近年、多くの学生が大学に進学するようになったなか、将来の職業の一つとして大学教授を目指す人も多くなりつつあります。
そこで今回は、大学教授について以下の内容でまとめました。
・大学教授になるための段階とは
・大学教授の仕事内容
・大学教授になれる確率は低い
・大学教授の平均年収
・大学教授になるために大学院生のうちにやっておくべきこと
博士課程に進むか迷っている、大学教授を目指しているが将来が不安だという人は、ぜひ記事の内容を参考にして頂ければと思います。
大学教授になるための段階とは
大学教授になるためには、それに準ずる職務を経験することが求められます。
一般的に、大学の職務は次のような順序で階級が決まっています。
- 助手
- 助教
- 講師
- 准教授
- 教授
それぞれの職務について詳しく紹介します。
助手
大学における助手とは、一般的に教授および助教の職務を助けることを職務としている職員を指します。2007年の学校教育法の一部改正により旧来の「助手」は、自ら教育研究を行う「助教」と研究の補助などを主な業務とする「助手」に分化されました。
修士課程を修了し、博士課程に進んだ学生が研究室の事情でスタッフとして雇われる形となると、「助手」のポストに就くことになります。
助教
助教は、学生に対する研究指導、自らの研究に従事する職員のことを指します。現行の学校教育法では、教授、准教授、講師の次の階級に位置する階級です。
博士課程修了と同時に助教に就く人もいれば、ポスドクを数年務めてから助教のポストに就くなどさまざまです。
助教は助手と異なり、教授や准教授の研究、講義の補佐をする義務は無く、講義を行える専任教員の一人としてカウントされるようになります。しかし、理系の一部の学問分野では講義を担当できない大学もあります。
講師
大学における講師は、教授、准教授に準ずる職務です。一般的には助教が昇進して講師となります。講師は教育や研究事情に応じて、教授の職務を助ける場合もありますが、講座制を取る大学が少なくなっている今日では、研究指導や自らの研究に従事することが職務のメインとなっています。
講師は一般的に年齢に幅がある職務であるため、具体的な年収を示すのは難しいですが、だいたい助教の年収₊50~100万円程度といわれています。大学によって多少の差はあるようです。
准教授
准教授は、教授に次ぐ教員の職務です。2007年以前は助教と呼ばれていましたが、学校教育法の一部改正により、助教授に替わる職位として定められました。准教授は、助教や講師を経て昇進することで就ける職務です。
准教授の年収は、令和6年の労働厚生省 賃金構造基本統計調査によると、所定内給与額が54万5,400円、年間賞与その他特別給与額が221万8,900円、年収に換算すると平均で876万円であるとわかります。ただ、この数字はあくまでも平均年収なので、国公立大学、私立大学で多少の誤差があります。准教授ともなると大学内部でのポストの他に招待講演などの講演料なども入るようになるため、プラスαの手当がつくのが一般的です。
教授
教授は、教育機関や研究機関における指導的な立場にある者の職階を指します。教授となるためには、たいていの場合博士の学位を取得していることが必須要件となっており、加えて研究上での業績の有無が重要です。
教授ともなると、研究科長や学部長などの大学内のポストに就任するようにもなります。順調に出世すると、最終的には学長に就任するケースも珍しくありません。
大学教授の仕事内容
大学教授の仕事内容とはどのような職務があるのでしょうか。仕事内容に分けてご紹介します。
研究
大学教授の仕事といえば、研究です。多くの場合、研究室には学部、修士、博士いずれかの学生が所属しており、実験の多くは学生が行います。
その総指揮を執っているのが教授になります。研究方針や研究のアドバイスなど、一般的な会社の管理職の様な立ち回りをしています。また、科研費などを受給するための書類の作成、研究報告、研究費の管理等も大学教授が行うことが多いです。
積極的に学会に参加し、自分の研究を発表していく必要もあります。研究成果を論文にまとめたり、英語での口頭発表なども実績として積み重ねていく必要があります。
授業(講義)
