修士号取得のためには、研究を行って修士論文を書くことが必要である場合がほとんどです。
修士課程の学生にとってはここで初めて本格的な研究論文を書くという人も多いでしょう。
序論は自分の研究を行うに至った背景を説明する重要な部分ですが、修士課程学生のように、研究分野に入ったばかりの時には難関ともなります。
先行研究を理解するために膨大な量の論文を読み、まとめ、自分の研究を行う理由を説明しなければならないからです。
本記事では、修士論文の序論の書き方について解説します。
修論を書き始めるにあたって、「修士論文がやばい!」、「ちゃんと書き切れるか不安…」と感じる人も多いかもしれません。
どこから始めればよいかわからないときはこの記事を参考にしてください。
序論は一日にしてならず
修士論文の序論が大変な理由は主に2つあります。
- 研究分野に入ったばかりで先行研究の読み込み量が少ないため
- 学術的な文章の書き方に慣れていないため
これに対する近道はなく、学術論文を書くことで経験値を上げていくしかありません。
最初の草稿を書いたあとは、指導教官のチェックが入り、また修正作業に入ります。
複数の学生を抱える指導教官が、すぐに見てくれるとは限りません。
加えて修士論文などのフォーマルな文書は、体裁のルールが確立していることが多く、体裁を整えることにも時間がかかります。
そのため、修士論文は一日、二日で書けるものではないことを念頭に置き、締切日から逆算して、余裕をもったスケジュールを立てましょう。
まず自分の研究内容を理解する
そもそも自分の書く研究内容が理解できていないために序論が書けない、というのは研究者駆け出しの修士の段階ではよくあることであり、誰もが通る道です。
したがって、研究内容を理解することは簡単ではなく「重要課題」だと認識する必要があります。修士課程はそのためのトレーニング期間です。
研究内容を理解することは、手を動かしてデータを集めること、ソフトウェアを使って統計解析結果を得ること、といったスキル習得とは異なるものです。
「なぜこの研究を行うのか」、「なぜこのデータを集めるのか」、「なぜこの手法を使うのか」といった「なぜ」をきちんと説明できるようになった時、研究内容を理解したことになります。
そのため、序論の執筆準備は、関連のある先行研究を読み込むことから始まります。
修士課程1日目から始められること―自分の参考文献リストを積み上げる
参考文献リストとは、読んだ参考文献(論文、書籍など)と、その内容を自分でまとめた要旨のセットのことです。
文献を読む際に、ただ読むだけではなく、自分なりの要点・要旨を書くという点が重要です。内容を要約することで初めて、自分の序論の文章の中に織り込むことができるためです。
また自分の言葉で書くことで、剽窃・盗用を防ぐことができます。
自分なりの要旨には特に字数制限を設ける必要はないでしょう。
重要な点が多ければ長くなりますが、文献の内容によっては一文で済む場合もあります。
リストは紙媒体でもよいですが、後々単語検索ができるように、ワープロアプリや文献管理ソフトでまとめておくほうがよいでしょう。
また、文献の出典が分かるように、doi またはURLを記録しておきましょう。
こうして積み上げた文献リストは、文献を引用して序論を書くときに非常に役立ちます。
インプットして初めてアウトプットができる、というわけです。
これは修士1日目から始めるべきであり、積み重ねがものを言います。
自分の参考文献リストを積み上げることで、自分の研究の解釈がしやすくなり、他の研究者とのディスカッションも面白くなってきます。
先行研究を調べるために論文を探したり、またそれを上手に管理したりするためのポイントについてはこちらの記事を参考にしてください。
序論の流れと含める内容
序論は、本研究(自分の修士研究)を行う背景、過去の研究で明らかになったこと、まだ明らかになっていないこと、そして本研究で明らかにすること、という流れで書くとよいでしょう。
研究の背景
研究の背景では、なぜこの研究を行う必要があるのかを説明します。
この研究を行うことにより、社会のどのような問題解決ができるかを説明する箇所です。
したがって、かなり俯瞰した視点で書き始めます。
研究テーマによって書くべき内容は異なりますが、例えば、
- 環境問題を解決するため
- 工業生産の効率を向上させるため
- 教育の質を向上させるため
- 歴史から学び未来をより良くするため
などです。
大げさに聞こえるかもしれませんが、必ずしもその分野の専門家ではない読者にも自分の研究を理解してもらうためには重要な部分です。
先行研究で明らかになったこと
問題解決のためにこれまで行われてきた先行研究から、現在までに明らかになっていることを示します。
ここで先ほど述べた自分の参考文献リストが活躍します。
序論を書く頃には、リストが膨大になり、どこから話を始めてよいか迷うかもしれません。
その場合は、自分の修士論文の研究に最も関連のある部分から始めましょう。
序論はあくまで自分の修士論文の研究の導入部分ですので、一般的には重要な事項であっても、のちに続く方法、結果、考察に具体的に関係がなければ、優先順位は低いと言えます。
しかしながら、修士論文の序論をどのくらい書くかは研究分野、研究室、指導教官の方針にもよります。
自分の研究内容以上に先行研究を網羅することを求められることもあるかもしれません。
その場合には、序論をいくつかの節に分け、トピックごとに論じるようにしましょう。
節ごとに触れる内容についてリスト化しておけば、話題が逸れることなく一貫した文章を書くことができます。
本研究の目的
次に、過去の研究でまだ明らかになっていない点を示します。
その上で、修士論文の研究の目的と方法を簡潔に述べます。
ここでいう目的とは、「環境問題を解決する」というような大枠のものではなく、「~~が〇〇に与える影響を△△によって調査する」などの具体的な研究目的のことです。
