博士人材追跡調査とは何か?調査結果とともに紹介

研究・大学生活

 博士課程に入学を検討中の人、もしくは在籍している人は、自身の卒業後のキャリアパスを考えるうえで、参考情報が必要になると思います。博士課程を卒業している人はそもそもの人数が少なく、情報収集するのが大変なこともあるでしょう。

そこで今回は、博士人材追跡調査というデータにフォーカスして、博士課程を卒業した人の満足度や、どのような進路に進むのかを詳しくまとめました。博士課程に進んでからのキャリアに関する情報を探している人は、参考にしてください。

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博士人材追跡調査の概要

まず博士人材追跡調査とは、科学技術・学術政策研究所が公表している調査データのことです。なぜこのような調査を行うのか、どのように実施されるのか、調査の概要について詳しく見ていきましょう。

博士人材追跡調査を行う目的

博士人材追跡調査を行う背景には、国内の博士課程に進んだ人は海外の博士課程と比較すると、修了後の仕事探しに苦労するといった問題があります。

これらの問題を解決するべく、現状を数値化して課題を見つけるために作られたのが「博士人材追跡調査」です。一般的には「博士課程に進むと仕事が見つからない」といったイメージが今でもあるかと思います。

その実態を理解するためのデータとして利用できるのが「博士人材追跡調査」です。博士課程に進むか迷っている人が、実際に博士号を取得した人達がどんな道を歩んでいるのか知るきっかけにもなるでしょう。 

博士人材追跡調査は、博士課程に在籍している人や、博士に進もうとしている人、その他博士課程に関するデータが必要な人にとって、客観的な数値を根拠として利用できる役立つ情報源なのです。

 博士人材追跡調査の実施概要

博士人材追跡調査は2021年2月現在、2つの調査を行っています。調査の対象となるのは、平成24年度と平成27年度の博士課程修了者全員です。国公私立関係なく、全ての博士課程修了者が対象となっており、社会人や留学生も含まれています。

調査の方法は、初回は郵送もしくはメールで行っており、在籍している大学を介して回答者へ依頼を送っています。2回目以降については、該当者がWeb上で回答する仕組みです。

現在の調査頻度は3年に1回となっていて、博士課程修了後が初回、3年後に1回、6年後に1回というサイクルで実施しています。情報は個人の特定がされないよう管理されており、回答結果が大学へ届くようなことはなく、修了者の本音が見られることも大きな特徴です。

博士人材追跡調査第3次報告書の解説

ここからは、博士人材追跡調査第3次報告書の内容について解説します。内容は2020年の11月に公表されたもので、回答者の経済的負担や、博士号取得後の進路について詳しくまとめられています。

参考:博士人材追跡調査 第3次報告書

博士の取得状況と満足度

第2次報告書によると、博士号の取得状況は年を重ねるごとに増えており、2012年調査の対象者は、博士課程修了時の取得率が72.2%でしたが、修了から3.5年後には89.5%となっています。ただ分野別ごとに見ると、博士号の取得率が低いものもあり、理系や工学については高い水準です。

一方で人文、社会の分野では、3.5年目の取得率が6から7割に留まっており、博士号の取得まで時間がかかることがわかります。

また博士課程の満足度に対する設問では、5段階中4の「まあ良い」がもっとも多く、約5割ほどを占めています。中でも満足度が高いのは、学費の免除制度などを活用している人が多い外国人の学生です。その次に社会人学生、課程学生の順に満足度が低くなっていきます。

参考:博士人材追跡調査 第2次報告書

参考:博士人材追跡調査 第3次報告書

博士課程における経済的負担

博士課程における経済的負担では、全体のうちおよそ4割の学生が奨学金・借入金を利用している結果が出ています。特に、課程学生の中でその割合が多く、約6割の学生が奨学金、もしくは借入金を利用しています。

そして課程学生の借入金を使っている学生のうち、およそ7割の学生は300万円以上の借入金額になっており、経済的な負担は非常に大きいと考えられるでしょう。

対して社会人学生と外国人学生についてはおよそ8割が無借金で、借入金を利用しているのはごくわずかです。社会人学生は、入学前に働いて資金を貯めていたこと、外国人学生に関しては学費免除があることで、経済的負担が少なくなっているのでしょう。

博士の卒業後の進路

博士の卒業後の進路は、およそ半分が大学に雇われており、1割は公的研究機関、約3割は民間企業に就職しています。わずかですが非営利団体や個人事業主になる修了者もいることがわかりました。

調査には1.5年後、3.5年後、6.5年後のキャリアパスが載っていますが、比べてみても比率は大きくは変わっていません。基本的に大学に勤める人はそのままで、途中から民間企業へ転職する人の数は少ないことがわかります。

世間一般では「ポスドクや博士課程修了者でも民間企業へ転向できる」といわれますが、まだまだその選択肢が普及する余地はあるということでしょう。

博士のアカデミアへの就業状況

アカデミアにおける就業状況では、1.5年目にはポスドクが約3割、助教が約2割と大きな割合を占めており、3.5年後にはポスドクが減り、助教が3割となっています。

また准教授、特任教授、教授の割合も増えており、1.5年目には8%だったものが、3.5年目には14.8%とかなり多くなることがわかりました。

その後のキャリア展望については、全体のうち6割ほどが「アカデミアでキャリアアップしたい」と答えており、教授になるという志向が強いようです。ただ年齢を重ねるにつれてその割合は減っていて、30代、40代では「研究経験が活かせる仕事なら雇用先は問わない」と考える回答者の割合が増えています。

博士人材データベースも活用しよう

博士課程終了後のキャリアプランを立てる際に、博士人材データベースというシステムも参考になります。博士人材データベースとは、実際に博士号を取得した人が自分のキャリアを登録して、他の博士課程学生が情報を閲覧できるものです。

就活のOB・OG訪問と同じようなイメージで、博士学生に進む人が先輩方の話を聞きにアポイントを取ることも可能です。自分と同じ大学の博士課程修了者がどのような道を歩んでいるのか、タイムリーな情報をチェックできるでしょう。

2019年では47大学がデータベースに参加しており、登録者数は1万6千人にまでのぼります。多種多様な選択肢を見られることと、データとして活用できることが大きなメリットとされています。

また在籍者や修了者にアンケートを取った内容も発表されており「在籍時・修了時までにやっておけばよかったこと」といったテーマの回答も閲覧が可能です。博士課程の学生がキャリアプランを考える前に登録しておいても、損はないといえるでしょう。

まとめ

博士課程に進もうか悩んでいる人や、在籍している学生に向けて、参考として役に立つ博士人材追跡調査について解説しました。博士課程の修了者の情報は限られており、このようなデータをうまく活用することが、自身の進路を考える際に役に立つでしょう。

博士人材データベースなども利用して、情報収集をしながら、自身に合った道を選ぶことが後悔しないために大切なことです。将来について迷ったときは、まず先人が何をしているのか、また今のうちに何をやっておくべきかのかを知ることで、進みたい方向が見えてくるでしょう。

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