ホワイトハッカーとは、コンピュータやシステムに関する知識を善用する目的で使う人々のことです。
ホワイトハッカーは資格がなければ、就くことができない職業ではありません。
しかし、資格がないために、ホワイトハッカーになる方法も一般的にはあまり知られていません。
今回は、ホワイトハッカーの仕事内容から就職事情まで詳しく紹介します。
ホワイトハッカーとは
ホワイトハッカーとは、コンピュータやシステムに関する知識を”善用する”目的で使う人々のことです。反対に、コンピュータやシステムに関する知識を”悪用する”目的で使う人々のことをブラックハッカーといいます。
ハッカーには、「コンピュータや電気回路一般について深い技術的知識を持ち、その知識を利用して技術的な課題を解決する人々」という意味があり、その語頭にホワイトやブラックという言葉が加わることで、それらの技術的知識を善用するか悪用するか、という意味合いが付加されます。
一般的に、ハッカーという言葉単体で使われた場合は、ホワイトハッカーのことを指します。ハッカーが行うことをハッキングといい、本来悪い意味は含まれていません。
また、ブラックハッカーのことを別名「クラッカー」とよぶこともあります。クラッカーが行うコンピュータへの不正アクセスや破壊行為などのサイバー攻撃はクラッキングと呼ばれます。
ホワイトハッカーの仕事内容とは
ホワイトハッカーの仕事は、ブラックハッカーからのサイバー攻撃を未然に防いだり、攻撃されたときに被害を最小限に抑えたりすることです。
近年、ブラックハッカーによるサイバー攻撃が後を絶ちません。国や企業はサイバー攻撃によって、個人情報の漏洩やサーバーダウンなど甚大な被害を被っています。ブラックハッカーのサイバー攻撃から善良な市民の生活を守ることがホワイトハッカーの仕事になります。
ホワイトハッカーの仕事は大きく以下の3つに分かれます。
- セキュリティシステムの企画・提案
- 設計書作成・プログラミング実装
- 運用・保守
以下、それぞれの仕事内容と求められる能力やスキルについて紹介します。
セキュリティシステムの企画・提案
セキュリティシステムの企画・提案は、国や企業に向けて、セキュリティシステムを導入する前に行われます。まず、提案に向けて現状のシステムを調査します。このときに、多くの関係者が関わることとなるため、ホワイトハッカーには優れたコミュニケーション能力も求められます。
設計書作成・プログラミング実装
提案が通ると、実際にシステムを構築していくことになります。設計書作成・プログラミング実装では、あらゆるトラブルの可能性を想定して作業を行う必要があります。
現状のシステムを調査するときも、システムを構築するときも、データベースやネットワーク、セキュリティなどに関する技術的知識が必要不可欠です。
また、それらを実現するためのプログラミングスキルも必要とされています。
もちろん、実装したプログラムが正しく動作するか確認するために、テスト設計を行う必要もあります。ホワイトハッカーには、このような広い視野と高い技術レベルが求められます。
運用・保守
運用・保守の段階では、日夜生み出されるサイバー攻撃の新しい手法に対応するために、継続的に調査を行い、状況に応じてバージョンアップを行います。
テスト設計で漏れていたシステムの不備が発見された場合、ただちに修正を行わなければなりません。
運用・保守には、利用者の声をシステムの修正に反映するためのコミュニケーション能力が必要です。
システムは実際に運用してみなければ分からないことが数多くあります。
操作画面などのUI(ユーザーインターフェース)の使いずらさやシステムの機能に関する懸念点など、利用者が感じた些細な課題を汲み取る力が必要です。
ホワイトハッカーになるには
ホワイトハッカーは資格がなければ就くことができない職業というわけではありません。
しかし、前述の通り、ホワイトハッカーには非常に高度な能力が求められます。
また、資格は必ず取得しなければならないものではありませんが、資格を取得することで、特定のスキルを有していることを証明することができます。
ここではホワイトハッカーとして活躍する上で必要なことを紹介します。
スキルを磨く
ホワイトハッカーになるために必要なスキルには以下のようなものがあります。
- プログラミングスキル
- セキュリティに関する知識
- 英語力
プログラミングスキルは、ホワイトハッカーには欠かせないものです。
プログラミングスキルは、実際に手を動かす中で習得していくものです。
趣味でアプリをつくるなどして、ポートフォリオを充実させましょう。
セキュリティに関する知識も、ホワイトハッカーに求められるスキルの1つです。
ブラックハッカーがクラッキングの際に用いる、ユーザーに損害を与えるプログラミングをマルウェアと呼びます。マルウェアには、コンピュータウイルスだけではなく、ワーム、ボット、スパイウェア、トロイの木馬、キーロガー、マクロウイルス、バックドアなど多くの種類があります。そのため、ホワイトハッカーは、コンピュータウイルスだけではなく、さまざまな手口を頭に入れておかなければなりません。
もちろん、そのための暗号化やファイアウォール、ウイルス対策ソフトなどの技術を理解するためには、基本的なデータベースやネットワークに関する知識が必要不可欠です。また、よいコードを書くためには、データ構造とアルゴリズムを学習する必要もあります。
