社会人が大学院に行くには? 探し方や注意点を解説

研究・大学生活

「人生100年時代」と言われる現在、「リカレント教育」が注目されています。
リカレント教育とは「学校教育からいったん離れて社会に出た後も、それぞれの人の必要なタイミングで再び教育を受け、仕事と教育を繰り返すこと」です。
政府も支援制度を設けるなど、社会人の学び直し教育の強化を進めています。

参考:政府広報オンライン「「学び」に遅すぎはない!社会人の学び直し「リカレント育教育」

このリカレント教育に注目が集まる中、学習をする場として、大学院が選択肢の一つとなっています。
筆者も働きながら夜間短期大学、通信制大学、大学院修士課程、大学院博士課程と進んだ経験があります。
こうした経験もふまえ、ここでは社会人が大学院に行くための探し方や注意点を紹介いたします。

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まずは働きながら大学院に通う目的と意義を明確にする

「なぜ大学院に通うのか」。

まず、その目的を明確にすることが大事です。
特に、社会人として大学院に進学する場合、大学院に通う目的や意義は人によってさまざまでしょう。

例えば、以下のような内容が考えられます。

  • 知識を習得して仕事に活かす
    仕事と関連する分野を大学院で学び、資格を取得したり、課題解決のヒントなどを得て、今の自分の仕事に直接活かす。
  • キャリアアップまたはキャリアチェンジ
    自身のスキルをアップすることにより、会社内の希望部署に異動したり、昇進したり、より希望する職場に転職する可能性を広げる。
  • 自分の地平を広げる
    自分ができることはまだまだたくさんあるということを認識し、新しいステージ、新たな仕事や生きがいを得る契機とする。
  • 知見を広げる/知的好奇心を満たす/人生を楽しむ 

ただし、目的を明確にするのと同時に、大学院とはそもそもどのような場所なのかということを知っておく必要があります。

大学院とは、専門領域を体系的に研究するところです。
単に授業を受けて知識を得るだけの場所ではなく、自分が突き詰めたいテーマについて自主的に研究し、論文などにまとめる場です。
つまり、何らかの問題意識を明確に持っていることが重要になります。
問題意識を明確にし、仕事や生活の中で得た豊富な経験をアカデミックな視点で捉え直すことで、新たな視点が得られ、思考方法が広がり、そこから課題解決につながる可能性が生まれるでしょう。

社会人が通える大学院の制度と種類 

次に、基礎的な情報として、大学院の制度や社会人が通える大学院の種類について解説します。

大学院の制度

一般的に、2年間の修士課程と、3年間の博士課程で構成されます。
大学院によっては、修士課程を博士前期課程とし、博士課程を博士後期課程と呼ぶところもあります。

大学院によって、詳細は異なりますが、論文の提出、研究成果の審査や試験などを通して各課程の修了が認められると、「修士」や「博士」といった学位を取得できます。

大学の学部は「法学部」「経済学部」など「〜学部」と呼ばれますが、大学院の場合は「法務研究科」「経済学研究科」など「〜研究科」と呼ばれるのが普通です。

大学院の詳しい制度については以下の記事で紹介していますので、ぜひ読んでみてください。

大学院の種類

次に社会人が通える大学院にはどのようなものがあるか、説明したいと思います。
一般的に次のような種類があります。

  • 学部を持つ大学院
  • 独立研究科
  • 専門職大学院
  • 大学院大学

以下では、それぞれについて紹介します。

学部を持つ大学院

学部を持つ大学の大学院です。
一般的には大学における学士課程の上に大学院が設けられます。
例えば、大学に「異文化コミュニケーション学部」という学部があって、大学院にそれに対応する「異文化コミュニケーション研究科」という研究科があるという構造です。

独立研究科

独立研究科とは、上記の「学部を持つ大学院」とは異なり、その研究科に対応する学部を持たない、独立した研究科のことを指します。

専門職大学院

高い専門性が必要となる職種に就く人材を育成するための大学院です。
経営大学院(MBA)、技術経営大学院(MOT)、法科大学院、教職大学院、会計大学院などが、この専門職大学院にあたります。
修業年限は2年が一般的で、修了すると、修士の学位が与えられます。
ただし、いわゆるロースクールと呼ばれる法科大学院は法律家の育成を目的としており、他の専門職大学院とは異なり、3年の修業年限となっています。

大学院大学

学部を持たず、大学院だけが置かれている大学です。
大学院大学は「独立大学院」や「独立大学院大学」などと呼ばれることもあります。
以下の記事に関連した解説がありますので、参考にしてみてください。