大学教授の仕事内容として一番に思い浮かぶのは、大学の講義ではないでしょうか。大学の講義は、教授が自身の専門分野を担当することが多いですが、稀なケースで未経験の分野の講義を任される場合もあるようです。
招待講師として他大学で講義を受け持つ場合や講演会での講義などをする場合もあります。その際は、非常勤講師として他大学に行って講義を行うケースも少なくありません。
大学内のポストでの職務
教授の場合、大学内でのポストの職務に就く場合があります。例えば研究科長や専攻長、学部長などです。最上級だと学長に就任する場合もあります。これらの職務に就くと、研究室内だけでなく、より広い範囲を管理しなければなりません。
大学教授の平均年収
大学教授の平均年収は、国公立大学で1,000~1,200万円、私立大学で1,000~1,500万円です。基本給が高いうえに、有名な教授ともなると招待講演による講演料や著書の出版による印税、大学内でのポスト手当なども多く入るため、大学教授の年収は一気に跳ね上がります。
医学部の大学教授の年収は、大学教授の平均年収よりも高い傾向にあります。これは本給以外の手当が多く付くことが理由のようです。
また、薬学部の大学教授の平均年収は1,300~1,400万円とされており、こちらも一般の大学教授の平均年収よりは高い水準となっているようです。大学教授や准教授クラスになると1000万円プレイヤーがグッと近づくことになります。
日本の大学教授の年収は海外の大学教授の年収と同程度のようですが、海外の名門大学の大学教授と比べると日本の大学教授の年収は低い傾向にあります。
また、大学教授の定年は65歳までのところが多く、定年まで高給を得られるでしょう。
参照:大学病院の教授、本給は“公務員並み”でも年収2000万円超えのカラクリ
大学教授になれる確率は低い
ただでさえ優秀な人材が集まる大学のなかでも、教授職は限られた人たちだけがたどり着ける狭き門です。なぜ大学教授になれる確率がこれほど低いのかという理由について詳しくみていきましょう。
募集自体が少ない狭き門
大学教授になるためには、まず大学教員の第一歩として助教になる必要があります。そのためには、大学教員の採用に勝ち残らなくてはなりません。
しかし、大学教員は毎年募集しているわけではありません。しかも、自分がやりたい研究を行う研究室を構えている教授が人員を募集していないといけません。
また、募集しているポジションの対象者が現在の准教授に限られている場合があるなど、募集要件を満たそうとすると非常に難しいこと、さらに、大学教員として採用される機会も少ないことから、大学教授になれる確率は非常に低いとされています。
自分が博士課程で所属していた研究室でそのまま助教になるケースもあるようですが、教授からの信頼を勝ち取る必要があるなど、現実はそう簡単ではないようです。
ポストの空き次第
大学のポストが空いているかどうかも重要なポイントです。もちろん研究成果や論文の投稿本数も重要となりますが、ポストが空いていないことには大学の教員にすらなれないということです。
大学が設置する研究室には数の限界があります。そのため、退官する教員が居ない限り、ポストに空きが生まれません。自分の専門分野のポストが空いているのを見つけるのは至難の業かもしれません。
社会人から目指せるのか
社会人からでも大学教授を目指すことは可能です。大学教授になるためには、博士号を取得することが必須項目です。一方、芸術分野やスポーツ分野等では顕著な業績を残した人物が博士号を持たずに教授職に就けるケースも存在します。
修士課程を修了後、一般企業に就職した場合でも、社会人ドクターとして博士号を取得することは可能です。理系大学院を修了し就職した場合、企業側が社会人ドクターを勧める場合もあります。
社会人として博士号を取得し、大学教員として採用されることができれば、社会人からでも大学教授になることは可能です。一味違った経験値を持っていることからも、貴重な存在として一般企業出身の大学教授は重宝されるかもしれません。
大学教授になるには「大学教員」として経験を積むのが一般的
大学教授を目指すには、博士号の取得だけでは十分ではありません。現実的には、まず助教や講師などの「大学教員」としてのキャリアを積むのが一般的なルートです。