英語力は、ホワイトハッカーに限らず、すべてのプログラマーに必要なスキルです。
プログラムを記述する際に必要なだけでなく、最新技術に関する情報は英語で書かれていることも多く、バグを直すときにも、英語圏の方のソースコードを参考に修正することがあり、英語を使用する機会が多いです。
資格を取得する
ホワイトハッカーの仕事に役立つ資格には以下のようなものがあります。
これらの資格をもっていることによって、そのスキルを有していることを客観的に証明することができるため、クライアントから一定の信頼を得ることができます。
絶対に持っていなければいけないというわけではありませんが、どれもホワイトハッカーに求められるスキルを有していることを示す資格であるといえるでしょう。
- シスコ技術者認定(株式会社シスコ)
- 情報セキュリティスペシャリスト試験(独立行政法人 情報処理推進機構)
- CompTIA認定資格(CompTIA)
- 情報処理安全確保支援士技術者試験(独立行政法人 情報処理推進機構)
- 情報セキュリティマネジメント試験(独立行政法人 情報処理推進機構)
- 認定ホワイトハッカー(電子商取引コンサルタント国際評議会)
ホワイトハッカーに求められる資質・能力
ホワイトハッカーに求められる資質には以下のようなものがあります。
- 想像力が豊か
- コミュニケーション能力がある
- 正義感が強い
想像力は、ホワイトハッカーに必要な資質です。ブラックハッカーがどのような手段で、サイバー攻撃を行うかを常に先回りして予測する必要があるためです。
コミュニケーション能力は、クライアントを巻き込んで現状のシステムを調査するときや、プログラミング実装を行うときに必要なスキルです。プログラミングはパソコンに向かって一人で進める作業だと思われがちですが、実際はGitHubやSVNなどのバージョン管理システムを利用して、チームで頻繁に話し合いながら進めるものです。コミュニケーション能力は、ホワイトハッカーの仕事に限らず、すべてのチームエンジニアリングにおいて必要な資質ということができます。
正義感は、ホワイトハッカーの仕事を行ううえで、大きなモチベーションになります。ホワイトハッカーの仕事は、ブラックハッカーのサイバー攻撃から善良な市民の生活を守ることです。セキュアなシステムをつくるためには、正義感が必要不可欠です。
ホワイトハッカーの活躍の場
ホワイトハッカーを目指す手段は多々ありますが、今回は以下の3つを紹介します。
それぞれの役割や仕事内容に焦点を当てて紹介していきます。
民間企業に就職する
民間企業でもセキュリティ対策を行う専門の部署に配属されることで、ホワイトハッカーとしての仕事を行うことができます。
特にホワイトハッカーの需要が高い業界には以下のようなものがあります。
- コンサルティング業界
- メーカー業界
- インフラ業界
- 商社
- 金融業界
コンサルティング業界は、クライアント企業の機密情報を取り扱います。これらが流出・漏洩しないようにするために、コンサルティングファームでは、ホワイトハッカーが数多く必要とされています。
メーカー業界は、製造管理システムなどITシステムを使って製品の製造を行っています。そのため、サーバー攻撃によって、生産が停止するリスクなどがあるため、ホワイトハッカーの需要が高まっています。
インフラ業界も同様に、サイバー攻撃によるインフラの停止を防ぐために、ホワイトハッカーが必要とされています。
商社は取引先の情報や商品の情報、価格情報などが流出してしまうと、経営の存続に関わる大きな問題になってしまいます。
また、金融業界も銀行の口座番号やクレジットカード番号などの個人情報が流出・漏洩すれば、顧客からの信用を失い、経営の存続が危ぶまれる事態になりかねません。
このような業界では、特にホワイトハッカーの需要が高まっています。
内閣サイバーセキュリティ対策専門官になる
サイバーセキュリティ対策専門官は、厚生労働省全体のサイバーセキュリティ対策を推進するため、統括サイバーセキュリティ対策官の指揮の下、各種調査や資料作成等の作業を担い、統括サイバーセキュリティ対策官及びサイバーセキュリティ対策官を補佐する仕事です。
応募資格として、IT・セキュリティの分野において、実務経験5年以上が求められるため、まずは一般企業などで実績を積むことが必要です。
参考:厚生労働省「政策統括官付サイバーセキュリティ担当参事官室 サイバーセキュリティ専門官の募集について(任期付職員採用)」
自衛隊指揮通信システム隊に入隊する
防衛省統合幕僚監部では、サイバーセキュリティ関連業務に従事する防衛技官を募集しています。
自衛隊指揮通信システム隊において、サイバーセキュリティ技術に関す る知見を活用し、サイバー攻撃等の脅威から情報システム等の防護、サイバーセキ ュリティに関する人材育成、隊員の能力向上等に係る業務を行います。
参考:防衛省統合幕僚監部「防衛技官(サイバーセキュリティ要員)の選考採用試験 【募集案内】」
まとめ
今回の記事ではホワイトハッカーについて紹介しました。
この記事の重要なポイントをまとめると、以下のようになります。
- ホワイトハッカーの仕事は、ブラックハッカーからのサイバー攻撃を未然に防いだり、攻撃されたときに被害を最小限に抑えること
- ホワイトハッカーは必ずしも資格がなければ就くことができない職業というわけではない
IT業界に興味のある方にとって本記事が少しでも参考になりましたら幸いです。