近年、就職活動を行う学生の間で高い人気を誇る「コンサルティングファーム」とよばれる企業があります。
名前は聞いたことがあっても、実際にどのような仕事をしているのか、どのような種類があるのかなど、実態についてはよく知らないという方も多いでしょう。実はよく理解できていないという方も少なくありません。
本記事では、コンサルティングファームとは何か、その種類や特徴、どんな人が向いているのかについて、分かりやすく解説していきます。
コンサルティングファームとは
コンサルティングとは、「クライアント企業(取引先)が抱えるさまざまな課題に対して、解決策を提供する業務」のことです。そして、事業内容としてコンサルティングサービスを行っている企業のことを「コンサルティングファーム(consulting firm)」と呼びます。
コンサルティングを行う人、すなわちコンサルタントは、第三者の立場から、クライアント企業の経営状況などの課題を分析し、最適な解決策を提供します。
場合によっては、何年、何十年も事業の推進や会社の経営に携わってきたクライアントに対し、若手のうちから支援を行うこともあります。コンサルタントは、情報収集力や論理的思考力などの高いスキルが求められる職種です。
コンサルタントについてのより詳しい解説やあると有利なスキル・資格についてはこちらの記事をご覧ください。
コンサルティングファームの種類

世の中には多くのコンサルティングファームが存在します。
一言でコンサルティングファームといっても、例えば人事系の課題を解決するコンサルティングファームや、IT系の課題解決を得意とするコンサルティングファームなど、各ファームごとに担当する領域が異なります。その担当する領域から、いくつかの種類に分類することができます。
また、コンサルティングファームの種類によって、担当する領域だけでなく、クライアント企業の規模や案件の大きさも異なります。
そのため、就職先を選ぶ際には、自分がどのような領域において、どのような企業に対してコンサルティングを行いたいのか考えておく必要があります。
ここでは、コンサルティングファームの種類とそれぞれの代表的な企業を紹介します。
総合系コンサルティングファーム
総合系コンサルティングファームの主な仕事は、その名の通り、様々な業界の様々な課題に対して総合的に改善策を提供することです。
クライアント企業の経営層から一般社員まで、企業全体に関わる課題を、戦略の立案やシステム導入など様々なアプローチで一気通貫で解決をしてきいます。
経営戦略の立案だけでなく、業務の効率化、システムの導入、組織改革など、経営層から現場レベルまで企業全体に関わる課題をトータルで支援するのが特徴です。
取り扱うテーマやクライアントの業種が多岐にわたるため、比較的社員数も多く、大規模な組織体制を持つ傾向があります。
総合系コンサルティングファームの代表的な企業は、以下の通りです。
- アクセンチュア株式会社
- アビームコンサルティング株式会社
- デロイトトーマツコンサルティング合同会社
- PwCコンサルティング合同会社
- KPMGコンサルティング株式会社
- EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
戦略系コンサルティングファーム
戦略系コンサルティングファームの主な仕事は、クライアント企業の経営層に対し、企業戦略や事業戦略、マーケティング戦略やM&Aなど、会社の方向性に関わる重要課題に対し、戦略立案や意思決定のサポートをする専門ファームです。
企業のトップレベルの意思決定に深く関わるため、多くの有名企業が、経営の裏側で戦略系ファームのサポートを受けているといわれています。
若手であっても大企業の経営層と直接やりとりをしたり、大規模な案件やプロジェクトに携われたりする点が、戦略系ファームならではの魅力です。
戦略系コンサルティングファームの代表的な企業は、以下の通りです。
- アーサー・D・リトル(ジャパン)株式会社
- A.T. カーニー株式会社
- ベイン・アンド・カンパニー
- PwCコンサルティング合同会社 ストラテジーコンサルティング
- ボストン・コンサルティング・グループ合同会社
- 株式会社ドリームインキュベータ
- マッキンゼー・アンド・カンパニー
- 株式会社ローランド・ベルガー
