就職活動を始めると自己PRを求められる場面が多くなります。
自己PRをまとめるにあたっては、理系学生の場合、理系だからこそアピールできるポイントをしっかりおさえてまとめることが、選考を勝ち抜く近道と言えます。
そこで今回は、理系学生だからこそアピールできるポイントや自己PRをまとめるにあたり、理系学生が陥りがちな注意点を紹介します。さらに、コラムの終盤には理系学生の皆さんに向けた、自己PRの例文もありますので参考にしてみてください。
理系と文系で自己分析のやり方に違いはある?
理系の自己分析の行い方は文系と同様です。基本的には、大学や大学院で得てきた経験(学業、研究、アルバイトやその他学外活動など)を整理し、これらの経験で学んだことや得た経験・スキルをエントリーシートや自己PRにまとめていくことになります。
一方、研究職を目指す学生や理系大学院生の場合、エントリーシートや自己PRに記載する内容は、文系の学生とは異なってきます。
理系学生には、志望する企業において必要な基本的知識や技能を有していることが期待されるため、学業や研究で得た経験・スキルを中心に自己PRをまとめていくのがよいのではないでしょうか。
大学院生・理系学生向けの就職活動については、以下の記事で詳しくまとめています。
理系学生がアピールすべき5つの能力
理系学生としての自己分析の方法は、文系学生と大きな違いはありませんが、自己PRなどでアピールすべき能力は、文系学生と異なってくると考えられます。
理系学生には、志望する企業において必要な基本的知識や技能を有していることが期待されるため、学業や研究で得た経験・スキルを中心に自己PRをまとめていくことをおすすめします。
さらに、研究職を志望する場合の自己PRでは下記の5つの能力に注目して、自己PRをまとめていくのが良いと考えられます。
- 専門性
- 論理的思考能力
- 計画立案力
- 粘り強さ
- 情報収集力・情報分析力
それぞれの能力はどのような能力なのか、なぜ企業はそのような能力を持つ人材を求めているのか、細かく見ていきましょう。
専門性
まず、企業が理系学生に期待しているのは「専門性」です。特に大学院(修士課程・博士課程)に進学している場合、専門分野に関する知識を有しているものと考えられます。
したがって、専門分野が近い場合や研究開発職などの募集では、大学や大学院での研究を通じて得てきた知識を発揮し「即戦力」として活躍することが望まれています。
一方、製造職や生産管理職などにおいては、専門性を即活かすということは難しい場合もありますが、専門用語の理解力、論理的思考能力や情報収集・分析能力など、理系学生が得ているであろう能力に期待しています。
論理的思考能力
また、理系学生の持つ「論理的思考能力」にも企業は期待をしています。
なぜなら、企業活動においては「仮説立て→実験→考察・検証→仮説立て」というPDCAサイクルをきちんと回すことができる人材が必要とされているからです。
理系学生の場合、研究活動を通し日々トライ&エラーを繰り返し問題解決に向け走り続けており、PDCAサイクルを自然と行ってきているはずです。このような、理系学生が研究活動を通じ自然と身に着けている「論理的思考能力」もまた、企業が重視しているポイントです。
計画立案力
研究成果をあげるためには、研究を始める前に「きちんとした計画が立案できているか」という点も重要です。
なお、このような能力もまた、理系の学生は大学・大学院における研究活動を通じ、自然と訓練してきているはずです。
初めは、指導教官とともに研究計画を立案しているものと思いますが、日々の研究におけるトライ&エラーの結果、次に実施するべき研究などを提案し、だんだんと自分自身で研究計画を立案する力が身についてきているのではないでしょうか。
このような能力は、実務でも重要であるため、就活生がどれだけ「計画立案力」を有しているかという点を企業はチェックしています。
粘り強さ
また、研究を行う上で大切な「粘り強さ」も重要となるでしょう。
研究は、日々の積み重ねにより成果が出るものが多いのではないでしょうか。時には、失敗が続いてしまうことや、進捗がないこともあるでしょう。一方で、日々の積み重ねや失敗からのひらめきにより、研究成果につながっているものも多いと考えられます。
研究で培った「粘り強さ」と、失敗が続いたとしても、そこから新たなひらめきを見出し、コツコツと成果を出すことができる力は、企業に就職したとしても役立つ力であることから、このような能力も評価されると考えてよいでしょう。
情報収集力・情報分析力
最後に、「情報を収集し分析できる」能力も、重要な評価ポイントです。
理系学生の場合、実験を行った結果である情報(データ)に触れる機会が多いのではないでしょうか。さらに、これらのデータを分析(解析)し、次の実験へと活かしていくというようなサイクルを研究では繰り返していることと思います。
このような情報収集力・情報分析力は、数多のデータを扱う必要がある現代社会では重要な能力であり、民間企業もこのような能力を有する人材を求めていることから、アピールすべき能力の1つと言えるでしょう。
理系学生が自己PRでやりがちな失敗例
理系学生・院生が自己PRを作成するときによくみられる失敗例として、研究実績のみを記載した自己PRが挙げれらます。
さらに、アルバイトやサークル活動のみの自己PRとなってしまうと、やはり残念な自己PRとなってしまいがちです。このような自己PRにならないよう、理系学生の皆さんに向けた自己PRの例文をコラムの終盤に載せてありますので、併せて参考にしてください。
自己PRで研究業績のみを書く
