インフラ業界の就職偏差値はどう見る?公的統計で確認する就職実績と若手の待遇

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インフラ業界の就職偏差値を調べても、公的な基準にもとづく数値や順位は確認できません。学校基本調査では、実際に就職した人数を確認できます。応募者数は集計されていないため、この調査から採用倍率を判断することもできません。

また、インフラ業界には電力・ガス、交通、通信、建設が含まれ、就職者数と賃金の集計区分も別です。就職の難しさを一律に示すことはできませんが、系統別の就職実績、学歴構成、若手の給与と労働時間は公的統計で比較できます。

この記事では、就職偏差値だけでは分からないインフラ業界の就職実績と待遇について、4つの系統に分けて解説します。

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1.インフラ業界を一つの就職偏差値では表せない

「インフラ業界」は、複数の産業をまとめた呼び名です。公的統計には同じ名称の産業区分がないため、就職実績や給与を一つの数字では比較できません。

統計では、電気・ガス・熱供給・水道業、運輸業・郵便業、情報通信業、建設業がそれぞれ別の産業として集計されています。この記事では、この4つをエネルギー、交通、通信、建設の系統に分けて比較します。

普段使う呼び名と、数字を引くときの区分の対応は次のとおりです。

普段使う呼び名採用の人数を引くときの区分給与を引くときの区分
電力・ガス電気・ガス・熱供給・水道業電気業・ガス業などの産業中分類
鉄道・航空・道路運輸業・郵便業運輸業・郵便業の産業中分類
通信情報通信業情報通信業の産業中分類
建設建設業総合工事業などの産業中分類

就職者数と給与は、表に示した産業区分で集計されています。志望企業がどの区分に当たるかを確認しておくと、実態に近い就職実績と待遇を参照できます。

出典:文部科学省「令和7年度学校基本調査 卒業後の状況調査 産業別就職者数」

建設業も社会基盤をつくる産業として比較対象に含める

電力・ガス・鉄道・通信では、既存の設備を運転して社会基盤を維持します。建設業は、建物や構造物を設計・施工する産業です。役割は異なりますが、いずれも理系の専門を活かせる進路として比較できます。

建設業を候補に含めるかは、社会基盤を運営する仕事と、つくる仕事のどちらに関心があるかで判断できます。就職者数や給与を比較するときは、建設業をほかの3系統とは別の産業として扱いましょう。

理系の技術職が受け持つ仕事は系統ごとに扱う設備で分かれる

4つの系統で理系の技術職が主に関わる設備と仕事は、以下のとおりです。

系統主に関わる設備技術職が受け持つ主な仕事
エネルギー発電所やガスの製造所、送電線・変電所、ガス導管発電所やガスの製造所の設備の運転と保守、送電線・変電所・ガス導管の工事の管理と保守、電気の需要と供給を合わせて流れを制御する系統運用(給電)
交通線路、車両、電力・信号・通信の設備、航空機の機体線路の保守(保線)、車両の検査・整備と設計、電力・信号・通信の設備の保守、機体の整備の計画と品質の管理
通信通信ネットワーク、基地局ネットワークや基地局の設計と構築、監視や障害への対応を含む運用保守
建設建物、構造物工事の品質・費用・工程・安全を現場で管理する施工管理、建物や構造物の設計

電気や機械を学んだ人が関わる設備は、電力なら送電や変電、鉄道なら車両や信号、通信なら通信網というように、系統によって変わります。同じ専攻の知識を生かす仕事でも、向き合う設備が違えば、日々受け持つ内容は同じではありません。系統を1つ決めることは、どの設備に関わる仕事を選ぶかを決めることでもあります。

志望企業の系統は主な事業から確認する

会社が4つの系統のどれに当たるかは、主に営む事業から判断します。上場企業の場合は、金融庁のEDINETで有価証券報告書を検索し、「事業の内容」から主な事業を確認できます。

確認した事業を、電気・ガス・熱供給・水道業、運輸業・郵便業、情報通信業、建設業のいずれかに当てはめてください。建設工事の設計や監理、建設コンサルタントを主に営む会社は、建設業ではなく学術研究・専門・技術サービス業に数えられる点に注意が必要です。系統を特定すると、参照する就職者数と給与の区分が決まります。

