大学院進学を検討していても、大学院の入試に関する情報は、大学の入試と比べて非常に情報が少なく、困惑している方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回の記事では、大学院の受験を考える学部生に向けて、大学院やその入試形態を解説したうえで、特に一般入試の科目や難易度に注目しながら、大学院試験について解説していきます。
そもそも大学院とはどんなところ?
まず初めに、そもそも大学院とは何をするところなのでしょうか。ここでは大学院の概要と修士課程・博士課程について解説します。
学術的研究を深める場所
大学院は、「学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめて、文化の進展に寄与することを目的とする」場所とされています。(学校教育法第65条)
大学を卒業すると「学士」という学位が与えられますが、大学院では修了した課程によって「修士」や「博士」といった学位が与えられます。
大学院修了者の進路の選択肢として、大学教授や研究者を目指すイメージが強いかもしれませんが、理系の場合は大学院に進学し専門的な知識や技術を身に付けることで、就職活動で有利に働くこともあるようです。
参考:文部科学省「3 大学院の目的・役割」
修士課程・博士課程
修士課程は大学の学部を卒業した後に受験して進学することが多く、一般的な修業年限は2年です。
文部科学省は大学院設置基準第3条にて修士課程の目的を以下のように定めています。
「 修士課程は、広い視野に立って精深な学識を授け、専攻分野における研究能力又はこれに加えて高度の専門 性が求められる職業を担うための卓越した能力を培うことを目的とする。」
参考:文部科学省「修士課程・博士課程の関係について 」
博士課程は、修士課程修了後に研究者や研究職として自立して研究活動をおこなうための技術や能力、知識を身に付けたい人が進学します。一般的な修業年数は5年です。
多くの大学院では博士課程を2年間の前期課程、3年間の後期課程に分ける区分制を取っており、前期課程を修了することで修士号が授与されます。
文部科学省は「大学院設置基準第4条」にて博士課程の目的を以下のように定めています。
「博士課程は、専攻分野について、研究者として自立して研究活動を行い、又はその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な 高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うことを目的とする。」
参考:文部科学省「修士課程・博士課程の関係について 」
修士課程や博士課程について更に詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
大学院試験には秋入試と春入試がある
大学院の入試が実施される時期は、一般的に、9~10月頃の秋入試と1~2月頃の春入試の2つの時期があります。
大学院によって、
- 秋入試と春入試の両方を実施する場合
- 秋入試/春入試いずれかを実施する場合
- 秋入試で欠員が出た場合のみ春入試も実施する場合
があります。
こうした大学院試験の実施時期は、大学院ごとに異なるのはもちろん、同じ大学院でも専攻や課程 (博士前期課程/修士課程と博士後期課程) によって異なることがあるので、注意しましょう。
また、秋入試の場合は、出願の時期も早くなるため、必ず募集要項を確認しましょう。
大学院試験の入試は主に4種類ある
大学院入試には、一般入試のほかに、推薦入試、AO入試、社会人入試があります。ここではそれぞれの入試形態について詳しく解説します。
一般入試
学部卒業後そのまま大学院へ進学する場合、多くの方が利用するのが一般入試です。
後ほど詳しく紹介しますが、一般入試では、英語、専門科目(もしくは小論文)、面接の3つを受けることが多いです。
また、出願の時点で研究計画書の提出を求められます。
一般入試で受験する各科目については後ほど詳しく触れたいと思います。
推薦入試
一般的には学部からの内部進学をする際に利用できる入試制度です。
受験資格を得るためには「一定以上の成績」を修めている必要がありますが、筆記試験が免除されるなど試験内容が軽減されることも少なくありません。
よって推薦入試を利用するためには学部での学業をおろそかにせずに勉強に励む必要があります。
また、一定の要件を満たした学外の優秀な人材の推薦を受け付ける大学院もあります。
AO入試
アドミッション・オフィス入試の略で、人物を重視した入試形態と言えます。
大学入試で盛んに取り入れられている入試形態ですが、近年では大学院でも採用されるケースも増えてきました。
試験内容は多くの場合、書類審査と面接です。
また、学生や社会人といった枠を規定せずに行っている大学院もあります。
社会人入試
基本的には学部卒の社会人を対象にした入試形態であり、一般入試と比べて試験科目が少なかったり、筆記試験がなかったりするなど受験勉強の負担が比較的少ないという特徴があります。
一般的には外国語試験と面接が課されますが、大学院によっては外国語試験を免除して面接だけの場合もあります。
社会人入試においても、「研究計画書」が志願者の適性判断材料として使用されます。
文章作成能力や学ぶ意欲、第三者からの評価、研究テーマに対する知識や技術等が問われます。
また、大学院によっては「社会人経験3年以上」を受験の条件を定めている場合もあるので、社会人大学院生として大学院に入学をしようと考えている人は、事前に受験資格をよく調べておく必要があります。
大学院試験の一般入試の受験科目は3科目であることが多い
大学院試験の一般入試の受験科目は、一般的に「英語」、「専門科目(もしくは小論文)」、「面接」の3科目とする場合が多いです。
