イグノーベル賞とは?面白い研究や日本人の受賞例とともに解説

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「イグノーベル賞」という賞を、一度はテレビなどで見たことがある人は多いと思います。一風変わった研究が受賞している、というイメージが強いかもしれません。

実際はどのような研究が受賞しているのでしょうか?

今回の記事では、イグノーベル賞について概要を解説しつつ、これまでの受賞例についてもいくつか解説します。

この記事がイグノーベル賞への理解の一助になれば幸いです。

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イグノーベル賞とは

イグノーベル賞とは、一言でいうと「人々を笑わせ、そして考えさせる業績」に対して贈られる賞です。「イグノーベル(Ig Nobel)」という名前は、ノーベル賞の創設者であるアルフレッド・ノーベルの姓に否定的な接頭辞「Ig」をつけた造語で、「下等な、下品な、見下げた」という意味の「ignoble」を掛けたジョークになっています。

イグノーベル賞は、1991年にイスラエルの科学関係雑誌『The Journal of Irreproducible Results(再現不能な結果ジャーナル)』の編集者 マーク・エイブラハムズ 氏によって創設されました。 

イグノーベル賞は毎年10組に送られる

イグノーベル賞はノーベル賞と同じ化学、平和、物理学、医学生理学、文学、経済学といった部門のほかに、公衆衛生学、昆虫学、心理学など本家のノーベル賞にはない部門も随時追加されています。

非常にユーモアあふれる研究が多い一方で、水爆の発明者であるエドワード・テラーが「一般とはまったく違った意味を『平和』に与えた業績を称えて」91年度のイグノーベル平和賞を授与された、といった強烈な皮肉が受賞理由に含まれている場合もあります。

ノーベル賞とは

イグノーベル賞のもとになったノーベル賞はダイナマイトの発明で知られるアルフレッド・ノーベルの遺言に従って創られた賞で、化学、物理学、医学生理学、文学、経済学、平和の5つの部門からなります。

なお、ロシア生まれのオランダ人物理学者であるアンドレ・ガイムは2010年に「炭素新素材グラフェンに関する革新的実験」でノーベル物理学賞を受賞し、2000年に「カエルの磁気浮上」でイグ・ノーベル賞も受賞しています。このようなノーベル賞、イグノーベル賞の同一人物が受賞している例は2021年現在ただ一人となっています。

イグノーベル賞の選考と授賞式とは

イグノーベル賞は受賞する研究のユニークさだけでなくユーモアと笑いにあふれた授賞式も大きな特徴の一つです。

ここからは選考と授賞式の内容について解説します。

選考

イグノーベル賞は5000を超える業績の中から何段階かの選考委員会を経て選定されます。「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に合致する内容から毎年9月または10月に10名の個人または団体に授与されます。

授賞式

新型コロナウイルスの感染が拡大する以前は米国のハーバード大学にて授賞式が行われ、ノーベル賞受賞者も「プレゼンター」として登壇していました。

また、受賞者の旅費や滞在費は自己負担で、授賞式の公演では聴衆から笑いをとることが求められます。

受賞者は入場の際1本の長いロープ紐を握って一列になって壇上に上がります。

これは幼稚園のお散歩のパロディになっているようです。

また、研究の発表する場面では制限時間が60秒と定められています。

制限時間が過ぎると、『ミス・スウィーティー・プー』と呼ばれる進行役の8歳の少女が登場し「もうやめて、私は退屈なの(Please stop. I’m bored.)」と連呼し、発表が強制的に終了となります。

聴衆は授賞式の初めに全員が紙飛行機を作り、投げ続けるのが慣例となっています。

そして、その掃除のためのモップ係は、ハーバード大学教授のロイ・グラウバーが例年務めています。

賞金は基本的にはありませんが、2015年から2017年は受賞者に10兆ジンバブエドルが授与されました。

なお、この時点で10兆ジンバブエドルに貨幣としての価値はありませんでした。

また、個人の業績に関係した副賞が授与されるようです。

ちなみに、2020年度以降は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により授賞式はオンラインで行われています。

2021年度の受賞例を紹介

それでは具体的にどのような研究が受賞しているのでしょうか。

ここでは最新の2021年度の受賞例をいくつか紹介したいと思います。

生物学賞:ネコの多種多様な鳴き声を音響学的に分析した研究

生物学賞はネコの鳴き声をイントネーションの違いから19種類に分類出来ることを示したスウェーデンの研究者が受賞しました。

この研究によって、人間がネコの鳴き声の違いからネコの意思を識別できる可能性が示唆されました。

なお、受賞者はネコ耳をつけて授賞式に臨んだそうです。

参考:Schötz, S., Eklund, R., & van de Weijer, J. (2016). Melody in human–cat communication (meowsic): Origins, past, present and future. In Fonetik2016 (pp. 19-24).

平和賞:人間は人間同士の争いから顔を保護するために口ひげを生やしたという研究

男性のあごにひげがついているのはなぜでしょうか。

この謎について、受賞者たちは人間同士の戦闘で顎へのダメージを減らすためであると仮説を立てました。

医療が未発達な古代では下あごの骨折は深刻なけがになります。

そこでこの仮説を示すために口ひげの代わりに羊毛を使い落下衝撃試験を実施したところ、羊毛によって衝撃のエネルギーが約37%吸収されたそうです。

また、こちらも受賞者は口ひげをつけて表彰式に臨んだようです。

参考:Beseris, E. A., Naleway, S. E., & Carrier, D. R. (2020). Impact protection potential of mammalian hair: Testing the pugilism hypothesis for the evolution of human facial hair. Integrative organismal biology, 2(1), obaa005.