出典:総務省「日本標準産業分類(令和5年7月改定) 建設業」

4つの系統に入る会社を主な事業で当てはめた例

次の表は、2025年4月1日から2026年3月31日までの事業年度の有価証券報告書で、事業の内容に書かれた主な事業がその系統に当たる会社を、系統ごとに2社ずつ当てはめた例です。

系統会社主な事業
エネルギー東京瓦斯都市ガスの製造・販売や電力などのエネルギー・ソリューション、ネットワークほか
エネルギー東北電力火力・原子力及び再生可能エネルギーによる電力の安定的な供給ほか
交通日本航空フルサービスキャリア事業、LCC事業ほか
交通東日本旅客鉄道運輸事業、流通・サービス事業、不動産・ホテル事業、その他
通信KDDI通信を中心とするパーソナル事業、ビジネス事業
通信ソフトバンクコンシューマ事業(モバイル、ブロードバンド、電力の各サービス)、エンタープライズ事業ほか
建設鹿島建設土木事業、建築事業、開発事業等
建設大成建設土木事業、建築事業及び開発事業

ソフトバンクは通信のほかに電力のサービスを、東日本旅客鉄道は運輸のほかに流通・サービスや不動産・ホテルの事業を手がけています。1つの系統に収まらない会社も少なくありません。系統への当てはめには主な事業を使います。志望する会社も同じように1社ずつ主な事業を確かめると、4つの系統のどこに置くかが決まります。

出典:東京瓦斯株式会社「有価証券報告書 第226期(自 2025年4月1日 至 2026年3月31日)」
出典:東北電力株式会社「有価証券報告書 第102期(自 2025年4月1日 至 2026年3月31日)」
出典:日本航空株式会社「有価証券報告書 第77期(自 2025年4月1日 至 2026年3月31日)」
出典:東日本旅客鉄道株式会社「有価証券報告書 第39期(自 2025年4月1日 至 2026年3月31日)」
出典:KDDI株式会社「有価証券報告書 第42期(自 2025年4月1日 至 2026年3月31日)」
出典:ソフトバンク株式会社「有価証券報告書 第40期(自 2025年4月1日 至 2026年3月31日)」
出典:鹿島建設株式会社「有価証券報告書 第129期(自 2025年4月1日 至 2026年3月31日)」
出典:大成建設株式会社「有価証券報告書 第166期(自 2025年4月1日 至 2026年3月31日)」

電力とガスを分けた就職者数は学校基本調査では確認できない

学校基本調査では、電力会社とガス会社の就職者数を分けて確認できません。産業別就職者数の内訳が掲載されているのは、製造業や公務など一部の産業に限られます。

建設業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、運輸業・郵便業には内訳がなく、通信事業者だけの人数も取り出せません。一方、給与は電気業やガス業などの産業中分類で集計されています。就職実績は系統単位、給与は産業中分類の単位で比較する必要があります。

出典:文部科学省「令和7年度学校基本調査 卒業後の状況調査 産業別就職者数」
出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業中分類 第1表 年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(F 電気・ガス・熱供給・水道業)」

2.理系の就職者数は系統によって大きく異なる

4つの系統へ実際に就職した人数は、出身分野別に比較できます。学校基本調査では卒業した学科の系統も集計されているため、工学系の就職者数を系統ごとに確認できます。ただし、この人数は採用予定数や応募者数ではありません。

令和7年3月に卒業・修了して就職した工学系の人数は、次のとおりです。

系統学部の工学系修士の工学系博士の工学系
電力・ガス(電気・ガス・熱供給・水道業)675人820人26人
鉄道・航空・道路(運輸業・郵便業)1,083人618人11人
通信(情報通信業)10,700人4,998人211人
建設(建設業)8,181人1,942人83人

学部では情報通信業が10,700人、建設業が8,181人である一方、電気・ガス・熱供給・水道業は675人です。建設業と電気・ガス・熱供給・水道業では、就職者数に約12倍の差があります。同じインフラ業界でも、就職実績の規模は系統によって大きく異なります。

ただし、情報通信業は大分類であり、通信事業者だけを取り出した人数ではありません。博士は4つの系統とも二桁から三桁にとどまるため、人数の差から系統全体の傾向を判断することはできません。

出典:文部科学省「令和7年度学校基本調査 卒業後の状況調査 産業別就職者数」
出典:文部科学省「令和7年度学校基本調査 卒業後の状況調査 修士課程の産業別就職者数」
出典:文部科学省「令和7年度学校基本調査 卒業後の状況調査 博士課程の産業別就職者数」

