現在、文系の学生の中には「研究職に就きたいけど、可能なのだろうか?」と考えている人もいらっしゃると思います。実際に文系から研究職についた人はいるのか、そのためにはどうしたらいいのか、気になることもあるでしょう。
そこで今回は、
・文系が研究職に就職できる理由
・文系が研究職として働ける場所や種類
・研究職になるために必要なこと
・文系研究職の平均年収例
について、詳しく解説します。これから研究職になりたいと思っている文系の学生さんは、やるべきことや条件などを理解して、就活の準備を進めてください。
条件によって文系でも研究職に就職できる
文系の学生であっても、条件によっては研究職として就職することが可能です。一般的には、理系の学生に絞って研究職を募集する企業が多いですが、全分野の学生を募集しているところならば、文系でも採用される可能性はあります。
たとえば機械の設計など、高度な知識が求められる分野では、その分野に精通した学科出身であることが条件になります。しかしAIやビッグデータなど、最近台頭してきた分野の研究職や、調査が中心の研究職であれば、全分野を対象にしているところも多いです。
文系で研究職として働ける場所や種類
文系学生が研究職として活躍できる場所や種類を紹介します。一般的に文系学生が就職できるのは、大学教員、公的機関の研究所、民間の研究職の3タイプがあります。
大学教員
1つ目は、大学で教員として働くケースです。教授として生徒に学問を教えたり、講演を行ったりしながら、研究を進めていくのが主な仕事になります。教授となるためには博士課程を修了しポスドク、助教、准教授とステップアップしていく必要があります。
ただ、大学教員になる前の博士課程を修了するためには、5年間大学院で研究を続ける必要があります。そのため、大学で研究職として勤めるためには、思い立ったらすぐなれるというわけではなく、長い準備期間が欠かせません。
公的機関の研究所
次に文系学生が研究職として勤められるのは、公的機関の研究所です。独立行政法人、省庁の傘下にある研究所などがあり、研究者として雇われることになります。
ただ公的機関の研究所は、募集があったとしても理系出身であることが条件になるケースが多いです。そして引き抜きで採用される人も多いため、一般的な公募枠に応募しても、就職できる確率はかなり低いといえるでしょう。
民間企業の研究職
民間企業の研究職も、文系学生が採用される可能性のある職種です。銀行や保険などの金融系企業では、調査・研究担当のポストとして、文系の学生でも研究職に就けるようになっています。
また、さまざまな分野の研究・調査を行うシンクタンクでも、文系出身の方を研究職として雇っている企業が多くあります。しかしそういった採用枠は競争が激しく、とくにシンクタンクでは倍率が非常に高くなるため、レベルの高い思考能力とスキルが問われます。
文系院生の民間企業就職先一例
2017年に行われた、新卒で大学院修了者を多く採用する企業についての調査(東洋経済新報社「就職四季報2019年版」データ)では、最も多く文系の大学院修了者(文系院卒者)を採用していたのはニトリグループでした。次いで文系院卒者を多く採用していたのは日本アイ・ビー・エム、野村総合研究所という結果でした。
これらの企業で文系院卒者の採用が多い理由は、この業界における幅広い知識を有し、調査や分析を適切に行い、それに基づいて課題を解決する力を文系院生に期待しているためと考えられます。文系の大学院生が持つ高度な分析力や研究能力が必要とされるため、文系院卒者を積極的に採用していると言えます。
しかし、文系で大学院に進学する学生の絶対数が少ないため、結果的に文系院卒者の採用数は少ない傾向にあります。
先述の調査における大学院生採用数ランキング上位の企業においても、文系に絞ってみるとその採用数が一桁台程度にとどまるケースが少なくありません。
今回ご紹介した企業は文系院卒者の採用枠が少ないという社会情勢を乗り越えつつ、優秀な人材を戦力に変えている企業の一例ではありますが、文系院卒者への各企業からの期待は高まっています。
参考:「大学院卒の採用数が多い」100社ランキング 文系院卒を積極的に採用しているのはニトリ | 就職・転職 | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)
研究職になるために必要なこと
研究職になるためには、アピールできる実績を作ることや業界研究を念入りにしておくことが大切です。研究職になるために必要なことを5つの項目にまとめました。
アピールできる実績をつくる
まずは採用される可能性を上げるためにアピールできる実績を作ることが必要になります。学生のときに研究した内容に関して、高い実績を作っていれば、就活の際に評価してもらえるかもしれません。