中小企業系コンサルティングファーム
中小企業系コンサルティングファームは、中小企業の経営者に対して、経営戦略の立案や業務の見直し、IT導入の支援など、幅広い課題に対する解決策を提供する専門ファームです。
別名「日系・国内系コンサルティングファーム」と呼ばれることもあり、地域密着型で企業に深く関わるケースが多いという特徴があります。
中小企業診断士などの資格を持ったコンサルタントが、実際に現場に深く入り込み、経営者と一緒になって改善に取り組みます。
中小企業系コンサルティングファームは、1人のコンサルタントが数社を掛け持ちするケースが多いのも特徴です。日本を支える中小企業の成長を後押しできるやりがいのある仕事といえるでしょう。
中小企業系コンサルティングファームの代表的な企業は、以下の通りです。
- 株式会社船井総合研究所
- 株式会社ビジネスブレイン太田昭和
- 株式会社タナベ経営
- 山田ビジネスコンサルティンググループ株式会社
- 株式会社リブ・コンサルティング
- りそな総合研究所 株式会社
IT系コンサルティングファーム
IT系コンサルティングファームの主な仕事は、クライアント企業の課題を、ITを活用して解決に導くことを専門とするコンサルティングファームです。
IT戦略の策定やシステムの導入、ITによる業務改善の提案などの様々なアプローチを通して企業のIT化をサポートします。
IT系コンサルティングファームでは、業務改善やビジネスに関する理解に加えて、ITに関する専門知識も求められるため、エンジニア的な視点とビジネス的な視点の両方が求められるのも特徴です。
IT系コンサルティングファームの代表的な企業は、以下の通りです。
- 日本アイ・ビー・エム株式会社
- 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
- 株式会社ワークスアプリケーションズ
- フューチャーアーキテクト株式会社
- シンプレクス・ホールディングス株式会社
- 日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社
- キヤノンITソリューションズ株式会社
IT業界についてはこちらの記事を参考にしてください。
人事系コンサルティングファーム
人事系コンサルティングファームの主な仕事は、クライアント企業の組織づくりや働く人々の環境の改善に取り組む専門ファームです。
具体的には、社員向けの研修制度の企画・運営、人事評価制度や人事システムの見直し、福利厚生の設計などを通じて、社員がより働きやすく、成果を出せる仕組みづくりをサポートします。
人事系コンサルティングファームの代表的な企業は、以下の通りです。
- マーサージャパン株式会社
- 株式会社ラーニングエージェンシー
- 株式会社グロービス
- アルー株式会社
- レジェンダ・コーポレーション株式会社
- 株式会社パーソル総合研究所
シンクタンク系コンサルティングファーム
シンクタンク系コンサルティングファームは、政府機関や地方自治体などの公的機関や民間企業などから依頼を受けて、社会課題や産業動向に関する調査・研究・分析を行い、政策立案や企業戦略に役立つような提言を行う専門ファームです。
大手銀行や証券会社などを親会社に持つ企業が多く、経営が安定している点も特徴です。なかには、調査だけでなく、ITシステムの導入支援などを手がけるグループ会社と連携して、実務面のサポートを行うケースもあります。
シンクタンク系コンサルティングファームでは、緻密な分析や地道なリサーチを通じて成果を出すことが求められるため、研究が好きな方や、大学院でデータ分析や政策研究に取り組んだ経験がある方に特に人気があります。
シンクタンク系コンサルティングファームの代表的な企業は、以下の通りです。
- みずほ総合研究所株式会社
- 株式会社野村総合研究所
- 株式会社NTTデータ経営研究所
- 株式会社三菱総合研究所
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
コンサルティングファームに向いている人の特徴

ここまでは、コンサルティングファームの種類や仕事内容について紹介してきました。
優秀で激務といった印象があるコンサルティング業界ですが、コンサルタントに向いている人には、以下のような特徴があります。