まず、理系学生・院生が陥りがちな自己PRの作成例として、研究業績のみをアピールしてしまうケースがあります。特に研究職を目指す人の自己PRが、この傾向にあります。
確かに、研究業績があるということは素晴らしいことです。しかしながら、企業が知りたいのは業績の有無だけでなく、研究業績をあげるにあたって就活生がどのような「プロセス」で物事に向き合ってきたかという点です。
そのため、自己PRを作成するにあたり研究に関係する内容を記載する場合には、研究業績といった「結果」のみにならないよう、その結果を得るまでの「過程」も大切にして自己PRを作成するという点が重要です。
アルバイトやサークル活動のみをアピールしてしまう
理系学生の強みは「研究を通じどのようなことを得てきたか」という点です。そのため、自己PRの内容がアルバイトやサークル活動のみとなってしまった場合、企業が求める内容から外れてしまう可能性があります。
もちろん、アルバイトやサークルにおいて、突出した成果があれば記載するのは構いませんが、これらの内容のみではなく理系学生ならではの能力(例:専門性・論理的思考能力・計画立案能力・粘り強さ・情報分析能力など)も含めて、自己PRを作成できればより良いものになります。
研究概要書を書く時の注意すべき点
理系の専門職を中心に志望している場合、自己PRを含めたエントリーシート(ES)のほかに、研究概要書の提出を求められることも多いのではないでしょうか。
研究概要書の作成にあたっても、自己PRの作成と同様に注意点があります。まず1つ目に「専門用語を使用しない」ことが重要です。
面接官全員が専門分野に精通しているとは限らず、専門分野外の面接官が研究概要書に目を通す例が大半です。そのため、専門分野外の人でも理解できるよう、専門用語を使用せずに研究概要書をまとめることは重要です。
また、相手が理解しやすいよう、要点をおさえることも重要です。研究概要書の場合、比較的長文(A4で数枚など)の例もあると思われますが、長文になればなるほど読み手となる面接官の負担が大きくなるのが事実です。
このような場合には、各段落の初めに「伝えたい内容を記載する」など、読み手が理解しやすいような工夫も大切になります。
理系学生の自己PRの例文
私の強みは「計画立案力」です。
私は大学で「食べて健康になる野菜を作る」ことを目標に研究を行っています。
植物を使った実験の場合、決まった時期にしか実験ができず「実験のチャンスが限られている」という点が問題となります。
そこで私は「年に1度の実験のチャンス」に向けて、日々様々な仮説を立て、実験の準備を行うことを大切にしています。
さらに、実際に植物を扱った実験は夏にしかできないことから、冬場にも実験をできるよう、夏の実験時にサンプルを採取し、冷凍保存しておくなど「先を見据えた計画」も立てながら実験を行っています。
このような経験から私は、1年間のスケジュールを先読みし「計画を立案すること」を得意としています。そのため貴社に入社後には、この学生時代に鍛えた「計画立案力」をもとに、研究を円滑に進め、貴社の利益に貢献していきます。
1段落目:「自分の強み」「研究内容」が伝わりやすいように、一言でまとめる
2段落目:自身の強みにつながる、研究における「最大の問題点」を記載する
3段落目:最大の問題点の解決に向けて「どのような取り組みを行ったか」自身の経験を例に紹介する
4段落目:最後の段落には、自身の強みが「志望する企業の何に役立つか」を明記する
また、どの内容においても、今回紹介した自己PRの例文のように「専門用語は使用せず」だれでも分かりやすい文章でまとめていくことも重要です。
情報系志望の自己PRの例文
私の長所は「目標達成への粘り強さ」です。
私は現在、大学の研究で「二次元画像を用いたコンピュータの自己学習」の研究を行っています。
人間や動物などの写真をコンピュータに解析させ、被写体の形や色を学習させ、その指示に合った写真を選択させるという研究です。
大量のデータを使って学習するプログラムに取り組むのは初めての経験でしたので、研究の初期は苦労と失敗の連続でした。
そこで、個々の工程ごとにプログラムを実装し、動作の検証を行いました。
その結果、学習させたデータをもとに、人間が選んだネームタグと同じ種類の写真を選択できるプログラムを完成させることができました。
この経験を通して、困難や不安の原因を分析し、その一つひとつに対してどう対処するかを考える習慣が身につきました。
複雑な問題でも、原因を一つ一つ解決していけば必ず解決できることを実感し、難題に取り組む自信がついたと思います。
貴社に入社後は、アプリケーションの開発に携わりたいと考えています。
困難を分割して片付けることを大切にしながら、粘り強く製品開発に取り組み、御社の利益に貢献したいです。
理系ならではの能力をアピールできる自己PRを目指そう
理系学生は、実験や研究を通じて
- 専門性
- 論理的思考能力
- 計画立案力
- 粘り強さ
- 情報収集力・情報分析力
といったような、理系ならではの能力を得てきているのではないでしょうか。そして、企業もこれらの能力を有した理系人材を求めています。
そのため、理系学生が自己PRを作成する場合、アルバイトやサークル活動における自己PRのみではなく、実験や研究を行ってきた中で得てきた経験をもとに、自己PRをまとめることをおすすめします。
また、実際に自己PRを作成する場合には、以下の3つのポイントを意識し、「企業においてどのような役にたてるか」をまとめていくことで、選考に通りやすい理系学生の自己PRを作成することができます。
- 要点をおさえる
- 専門用語を避ける
- 相手が理解しやすい内容にまとめる