近年、時代の移り変わりによって終身雇用制度に変革が起きようとしています。
実際に、大手の民間企業企業でも45歳以上の希望退職を募る場合が増え続けており、終身雇用制度の崩壊が現実味を帯びてきています。
そんな中、大学のテニュア制度は雇い止めがなく、終身雇用が保障されているため魅力的に感じている方も多いのではないでしょうか。
最初からテニュアの大学教員として雇用されることが少なくなっている現在は、テニュアトラック制度のポジションに挑戦することが基本となります。しかし、このテニュアトラック制度にも審査があり、落ちる場合もあります。
今回は、テニュアトラック制度の審査で落ちることを予防するためにテニュアトラック制度の概要やテニュアトラック制度の審査についてだけでなく、気になる給与や問題点に至るまで詳しくご紹介します!
アカデミアに残るか民間企業に就職するか迷っている方、テニュアトラック制度の審査対策をしたい方はぜひ参考にしてくださいね。
テニュアトラック制度とは
テニュアとはなにか
テニュアとは、基本的に終身雇用(定年なし)が保証された教員の立場を意味します。
つまり、一度テニュアとして認められると、自ら辞職するか何らかの事情により大学から免職されない限りは雇い止めがなく、一生教員としての立場で働くことができます。
しかし、もちろん人事評価によっては給与額が年度単位で変動することもあります。また、基本的には大学の運営費交付金や安定した財源で雇用されますが、場合によっては自ら外部資金の調達を求められることもあり、いずれの場合も大学運営に貢献することが前提となっています。
そのため、一生教員としての立場が守られて雇い止めがないから安泰であるというイメージとは少し異なる部分がありますね。
日本でのテニュアトラック制度の概要
テニュアとして認められるためには、テニュアトラック期間中の審査をパスする必要があります。
テニュアトラック制度は博士号取得後10年以内の若年研究者が対象です。
テニュアトラック期間は基本的に5年間と定められており、その5年間の間にテニュアの立場になれるかどうかの審査が行われます。
このテニュアとテニュアトラック制度は、研究者が自立して研究に専念できる立場や環境を整備することを目的に実施されます。
また、文部科学省によると研究論文数1,000本以上の国立私立大学128校の内、テニュアトラック制度を導入済みの大学数は77校あり、年々増加傾向にあります。
テニュアトラック制度におけるテニュア審査の概要
前述のように、テニュアの立場になるためには、テニュアトラック期間中におけるテニュア審査が必要です。
テニュア審査で落ちることのないようにもしっかり内容を理解しておきましょう。
1.審査員
テニュア審査を行う方は以下のようになっています。
①学長が指名する理事
②人事委員会委員長が指名する採用予定係や総合教育院、研究所又は共同利用教育研究施設の教授
③人事委員会委員長が指名する上記以外の教授
④被審査教員の専門分野の教授
2.審査基準
審査基準は大学により異なりますが、以下の基準は多くの大学で採用されている審査基準です。
①専門分野の研究において、一定レベル以上であること
②専門分野の研究による外部資金獲得実績
③教育活動が適切で、十分に貢献しているか
④その他、専門分野研究の独創性や貢献性
また、審査基準だけでなく審査方法も大学によってことなります。
テニュアトラック期間の間、毎年面接や論文による成果報告を行って基準値を満たしているかどうかを審査する方法を採用している大学が多いです。
しかし、大学の中にはテニュアトラック期間の間の活動についてメンターの報告書を参考にして審査に反映させる場合や審査回数も異なります。
このように、審査員や審査基準、審査方法は厳密には大学により異なるので上記を参考にしつつ、志望先の審査について確認することでテニュアトラック制度での落選を防いでいきましょう。
テニュアトラック制度のメリットとデメリット
次にテニュアトラック制度のメリットとデメリットについて見ていきましょう。
テニュアトラック制度を大学が採用するメリット
まず、大学側がテニュアトラック制度を採用するメリットは2つあります。
1.優秀な若手研究者を採用することができる
前述にも記載の通り、大学側はテニュアトラック制度を通してじっくり研究者を審査することができます。
そのため、優秀な研究者をより確実に採用することができるのでテニュアトラック制度は大学にとっても魅力的です。
2.外部資金獲得が増える
また、テニュアトラック制度を受けている研究者は一般的な若手研究者に比べて科学研究費補助金の採択率が高くなっています。
これは、テニュアトラック制度を受けている研究者が優秀というだけでなく、外部資金獲得がテニュア審査基準となっていることが多いため、外部資金獲得努力を惜しまないと言った性質があるためと考えられています。
大学側にとって外部資金が増えることは間接経費等の収入が増えることにもつながます。
テニュアトラック制度により研究者が得るメリット
一方でテニュアトラック制度により研究者が得られるメリットは3つあります。
1.実績があれば安定した立場で仕事ができる。
2.充分な研究費が分配されて、自立した研究環境の中で自分の研究に取り組める。
3.研究以外の業務が軽減されて充分な研究時間が確保される。
このように、実績を積むことができれば、研究者としての研究費や時間を充分に確保することができて専念することができるだけでなく、テニュアトラック制度の審査を通過することによって、雇い止めがない安定した立場で仕事ができます。
このようにテニュアトラック制度には、大学側、研究者側の双方にメリットがあることが分かりました。
では、テニュアトラックには問題点があるのでしょうか。
その点も詳しく見ていきましょう。
テニュアトラック制度が抱える問題点
テニュアトラック制度の問題点は4つあると言われています。
1.大学院生や大学のスタッフの給与が各主任研究員の研究費でまかなうアメリカとは異なり、大学が負担となるので人事構造の流動性が少ない
この点は一見、メリットのように思えますが、人事構造の流動性が少ないということはテニュア不採用の場合、新しい職を得ることが難しいです。
2.研究員として独立しているかを審査するためには、現在の研究環境は最適とは言えない可能性がある。
具体的には、外部研究費用の獲得や論文のシニアオーサー数を増やすことがアメリカに比べて難しい点があると言われています。
3.テニュアの審査を通過した途端、大学や研究への貢献度や教育活動への取り組みが低下する者もいる
テニュア制度は基本的に雇い止めがない終身雇用制度のため、貢献度や取り組みが低下してもその地位が保たれます。
そのため、貢献度や取り組みが低下したテニュアを雇い続けることが大学にとって負担になる可能性があります。
テニュアの給与は年度ごとに変更することができるため負担額を減らすことができるとは言え、このような負担があることは大学にとって大きなデメリットと言えますよね。
まとめ
今回はテニュア制度やテニュアトラック制度の概要や審査、その問題点まで解説しました。
最後に記事の内容をおさらいしましょう。
1.テニュアとは、終身雇用の大学教員の立場を意味する
2.いま若手の研究者がテニュアになる方法として、テニュアトラック制度がある
3.テニュアトラックの審査は、研究のレベルや外部資金獲得実績など様々な基準があり大学により異なる
4.テニュアトラック制度は大学側にも研究者側でも 研究に専念できるという点でのメリットが大きい
自分の研究に専念できて、安定した仕事がある点が魅力的ですよね。
ぜひ、今回の記事を参考にして大学教員という選択肢もキャリアの候補に入れて検討していきましょう!