求められるスキル
●URAの資格認定制度
●URAの求人の探し方
●URAの今後の展望
について紹介しました。
大学等において、教員と一般事務職員の間をつなぐ専門性を活かした第3の職種としての位置づけが重要視され、また科学技術人材の新たなキャリアパスとしてのURAへの注目度も高まる機運にあります。
URAは、高度な専門知識が必要な職業ですので、大学院で研究に取り組んできた経験とスキルを活かして、ぜひ就職先のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。