そして実績だけでなく、研究から得た知識やノウハウを、研究職になった際にどのように活かせるのか、具体的なところまで落とし込めるといいでしょう。即戦力として活躍できる人材であると認められれば、文系でも十分研究職として採用される可能性はあります。
業界や企業の研究をしておく
就活を進める際は、業界や企業の研究をすることも欠かせません。特に文系の研究職は採用ポストが限られていますから、どんな業界なら採用枠が多いのか、全分野の学生を対象とした業界・企業を探しましょう。
そして自分に合ったところを見つけたら、そこで働いている先輩社員から話を聞くこともやっておきたいですね。文系卒が就活において特に意識するべきことや、働いてから苦労したこと、あらかじめやっておくべきことなどをアドバイスしてもらいましょう。
業界研究についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
企業のインターンシップに参加
企業のインターンシップに参加することは、職場環境や仕事内容を知る上でも大いに役に立ちます。研究職のインターンシップを行っている企業があれば、積極的に参加してみるといいでしょう。
仕事の内容が自分に合っているか、研究職として業務をこなす際に問題がないか、といったところを確認するいい機会になります。仮に研究職のインターンシップがなければ、他の職種のインターンに申し込むのも1つの手です。企業によっては、インターンの実績を就活に考慮してくれるところもありますから、研究職としての採用に寄与する可能性があります。
大学院生向け就活サイト「アカリク」にはインターンシップの情報も掲載しています。研究内容を登録しておけば企業からスカウトを受けることもできますので、ぜひ活用してみてください。
海外就職を狙うなら現地に留学することもおすすめ
研究職の仕事において、海外経験があることは、就活する際も有利に働きます。研究職はとくに海外の論文を読んだり、国外の企業とやり取りしたりすることが多い仕事です。
そのため、学生のうちに海外留学して、知識と語学力をつけておけば、企業側に評価してもらえる可能性は高いでしょう。語学力があれば、働いてから海外の論文を読むこともできますし、国外の企業とのやり取りを任せてもらえるかもしれません。
大学院から転部する
十分なスキルや知識があったとしても、文系から研究職への就職は狭き門です。研究職のポストにこだわるのなら、大学院にいるうちに、文系から理系の学部(研究科)へ転部(転科)するのも1つの手です。
筆記テストで水準以上の点数を取り、面接に合格すれば、理系に転部することは可能です。ただ、それまで他の理系の学生が積み上げてきたような知識がないため、転部した後の勉強はハードなものになると覚悟しておいた方がいいでしょう。
やりたいことが自分の中で明確になっていて、情熱を持って研究に取り組む気概も、文系から理系に転部するときには求められます。
文系研究職の平均年収例
文系から研究職に就職した場合の年収例について、大学教員の場合、民間企業の場合それぞれについて解説しています。
大学教員の年収例
大学教員になった場合の年収は、教授であれば年収1,000万円も目指せます。ただ教授になるには助教、講師、准教授と段階を踏まなければいけません。
職階を上げるためには、ある程度年齢を重ね、経験を積む必要があります。そのため講師になれるのは平均して40代過ぎくらいと考えるといいでしょう。
民間企業の研究職の年収例
民間企業の研究職の年収を調査しました。株式会社三菱総合研究所では、修士・博士ともに学科を問わず新卒採用を実施しています。初任給は修士の場合264,000円、博士の場合305,100円です。そのため、修士だと初年度の年収は370万程度、博士だと420万円程度と予想できます。
参考:採用情報 : INFORMATION : 新卒採用情報 : 三菱総合研究所
文系でも研究職につく未来は探れる
現在文系で研究職への就職を考えている人に向けて、研究職に就くために必要なことや年収の例を解説しました。
文系の研究職は、募集されている数こそ少ないですが、就職することは不可能ではありません。とくに民間企業などでは、学部を問わず、スキルの高い人材とみなされれば研究職に就くこともできるでしょう<。
学生のうちにしっかり準備をして就活に挑めば、採用される可能性は大いにあります。そのためには、研究実績を作ることや、念入りな業界研究をしておくことが欠かせません。必要であれば、理系への転科や留学なども視野に入れながら、納得できる道を歩んでいってください。
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