多くの情報であふれる現代社会では、データサイエンティストの需要が高まっています。
データサイエンティスト協会によれば、データサイエンティストになるにあたり
- データサイエンス力
- データエンジニアリング力
- ビジネス力
といったスキルが必要であるとされています。
そこで今回のコラムでは、データサイエンティスト未経験者がデータサイエンティストになる方法や、必要なスキルを解説していきます。
データサイエンティストについてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
未経験でもデータサイエンティストになるためには
データサイエンティストとは、ビッグデータと呼ばれるデータを分析し、企業活動に活かせるビジネス戦略の立案などを行う職種のことを指します。
未経験者がデータサイエンティストになるためには一般に
- 新卒として入社する
- Kaggle枠を利用する
- 社内公募を利用する
- まずは周辺職種に就職を目指す
といった大きく4つの手段があるといわれています。それぞれの方法について詳しくみていきましょう。
新卒採用
まず、新卒採用時に職種別採用を行っている企業に応募するという方法があります。
企業のなかには、データサイエンティスト職を別枠で採用する例も出てきています。
新卒採用は一般に、応募者のポテンシャルに期待して採用することから、未経験でも内定を取ることは可能かもしれませんが、自分がデータサイエンティストに向いているのか、適性を確かめるためにも、まずは
- データサイエンティストのインターンに参加してみる
- OB訪問などを通じ職種について良く知る
- 後述のKaggleで実績を作る
という点が重要です。
Kaggle枠を利用する
また、Kaggle枠を利用し、データサイエンティストを目指すという方法もあります。
Kaggleとは、データサイエンスや機械学習分野に携わっている人のプラットフォームのことで、学習などに利用できるのみでなく、参加者が自分自身のデータサイエンススキルを競い合う場である「コンペ」が行われているというのが特徴です。
データサイエンティストを募集する企業のなかにはKaggle枠を設けている企業もあり、Kaggle内で行われる「コンペ」の実績をもとに、実務経験がなくともスキルがあると評価され、採用されることもあります。そのため、未経験者であってもデータサイエンティストになることが可能な道の1つといえるでしょう。
社内公募を利用
民間企業の場合、社内でデータサイエンティストを育成しようという考えもあり、社内公募が行われることもあるでしょう。
そのような場合には、積極的に社内公募を利用しましょう。一方、希望者が多く狭き門になることも考えられることから、前述のKaggleにおける実績などがあるとよりよいのではないでしょうか。
Kaggleについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
周辺職種に就職する
企業がデータサイエンティストを募集する場合には、やはり経験者を求めていることも多いことから、まずは周辺職種に就職し、必要なスキルを身に着けるというのも1つの方法です。
一般社団法人データサイエンティスト協会の資料によれば、データサイエンティストに必要なスキルは大きく3つに分けられ
- データサイエンス力
- データエンジニアリング力
- ビジネス力
が挙げられています。
SE職・マーケティング職・コンサルタント職などの職種でも、データサイエンティストと共通するスキル・能力が得られることから、これらの職種での経験をもとに、データサイエンティストを目指すというのも1つの方法といえるでしょう。
参考:一般社団法人データサイエンティスト協会HP「データサイエンティスト スキルチェックリストv3.01」
文系卒でもデータサイエンティストになれるか?
