社会人が大学院へ進学するために―受験対策について解説―

研究・大学生活

「人生100年時代」と言われる現在、一度社会に出た後に、必要なタイミングで再び教育を受け、仕事と教育を繰り返す「リカレント教育」が注目されています。
リカレント教育の選択肢の1つとして大学院進学があります。

大学院生全体の数は2015年以降、ほぼ横ばいの状態の一方にも関わらず、院生全体に占める社会人大学院生の割合は増加傾向にあります。

参考:科学技術・学術政策研究所「科学技術指標2021

社会人の中で大学院進学を選択する人が徐々に増えてきていますが、当然、社会人であっても、大学院へ進学するためには、大学院試験を受験し、合格しなければいけません。

そこでこの記事では、働きながら夜間短期大学、通信制大学、大学院修士課程、大学院博士課程と進んだ経験のある筆者の経験もふまえ、社会人が大学院に行くための受験対策の方法について紹介いたします。

なお、ここで取り上げる社会人とは、企業や団体に所属して働いている人だけではなく、実社会で生活する人全般を指します。
例えば介護をしている人、専業で家事や育児をしている人など、あらゆる人を含みます。

また、大学院の探し方や、社会人が大学院進学をするにあたって注意すべきポイントについては以下の記事で紹介しておりますので、あわせてご覧ください。

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受験料/学費

受験料・入学金や授業料などの学費を私立と国公立で比較した場合、私立の大学院の方が国公立の大学院よりも一般的に割高となっています。

国立大学(法科大学院を除く)を例に挙げると、受験料は3万円、入学金が28万2,000円、授業料は一般的に年間で約54万円となっています。

参考:文科科学省 「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令

社会人に対する授業料割引などの優遇制度は今のところありません。
しかし、同じ大学の卒業生は入学金などが安くなる制度もあるので、事前に調べることが大切です。
以下の記事に、進学にかかる金額などについての具体的な解説がありますので、参考にしてみてください。

大学院への進学はいくらかかる?学費や補助について解説

入試スケジュール

大学院の入試は、卒業直後の学部学生と社会人を区別せず一緒に行う大学院もあれば、別々に行う大学院もあります。
大学院の社会人入試の実施時期は多様化しています。

最も多い時期は9〜11月頃で、次いで1〜2月頃となっています。
理工系だと6〜8月頃、または通年で入試を行っている大学院などもあり、かなりばらつきがあります。
また、秋入試と春入試のどちらか一方のみを実施、両方を実施、秋入試で欠員が出た場合のみ春入試も実施、の3通りがあります。
出願期間の開始は約1か月前であることが多いです。
気付くと出願期間が過ぎていたということもありますので、出願期間と入試日はきっちり押さえて、スケジュールを立てましょう。

大学院受験に向けて確認すべきこと・準備するもの

ここでは、大学院受験に向けて確認すべきことや準備するものについて紹介します。
大きく分けて以下の2つの点について事前にしっかりと確認しましょう。

  • 出願書類
  • 入試の内容

また、大学受験(学部)と異なり、大学院受験では、研究計画書を準備することが求められることも多いです。
それぞれ順番に説明いたします。

出願書類を確認する

大学院に出願する際、以下のような書類を提出します。

①大学が指定する出願書

②履歴書(①に含まれることも多いです)