大学教員として採用される際には、「研究力」「教育力」「組織貢献力」といったさまざまな実績が求められます。単に研究成果があるだけでなく、大学での教育や運営に積極的に関わってきた実績や姿勢も重要視されると覚えておきましょう。
特に、大学教員として採用されるためには、次のような要素が評価される傾向にあります。
大学教員として採用されるためのポイント ・学術論文の数と質(掲載雑誌の知名度など) ・学会発表や国際共同研究の実績 ・学生への指導歴や講義経験 ・科研費などの競争的資金の獲得実績 ・委員会活動やカリキュラム作成など、大学運営への関与
このような経験は、博士課程在学中や修了後にポスドクや助教として少しずつ積み上げていく必要があります。特に、助教や講師といったポストは、教授へのキャリアパス上の重要な段階であり、採用時には「即戦力として大学に貢献できるか」も重要視されるのです。
近年では大学側も教育の質を重視しており、「教える力」や「学生との関わり方」も重要な評価基準になっています。単に研究成果だけでなく、学生への貢献や学内でのチームワークについても問われるでしょう。このように、大学教授になるには「研究者」としての実力だけでなく、「教育者」や「組織の一員」としてのバランスの取れた資質が求められています。
大学教員になる前の「ポスドク」や「非常勤講師」としての過ごし方
「ポスドク(博士研究員)」や「非常勤講師」として一定期間を過ごし、大学教員として採用されるためには、どのようなポイントに気をつけて過ごせばよいのでしょうか?
特に気をつけたいポイントを詳しく解説します。
研究成果と自立性を高める
ポスドク期間は、自身の専門性をさらに深め、研究者としての自立性を高めるために大切時期です。単著の論文や代表者としての科研費申請、国際学会での発表など、他者のサポート役ではなく「自分の名前」で研究成果を残すように意識しましょう。
特に、大学教員の採用においては、「独立した研究テーマを持っているか」「今後も継続的に成果を出せるか」というポイントが重視されます。応募書類や面接の際も、研究テーマの意義や計画性を自分の言葉で伝えられるように準備しておくことが大切です。
また、分野を越えた共同研究や産学連携にも積極的に参加することで、他分野との接点や視野の広がりについてもアピールできるでしょう。
「教える力」を具体的に示す
非常勤講師として授業や講義を担当する経験は、大きなアピール材料になります。ただ単に授業をこなすだけではなく、学生の理解を深めるための工夫や講義資料の準備、学生たちに向けたフィードバックへの対応など、教える側としての姿勢も重要な評価ポイントとなるでしょう。
特に近年では、教育の質を高めるために、学生アンケートの結果や講義後の反省・改善記録などを評価する大学も増えてきています。可能な限り、授業や講義内容をブラッシュアップし、翌年度以降の改善提案をまとめたり、オープン教材を作成したりするなど、教育に対する主体的な取り組み姿勢をアピールすることが高い評価につながるでしょう。
将来を見据えた人脈なネットワークを構築する
大学教員のポストは公募制ではあるものの、常に公開されているわけではありません。欠員や新設に応じたタイミングで採用されるため、なるべく早いタイミングで情報を把握できるように、日頃からの情報収集が欠かせません。
その際に大きな役割を果たすのが、「人脈」や「ネットワーク」の存在です。指導教員、ポスドク先のPI(Principal Investigator)、共同研究者、学会や研究会でのつながりなど、日頃から信頼関係を築いておくことで、非公開の公募情報や内部事情を把握できるチャンスが広がるでしょう。
また、「この人と一緒に働きたい」と思ってもらえるかどうかは、過去の研究成果だけでなく、誠実な対応や丁寧な仕事ぶりによって大きく左右されるケースも少なくありません。大学教員を目指すためには、実績と同様に「信頼される関係づくり」が将来のキャリア形成につながる可能性もあると覚えておきましょう。
実績と評価を可視化させる
ポスドクや非常勤講師としての活動は、単に「どこに所属していたか」だけでは評価されにくくなってきています。ポスドクや非常勤講師の期間を、単なる「空白期間」と判断されるケースも少なくありません。