文系卒であっても、文系が持つスキルを活かすことでデータサイエンティストになることは可能でしょう。
文系卒だからこそ活かせるスキルの例として、経済や経営について専門として学んだ人を中心に
- 「ビジネス」に関する知識
というのは、理系卒の人より長けていると考えられます。
一方で、データサイエンティストには、「ビジネス」に関する知識のみでなく「データサイエンス力」や「データエンジニアリング力」も必要とされ、後述する
- 統計の知識
- プログラミング技術
などのスキルを有していることが望ましい場合もあるでしょう。
さらに
- Kaggleにおける実績
などもあれば、データサイエンティストの職を勝ち取ることも可能になってくるのではないでしょうか。
データサイエンティストに必要な能力
データサイエンティストになるには前述したように、データサイエンス力、データエンジニアリング力、ビジネス力が必要とされています。
それぞれのスキルがどのような場面で必要となるのか、詳しくみていきましょう。
統計および分析の知識
まず、統計や分析のスキルは、データサイエンティストにとって必須のスキルと言えるでしょう。
膨大なデータを解析するにあたり、生のデータをそのまま眺めるだけでは、活かしていくことは困難でしょう。そこで必要となってくる手法が、これらのデータを解析する統計手法になってきます。
多様な統計手法を利用し、データを解析することで、膨大なデータも意味のあるものや傾向の分かるものとなっていくでしょう。このことからデータサイエンティストになるには、統計や分析の知識が必須と覚えておきましょう。
プログラミング技術
また、膨大なデータを扱う必要があることから、プログラミング技術も必要スキルです。
データサイエンティストがデータを扱うにあたり、バッチファイルの作成やデータの挿入を行う際、プログラムを作成する機会が頻繁にあります。これらのプログラム作成にあたっては、PythonやR言語が主に利用されていることから、プログラミング言語に関する知識も必要となってくるでしょう。
ITスキル
そして、プログラミング技術のみでなく、その他多様なITスキルもまた、データサイエンティストにとって必要性の高いものといえるでしょう。
データサイエンティストが関わる可能性があるITスキルの例としては、
- 機械学習
- 深層学習(ディープラーニング)
- 言語処理
- 画像処理
- システム運用
- プライバシー保護や、外部攻撃とそれに対する防衛
などがあり、非常に幅広い知識が必要になります。すべてを修得することは困難であっても、できるだけ多くのITスキル(分野)に興味を持ち、知識を身につけておくことで、多様な場面で活躍できるデータサイエンティストとなることができるのではないでしょうか。
参考:一般社団法人 データサイエンティスト協会HP「データサイエンティスト スキルチェックリストv3.01」
ビジネススキル
データサイエンティストは、ビジネススキルも重要視されます。
時に、企業の意思決定(今後のビジネス方針など)に関わることもあるため「分析対象となる分野の知識」が必要です。さらに、解析したデータをもとに
- 分析結果を踏まえた施策を考案する
- 意思決定者にプレゼンテーションを行う
といったような能力も必要であることから、幅広いビジネススキルもまた必要とされるのが、データサイエンティストの特徴です。
データサイエンティスト未経験者が周りと差をつけるポイント
データサイエンティスト未経験の方が内定を勝ち取るためにできる、周囲との差をつけるポイントは、次のとおりです。
- 研究や学業の経験を分析に結びつける
- 最新技術やツールに積極的に触れる
- 自主的なアウトプットで実力を証明する
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
研究や学業の経験を分析に結びつける
理系学生にとって、大学や大学院で研究した内容やゼミ活動は大きなアピール材料になります。実験データの取り扱いや統計処理といった経験は、そのままデータ分析の素地として評価されやすいためです。
たとえば、研究で集めた測定値を整理したり、ノイズや外れ値を処理したりした経験は「データの前処理」としてアピールできます。また、仮説を立てて解析手法を選び、結果を評価して考察した経験は、ビジネスの意思決定に直結するデータサイエンティストの仕事と共通する部分が大きいといえるでしょう。
さらに、研究発表やレポート執筆を通して「分析結果をわかりやすく伝える力」を養ったことも強く伝えるべきポイントです。成果そのものだけでなく、どのようにデータを整理し、どのように相手に伝えたかを含めてアピールすれば、実務に近いスキルとして評価されやすくなります。
研究や学業で培った経験を整理して伝えれば、未経験であっても「データを扱える人材」として評価され、周囲との差別化につながるでしょう。
最新技術やツールに積極的に触れる
IT業界のなかでも、データサイエンスは技術の進化が速い分野です。そのため、新しいツールや手法に慣れておくことが差別化のポイントとなります。
近年、特に次のような領域が注目されています。
- AWSやGCP、Azureといったクラウド環境を使ったデータ処理モデル運用
