あのときの一言(2)「自信持って行ってきたらいいと思うよ」

博士の日常
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挨拶

こんにちは。みっつです。

今回も、大学院生活やその後の社会人生活の中で出会って印象的だった言葉について振り返ってみます。

当時の気持ちをできるだけ思い出しながら書いてみて、なぜその言葉が当時の自分にとって重要だったのか、改めて考えてみようと思います。

似たような気持ちでモヤモヤしている方や、あるいは「周りに悩んでいる人がいるけど、どう声をかけたらいいか分からない」というような方に届いてくれるといいなと思っています。

今回紹介する一言

大学院生の頃に指導してくださっていた准教授の先生からかけて頂いた

「自信持って行ってきたらいいと思うよ」

という一言について書くことにしました。

少ししんどかった時期についての話になるので、読んで面白いものになるかは分かりません。ですが一人の体験を共有するという連載をさせていただく上では捨て置けないエピソードだと感じるので、書いておこうと思いました。見苦しく感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、よろしければお付き合いください。

あの時

当時の僕は大学院の博士課程2年生。冬、年が明けた頃だったと思います。さぁ進路がこれから決まるぞという時期です。

幸い卒業の目処は立っていたものの、研究については相変わらず迷走。「なにかすごい研究を世の中に残したい」という漠然としたモチベーションと、同時に周囲から要求されるレベルの高さ。これらと自分の実力とのギャップを突きつけられ続けて、だいぶ参っていた時期でした。

前歯が一本折れて差し歯になったり、内視鏡の手術を受けるために数日入院したり、他にも友人やラボメンバーの体調不良や親族の他界など、その頃の一年間で研究以外でも大小立て続けに色々あったのも大いに関係していたと思います。

毎朝きちんと学校に行って、コアタイムの間は熱心に研究活動をする。このためのエネルギーはほとんど残っていませんでした。始業後にふらっと登校して、静かに一日過ごして帰るような生活をしていたと思います。もともと人に誇れるような生活を送っていたわけではない自覚はありますが、この頃に関して言えば「エネルギーが残っていない」まさにそんな感じでした。

「生涯を捧げたいと思えるような研究にはまだ出会っていないし、ひとまず研究室・アカデミア以外の世界も見てみたい」と就職活動をすることを決めたものの、とても学業と並行して就職活動をするのは無理だと判断しました。研究そっちのけで、自己分析や書類作成をしながら過ごしていました。

志望していた企業の最終選考にまで進むことができ「面接があるので〇〇日に休みをとります」と研究室スタッフの方々にメールを送った日の事でした。

准教授の先生から呼び出されて「研究サボって音沙汰もなく就職活動をしていて、突然面接で休みますの連絡はないだろう。何も聞いていないし、そもそも最近の君の生活はおかしいぞ」と注意を受けた時の話です。

詳細な会話の内容はあまり記憶にないのですが、こっぴどく叱られたと記憶しています。その時の感情としては、まともな研究生活を送れていないことに自分が一番納得いっておらず、後ろめたい気持ちになりながら過ごしていたという部分を真正面から指摘され、とても苦しかったのを覚えています。

その日、話の最後に

「まぁでも面接はとりあえず受かってくればいいし、それだけの実力もあると思う。自信持っていってきたらいいと思うよ」

と言ってもらったことはすごくよく覚えていて、その後も何度も思い返しています。

それだけで心が軽くなったとまでは言えないですが「なんだ、そうなのか」と感じた覚えがあります。

その後、面接も無事通過して、現在はその時に受けた企業で働いています。

「あのまま自信がないまま後ろめたい気持ちで面接にのぞんでいたら。結果の是非に関わらず、残りのラボ生活も含めてどうなっていただろう」と今もたまに考えます。本当にいいタイミングで声をかけてもらえたな、と思っています。

今の解釈

要約すると「自信持って行ってきたらいいと思うよ」と言ってもらえて、本当に自信がついちゃったという、なんとも単純な話です。

指導した学生が就職に失敗するのは教員としても困るので、それ以上は言いたいことをのみ込んで、その場ではなんとか元気づけるように話してくれたのかもしれません。

どんな背景があったにせよ僕にとって重要だったのは、その日の最後にこの一言をかけてもらえたことでした。

やはり信頼している人が発する「君ならできると思う」という激励の言葉ほどエネルギーになるものはないと思います。この准教授の先生のように、自他に厳しく、客観的に物事をみる能力に長けている人からの言葉は特に素直に受け取りやすいと感じます。