大学院大学について解説!大学院?それとも大学?違いを解説 

自分に合った大学院の探し方

では、自分に合った大学院は、どのように探せばいいのでしょうか。
考え方としては、前述のとおり、自分がどのような学びをしたいか、将来どうなりたいのか、どう学びを役立てたいのかなど、自分の目的を明確にすることが大事になります。

ただし、自分に合った大学院を探しているうちに、目的が固まってきたり、考えが深まってくるケースもありますので、どんな大学院があるのか、ひとまずいろいろと調べてみるのも有効です。
自分一人でいろいろ考えるのは不安な場合は、社会人の大学院進学をサポートする民間のエージェントなどもありますので、そうしたところにあたってみるのもいいでしょう。
ここでは一般的な探し方や選び方をお伝えします。 

インターネットを使って探す

どのような大学院があるのか、具体的に探すにはインターネットを使うのが便利です。
以下では、大学院を探す際に役に立つ、代表的なサイトを紹介します。

マナパス

文部科学省の「社会人の学びの情報アクセス改善に向けた実践研究」事業の一環として開設されている、社会人の学びを応援するためのポータルサイトです。
「学ぶ場所・学校種別・課程・通学/通信・その他条件」などの項目が挙げられており、自分の希望をチェックするとそれに当てはまる教育機関が検索されます。
教育訓練給付制度の対象講座であるかどうかなどもすぐにわかります。

参考:マナパス 

大学ポートレート

国公私立の大学・短期大学1,000校以上が参加する、教育情報を公表するサイトです。
大学院を含む大学・短期大学ごとに、「教育上の目的等・入試・進路・教員・キャンパス・学部・研究科等の特色・教育課程(カリキュラム)・学費・奨学金等・学生」の情報が掲載されています。
大学院を検索できるサイトは、ほかにも民間企業が開設・運営しているものもありますので、それらを利用するのもいいと思います。

参考:大学ポートレート 

進学説明会に参加する

インターネットで気になる大学院が見つかっても、すぐに「この大学院にしよう!」と決めるのはあまりお勧めしません。
多くの大学院では、大学院進学を考えているという人向けに、進学説明会を行っています。
公開討論会やパネルディスカッションなどの名前で説明会を兼ねているところもあります。

こうした説明会は実際の先生や大学院生によって運営されることも多く、大学院の内容や雰囲気がわかるかもしれません。
また、研究分野の説明などがなされるとともに、質疑応答の時間が設けられることが多いです。
とてもよい機会ですので、疑問や不安なことがあれば、積極的に質問するようにしましょう。
日程などは各大学院のサイトで告知されていますので、時間が許せば、ぜひ参加しましょう。

研究室訪問

大学院を受験する前に、関心のある研究領域の先生を訪問して質問・相談することを研究室訪問といいます。

上述の進学説明会でも大学院のおよその雰囲気がつかめますが、実際のところ、同じ大学院の中でも、研究科や研究室(教授)によってその雰囲気は大きく異なることも少なくありません。

研究室というのは、実はかなり閉じられた空間です。
研究室の雰囲気が肌に合うか合わないかが、後々大きな問題になることもあります。
特に、「この先生から学びたい」という強い希望がある場合などは、可能であれば受験前に研究室訪問をしたいところです。
ただし、研究室訪問が可能かどうかは研究室の先生、あるいは大学によって違ってきますので、事前に確認してみましょう。
以下の記事では、研究室訪問について詳細が述べられていますので、参考にしてみてください。

研究室訪問で聞くべき7つの質問

説明会などに行けない場合も、実際に大学院に足を運んでみる

時間の都合で、進学説明会への参加や研究室訪問ができない場合もあるかと思います。
そのような時でも、とにかく一度は、出願前に実際に大学に足を運んでみるのが大事です。
駅から遠い、坂道がきつい、大学の建物やトイレなどの設備が古い、大学周辺に何もない、などなど、実際に訪れてみなければわからないことがたくさんあるからです。

大学院に進学するにあたり特に注意すべき点

社会人が大学院に通う際に、特に注意しておくべき点があります。
東京大学が2010年にまとめた「大学教育に関する職業人調査 第1次報告書」によると、社会人が大学院に進む際に遭遇する障害として、「勤務時間が長くて十分な時間がない」、「費用が高すぎる」、「職場の理解を得られない」という回答が多く見られました。
こうした障害にどう対応していくか、あらかじめ十分考えておくことが重要です。
ここからは、考えられる注意点について、以下、具体的に見ていきましょう。

