就職活動の成功率を大きく左右するのが「業界研究」です。
しかし、就職活動を本格的に始めるまでは、世の中にどのような業界があるのかわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか?
業界について漠然としたイメージしか持っていないと、就職活動も失敗する可能性が高くなってしまいます。
「自分のやりたいことと違った」
「もう一度就職活動をやり直したい」
そうならないためにも、業界研究の方法について知っておきましょう。
業界研究とは
業界研究とは、様々な業界の情報を集め、それぞれの特徴を理解することです。
自己分析や企業研究と並び、就職活動では重要な過程です。
世の中にある業界を把握し、自分にとって楽しく働ける企業や仕事内容を見つけるためにも、必ず力を入れて取り組みましょう。
業界研究の目的
業界研究の目的は「働きたいと思える業界を絞り込むこと」です。
業界研究を怠ると「想像と全く違っていた」ということもありえます。
逆に業界研究を行うことで、就職後の具体的なイメージが持てるようになります。
きっと、想像と現実のギャップもなくなるでしょう。
就職活動で後悔する可能性も、低くすることができます。
また、面接やエントリーシートなどで、説得力のある自己PRや志望動機も準備できるようになります。
応募企業に対して「自分には業界に対する適性がある」と、論理的にアピールして就職活動を成功させるためにも、綿密な業界研究を行いましょう。
「業界」と「職種」の違い
業界と職種には以下のような違いがあります。
業界・・・産業や商業の種類を指す (例:食品業界、広告業界)
職種・・・仕事の性質や範囲を指す (例:企画、制作、営業、販売、人事)
仕事内容は「業界」と「職種」を組みあわせて、説明されます。
例えば「食品業界の営業職」「広告業界の経理職」などです。
また、業界研究と同時並行で自己分析すると、さらに自分のやりたいことが明確になります。
やりたいことと一致せず、就職後に後悔しないためにも、自分をよく知ることは非常に大切です。
業界研究で大事な3つの観点
業界研究で大事な3つの観点は以下の通りです。
- 業界の市場規模
- 仕事やサービスの内容
- 現状の課題や将来性
業界の市場規模
業界の市場規模の分析は、業界の安定性や成長性を把握し、将来のキャリア形成について考えるためにも重要な作業です。
業界の市場規模や成長率に関するデータを参照しながら、動向を分析していきましょう。
業界の市場規模を調べる方法としては、例えば、業界別の情報サイトを使うと、各業界の市場規模を調べることができます。
参考:業界動向サーチ「業界別 業界規模ランキング」
さらに業界について深く知りたい方は、「PEST分析」という手法が役に立つでしょう。
「PEST分析」とは、政治(Politics)・経済(Economy)・社会(Society)・技術(Technology)という4つの面から業界を分析することです。
まずは2〜3行程度の箇条書きでも良いので、気軽にやってみましょう。
例えば、食品業界の政治について調べたい場合は「食品業界 政治」などのキーワードで検索してみましょう。
そうすると、関連する情報を洗い出すことができ、業界の動向がわかります。
PEST分析において、それぞれの洗い出すべき観点は以下の通りです。
- 政治(Politics)・・・政府が打ち出す政策、法改正など
- 経済(Economy)・・・景気の変化、雇用状況、賃金、物価の動き、消費動向指数
- 社会(Society)・・・人口動態、トレンドの変化、文化的背景、教育体制
- 技術(Technology)・・・クラウド、AI、IoT、ドローン、AR / VR、SNS
業界の動向を多角的に捉え、情報を整理していくと現在の大まかな状況が把握でき、就職活動にも役立ちます。
仕事やサービスの内容
業界研究で比較検討する際に、仕事やサービスの内容を具体的に理解しておくのも大切です。
業界を調べるなら、主に以下の3点を押さえておきましょう。
- ターゲットは誰か
- 扱う商品は何か
- どのような業務を行うのか
小売業界のように、ターゲットが消費者であれば大まかな内容を想像できますが、商社など企業相手であれば具体的な業務がイメージしづらいでしょう。
自分が働く時のイメージを明確にし、就職後にギャップが生じるのを防ぐためにも、業務内容の把握が重要です。
業界内での事業の成り立ちや、仕事内容についてリサーチしておくと、業界ごとの違いも分かりやすくなります。
現状の課題や将来性
業界全体の課題や将来性を把握することで、自身のキャリア形成を考える参考になります
まずは以下の点に注目して調べてみましょう
- 業界の過去や現在の課題
- 業界の市場規模の推移
課題は今後解決するようなものなのか、将来的に成長する業界なのか、といったことを把握していけば、きっと自分が働きたい業界が見つかるでしょう。
業界研究の4ステップ
業界研究4ステップは以下の通りです。
- 【ステップ1】興味のある業界を見つける
- 【ステップ2】業界のトップ企業と、その周辺企業を調べる
- 【ステップ3】業界同士のつながりを見て選択肢を作る
- 【ステップ4】業界で求められている人材を考える
【ステップ1】興味のある業界を見つける
業界研究の最初のステップとして、まずは興味のある業界から調べてみるといいです。
はじめから各業界の詳細まで理解する必要はないので、まずは業界全体を「広く浅く」把握していきましょう。
それぞれの業界を知るための手段は、以下のように様々な方法があります。
- ニュースを活用する
- 本(書籍)を活用する
- 業界研究セミナーに参加
- 合同企業説明会を活用する
【ステップ2】業界のトップ企業とその周辺企業を調べる
興味のある業界を見つけたら、その業界内のトップ企業と、それに対抗するライバル企業を中心に動向を把握していきましょう。
その際、以下の観点で調べるといいです。
- トップ企業がトップである理由
- 上位企業の共通点
- トップ企業とライバル企業の相違点
上記の観点を中心に調べると、より業界の理解が進みます。
現在トップの企業に就職して規模の大きな仕事をしたいのか?