- TableauやPower BI、LookerといったBIツールでのデータ可視化
- 生成AIを活用した分析やレポート作成
- AutoMLによる自動特徴量生成やモデル構築
- MLOpsによるモデルの継続的運用・管理
上記の技術のすべてを完璧に習得する必要はありませんが、まずは興味を持ったものから、小さなプロジェクトや学習環境で試していきましょう。
たとえば、Google Colab で公開データを分析してみたり、Kaggle Notebooks で簡単な機械学習モデルを動かしたりするだけでも、実践的な経験として十分評価されます。
重要なのは、新しい技術に自ら触れ、学び続ける姿勢がある旨を強く伝えることです。採用側にとっては、未経験でも柔軟にキャッチアップできる人材であると伝わり、将来性のアピールにつながるでしょう。
自主的なアウトプットで実力を証明する
データサイエンティストは、資格や学歴だけではスキルを示しにくい職種です。だからこそ、学業以外での自主的なアウトプットを積極的に行って、他の志望者との差別化を図ることが大切です。
KaggleやSIGNATEといったコンペへの参加をはじめ、公開データを使った分析や可視化ツールの作成は、未経験者でも実力をアピールできる代表的な取り組みです。
さらに、プログラムのコードや分析成果を公開できる「GitHub」や、学んだことを記事化して共有できる「Qiita」を活用すれば、知識やスキルを客観的かつ継続的にアピールできます。コードを整理して公開したり、分析手順を記事にまとめたりすることで、知識を実践に結びつけていると伝えられるでしょう。
このように、たとえデータサイエンティスト未経験であっても、自分の成果を形に残すことで、就職活動における大きなアドバンテージとなります。
持っていると有利な資格
データサイエンティストになるにあたり、必須となる国家資格などはありませんが
- 統計検定(一般財団法人 統計質保証推進協会)
- 情報処理技術者試験(独立行政法人 情報処理推進機構)
- データベーススペシャリスト試験(独立行政法人 情報処理推進機構)
- OSS-DB技術者認定試験(NPO法人 LPI-Japan)
- オラクルマスター(オラクル社)
- 統計士・データ解析士(一般財団法人 実務教育研究所)
- G検定・E資格(一般財団法人 ディープラーニング協会)
- アクチュアリー(公益財団法人 日本アクチュアリー会)
などの資格が役立つといわれています。
今回は、このなかでも
- 統計に関わる「統計検定」
- 情報処理に関わる「情報処理技術者試験」・「データベーススペシャリスト試験」
- データベース系試験として「オラクルマスター」・「OSS-DB技術者認定試験」
に関して、これらの試験の概要や必要性を紹介していきます。
統計検定
統計検定とは、統計質保証推進協会が実施する、統計に関する知識や活用力を評価する試験であり、統計検定「1級~4級」、「統計調査士」および「専門統計調査士」の資格を取得することが可能です。
データサイエンティストは、膨大なデータを統計解析などの手法で「情報を読み解く」職種とも考えられます。このようなことから、統計手法に関する資格は、有用なものといえるでしょう。
情報処理技術者試験
情報処理技術者試験とは、情報処理推進機構が実施する、情報処理技術者としての「知識・技能」を評価する国家資格であり、データサイエンティストに関係する試験としては、「基本情報技術者試験」、「応用情報技術者試験」および「データベーススペシャリスト試験」などがあげられます。
これらの試験は、データサイエンティストに必要とされる、IT技術を証明できる試験であることから、取得できれば有利になる資格といえるでしょう。
データベース(DB)系資格
データベース(DB)系の資格としては、NPO法人LPI-Japanが実施する「OSS-DB技術者認定試験」やオラクル社が実施する「オラクルマスター」があげられるでしょう。
データサイエンティストは、膨大なデータを蓄積し分析していくことが求められますが、そのためには、大量のデータを適切に管理し処理できる能力が必要となってきます。このような能力を証明するためにも、データベース(DB)系の知識を修得しておくことも重要です。
データサイエンティストになるための勉強方法
データサイエンティストになるためには、「プログラミングスクール」や「通信教育」を利用するのも1つの手段です。
幅広い知識が必要とされるデータサイエンティストですが、これらをすべて独学で行うとなるとハードルが高くなるのは事実です。
そこで「プログラミングスクール」や「通信教育」を適宜利用することも大切でしょう。しかしながら、これらの費用が高額であるのも事実です。
上記のような講座が実施された場合には、試しに受講してみるというのがよいのではないでしょうか。
また、通信教育プログラムのなかでも
などは比較的安価な価格で受講することも可能なことから、このような講座から受講してみるというのも良いのではないでしょうか。
未経験からデータサイエンティストへの近道!インターンシップ活用のコツと留意点
データサイエンティストを目指す学生にとって、インターンシップは未経験から実務を体験できる貴重な機会です。ただし、参加するタイミングや参加するインターンシップ選びを間違ってしまうと、思うような成果を得られないこともあります。