③研究計画書

④卒業証明書(博士課程の場合は修士課程の修了証明書)、成績証明書など

このほかにも、志望動機などの作文が必要な大学院もあります。

博士課程に出願する場合は、これまでに手がけた論文の要旨などが必要な場合もあります。

この中で、特に大事になるのが③の「研究計画書」です。これについては後述します。

入試の内容を確認する

大学院の入試の内容は大学院、分野によりさまざまですが、一般的な試験科目は以下の3科目です。

  • 英語
  • 専門科目(もしくは小論文)
  • 面接

また、社会人と新卒学生の入試を分けているところでは、社会人のための入試は「社会人特別入学者選抜/社会人入試/社会人特別入試」などと呼ばれることもあります。

この社会人入試の場合、小論文や面接が中心で、「英語」の試験は免除されることが多いようです。

参考:大学院に行くためには?試験対策・難易度についても解説

研究計画書の準備

上述の出願書類の一つとして提出する研究計画書は、書類選考や面接の際にも重要になります。
しかし、この研究計画書が、社会人にとってはわかりにくいものでもあります。

大前提として、大学院は単に授業を受けて知識を得る場所ではなく、自らの問題意識に関して研究を行い、解決策を探る場所です。
つまり面接においても、「あなたが大学院で研究したいことは何ですか」という質問がなされる可能性が非常に高いのです。
そのため、提出する研究計画書は、自分が大学院で研究したいことがわかるように仕上げておく必要があります。

また、出願書類には、希望教員の名前を書く欄がある場合も多く、その先生を選ぶ理由が研究計画書の内容と結びついている必要もあります。
研究計画書は大学院の先生とのコミュニケーションツールです。
教員に向けて、あなたの研究がどれほど面白いものであるか、どれほど重要なものになるのか、が伝わるように書いてみましょう。

アカリクでは以下の記事で研究計画書の書き方について詳しく書いています。
ぜひ参考にしてみてください。

大学院入試に向けたスケジュール管理のポイント

ここからはスケジュール管理のポイントについてまとめます。
大きく分けると、以下の3つのステップが考えられます。
ご自身の状況に合わせて、受験に向けたスケジュールを作り上げていきましょう。

ステップ1 情報収集・志望校の決定

研究したいテーマ、学びたい目的などをふまえて、情報収集をします。
必ずチェックすべき項目は以下の通りです。

  • 研究できる内容やカリキュラム
  • 教員の専門分野
  • 学費
  • キャンパスの所在地(事務局が開いている時間なども含む)
  • 説明会、研究室訪問などの時期
  • 試験科目
  • 入試日程

ステップ2 出願書類の準備・提出

研究計画書の作成には時間をかけた方がいいので、志望校が決まったら、すぐに着手するといいでしょう。
研究計画書の作成はおおむね、入試の6〜8か月前ぐらいからは準備したいものです。
出願書類には、大学の卒業証明書(博士課程の場合は修士課程の修了証明書)や成績証明書などが含まれることが多いので、時間がかかりそうなものは早めに用意しましょう。
また、大学院によっては上司からの推薦書または承諾書の提出が求められる場合もありますので、注意が必要です。

ステップ3 試験対策

過去の入試問題があれば必ずそれをチェックしましょう。
インターネットで見られる場合もありますし、各大学に出向けば入手できる場合もあります。
上述のように、社会人向けの入試では「英語」が試験科目にないこともありますが、「英語」がある場合は、準備を怠らないようにしましょう。
面接では、志望理由や研究したいことの内容についての質問がよくなされます。

志望理由などを明確にし、また、作成した研究計画書の内容をもとに、想定される質問に対する意見・反論などをあらかじめ考えておきましょう。

参考:中央大学「〈Focus〉大学院入試の時期は?受験までの対策スケジュール・やるべきことを解説

まとめ

この記事では、社会人が大学院進学をする上で避けては通れない大学院受験の対策について紹介しました。

  • 大学院受験に向けて、出願書類、入試の内容は事前に確認しておく。
  • 入試では「英語」、「専門科目(もしくは小論文)」、「面接」が行われることが一般的だが、社会人入試の場合、英語が試験科目に無い場合もある。
  • 大学院入試までに実施すべきこととして、「情報収集・志望校の決定」、「出願書類の準備・提出」、「試験対策」がある。

この記事では日本国内の大学院だけの紹介のみでしたが、海外の大学院の中にはオンラインで受講し学位が取得できるところもあります。
英語ができればそのような学びも可能となりますので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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アカリクリポーターズとは、大学院生としての経験や知識を「リポート」するライター集団です。全員大学院在籍経験があり、これまでの研究経験や知識を活かして、大学院生の皆様に役立つ情報をお届けしています。専門分野は工学・化学・生命科学・心理学・社会学等様々です。

【監修】アカリクお役立ちコンテンツ編集部
博士号所持者/博士課程在籍経験のある編集者が監修しています。

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