参考:東京大学大学院教育学研究科大学経営・政策経営センター「大学教育に関する職業人調査 第1次報告書

費用はまかなえるか

現在の収入、あるいは預貯金などの資産をきちんと把握し、1年・2年といった期間にかかる学費などが本当に無理なくまかなえるかを計算しておくことが非常に重要になります。
家族がいる場合は、大学院に通うことによって、生活費を圧迫するようなことがないか、慎重に検討しなければなりません。

注意すべき点としては、入学金や学費以外の出費も想定しておく必要があります。
筆者もそうでしたが、書籍代、通学にかかる交通費、研究・調査に伴う交通費、文献のコピー代などは本当にあなどれません。
特に書籍代は、専門書のため1冊数千円はかかり、授業や研究内容によって何十冊も必要になることもあります。
また大学院ともなると、研究科によっては学会への参加が強く求められる場合もあり、学会の年会費、学会参加のために交通費や宿泊代も考慮しなくてはならなくなります。

仕事と両立可能か

もし仕事をしながら大学院へ通うのであれば、大きな課題となるのが、時間の調整でしょう。
全く残業がなく、毎日定刻に終了できるような仕事だといいのですが、そうではなく残業が多い仕事だと、夜の授業であってもなかなか大学院に行けないという事態が起きることが十分に考えられます。

家族の理解を得られるか

家族がいる場合、その理解を得るために、しっかりと説明をしておくことが大切になります。
「どうして大学院に行きたいのか、身につくスキルは何か、自分が今している仕事がどう変わるか、収入は増えるのか」、そしてそれによって家族がどう幸せになるのかを説明しておくのが大事です。
上述のように、大学院を修了するまで、多くのお金と時間がかかりますから、その分、ほかの部分に影響が出ることになります。
万が一、生活を圧迫すれば、生活様式を変える必要が出てきます。

家事や子育てといった大変な作業を、パートナーに頼りっきりになってしまうかもしれません。
不公平感から喧嘩になる恐れもあります。
また、家族で余暇を楽しむ時間が減ってしまうかもしれません。

最初は「大丈夫、大丈夫」と軽く家族に言っていても、後で大変なことになる可能性もあります。
冷静に、慎重に計画を練り、根拠とともに家族に事前に丁寧に説明し、理解を得ることが大事です。
その計画が仮に破綻してしまった場合についても、どう対処するかを事前に説明できれば、説得力が増すと思います。

上司の理解や許可はどうするか

企業や団体に勤めながら大学院に通う場合、上司や会社に事前に報告しておいた方がいいのでしょうか。
国内の上場企業、中小規模の法人、地方自治体などから無作為に選んだ5,635の機関を対象にした「社会人の大学等における学び直しの実態把握に関する調査研究」によると、「自社の従業員が大学等で学ぶことを認めているか」という質問に対し、「特に定めていない(67.8%)」、「原則認めている(10.8%)」、「原則認めていない(11.1%)」、「上司の許可があれば認めている(7.9%)」という回答になっています。
「原則認めていない」と回答した主な理由は、「本業に支障をきたすため」、「教育内容が実践的ではなく現在の業務に生かせないため」が挙げられています。
ご自身の職場が在職しながら大学院へ進学することを認めているかどうかを知るためにも、まずは会社の総務課や人事課に確認するのがいいでしょう。
また、もし認められている場合でも、残業への対応など仕事への懸念がある場合は上司に相談するのがいいでしょう。

参考:イノベーション・デザイン&テクノロジーズ株式会社(2016)「社会人の大学等における学び直しの実態把握に関する調査研究」<文部科学省:先導的大学改革推進委託事業>

まとめ

この記事では、社会人が大学院に行くための探し方や注意点を紹介いたしました。

  • まずは働きながら大学院に通う目的と意義を明確にする
  • インターネットや各大学の説明会に参加し、情報を集める。可能であれば、研究室訪問をする。
  • 研究室訪問ができない場合でも、実際に大学院に足を運んでみる
  • 修了までにかかる費用・仕事との両立・家族からの理解・職場への相談は注意すべきポイント

人生100年時代と言われる現在、「学校教育からいったん離れて社会に出た後も、それぞれの人の必要なタイミングで再び教育を受け、仕事と教育を繰り返す」リカレント教育に注目が集まっています。
この記事が、大学院進学を考えている社会人の皆様の役に立ちましたら幸いです。

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