ライバル企業に就職して成長する過程を楽しみたいのか?
自分の興味関心がどこにあるのかを把握しながら調べていくといいでしょう。
【ステップ3】業界同士のつながりを見て選択肢を作る
ステップ1では興味のある業界を見つけ、ステップ2では業界のトップ企業とその周辺企業を調べました。
ステップ3では、興味を持った業界や企業を起点に、別業界にも視野を広げてみましょう。
興味のある業界と関連の強い業界も調べることで、さらに視野が広がります。
もしかしたら、意外な業界で自分の本当にやりたいことが見つかるかも知れません。
【ステップ4】業界で求められている人材を考える
業界の情報を集めていると、求められている人材が明確になります。
そして、求められる人材から逆算していくことで、就職活動も効率よく結果が出るでしょう。
例えばIT業界では、技術の進歩が早いため、変化に柔軟に対応できる人材が求められます。
そのため、新しいことを学び続けることに抵抗のある方は、IT業界だと辛い思いをするかもしれません。
逆に、新しいことを学ぶのが好きな方にとっては、最高に楽しい業界となる可能性が高いでしょう。
このように、業界ごとに必要とされるスキルや個人の適性は異なります。
自分の適性にあった業界なのかどうかを事前に把握しておくと、就職後に後悔してしまうというリスクは可能な限り減らせることでしょう。
【理系学生必見】効率的に業界研究に取り組むコツ
理系学生は、研究や実験、レポート提出などに追われており、就職活動に十分な時間を確保するのが難しいこともあります。だからこそ、限られた時間の中で効率的に業界研究を進めることが、内定獲得への近道となります。
ここからは、忙しい理系学生に向けて、効率的に業界研究を進めるためのコツを詳しく解説します。「何から調べればいいのかわからない」「時間が足りない」と感じている方も、今日からすぐに実践できる具体的な方法が見つかるはずです。
業界ごとの全体像を把握する
業界研究に取り組む際は、業界ごとの全体像を理解することから始めてみましょう。
まずは、普段よく使う商品やサービスを書き出し、それがどの業界に属しているかを調べてみるのがおすすめです。
たとえば、コンビニやスーパーは「小売業界」、電車やバスは「交通・インフラ業界」、スマートフォンやタブレットは「通信・IT業界」に分類されます。このように、身近な製品やサービスを起点に業界をリサーチすると、業界研究がより現実味を帯びてきます。
そのうえで、業界地図や就活情報サイトなどの情報源を活用しながら、それぞれの業界にはどのような企業が存在するのか、そして市場規模はどれくらいかを確認しましょう。具体的な企業名や数字が見えてくると、働くイメージが一気に明確となるはずです。
理系学生にとっては、情報をインプットし、それを整理・アウトプットすることが、志望業界を見極める第一歩となります。気になる業界はメモにしてまとめておくと、後から比較しやすく、志望動機や自己PRを考えるときにも役立つでしょう。
各業界の特徴・トレンドを理解する
業界研究をするうえで大切なのは、その業界がどのような特徴を持ち、どのような市場トレンドがあるのかを押さえることです。 特徴やトレンドを理解することで、志望動機やキャリアビジョンをより具体的に描けるようになります。
たとえば、自動車業界は「EV・自動運転技術」、IT業界は「DX(デジタルトランスフォーメーション)」といったように、業界ごとに注目されている市場動向をリサーチしてみましょう。こうした情報を知っておくと、面接で「なぜこの業界を選んだのか」をより説得力のある言葉で伝えられるようになります。
また、業界にはそれぞれ強みとなる分野がある一方で、抱えている課題もあります。理系学生であれば、自分の専攻や研究テーマと結びつけて「どの分野のトレンドに興味があるか」「各業界においてどのような技術や研究が求められているか」を意識しながら業界研究を進めるのがおすすめです。
さらに、業界のトレンドを把握することは、将来のキャリアを考えるうえでも重要なポイントです。「この業界の課題を自分のスキルでどのように解決したいか?」と考えてみると、志望動機がより具体的になり、将来のキャリアプランも明確になります。
業界の成長性・安定性をリサーチする
業界研究で意識したいポイントとして、各業界の成長性と安定性が挙げられます。
その業界がここ数年でどの程度伸びているのか、今後も安定した市場が見込めるかを判断することで、安心してキャリアを築ける業界を選びやすくなるでしょう。
業界の成長性・安定性をリサーチするためには、業界全体の市場規模と成長率をチェックすることが大切です。売上高や市場規模が年々拡大している業界は将来性が高く、一方で縮小傾向にある業界は今後の働き方に影響する恐れがあります。