- 論理的思考能力がある
- 比較的長時間の勤務を行える体力がある
- 分析結果を適切に伝えられるコミュニケーション能力がある
- 相手の発言の意図や、置かれた状況を推察できる
- クライアントの期待を超える成果を出したいという強い想いがある
- 素直で、自分の間違いを受け入れられる柔軟性がある
コンサルティング業務はクライアントの期待に応えるための高い能力と体力が求められます。また、このような特徴は文系・理系問わず、大学院での研究活動の中でも培われる能力に共通していることがわかります。
コンサルティング業務に携わるメリット・デメリット
コンサルティングファームで働くことには多くのメリットがありますが、一方でさまざまな課題やプレッシャーも存在します。
ここでは、コンサルティング業務に従事する際に感じやすい「メリット」や「デメリット」を詳しくみていきましょう。
コンサルティングファームに携わるメリット
コンサルタントとして働くことで得られる主なメリットは、次のとおりです。
- 若いうちから成長できる環境が整っている
- 市場価値の高いスキルが身につく
- 初任給・年収ともに高水準の給与が得られる
- 年次に関係なく成果次第で早期に昇進・活躍できる
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
若いうちから成長できる環境が整っている
コンサルティングファームでは、新卒1年目から企業の課題解決に取り組むチャンスがあります。経験が浅い若手社員でも責任のあるプロジェクトを任されることもあり、成長スピードがとても早いという特徴があります。異なる業界やテーマのプロジェクトに関われるケースも多く、知識の幅も広がりやすいといえるでしょう。
市場価値の高いスキルが身につく
コンサルティングファームに従事することで、「課題を見つける力」「わかりやすく伝える力」「論理的に考える力」など、社会人として活躍するために必要なスキルが身につきます。
特に次のようなスキルは、多くの業界で高く評価されるため、スキルアップや将来的なキャリアチェンジを見据えても、大きな強みとなります。
- 論理的思考力
- 問題解決力
- プレゼンテーションや資料作成スキル
- コミュニケーション力
- タイムマネジメント力
これらのスキルは、どのような業界でも重宝される「市場価値の高い力」です。将来の進路に迷っている人にとっても、大きな武器となります。
初任給・年収ともに高水準の給与が得られる
コンサルティングファームは、他の業界と比べて初任給が高く、さらに成果に応じて年収も早くから上がりやすいという特徴があります。
特に「外資系ファーム」では、20代で年収1,000万円を超える人も少なくありません。成果や評価が直接給与に反映されるため、「若いうちから稼ぎたい」「実力主義の世界で評価されたい」という人にとって、魅力的な業界といえるでしょう。
コンサルティングファームに携わるデメリット
コンサルティングファームに携わることで想定されるデメリットは、次のとおりです。
- 激務によるストレスリスクが高い
- 転職時に給与水準が下がる恐れも
- 事業会社での実務経験を積みにくい
- 専門領域が狭まるリスクも
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
激務によるストレスリスクが高い
コンサルティング業界では、プロジェクトごとに求められる成果や納期が厳しく、長時間労働を強いられるケースも珍しくありません。
特に、若手のうちは資料作成や調査業務などを割り振られることが多く、深夜や週末まで仕事が及ぶケースもあるでしょう。責任の重さやスピード感のある環境にやりがいを感じる一方で、体力面やメンタル面での負担もあるため、自分に合った働き方を見極めることが大切です。
転職時に給与水準が下がる恐れも
コンサルティングファームは、若手のうちから高い年収を得られる傾向にあるものの、事業会社などへ転職する際には、高い水準を維持できない恐れもあります。
特に、評価制度や報酬体系が異なる企業に転職する場合は、年収が一時的に下がる場合も考えられるでしょう。長期的なキャリア設計を立てる際は、初任給やボーナスなどの給与面だけでなく「その企業でどのような経験を積むか」についても、意識しておくことが重要です。