ここが序論の最後の部分となりますので、次の「方法」にスムーズに繋がるようにしましょう。
論文の構成
内容が複数の章に及ぶ場合や複雑に込み入っている場合には、序論の最後に各章ごとのトピックを示すと全体像が見えて分かりやすいでしょう。
具体的には、
「本研究では、トピック1、トピック2、トピック3を検討した。」などです。
読者の全員が、あなたの修士論文を初めから終わりまで通して読んでくれるとは限りません。
必要な部分だけを拾い読みされる場合も考えられますので、構成がしっかりと分かるようにすると親切です。
注意点
序論は導入部文であるため、結果・考察など、具体的な研究結果は入れません。
背景・過去研究・本研究の目的のみを論じます。
また、これは修士論文の序論だけでなく、全ての箇所の執筆にあてはまることですが、他の参考文献や、自分が以前に発表した文献についても、全部または一部をそのままコピーペーストする行為(剽窃・盗用)は禁止です。
剽窃・盗用に関するルールは国際的に厳格で、処罰につながる場合があることを知っておきましょう。
また、引用の際は「孫引き」についても注意が必要です。孫引きについてはこちらの記事を参考にしてください。
序論は最後に書くと書きやすい
序論は、修士論文の中でも序盤にありますが、実際に書くのは、自分の研究が終わり、方法、結果、考察といった他の部分を全て書き終えてからの方が書きやすいかもしれません。
研究を進めていくうちに研究の方向性が変わり、研究の方法が変わってくることもありますし、他の研究者の研究が進んで、紹介する文献に加えるべき重要な論文があとから出てくるかもしれないからです。
そのため、序論を最後に書くことで、過不足のない導入部分を書くことができ、書き直しを最小限にすることができます。
もちろん、自分の参考文献リストの作成は修士課程を通して、論文を読むたびに行っておくべきです。
指導教官とのディスカッションを念入りに
研究分野、研究室の方針にもよりますが、修士課程の研究テーマは指導教官から与えられることがほとんどです。
指導教官は、指導している学生の行う修士論文の研究の筋道(なぜ、何を、どのようにするのか)が見えているはずです。
そのため、はじめのうちは特に、頻繁に指導教官とコミュニケーションを取って、指導教官のビジョンを理解するように努めましょう。
指導教官が忙しそうであれば、博士課程の学生やポスドクに聞きましょう。
研究背景を説明する序論の執筆に役立ちます。
また、博士課程の学生やポスドクも数年前にはもちろん修士論文の執筆を経験しています。
博士課程の学生やポスドクの先輩方と話をすることで、修士論文に関するアドバイスがもらえて、自分の研究自体もうまくいく可能性が高くなります。
データのバックアップは忘れない
修論は時間と労力をかけて作成しているからこそ、データのバックアップはこまめに行うようにしましょう。
著者の身の回りでも、修論の完成を目前にしてパソコンが壊れたり、データが破損するという事態をこれまでに何度か目撃してきました。
具体的には、データはUSB、デスクトップ、Google ドライブなど複数の場所に保存しておき、可能であれば1日1回はバックアップを取りましょう。また、内容を修正する場合は別名で保存するなどして修正箇所が分かりやすくなっていると良いです。
完成目前で努力が水の泡となるような最悪の事態に陥らないように前もって対策を怠らないようにしましょう。
まとめ
この記事では修士論文の序論の書き方について紹介しました。
序論は、「なぜ本研究を行うのか → これまでに何が分かっているか → まだ分かっていないことは何か → 本研究で明らかにしたいことは何か」という流れとなります。
序論をスムーズに書くためには、まず多くの文献を読むことが必要です。
文献を読む中で作成した自分自身のオリジナルの参考文献リストは序論を執筆する際に非常に役に立ちます。
また、指導教官や博士課程の学生、ポスドクの先輩方ともディスカッションを行いながら研究を進めていきましょう。
修士論文の序論を書くのは大変ですが、研究の内容が分かれば分かるほど面白くなっていきます。そしてその面白さを理路整然と伝えることができるのが序論であるとも言えます。
読者が、あなたの研究に興味を持ち、研究結果を読みたいと思うような序論にしましょう。
修士論文を無事に出し終えた後に訪れる次の難関である口頭試問についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
修論と就活を両立させるならアカリクがおすすめ
修士論文は一朝一夕に完成するものではなく、完成までには多くの時間と労力を費やす必要があります。
そのような修士論文の執筆と就職活動の両立するために、アカリクを活用することをお勧めします。
大学院生・理系学生に特化した就活サイト「アカリク」はスカウトやオンライン就活イベント、キャリアアドバイザーへの就活相談等、効率の良い就活を実現するサービスが満載です。大学院生や理系学生など研究に忙しい学生の方でも簡単に短期間で内定を獲得できる就活サービスです。
アカリクを使うことで、研究も就職も妥協せずに両立することができます。
まずは簡単な会員登録からはじめてみませんか?
修論と就活の両立はエージェントを活用しよう
この記事を読んでいる人の中には、修論を書きながら就職活動を進めている人もいるかもしれません。忙しい研究の合間を縫って就職活動を行うのはとても大変なことです。
そのようなときは就職エージェントを活用するとよいでしょう。
アカリク就職エージェントは企業とあなたの間に立ち、就職をサポートするサービスです。 ひとりひとりに専任のキャリアアドバイザーがつき、あなたに合ったキャリアを一緒に見つけていくことが可能です。
また、研究内容を登録するだけでスカウトが届くので、就活に時間を取られることなく、修士論文の作成に時間を費やすことが出来ます。
プロから客観的なアドバイスをもらえることで自分自身がやるべきことが明確になり、効率よく就職活動を進めることが出来ます。