さらに、理系学生なら上場企業の財務情報にも注目しましょう。過去数年の売上高や利益の推移を確認すると、その業界や企業が安定した成長を続けているかどうかを客観的に判断できます。
こうした情報を整理しておくと、志望業界を選ぶときに「この業界で長く活躍できるのか」「成長の波に乗れるのか」をイメージしやすくなり、納得感のある就職活動につながるでしょう。
興味のある業界を3つほどに絞る
業界研究を効率よく進めるためには、まず興味のある業界を3つほどに絞ることも大切です。 最初から多くの業界に手を広げすぎると、情報量が多すぎて混乱しやすく、調べるのにも時間がかかってしまいます。最初に業界候補を3つ程度に絞ることで、調査の焦点が定まり、効率よく深堀りできるようになるでしょう。
興味のある業界候補を絞る際のコツは、次のとおりです。
- 自分が知っている・興味が持てそうな業界を選ぶ
- 広く浅く調べて各業界の違いを比較する
- 集めた情報を一覧にしてまとめる
それぞれのコツを詳しく解説します。
自分が知っている・興味が持てそうな業界を選ぶ
普段の生活や研究で接しているものから考えると選びやすくなります。例えば、「化学メーカー」「情報通信」「自動車」といったように、自分の得意分野や経験とつながる業界を候補にすると理解も深まりやすいでしょう。
広く浅く調べて各業界の違いを比較する
大まかな特徴を整理するだけでも、業界ごとの違いや、自分が関心を持てるポイントが見えてきます。まずは市場規模、主な企業、注目されている技術やサービスといった基本情報を調べてメモしましょう。
集めた情報を一覧にしてまとめる
集めた情報は、業界ごとに整理し、比較しやすい形にまとめましょう。「業界名」「市場規模」「注目ポイント」などの項目をメモに残しておくと、視覚的に違いが把握しやすくなります。
業界研究を行う際の注意点
業界研究はやり方を間違えると、余計な時間をかけすぎたり、情報が多すぎて混乱してしまったりすることがあります。 限られた就活期間のなかで効率よく進めるためには、いくつか意識しておきたいポイントがあります。
ここからは、業界研究を行う際の注意点を詳しく解説しましょう。
常に業界研究を意識する
業界研究は、「就活のスタート時に一度だけやれば終わり」というものではありません。
新聞やニュースで時事問題をチェックするとき、面接対策をしているときなど、日常の中で志望業界を意識し続けることが就活を成功させるポイントです。
「業界のニュースを一つ読む」「友人と業界について話す」といった小さな行動を積み重ねると、少しずつ知識が増え、業界のことがわかるようになっていきます。
特に理系学生は研究や実験などで忙しく、どうしても情報量も多くなりがちです。だからこそ、日常生活のなかで「業界の視点」を持つことが、面接やグループディスカッションなどで、自分の考えを自信を持って伝えられるようになります。
限られた時間で効率的に業界研究を進める
理系学生は研究やレポートで忙しく、就活に十分な時間を割けないことも多いですよね。 だからこそ、業界研究は「短い時間で成果を出す」ように意識しましょう。
業界研究に取り組み始めたら、まずは広く浅く情報を集めて全体像をつかみ、興味のある業界が絞れたら深掘りするのがおすすめです。一度調べた情報は、一目で理解できるように整理しておくと、後から見返しやすくなり、同じ内容を何度も調べ直す手間が省けます。
インプットからアウトプットまでまとめて行う
業界研究をする際は、情報を集めるだけで終わらせず、整理してアウトプットするところまでをワンセットで行うことが大切です。
そのためには、専用のノートやスプレッドシートを作成し、次のような情報をまとめてください。
- 業界名
- 市場規模
- 注目されている技術
- その業界で活かせる自分の強み
これらの情報を横並びで比較できるようにまとめておくと、業界ごとの違いがひと目で分かり、あとから見返すときにも便利です。
「調べる・まとめる・見返す」というプロセスを習慣化することで、業界理解が深まり、志望動機や自己PRも自分の言葉で、より説得力を持って伝えられるようになるでしょう。
まとめ
今回の記事では業界研究のやり方を4ステップに分けて解説しました。
業界研究の4ステップは以下の通りです。
- 興味のある企業を見つける
- 業界のトップ企業と、その周辺企業を調べる
- 業界同士のつながりを見て選択肢を作る
- 業界で求められている人材を考える
また、業界研究の情報収集に使える手段は以下の通りです。
- ニュースを活用する
- 本(書籍)を活用する
- 業界研究セミナーに参加
- 合同企業説明会を活用する
ぜひ今回紹介した4つのステップを参考に、良い就職活動をされてみてください。
この記事がお役に立てば幸いです。