就職者数から採用倍率は判断できない

就職者数が多くても、選考難易度が低いとは判断できません。就職者数はその年に実際に就職した人を数えた値で、応募者数は集計されていないためです。応募者数が分からない以上、人数の差から採用倍率は算出できません。

この人数から、各系統へ就職した理系学生の実績を確認できます。志望先を検討するときの規模感として使い、選考の通りやすさとは分けて考える必要があります。

理学系の学部卒は情報通信業への就職者が多い

理学系の学部卒では、情報通信業へ就職した人が2,049人でした。ほかの3系統は92人から235人で、就職者数の分布が工学系とは異なります。ここでは学部卒の実績を扱っており、修士以降の内訳は含みません。

工学系では建設業にも一定数が就職していますが、理学系では情報通信業の人数が多くなっています。出身分野によって、就職実績の多い系統は異なります。

出典:文部科学省「令和7年度学校基本調査 卒業後の状況調査 産業別就職者数」

3.学部と修士では就職者の構成が異なる

学部と修士では、各系統へ就職した人の出身分野が異なります。学部の就職者には工学系以外の分野も広く含まれますが、修士では4系統すべてで工学系が過半数です。ただし、この構成は採用条件や選考上の有利・不利を示すものではありません。

学部では幅広い分野を含み修士では工学系が過半数になる

系統ごとに就職した人のうち、工学系の学科を出た人が占める割合は次のとおりです。

系統学部の工学系の割合修士の工学系の割合
電力・ガス(電気・ガス・熱供給・水道業)24.9%69.6%
鉄道・航空・道路(運輸業・郵便業)8.1%58.1%
通信(情報通信業)20.3%54.9%
建設(建設業)37.9%74.1%

学部で就職した人に占める工学系の割合は8.1%から37.9%で、系統によっては1割を切ります。修士では54.9%から74.1%へ上がり、4つの系統とも工学系が過半数です。

割合の分母は、学部と修士それぞれの就職者数です。両者は別の集計なので、割合を引き算して採用上の差とみなすことはできません。この割合は、学部では幅広い分野を含み、修士では工学系が中心になるという構成の違いを示します。

出典:文部科学省「令和7年度学校基本調査 卒業後の状況調査 産業別就職者数」
出典:文部科学省「令和7年度学校基本調査 卒業後の状況調査 修士課程の産業別就職者数」

電気とガスの系統では工学系の修士就職者が学部を上回る

電気・ガス・熱供給・水道業では、工学系の修士就職者820人が学部の675人を上回っています。修士と学部の比は1.21倍です。ほかの3系統は0.24倍から0.57倍で、この系統だけが1倍を超えました。学部と修士は別々の集計表から取っているため、同じ人を追いかけた数字ではありません。

この比は、採用枠や選考の通りやすさを示すものではありません。電気・ガス・熱供給・水道業では、工学系の就職者数が学部より修士で多かったという実績を表しています。

出典:文部科学省「令和7年度学校基本調査 卒業後の状況調査 産業別就職者数」
出典:文部科学省「令和7年度学校基本調査 卒業後の状況調査 修士課程の産業別就職者数」

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4.若手在籍者の学歴構成も系統によって異なる

賃金構造基本統計調査では、在籍している労働者数を学歴別に確認できます。学校基本調査の就職者数とは母集団が異なり、中途採用者や離職者も反映された結果です。

25歳から29歳の民営事業所・男女計・企業規模計で見ると、電気業は大学院修了が265、大学卒が290です。労働者数は十人を単位とした値なので、人数では2,650人と2,900人にあたります。同じ区分の総合工事業は大学院修了281、大学卒3,777で、人数に直すと2,810人と37,770人です。

電気業では大学院修了者が大学卒の約0.9倍で、総合工事業では大学卒の約7%です。若手在籍者の学歴構成は、電気業と総合工事業で大きく異なります。ただし、在籍者数から新卒採用の比率や選考難易度は判断できません。電気業と総合工事業は産業中分類であり、大分類で集計された就職者数とも対象が異なります。

出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業中分類 第1表 年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(F 電気・ガス・熱供給・水道業)」
出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業中分類 第1表 年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(D 建設業)」