追い詰められている状態の時は、できていないことばかりに目が向いてしまいやすいので、自分に何ができていて何ができていないのかを一度引いて眺めてみる必要があるのかもしれません。僕の場合は、他者の意見を聞いてみることがそのための方法の一つなのかなと考えました。

根拠なく「君ならできる!大丈夫!」と言ってくれるような人も重要だと思いますが、この時の僕は「この人がこうして言ってくれるのなら、そうなのかもしれない」と強く感じました。単に励ますというよりは「俯瞰して判断した意見を伝えてくれている」というニュアンスで伝えてくれたことがこの体験の肝だったのかなと思います。

その後の意識と、この記事を読んだ方へのメッセージ

この出来事から一つ気がついたことは、必要以上に自信喪失する必要はないということです。僕の場合は、たまたまかけてもらった一言がきっかけでしたが「できないと思わない」だけでうまくいってしまう事も意外と多いのかもしれないと感じています。

目標やモチベーション、他人からの期待などは、自分一人で向き合い続けていると、必要以上に高いものとして意識してしまうことが多いです。わざわざ一度怒られるオプションは必要ないと思いますが、ときどき他者の意見を取り入れることは重要だと感じます。客観的な自分を再確認して、いま足りていないことは何なのか、そして目標に少し近づいてきた部分はどこなのかを考え直すことも大事なのかもしれません。

いま改めて振り返りながらも感じていますが、意思決定や自分の行動に影響の出るほど自信がない状態は、健全ではありません。そういう時は他者の考え方を借りたり、自己分析をしたり、なにかきっかけになりそうな本を読んだり、どういう方法でもいいので一度ゆっくり時間をとってみて、今できていることと、できてないなくて困っていることを仕分けしてみてください。それぞれの面とうまく向き合っていけばいいのかなと思います。

ある研修の終わりに講師の方が「成長し続けていく皆さんです」とおっしゃっていました。自分の成長に対して寛容であり続ける術を身に着けておくのは大事だと思います。

この出来事を経験してもう一つ気がついたことは「自分も誰かに影響する声をかけてあげる立場かもしれない」ということです。それからというもの、周りの人を励ます言葉を口にすることが増えたと思います。

軽々しく人を励ますのも印象が良くないのしれないと思いつつも、もしかするとその一言が相手をすごく元気づける事になるかもしれないという気持ちが勝るようになりました。「自信もって大丈夫だと思うよ」と悩まず声をかけてあげられるようになりました。思うところがあったときには、後輩や同期、時には先輩にも、素直に伝えるようにしています。

特に大学院生のうちは、上司と呼べる人が総じて一つのコミュニティに属していることが多く、多様な意見や評価をなかなか受け取れない環境になることが多いと思います。

狭い界隈の中だと、ある一つのかけられた言葉が、受け取った側が何か判断をする根拠になってしまいやすいのではないでしょうか。できればそこでかけられる言葉は、人を励ましたり元気づけるような言葉であってほしいものです。

もし、後輩がついている方や、学生を指導している方、部下をもっている方がこの記事を読んでいるとしたら、自分がどんな言葉をかけてあげられるかを考えてみてほしいと思います。「私の一言は、相手にとって重要なものになるかもしれない」と意識しながら、一言声をかけてあげてみてほしいというのが、この記事を通した個人的な願いです。

何も考えずに根拠なしで伝えるよりは、なんでそう思ったのか、何をもってそう判断したのかを一言添えるようにするともっといいのかも知れないなと、僕自身もこの記事を書いている中で改めて気がつきました。

終わりに

今回の記事は以上です。当時の感情を思い出すのは少し苦しかったところもありますが、書いてみることで自分が自信を取り戻せた仕組みについて理解が少し深まった気がします。読んでくださった方の何かのきっかけになりましたら幸いです。最後まで読んでくださってありがとうございました。

<筆者について>

みっつ(工学博士)。超分子化学、光化学に関わる研究で博士号取得後、国内メーカーに就職。基礎研究や商品/サービス開発、最近は新規事業の立ち上げにも従事。仕事以外の時間はSciKaleidoというチームにて「科学をエンタメ化したバーチャルコンテンツ」を開発中。

SciKaleidoについて: https://sites.google.com/view/scikaleido

筆者について: https://twitter.com/Mittsujp

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