英語
大学院進学後、英語の学術論文を読んだり、国際学会で発表したりと、英語を使用する機会が多くなります。そのため、多くの大学院が英語を試験科目にしていると考えられます。
英語の試験では、受験する専攻に関わる内容の文章を読み、問題に答えるといった文章読解が一般的ですが、英作文が課せられる場合もあります。出題される文章が専門的な点を除くと、出題形式も難易度も、大学入試とさほど変わらない場合が多いようです。
最近では、英語試験に代わって、TOEICやTOEFLのスコア提出が求められたり、基準以上のTOEICやTOEFLのスコアを取得している場合に、英語の試験が免除されたりすることも多くあります。
専門科目(もしくは小論文)
専門科目では、大学院で専攻する分野について、大学の学部レベルの基礎知識を問われます。
大学院や選考によってさまざまな出題形式で、筆記試験の場合もあれば、口述試験の場合もあります。
筆記試験の場合、課題文の内容に対しての自分の見解を述べたり、語句を説明したりする論述式の問題が出題されることが多いようです。
専門科目の代わりに小論文を設ける大学院もあります。
小論文で出題されるテーマは、大学院ごとに異なります。専門分野に関するもの、一般教養に関するもの、時事的なものなど様々です。
面接
面接では、出願の際に提出した研究計画書をもとに、卒業論文の内容や志望理由、大学院で研究しようとしていることについて、最も専門に近い教員を中心に質問されます。
面接では、先行研究や大学院での研究の具体的な計画、その研究を行う上での方法や、研究の目的・意義などが聞かれます。
科目別の具体的な対策方法・時期
大学院受験と並行して、卒業論文の執筆や就職活動など、様々なことを行わなければならない学生の方が多い中、各科目の試験対策はいつ頃から、また、どのような対策をしたらよいのでしょうか。
過去問を入手する方法・時期
過去問を入手することは、大学院の入学試験対策において、科目に関わらず最も重要なことです。
大学院試験に関する情報が少ない中、これからどのような対策をしていけば良いかが見えてきます。
過去の試験問題(過去問)を入手する方法は、
- 大学院に直接もらいに行く
- 大学院の公式サイトからダウンロードする
の2つがあります。
ただし、過去問をインターネット上で公開している大学院は少ないため、研究室訪問などの際に、直接もらいに行くのが一般的です。
早めに過去問を入手できれば、その後の対策も立てやすくなるので、半年前には入手出来ているとよいでしょう。
英語の対策方法・時期
英語の対策方法や対策を開始した方が良い時期は、筆記試験の場合とTOEICやTOEFLのスコア提出の場合で異なります。
筆記試験の場合は、過去問を一度解いてみてから対策時期を考えましょう。
普段から英語の論文を読みなれている人や英語が得意な人にとっては、あまり難しく感じないかもしれません。
逆に、専門分野に関係した英語の文章を読みなれていない人や英語が苦手な人にとっては、非常に読みづらい文章になっています。
対策に時間のかからなそうな人は、大学院試験の1か月前から、過去問を解いて出題傾向を把握し、時間配分を考えておきましょう。
また、過去問には解答がついていないことも多いので、過去問の答案を指導教員や先輩に添削してもらうことをおすすめします。
対策に時間がかかりそうな場合は、
- 専攻分野に関係した英語の文章を読む練習をする
- 専門用語の英単語もできるだけ多く覚える
- 大学入試で使用したような英単語帳で英単語を復習する
といった対策を、できるだけ早くから行っていきましょう。
TOEICやTOEFLの場合、結果が出るのに時間がかかってしまうため、出願直前に受験しても間に合わない、といった可能性があります。
多くの大学院では2年以内のスコアしか受理していないので、2年以内であればできるだけ早くから何度もTOEICやTOEFLを受験し、スコアを伸ばしておくとよいでしょう。
専門科目・小論文の対策方法・時期
専門科目の場合も小論文の場合も、まずは過去問を取り組んで出題傾向の把握と時間配分の決定をしておきましょう。
過去問を解いたら、指導教員や先輩に添削してもらうことも重要です。
次に、専門科目の場合と小論文で専門分野に関する出題テーマである場合は、学部レベルの基礎知識を確実に身につけておくことが必要です。
学部で習ったことを一通り復習しておきましょう。
対策時期としては、大学院入試の行われる年度の4月頃からが一般的ですが、学部で学んだ内容は非常に多いので、早ければ早いほどよいでしょう。
面接の対策方法・時期
面接の対策方法は、まず研究計画書の内容を充実させることです。
研究計画書には、面接で問われる事項、つまり先行研究、研究の目的、方法、研究の意義などを書くので、詳細に書くほど、面接をする教員は学生の研究内容を理解した上での質問をしてくれます。
研究計画書の詳しい書き方については、以下の記事も併せてご覧ください。
また、面接対策として、研究計画書の内容をもとに、想定される質問に対する意見・反論などをあらかじめ考えておくことも必要です。
面接対策の時期としては、研究計画書を提出するまでと面接当日までの2つに分けられます。
研究計画書は、提出の1か月前までに一度完成させ、大学の指導教員や大学院の先輩などに添削をお願いするのが良いでしょう。
研究計画書を提出したら、あとは面接当日までの間に面接の練習をしておきましょう。
まとめ
大学院の入試試験は、情報が少ないからこそ、能動的に情報を集め対策することが必要です。
志望する大学院の募集要項から入試の実施される時期や科目を確認し、過去問から出題傾向や難易度、時間配分を確認することで、万全な入試対策を行っていきましょう。