5.若手の待遇は月額・賞与・労働時間で比較する

若手の待遇は、月額給与だけでは比較できません。ここでは、きまって支給する現金給与額、年間賞与その他特別給与額、所定内実労働時間数、超過実労働時間数を確認します。同じ学歴と年齢階級にそろえることで、産業による違いの比較が可能です。

きまって支給する現金給与額は残業代を含んだ月額で、残業代を含まない金額は所定内給与額として別に集計されています。年間賞与その他特別給与額は月額ではなく年額です。金額を比べられるのは電気業、ガス業、総合工事業の3つで、運輸業・郵便業と情報通信業の産業中分類別の賃金は今回使う資料の範囲に含まれません。

いずれも令和6年の民営事業所・男女計・企業規模計(10人以上)の値で、年齢階級をそろえて読みましょう。

25歳から29歳の月額差は3つの産業で近い

25歳から29歳のきまって支給する現金給与額を、大学院修了と大学卒に分けると以下のようになります。

産業大学院修了大学卒差
電気業約39.9万円約36.4万円約3.6万円
ガス業約37.8万円約33.5万円約4.3万円
総合工事業約39.4万円約35.7万円約3.7万円

大学院修了の月額は約37.8万円から約39.9万円の範囲にあり、大学卒との差は約3.6万円から約4.3万円です。産業を選び直しても学歴による差の幅はほとんど変わらず、この年齢階級では月額の組み立てが3つの産業で似た形になっています。

月額だけを見ると、3つの産業に大きな違いはありません。なお、きまって支給する現金給与額は残業代を含む月額です。この金額をそのまま12倍しても年収にはなりません。年収に近い金額を比較するには、年間賞与その他特別給与額も加える必要があります。

出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業中分類 第1表 年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(F 電気・ガス・熱供給・水道業)」
出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業中分類 第1表 年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(D 建設業)」

産業による違いは賞与と労働時間にも表れる

大学院修了・30〜34歳の月額、賞与、労働時間は、以下のとおりです。

産業きまって支給する現金給与額年間賞与その他特別給与額所定内実労働時間数超過実労働時間数労働者数
電気業約50.5万円約114.1万円153時間31時間256
ガス業約52.3万円約252.2万円153時間15時間45
総合工事業約47.6万円約185.6万円161時間24時間314

労働者数は十人単位で集計されています。月額は約47.6万円から約52.3万円の範囲です。一方、年間賞与その他特別給与額は約114.1万円から約252.2万円まで差があります。

ガス業と電気業の差は約138.1万円で、年額である賞与のほうに産業の違いが大きく出ている形です。労働時間の組合せも同じではなく、所定内実労働時間数が153時間でそろう電気業とガス業でも、超過は31時間と15時間に分かれます。

ただし、ガス業のこの階級は労働者数が少ないため、この値だけで産業全体の傾向は判断できません。待遇を比べるときは、同じ学歴・年齢階級で月額、賞与、労働時間を確認する必要があります。これらは産業平均であり、個別企業の待遇を示すものではありません。

出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業中分類 第1表 年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(F 電気・ガス・熱供給・水道業)」
出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業中分類 第1表 年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(D 建設業)」

6.インフラ企業を比べる順序は系統の特定から始まる

インフラ企業を比較するときは、最初に主な事業を確認し、エネルギー、交通、通信、建設のどの系統に当たるかを決めます。学校基本調査の就職者数は4系統の大きな単位で集計されますが、賃金は電気業やガス業、総合工事業などの細かな単位で集計されるためです。

系統が決まったら、学校基本調査で自分と同じ専攻・学歴からの就職実績を確認します。待遇は同じ学歴と年齢階級にそろえ、月額だけでなく賞与と労働時間まで比べてください。交通と通信については、この記事で使った資料から産業中分類別の賃金を確認できないため、同じ比較はできません。

ここまでで把握できるのは、系統ごとの就職実績と待遇の平均までです。応募者数を含まないため、個別企業の採用倍率や選考難易度は募集要項や採用情報から別に確認する必要があります。

7.まとめ

インフラ業界を一つの就職偏差値で並べると、エネルギー、交通、通信、建設で異なる就職実績と待遇が見えにくくなります。系統ごとの就職者数に差があっても、応募者数が分からないため、採用倍率や選考難易度は判断できません。志望企業の主な事業に合う統計区分で全体像をつかみ、実際の募集職種や採用条件は企業の情報で確かめてください。

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