そのため、大学教員への応募する際は、ポスドクや非常勤講師としての活動期間中に何をしてきたのか、どのような成果を残したのかを、具体的に示すことが大切です。
たとえば、次のポイントをポートフォリオ化しておくと、いざという時に慌てずにアピールできるでしょう。
- 論文数
- 被引用数
- 学会発表回数
- 担当科目や授業改善の記録
- アウトリーチ活動や講演歴
採用選考では、これらの実績を「応募書類に落とし込める形で整理してあるか」もチェックされます。日々の活動を振り返りながら、記録をつけるように習慣化してください。
大学教授になるために大学院生のうちから出来ること
これまでも説明してきた通り、大学教授になるのは狭き門であるといえます。
そこでここでは大学教授になるために大学院生のうちにやっておくべきことを紹介します。
教員免許は必要ない
高校までの教員と異なり、大学の教員になるために教員免許は必要ありません。しかし、教授になるには一般的には大学院博士課程を修了し、博士号を取得していることが前提とされています。
博士号を取得し自身の専門を深める
一般的に大学教授になるために教員免許は必要ありませんが、博士号を取得していることが募集条件にあることが多いです。
博士号を取得するためには自身の興味のある学部や研究室への配属を目指すことが第一に必要になります。
博士号の取得については以下の記事を参考にしてください。
進路を選択する際は「どの教授の研究室に所属するか」がとても大切なポイントです。なぜなら、専門分野の第一線で活躍する教授、学会の有力者が在籍する大学・研究室に所属することで最先端の研究に携われるからです。また、同様に活躍する人たちと人脈を築くことも可能となるでしょう。また、より専門的な研究に取り組むために修士課程や博士課程で他大学院の研究室に所属する人もいます。
まずは、自分が専門としたい分野についてどのような研究室があるか調べてみましょう。
大学院進学については以下の記事を参考にしてください。
大学教授になるために必要な資質とは
ここでは、大学教授になるために必要な資質について詳しくみていきましょう。
コツコツと研究に取り組む力
研究では結果が出るまでに数十年以上かかることもあり、長期的なスパンでコツコツと結果を積み重ねる取り組みが求められます。そのなかで、仮説を立てて検証し、成果を論文にまとめることを繰り返すことで自分の研究実績を作っていきます。
思うような結果が出なくてもあきらめずに次の一手を模索する姿勢が大切です。
独自の研究テーマを発案する力
多くの人が取り組んでいる研究テーマや、すでに異なる人が高い成果を上げている分野では、どうしても希少性が薄れてしまい、高い評価を得にくくなる恐れがあります。そのため、これまでにない独創的な視点や新たな切り口からアプローチする研究テーマが求められる場面も少なくありません。独自の研究テーマを発案する力が求められるでしょう。
コミュニケーション能力
大学教授には、学生の指導だけでなく、学会への参加や教授同士のミーティングなど、さまざまな業務があります。また、研究予算を獲得するためには、わかりやすく説得力のあるプレゼンテーション力も求められます。したがって、たとえ優れた研究成果があっても、コミュニケーション能力が著しく低い場合は、学生からも大学側からも十分な評価を得られないリスクが高まるため注意が必要です。
人に教える力
大学教授の仕事には学術研究で成果を上げることに加えて、学生の指導も重要な役割のひとつです。そこで講義やゼミを受け持ち、自らの専門分野の知識や技能を伝えることで、学生の専門性や社会的素養を育む役割を担っています。
いかにわかりやすく教えるか、どうすれば学生の興味を引けるかといった「教育力」も欠かせません。学生一人ひとりの理解度や関心に応じて、伝え方を工夫する力が求められます。
まとめ
- 大学教授になるためには(助手)→助教→講師→准教授を経ることが一般的
- 大学教授は研究や講義だけでなく、学部長などの大学内のポストに関わる業務を担う
- 大学教授の平均年収は1000万円以上
- 大学教授になれる確率は低い
- 大学教授になるために大学院生のうちに博士号の取得に向けて粘り強く研究に取り組むことが大切
この記事が大学教授を目指している人の参考になれば幸いです。