  

輸送賞:サイを運ぶ時は逆さ吊りにする方が健康に良いという研究

密猟によって個体数が減少し、近親交配することを防ぐため、アフリカではサイを遠方の生息地に輸送するという活動が行われてきました。

アフリカの地形は起伏が激しいためトラックでの輸送が難しく、輸送手段として空輸が行われていました。

この時の空輸の方法として、逆さ吊りにすれば、脊椎が伸びて気道が増えることで呼吸量が増えて、サイの健康に良いことが示唆されました。

参考:Radcliffe, R. W., Jago, M., Morkel, P. V., Morkel, E., du Preez, P., Beytell, P., … & Gleed, R. D. (2021). The pulmonary and metabolic effects of suspension by the feet compared with lateral recumbency in immobilized black rhinoceroses (Diceros bicornis) captured by aerial darting. The Journal of Wildlife Diseases, 57(2), 357-367.

動力学賞:歩きスマホが周りの歩行者の通行にも影響を及ぼすという研究

こちらの研究は京都工芸繊維大学の村上久助教と東京大学先端科学研究所センターの西成活裕教授ら日本人のグループが受賞しました。

向かい合った27人がまっすぐ歩くとき、先頭の人がスマートフォンを操作しながら歩行すると、本人だけでなく周囲の人も歩行の向きや速度が乱れることを明らかにしました。

参考:時事通信映像センター「歩きスマホが集団乱す 「相互予期」でイグ・ノーベル賞」 

日本人は15年連続で受賞している

イグノーベル賞は日本人の受賞者が多く、1992年に資生堂の研究チームが「足のにおいの原因物質の特定」という研究で医学賞を初めて受賞しました。

そして、2007年以来日本人は15年連続で受賞しています。

ここからは、日本人が受賞した例をいくつか紹介します。

実用化につながる研究も多い

「イグノーベル賞の研究は一見すると役に立たない」というイメージを持つ人もいるかもしれません。

しかし、実際にはイグノーベル賞を受賞した研究が商品となって社会に貢献しているケースもたくさんあります。

例えば、日本人のチームが開発したわさび警報器(2011年化学賞)や涙の出ない玉ねぎ(2013年化学賞)は商品化されています。

参考:REUTERS「イグ・ノーベル賞、「わさび火災警報器」で日本人7人受賞

参考:ハウス食品株式会社「玉ねぎ研究でのイグノーベル賞受賞について

たまごっち(1997年)

1997年、たまごっちの開発者が「膨大な労働時間をバーチャルペットの飼育時間に費やさせた」として経済学賞を受賞しました。

初代たまごっちは1996年に発売され大ヒットしましたが、当時では珍しい飼育ゲームであったことから、少し皮肉的な意味があったのかもしれません。

カラオケ(2004年)

2004年、カラオケを考案した井上大祐氏が「お互いの曲をじっと聞くような、忍耐強さを鍛える新しい方法を編み出した」として平和賞を受賞しました。

なお井上氏は、世界で初めてカラオケを考案したわけではなく、ビジネス化に成功した人物であると言われています。

日本人とイギリス人に受賞者が多い

イグノーベル賞は日本人とイギリス人が受賞者の常連となっています。

例えばこれまでに「映画『スターウォーズ』をみたバッタは興奮するか」という研究でイギリス人研究者が平和賞を受賞しました。

日本人やイギリス人に受賞者が多い理由として、イグノーベル賞創始者のマーク・エイブラムズ氏は以下のように述べています。

「世界の大半の国では、変わった行動をすることは悪いことと思われます。そういう評判がついてしまうと、罰せられることだってあります。しかし、日本とイギリスは伝統的に違う。

日本には変わった人が多いです。変わった人が1人いると隣近所は快く思わないかもしれない。でも、他の皆さんはそれを誇りに思うんです。『変わった人は、我々みんなの変わった人だ』と。

だから、日本とイギリスでは、長い発明をしてこられたと思うんです。素晴らしいクレイジーに見えるものを壊さずに生かし、重宝してきたんです」

引用:FNNプライムオンライン「日本には変人が多い!」 イグ・ノーベル賞の創設者が見たニッポン人

このような型にはまらない研究が大きなイノベーションを起こすこともあるといえます。

 

歴代の受賞テーマにはユニークな研究が多い

日本人以外の受賞でも面白い研究がたくさんイグノーベル賞を受賞しています。

以下のリンクは英語版ではありますが、これまでの受賞者とそのテーマが記載されています。

これまでにどのような研究が受賞しているのか調べてみるのも面白いかもしれません。

参考:IMPROBABLE RESEARCH 「Past Ig Winners

まとめ

今回はイグノーベル賞についてその概要や受賞例をご紹介しました。

「笑えて、考えさせられる」という選考基準を通して、イグノーベル賞は多くの人にとって難しく関係が薄いと考えられがちな「研究」や「科学」を身近なものにしていると言えます。

この記事やイグノーベル賞への理解を通して、みなさんの科学や研究への興味に繋がれば幸いです。

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【監修】アカリクお役立ちコンテンツ編集部
博士号所持者/博士課程在籍経験のある編集者が監修しています。

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