「ニッチトップ」とは、競合が少ないニッチな業界で高いシェアを持つ企業を指します。
もともと「ニッチ」とは「隙間」を意味する言葉であり、ビジネス用語としては「狭い市場」のことを指します。大手企業が入りにくいピンポイントの層をターゲットにして成り立つビジネスです。
本記事では、「ニッチトップ」とは何かを解説し、ニッチトップ企業やその戦略について詳しく見ていきます。ニッチトップ企業の持つ強みや弱み、さらにはニッチトップ企業への就職を成功させるポイントも分かりやすく紹介するので、これから就活を控える理系学生は、ぜひ参考にしてください。
ニッチトップ企業とは
ニッチトップ企業とは、大手が参入しにくい「すき間市場(ニッチ市場)」で、世界的に高いシェアを持っている企業のことです。
「ニッチ(niche)」とは英語で「隙間」を意味し、ビジネスの文脈では「大手企業が注目しにくい、特定の狭い市場分野」を指します。つまり、規模は大きくなくても、特定の分野においては世界でトップクラスの実績を持つ企業のことをニッチトップ企業といいます。
たとえば、経済産業省が選定している「グローバルニッチトップ企業100選」に選ばれた会社のなかには、人工歯で世界トップシェアを誇る「山八歯材工業株式会社」があります。一般的な知名度は高くなくても、医療や産業分野においては欠かせない存在として、世界中に製品を提供しています。
ニッチトップ企業の特徴は、次のとおりです。
- 特定分野で圧倒的なシェアを持つ
- 独自の技術力や製品力を持つ
- 世界のニーズに応えるグローバル展開をしている
就活生にとっては「知名度ではなく、実力で世界に評価されている会社」に出会えるチャンスです。専門性や独自性を武器にキャリアを築きたい人にとって、魅力的な就職先だといえるでしょう。
参考:経済産業省|2020年版グローバルニッチトップ企業100選
ニッチトップ戦略とは
ニッチトップ戦略とは、大企業が参入しにくい狭い市場でシェアを獲得し、その分野で一番を目指す経営戦略のことです。
大企業は市場規模の大きさを重視するため、一般的には主要な分野に集中する傾向があります。そこであえて小規模な市場に焦点を当て、自社の強みである技術やサービスを活かすことで、競合が少ない環境でも着実にシェアを伸ばすことが可能です。
こうして「特定の分野でトップシェアを持つ」状態を築くことが、ニッチトップ戦略の基本的な考え方です。
ニッチトップ企業の強み
ニッチトップ企業の強みをいくつか項目にまとめました。
市場で高いシェアを占めることができる
1つ目は市場で高いシェアを占めることができることです。
ニッチトップ企業になれば「〇〇のサービスといえばあの会社」というイメージを持ってもらい、競争優位性を発揮できます。
その市場で高いシェアを占めることで、業界の収益の大部分を得ることが可能になり、会社全体として高い売上を出せるでしょう。
価格競争に巻き込まれにくい
2つ目のメリットは価格競争に巻き込まれにくいことです。
ニッチトップ企業はそもそもマイナーな市場でビジネスを展開するので、競合他社が少なくサービスを買ってもらいやすくなります。
競合の数が多いとどうしても価格が安いところに流れてしまいますが、そもそものライバルが少なければ現行の価格をキープしやすくなるでしょう。
ブランド力が強化される
3つ目はブランド力が強化されることです。ニッチトップ企業になれば、その業界において会社の知名度が高くなるのでファンの獲得にもつながります。
またニッチトップ企業はマイナーな商品を持つことが多いため、サービスの独自性が話題となり爆発的な人気を博すケースもよくあります。
ブランド力が強化され、ひいてはファンの育成や企業の知名度向上になるでしょう。
ニッチトップ企業の弱み
ニッチトップにはもちろんデメリットもあります。
ニッチトップの状態が続くとは限らない
ニッチトップはいつまでもその状態が続くとは限りません。
より便利なサービスが出てきたり、社会情勢によって市場が衰退したりすることも考えられます。
一時的に流行るようなサービスは、ずっと売上が続くわけではないので注意が必要です。
ニッチトップになるまでにコストと時間がかかる
ニッチトップはもともと市場にないような商品を出して成立するので、成功するまでに膨大な時間とコストがかかります。
人気がある商品やマーケットの分析をして、差別化できるようなコンセプトを考案するといったように、商品を出すまでの構想を練るのも大変です。