ここでは、未経験者がインターンシップを最大限に活用するためのコツと留意点を解説します。
短期と長期の違いを理解して選ぶ
インターンには、「短期インターン」と「長期インターン」があり、期間や目的、得られる経験が大きく異なります。それぞれの特徴を理解して、自分に合ったものを選んでいきましょう。
両者の特徴やメリット・デメリットは、次のとおりです。
| 短期インターン | 長期インターン | |
| 期間の目安 | 数日〜1週間程度 | 3ヶ月以上 半年から1年間のものも存在する |
| 目的・役割 | ・企業や業界の理解、関心分野を見極める ・自分に合うか確かめたい人に適している | ・実務経験を積む、継続的なプロジェクトに関わる ・責任ある業務を経験したい人向け |
| メリット | ・複数の会社・業界を短時間で知れる ・時間の確保がしやすく、参加ハードルが低い ・業界比較や自己理解を深めるきっかけになる | ・実務に近い経験ができる ・責任ある仕事を任される可能性がある ・業務全体像の理解が深まる ・企業との関係構築や将来の就職に有利になることも |
| デメリット | ・簡易な業務や座談会が中心で、内容が薄くなることがある ・実務経験や深いスキル取得には至らない場合が多い ・報酬が少なく、無給のケースも | ・学業・研究・他活動との両立が難しいことがある ・拘束時間が長くなる ・責任が重くなるためストレスがかかる ・参加できる企業・選択肢が限られることもある |
| 推奨される人 | ・自分の適性を早めに知りたい人 ・他社や他業界とよく比較したい人 ・学年余裕がない人 | ・特定の分野のスキルを磨きたい人 ・将来希望する業務に関わりたい人 ・時間を確保できる人 |
短期と長期のどちらが正解ということはありません。大切なのは、何を学ぶためにインターンに参加するのかを見極めることです。業界理解や自己分析を進めたい場合は「短期インターン」、実務経験を積んでスキルを磨きたい場合は「長期インターン」が向いています。目的を明確にして、より有意義な成長の機会にしていきましょう。
参加前に基礎スキルを準備する
インターンの前に、必要な準備ができているかによって得られるものが大きく変わります。基本的なスキルや知識を事前に身につけておけば、実務に取り組むときに戸惑いが少なく、より多くのことを吸収できるでしょう。
特に、次のポイントを押さえて事前準備を進めてください。
- 企業研究を徹底する
- インターン参加前に必要なスキルや知識をチェックする
- 最低限のビジネスマナーとコミュニケーション力を意識する
- 目的意識と学びたいテーマを明確にする
インターンは、学生にとっての「学びの場」であると同時に、採用担当者に自分の良さをアピールできる貴重な機会でもあります。事前準備をしっかり整えておけば、現場での理解度や行動の質が高まり、担当者にも「積極的に学ぼうとしている姿勢」が伝わるでしょう。
また、基礎的な知識やマナーを身につけておくことで、簡単な説明や業務にもすぐ対応できるため、現場で余裕を持って行動できます。その結果、周囲との協働やフィードバックの吸収もしやすくなり、成長のスピードにも良い影響があるはずです。
未経験だからこそ「準備に力を入れて周りとの差をつけることが大切です。インターンを単なる経験にとどめず、将来のキャリアに直結するステップへと変えていきましょう。
学業や研究との両立にも注意する
理系学生は、実験やゼミ発表、レポート提出などで日々忙しく、そこにインターンが加わると学業との両立に悩む人も少なくありません。特に学会準備や試験期間と重なると、研究もインターンも中途半端になってしまう恐れもあります。
こうした事態を避けるためには、具体的に次のような工夫が必要です。
- 研究スケジュールを事前に確認する
- インターン期間を短期に設定する
- 事前に指導教官に相談する
- 学業・研究を優先する姿勢を持つ
このように、研究の繁忙期を避けて参加時期を選んだり、短期インターンを活用したり、さらには指導教員に相談してスケジュールを調整したりして、学業を優先する姿勢を持つことが大切です。
計画的に時間管理やスケジュール調整を行うことで、研究や授業を犠牲にせず、インターンからも最大限の学びを得られるでしょう。
少しずつスキルアップし、データサイエンティストを目指そう
膨大なデータを扱うことが増えた現代、データサイエンティストの育成は急務とされ、官民で様々な取り組みが行われていますが、さらに需要が高まる職種と考えられています。
なお、データサイエンティストに未経験者も就くことは不可能ではありませんが
- 統計および分析の知識
- プログラミングを含むITスキル
- ビジネススキル
と非常に幅広い知識が必要であるのが現実です。
そのため、データサイエンティストと「必要なスキルが似ている職種」にまず就職を目指すことや、必要な「資格」や「スキル・実績」などを修得したうえで、データサイエンティストを目指していきましょう。
参考:第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト






