博士課程に進学すると、「博士課程は就職ができない」「博士号は足の裏の米粒だ、とっても食えない」などの悲観的な意見を目にすることが多い気がします。
博士課程修了直後に就職した人は67.7%、なかでも正規の職員等として就職した人は52.6%で、いずれも修士卒や学部卒と比べて低いことが文部科学省の調査で分かっています。アカデミアの公募は最終年度に応募することも多いため、途中で企業就職に切り替えても時期を逃していて、就職先が決まらないまま修了するというケースが多くなるようです。
一方で、博士卒のみが対象の求人があることをご存知でしょうか。そして、博士課程の就職活動は学部卒の就職活動とは使う就活サイトや活動時期が大きく異なることをご存知でしょうか。本記事を掲載しているアカリクは大学院生向けの求人に特化した就活サイトにあたります。
アカリクに掲載されている博士向け求人を見てみたいという方は、こちらの特集記事をご覧ください。
せっかく博士課程に対する求人があるのに探し方が分からなかったり、時期を逃してしまうことでチャンスを失うのは非常にもったいないです。
博士課程への進学を考えている方や今後のキャリアに悩んでいる博士課程の方、博士研究員の方にも是非読んでもらいたい内容になっているので、気になったら最後まで読んでみてください。
博士の求人は研究分野で変わる
博士課程といえば専門性が高いという印象が強いですよね。このことからも予想できる通り、博士課程向けの求人は分野や業界によって大きく異なります。
それでは各分野の内容について見ていきましょう。
文系の研究職は少ない
文系で研究職の求人は理系と比べると少ないといわざるを得ません。
しかし、条件によっては研究職に就職することができます。大学教員だけではなく、公的機関の研究所やシンクタンク、コンサルタントのような民間企業でも研究職の枠があります。
文系の研究職についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
理系は比較的研究職の求人が多い
理系では研究職の募集が比較的多いと言えます。
「博士人材追跡調査」によると、博士課程を出て民間企業に就職した人の半数近くは製造業に従事しており、理系から民間企業の研究職に進んだ人が多くいることを示唆しています。
また、アカリクに掲載されている求人を見ていてもプログラミングなどのITスキルを有している人への求人は多く、プログラミングが専門ではなくても研究での解析等で学んだコンピューター言語やデータ処理の技術が活かせる求人が多くあります。
薬剤師は企業募集も多い
上記の「博士人材追跡調査」でも医療・福祉分野への就職は製造業の次に高くなっていることからも、薬剤師免許を持っている博士卒は比較的優遇されやすい立場にあると言えます。
製薬企業では新たな創薬のタネを見つけるために博士人材を求めているということもありますが、研究職だけではなく病院薬剤師等の仕事でも昇進にあたって博士卒を優遇する動きもあるようです。
学部卒と修士や博士の求人数の違い
では次に、学部卒と修士、博士の就職活動が大きく異なる理由を求人情報から読み解いて行きましょう。
大学新卒は求人数は多い
やはり、大学の新卒は最も多く求人があります。学部卒の新卒採用はポテンシャル採用という側面が大きく、多種多様な職種、業界から求人があります。
ただし、近年は即戦力を求めた中途採用の数が増えており、求人の数は若干少なくなってきています。
修士や博士は専門職の求人が出ている
学部卒よりも+2年の修士はまだしも、博士は+5年となるため、企業としても完全にポテンシャル採用というわけにはいきません。そのため、求人を出す業界は限られ、学部卒の求人より数は少なくなってしまいます。
一方で、修士、博士向けには部卒にはない専門職の求人があります。
2018年度の民間企業による研究開発活動の概況によると、特に研究職ではある程度研究社としての潜在能力かあることを求められるため、修士卒の採用割合が最も多くなっています。
同資料の中で博士課程修了者は10%程度と少なく見えますが、修士課程修了者と博士課程修了者の人数比を考えると求人の倍率自体は低くなっているのではないでしょうか。
また、博士や博士研究員は新卒採用ではなく中途人材としての採用も行われています。近年は企業もプロジェクトを先導する人材等を求めて中途採用を多く行っています。
修士や博士は求人の数は少なくなりますが、専門性のある職種では積極的に求められる人材でもあります。ただし、就職活動の方法は学部卒とは大きく異なることに注意しましょう。就活サイト「アカリク」には、大学院生(修士・博士)、ポストドクターに特化した求人情報が掲載されています。博士向けの求人を探すならぜひ活用してください。
修士・博士に人気の求人とは
修士・博士に人気の求人をご紹介します。
民間の研究開発職
収益が安定している製造業等の大企業では将来への投資の意味で研究開発者を採用しています。もちろん、ある程度専門性が合っていることは必要ですが、完全に一致していることはほぼないので、多少分野が異なっていても応募してみることをお勧めします。
また、近年では派遣研究者という選択肢もあります。派遣の研究職と正社員の研究職の違いを知りたい方はこちらの記事へどうぞ。
中途採用ではベンチャー企業のコンサルタントやデータアナリスト、開発リーダーやプロジェクトマネージャーなどの募集があります。ただし、新卒採用よりも専門が合致していることが求められます。
そのため、中途採用の求人情報には具体的に必要としている技術が書いてある場合が多いです。自分が持っているスキルと合致するものが多い場合は応募してみてはいかがでしょうか。こちらは博士研究員の方を歓迎している求人が多い印象です。
大学・公的機関の研究職
博士卒だと大学や公的機関の研究職を目指している方も多いと思います。こちらは求人が出るかはその年次第でもありますが、チャンスを逃さないように求人は国立研究開発法人 科学技術新興機構が提供しているJREC-IN Portalで確認しましょう。
海外の求人もあるので、海外で研究をしたい方も定期的に確認をしておくと良いかもしれません。
修士・博士の就職方法
それでは修士・博士の就職方法を見ていきましょう。
民間や公務員の求人を探す
民間企業の求人を探すなら就活サイトを使う、もしくは企業のホームページの採用情報を定期的に見るようにしましょう。
製薬企業や化学メーカーの博士採用は早いところで博士課程2年(4年制なら3年)の9月から始まります。学部卒の採用活動のほとんどが3月から始まるのに対して、半年以上も早い企業があるということは頭の中に入れておきましょう。
大学院生(修士・博士)に特化した就活サイト「アカリク」なら、企業から直接スカウトを受け取ることができます。まずは登録して、スカウトを待ってみるのもおすすめです。
公務員の求人は試験があり、自治体によって試験日時が異なります。もちろん、試験の準備もあるので早めに自分が受けたい試験の日程を把握し、逆算して対策をしましょう。
大学のキャリアセンター・教授などの紹介
特に理系の研究室だと教授が企業とのコネクションを持っていることもあるので確認しておきましょう。また、学科の推薦等で修士・博士課程対象のものを使うという手もあります。
それ以外にも大学のキャリアセンターには独自の求人やインターンの情報があることがあります。今までに使ったことが無ければ相談をしてみてはいかがでしょうか。
大学のキャリアセンターは無料でエントリーシートの書き方や面接対策等も行っているので、積極的に活用するべきです。
就職エージェントを活用する
就職エージェントは、応募の段階から入社までの間のバックアップを行ってくれるサービスです。
就職エージェントを活用するメリットにはおもに以下のものが挙げられます。
- 会員登録後の就職相談
- スキル・業務経験・希望条件に合った非公開求人の紹介
- 履歴書やエントリーシート(ES)などの書類作成のアドバイス
- 面接対策などの選考のフォローやアドバイスなど
求人の中には、広く募集をするのではなく、ピンポイントで候補者の方と1対1のマッチングをして採用したいというものも多くあります。
アカリクでは専門のエージェントがこうした非公開求人を多数扱い、修士・博士、ポスドクの方に個別にご案内しています。
ひとりひとりに専任のキャリアアドバイザーがつき、あなたに合ったキャリアを一緒に見つけていくことが可能です。ぜひ一度相談してみてください。
博士や修士の求人を早めにチェックして希望先に就職しよう
本記事では主に博士、博士研究員向けの求人や就職先などを紹介しました。
修士は学部卒とそこまで就活のスケジュールが変わりませんが、博士だと新卒採用の時期が通常よりも早かったり、博士向けの求人が就活サイトに載っていないこともしばしば見かけます。
就職したい企業が例年、どの時期に博士の採用活動をしているのかを把握し、その前後1か月くらいは採用ページ等をチェックするようにしましょう。
アカリクでは修士・博士人材を募集している企業だけの合同説明会を開催しているので、「どんな企業があるのか分からない」「自分のスキルが活かせる企業はあるのか」と考えている方は一度参加してみてはいかがでしょうか。意外な企業があなたのスキルを必要としているかもしれません。
また、非公開の求人もあるため、それらの情報を持っている就職エージェントや大学のキャリアセンターなどは積極的に活用しましょう。
この記事が読んでいるあなたのお役に立てれば幸いです。悔いのない就職活動をしましょう!