簡単にニッチトップを取れるわけではないので、それまでは成果が出ず苦労することもあるでしょう。
人気が出ると他社が参入してくる
ニッチな業界は、人気が高まると他社が参入してきます。
自社よりも資本力があって知名度の高い企業が参入すると、それまでトップシェアだったのにライバルに抜かれてしまうこともあるでしょう。
ビジネスにおいて仕方ないことではありますが、売上が減らないよう常に新しい試みをしなくてはいけません。
ニッチトップ企業に就職するためには

ニッチトップ企業に就職するためにおすすめなのは、公的機関から「ニッチトップ」として認定された企業に応募することです。
たとえば経済産業省は、ニッチな分野の世界市場でトップシェアを誇る「グローバルニッチトップ企業100選」を選定しています。
2020年版はホームページに公表されており、それぞれの拠点やニッチトップ受賞の要因となったサービスをチェックできます。
認定されたニッチトップ企業の採用枠を狙うことで、就職成功の可能性が高まります。
ただ、これらのニッチトップ企業がすべて新卒枠を募集しているとは限らないので、志望する企業の採用状況をご自身で確認してみてください。
ニッチトップ企業に就職するメリット

ニッチトップに就職すると得られるメリットは2つあります。
挑戦しやすい環境がある
一つ目は、挑戦しやすい環境が整っている点です。
ニッチトップである以上「他の企業が市場を狙ってくる可能性」があります。
ライバルが増えたときや業界の情勢が悪くなったときに、新たな挑戦をしないとニッチトップ企業は生き残れません。
自分から新しいことを提案して仕事を進めていきたい人は、ニッチトップ企業でやりがいを感じられるでしょう。
ニッチトップならではの独自性を学べる
二つ目は、ニッチトップならではの独自性を学べることです。
競合他社とどのように差別化したのか、商品のどこに魅力を感じてもらいニッチトップになったのかといった経緯を知るだけでも、マーケティングの勉強になりますし、ニッチトップのビジネスを展開するためのノウハウを学べるでしょう。
独自性の高いビジネスモデルに興味がある人は、他の企業にはない強みを知ることができるはずです。
ニッチトップ企業への就職を成功させるポイント
ニッチトップ企業は専門性の高い分野で強みを持つ一方、採用枠が限られていることも多く、しっかりとした事前準備が欠かせません。大手企業とは違った視点でアピールが求められるケースもあるので、就活では戦略的に自己PRや志望動機を考える必要があります。
ここでは、ニッチトップ企業への就職を成功させるために押さえておきたいポイントを紹介します。
自分にとっての良い企業の基準や条件を明確にする
「優良企業」と聞いてピンとこないという人も多いはずです。実は、優良企業に絶対的な定義はなく、それは人によって違って当たり前のこと。だからこそ、自分にとって「ここは譲れない」という基準や条件をしっかり持つことが大切です。
たとえば、「働きがい」「安定性」「キャリアを伸ばせる環境」「社風との相性」など、学生によって重視したい項目は異なります。まずは自分自身と向き合って、「自分にとっての優良企業とは?」という問いに明確に答えられるようにしましょう。
こうして自分なりの「企業選びの軸」を明確にしておくことで、企業研究を進める際の迷いが減り、志望動機にも一貫性を持たせられます。あなたが将来の働き方に自信を持てる企業に出会うための第一歩といえるでしょう。
業界や企業、職種を志望した理由を明確にする
志望動機に説得力を持たせるには、「なぜその業界や企業、職種に惹かれたのか」を自分の言葉で分かりやすく伝えることが大切です。
特にニッチトップ企業は知名度が低いこともあります。だからこそ、企業側は「なぜ当社を志望したのか?」という具体的な理由を重視します。
そこで、次のような視点で志望理由を整理してみましょう。
- 興味を持ったきっかけを明確にする
- その業界や企業だからこそ挑戦できることを示す
- 自分の強みや価値観とのつながりを意識する
興味を持ったきっかけを提示するためには、「大学での研究で取り組んだテーマが、この業界の最先端技術とつながっている」「インターンで体験した仕事に心を動かされた」といったように、自分の実体験を起点にすることで、リアルな志望理由に仕上がります。