事業会社での実務経験を積みにくい
コンサルタントはあくまで外部の立場から企業を支援する業務です。自ら「事業を動かす」という経験は積みにくい傾向があります。
例えば、営業や商品開発、チームマネジメントなど、事業会社で得られるような実務経験を積む機会が限られてしまうケースも少なくありません。そのため、将来的に「自ら新規事業を立ち上げたい」「商品開発やマーケティングなどの実務を担いたい」と考える場合は、希望する働き方と合っているか事前に確認しておかなければなりません。
専門領域が狭まるリスクも
コンサルティングファームでは、配属された業界やテーマに長く関わることが多く、気づかないうちに自分の専門領域が固定されてしまう恐れがあります。
一つの分野に詳しくなる反面、他の業界や職種に関する経験が少なくなり、転職の選択肢が限られるケースも少なくありません。将来的に幅広い分野で活躍したい人は、どのような経験を積めるかをよく考えた上で就職先を選ぶことが大切です。
コンサルティングファームのキャリアは幅広い
コンサル業界はいわゆる「潰しの利く業界」であるとして有名です。
その理由はコンサルタントが担う業務が「戦略立案」や「経営アドバイス」など一般企業では重役役員が行うものであるためです。つまり、コンサルタントは一般企業の重役に必要とされる専門性を有しているといえます。
このような戦略や経営に関する専門性はどの会社でも成長のためには必須であることから、会社や業界に縛られることなく幅広いフィールドで活躍できるでしょう。
コンサルティングファームは年収が高い

コンサルタントの仕事はほかの職種に比べて年収が高く、平均年収のランキングでも毎年上位に名を連ねています。
このように年収が高くなる理由としては、経営課題解決のために高い知識やスキルが求められることや固定費が比較的少ないことによる高い利益率などが挙げられます。
業種別ではトップクラスを維持する年収で、早い時期に年収1,000万円を実現することも可能です。
東洋経済オンラインが2024年に発表した「30歳年収が高い会社ランキング「全国トップ500」」によると、トップ30までに下記の大手コンサルファームが4社ランクインしています。
- 18位 株式会社ドリームインキュベータ 30歳推定年収:1,132万円
- 22位 フロンティア・マネジメント株式会社 30歳推定年収:1,104万円
- 25位 株式会社ベイカレント・コンサルティング 30歳推定年収:1,036万円
- 27位 株式会社野村総合研究所 30歳推定年収:981万円
アカリクには様々な企業の求人が掲載されている
これまでコンサルティングファームについて解説してきましたが、日々の研究と両立させながら、コンサルティングファームの求人を独力で探すのは難しいかもしれません。
アカリクのサイト上では、多くのコンサルティングファームの求人が掲載されています。
コンサルティングファームに就職をしたいと考えている人はぜひ一度チェックしてみてください。

ここではいくつかアカリクのサイトに掲載されている企業について紹介します。
PwCコンサルティング合同会社
PwC Japanグループの一員として、幅広い業界知見や最先端のデジタルテクノロジーといった専門性を駆使して、組織再編や業務・ITの改革など、クライアントと共に変革を実現し、有機的成長を支援する総合的なコンサルティングサービスを提供しています。

ニュートン・コンサルティング株式会社
リスクマネジメントに特化したコンサルティング会社です。事業内容としては、全社的リスク管理(ERM)構築支援、事業継続(BCP/BCM)構築支援、ITガバナンスやサイバーセキュリティ、ISO認証取得支援などを扱っています。

コンサルティングファームの今後
時代の変化に応じて仕事内容や求められる役割も変わっていくため、コンサルティングファームで働く中で常に新たな知見に触れ、自身の成長につなげることができます。
また、クライアント企業の課題解決に携わってきたコンサルティングファーム出身者には、転職もしくは独立を経ても各業界で活躍できる傾向が高いという特徴があります。
どこでも通用するスキルを身につけたいと考える方は、コンサルティングファームへの就職を選択肢の1つとして考えてみるのはいかがでしょうか。






