ポスドクとして海外に出向くことに関する連載はいよいよ最終回を迎えました。
今回は、現地での住居探しについてのお話です。
住居探しについて
新しい土地で暮らす時に直面する最も大きな問題の一つが、住居問題と言えます。実際に生活する国・地域・街によって状況は様々ですが、日本とは制度や習わしが違う点は多くあるため、家探しの注意点も変わってきます。
まずは寮や学生向けロッジから
大学などにポスドクで出向く場合には、早い段階で寮に住む可能性や、住居探しの助けを得ることの可能性について打診した方がよいでしょう。
寮には、「大学に近い、家賃が安い、基本の家具家電が備わっている」などのメリットがあります。また、新しい土地で右も左もわからない中、大学(職場)はもっとも多く接触する場所の一つになるので、その中で生活を始められることは移動直後のストレスを大きく和らげてくれます。
ほかにも、民間が運営する学生向けロッジという選択肢もあります。大学が提供する寮よりは割高になるかもしれませんが、同じようなメリットを持っています。場所の候補については現地の大学の方におすすめしてもらったり、Google mapなどで大学の近くを探してみたりすると良いでしょう。
シェアハウスも一つの選択肢
海外、特に欧米の大都市圏に住む独身者や若いカップルにとって、シェアハウスは非常に一般的なことです。その一つの理由は家賃の高さにあります。もう一つの理由は、日本によくみられる独身者向けの小さめのマンションやアパートが比較的少なく、ファミリー向けの大きめの物件の方が多いことにあります。
そのため、住居探しの際に自分で貸し切ることができる物件ばかりを見てしまうと、非常に選択肢が狭くなってしまいます。懐と相談しながらシェアハウスも考慮に入れてみるといいかもしれません。
日本人はシェアハウスをしたことのない人が多く、いろいろと不安になるのもおかしくありません。シェア・メイトと仲良くできるか、プライバシーはどうなのか…良い出会いばかりとは限らないのも事実でしょう。しかし、良いシェア・メイトに出会うことは異国の地での人間関係構築や、現地での情報の獲得にとって非常に有益になりますので、ぜひ選択肢に入れてみていただきたいです。
治安第一・交通第二
日本ほど治安が良いところはなかなかありません。海外で住まいを探す場合に特に気をつける必要があるのは、住んでいるエリアの治安の情報です。
特に大きな都市では、住居区画が少し違っただけでも雰囲気がガラッと変わることがありますので、安全な地域に関する情報を入念に収集してください。インターネットで情報収集したり、現地の方に尋ねてみたりするのは良い手段ですが、他にもGoogle mapのストリートビューで実際に街並みを見て、道路や住居が清潔に保たれているか、壁に落書きが多く書かれていないかなどを参考にするのも良いでしょう。
一方、欧米では都市の中心部の方が治安が悪く、郊外の方が「閑静な住宅街」であることは珍しくありません。また、アメリカのような車社会の国では、バスや電車などの交通手段があまり発達していないエリアも多いです。その場合、安全な地域は交通の便がよくないことも十分考えられるので、住居探しの際にはこの点を十分考慮する必要があります。
引越しは日常茶飯事
日本と比べて、海外の人々のほうがよく引越しをしています。部屋を借りる際も日本のように一気に2年契約をするのは一般的ではなく、半年単位で契約を交わすのも珍しいことではありません。賃貸物件の中には家具家電が備わっているものも多いので、身の回りの物をスーツケースに詰めてパパッと引越しすることもよく見られます。
そのため、最初に住居を決める時はあまり深刻に考えすぎず、「お試し契約」のつもりで短い契約を結ぶほうが、少し気が楽になると思います。
ネットで探す時は慎重に
インターネットを通して住居探しすることもできます。不動産仲介WEBサイトの有名なところをいくつか探し、比較するところから始まると良いでしょう。ただし、保証金を騙し取られることや、ネットに掲示された情報とは全く違う悪物件に当たるなど、様々なトラブルもよく発生しているので、意思決定は慎重に行う方が良いでしょう。
出発前に探す場合は、できれば現地にいる人になんらかの形でコンタクトを取り、助言を求めることや、自分の代わりに内見を行うことをお願いすると良いでしょう。例えば同じ研究チームになる同僚や、知り合いのツテを頼って知り合った現地の人などが挙げられます。また、Facebookなどで現地コミュニティを探すのも一つの手です。「あまり親しくない人にそこまで迷惑をかけるのはちょっと…」と遠慮してしまう気持ちもわかりますが、世の中は持ちつ持たれつです。積極的に助けを求め、その代わりしっかり感謝の気持ちを伝えるほうが、新しい土地で新しい人間関係を築くきっかけにもなると思います。
Airbnbを活用しよう
ネットで住居を探すのが不安で、現地に着いてから自分の目で見て決めたいと思う人も多くいるでしょう。また、筆者の知り合いでは、移動ギリギリの時点になって決まった寮の入居が先延ばしになったと伝えられるなどのトラブルもありました。こういう場合、ホテルで過ごそうとすると大変な金額になりかねません。実際、筆者自身は海外ポスドクで到着した当時は、住居探しに時間がかかってしまい、泣く泣く半月分のホテル代を払うことになったことをいまだに悔やんでいます。
こういう場合にはAirbnbを使うことをおすすめします。Airbnbは比較的に出費が安く済み、かつ長期滞在割引がある物件も多くあります。その上、現地での住居はどんな様子であるかを実際に体験することもできるので、住居探しにも参考になります。また、個人が運営するようなAirbnbであれば家主さんとも交流できるので、いろいろなローカル情報を教えてもらうこともでき、一石三鳥と言えます。
おわりに
これにて、海外ポスドクシリーズ(準備編)は完結となります。海外ポスドクを検討するところから実際に現地で生活を始めるまで、様々な話題についてご紹介しました。筆者一人の経験をもとにしているため、完璧な情報を提供できているとまでは至りませんが、少しでも皆さんのお役にたてることができるなら、大変幸いに思います。すばらしい海外ポスドク生活を過ごされますよう、心から願っております。
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[文責・LY / 博士(文学)]
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