ニッチな分野で強みを持つ企業を志望するなら、「ここだから世の中に貢献できる」「ほかの企業にはない技術や商品だからこそ学びたい」といった企業の特徴と結びつけた志望理由が説得力につながるはずです。
さらに、「根気強さが自分の強みであり、その姿勢が自社開発の地道な技術確立と合っている」「人の健康に貢献したいという思いが、企業の理念と重なる」というように、自分の強みや価値観と企業の特徴や社風と絡み合わせてアピールしましょう。
自分のアピールポイントを明確にしておく
アピールポイントとは、自分の強みや特長を企業に伝えるために大切なものです。
企業は、エントリーシートや面接を通じて、応募者が入社後にどのように活躍するかをイメージしようとしています。そのときに、あなたの強みが企業の求める人物像とマッチしていれば、「この人なら入社後も活躍してくれそうだ」と期待を持ってもらえます。
このように、就活においてアピールポイントは、「あなたが入社したらどんな活躍ができるか」を企業が判断する材料になるため、しっかりと事前準備をしておく必要があります。
アピールポイントを明確にするためのステップは、次のとおりです。
アピールポイントを明確にするためのステップ 1.自己分析で強みを洗い出す 2.企業が求める人材像と結びつける 3.具体的なエピソードで裏付ける
これらのステップを意識してアピールポイントを整理しておけば、エントリーシートや面接での会話がスムーズにできるようになります。
具体的なエピソードを用意しておくと、自分の経験に基づく説明になるため、説得力がぐっと増します。自分の経験をストーリーとして語れるように準備をして、説得力のあるアピールにつなげていきましょう。
企業の社風との相性の良さをアピールする
社風との相性は、企業が学生を評価するうえでとても重要なポイントです。なぜなら、企業は「この学生が自社で長く活躍できるかどうか」を重視しており、価値観や働き方が合っているかを確認したいためです。
社風との相性の良さを伝える際は、次のポイントを意識しましょう。
社風との相性の良さを伝えるポイント ・社風に惹かれた理由を具体的に伝える ・自分の価値観とどのように一致しているかを伝える ・入社後の活躍した姿をイメージする
社風との相性をアピールする際は、漠然とした印象だけでなく、自身の強みや価値観との具体的な接点を示すことが重要です。そうすることで「入社後もこの会社で活躍してくれそうだ」と面接官に思ってもらいやすくなり、内定獲得の可能性を高められるでしょう。
企業の知名度や規模で判断しない
「大手や有名企業だから安心」という基準で企業選びをするのは、あまりおすすめできません。知名度や規模だけで判断してしまうと、自分が本当に力を発揮できる環境や、やりがいを持って働ける会社を見逃してしまう恐れがあるためです。
そもそも「一流企業」には、明確な定義がありません。売上やブランド力、知名度などで評価されることが多いものの、それらの指標にとらわれすぎると、自分の価値観や将来のキャリアに合わない会社を選んでしまうリスクを高めてしまいます。
企業選びをする際に大切なのは、「自分にとっての優良企業の基準」を持って判断することです。たとえば、成長できる環境、挑戦できるフィールド、働きやすさや人間関係など、自分が重視したいポイントを明確にして企業を見極めると、入社後の満足度や定着率も高まります。
つまり、後悔のない就職活動を実現するためには、「有名だから」「規模が大きいから」といった表面的な判断ではなく、「自分に本当に合っているか」という視点を持つことが重要です。
まとめ
今回はニッチトップ企業の強み・弱み・就職するためにしたいことを解説しました。
本文の内容をまとめます。
- ニッチトップとは、小さな市場で高いシェアを持つ企業のこと
- ニッチトップ企業は収益の高さやブランド力、独自性に強みがある
- 一方で市場が衰退する、ライバルが参入してくるなどの懸念もある
- ニッチトップ企業に就職するには、経産省から認定された企業の採用枠を狙うのがおすすめ
- ニッチトップ企業に就職すると挑戦しやすい環境があり、ニッチトップならではのビジネスモデルを学べる
ニッチトップ企業は、大手企業にはない独自のノウハウやマーケティング戦略が蓄積されています。
興味がある人は、経産省の認定企業を中心に新卒採用を行っていないかチェックしてみてください。




