修士論文の口頭試問までのスケジュール、形式や問われる内容、応答のコツについて解説

研究・大学生活

修士課程に在籍する大学院生が「修士論文」を執筆したあとに実施されるのが、「口頭試問」です。

大学院入試や就職活動において面接や面談という言葉はよく聞きますが、大学院における「口頭試問」はあまり馴染みのない言葉だと思います。

読者の皆さんも口頭試問には漠然としたイメージしかわかないのではないでしょうか。

しかし、修士論文の口頭試問は修士号を得るためには避けては通ることのできない非常に重要な試験の一つです。

修士論文の書き方に関する情報は、大学院での講義や書店に並ぶ書籍、インターネット記事によって得られますが、「口頭試問」に関する情報については手探りの方も多いと思います。

本記事では、修士論文における「口頭試問」までのスケジュールや形式・内容、応答のコツについてくわしく解説していきます。

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修士論文執筆に伴う口頭試問について

修士課程に在学する大学院生のほとんどが修士論文を執筆します。

論文執筆後に実施されるのが、指導教員を主査、副指導教員等を副査とする「口頭試問」です。

執筆した修士論文について、主査・副査の先生方からいくつか質問を受け、論文の著者として的確に応答することが求められます。

大学院側は、修士論文の内容と口頭試問の結果によって修士号取得のために必要な要件を審査するのです。

では、まずどのような日程で口頭試問が実施されるのでしょうか。

口頭試問のスケジュール

口頭試問のスケジュールは所属する大学院によってスケジュールが異なりますが、3月修了予定の場合は、大体1月~2月頃に行われることが多く、9月修了者の場合は7月頃に行われるようです。

ここでは例として、早稲田大学大学院の日本語教育研究科と東京大学大学院の理学系研究科の修士論文提出から口頭試問までのスケジュールを紹介します。

早稲田大学大学院の日本語教育研究科では、3月修了者の場合、修士論文を12月中旬に大学院に提出後、2月上旬に口頭試問が実施されるスケジュールとなっています。

口頭試問を経て、3月上旬に成績発表(修士課程の修了判定)が行われます。

9月修了者の場合、修士論文を6月中旬に大学院に提出し、7月下旬に口頭試問が行われます。

成績発表は、9月上旬となっています。

修士論文の提出から口頭試問まで約2ヶ月の期間が設けられていますので、この間に口頭試問に向けた準備をすることになります。

次に、東京大学大学院の理学系研究科では、3月修了者の場合、修士論文を1月中旬に大学院に提出後、2月の初旬に口頭試問に代わる「修士課程業績報告会」が実施されます。

口頭試問は3日間で開かれ、そのうち参加日を大学院側から一日指定されるようです。

9月修了者の場合、修士論文を7月初旬に大学院に提出し、7月中旬に前述のとおり「修士課程業績報告会」が実施されます。9月修了者の口頭試問については一日で実施されるようです。

修士論文の提出・口頭試問の日程の詳細は、各大学院の学事日程をこまめに確認してきましょう。

参考:早稲田大学「修士論文・博士論文―早稲田大学大学院日本語教育研究科

参考:東京大学「修士論文 東京大学 大学院理学系研究科 化学専攻・理学部化学科

口頭試問の形式

次に、口頭試問がどのような形式(所要時間、進行方法、主査・副査の人数)で行われるのか、筆者(文系の大学院修士課程修了)の経験をもとに紹介していきます。

筆者の場合、口頭試問の所要時間は約30分程度でした。

口頭試問を行う順番によっては、集合時間からすぐに口頭試問の教室に案内される大学院生もいれば、一時間以上待ち時間がある大学院生もいます。

筆者の場合は、自分の口頭試問の順番が回ってくるまで、控え室となっていた大教室で集合時間から一時間ほど待った後に口頭試問が始まりました。

口頭試問を早く終わらせたい人、口頭試問に向けた最後の準備時間がある方が良いと考える人、様々だと思いますが、口頭試問の準備は大学院側が決定するため、どの順番でも口頭試問に臨めるように万全の準備が必要です。

口頭試問の順番が回ってきたら、教室に案内されます。

教室に入室すると、3名の先生方が着席しており、その正面に座るように促されました。

筆者の場合、指導教員が主査で、修士論文の内容に関連した学問分野の先生方2名が副査としていらっしゃいました。

副査の先生方は、初見の先生でした。

ちなみに、筆者の場合は、口頭試問が行われる教室への資料の持ち込みが許可されていました。

しかし、資料の持ち込みの許可については口頭試問の担当の先生にもよるため、事前の確認が必要です。

大学院の学事・学生部や指導教員、先輩に聞いておきましょう。

口頭試問の進行は主査の先生が行います。

まず、「修士論文の要旨」を説明するように求められます。

その後、主査・副査の先生方から質問される流れです。

冒頭に行う要旨の説明以外は、すべて「質疑応答」で進められました。

口頭試問で聞かれる内容と対策のコツ

先述のとおり、口頭試問では冒頭の修士論文の要旨以外は、先生方の質問に対して応答する形式です。

口頭試問で審査されるポイントは大学院ごとに異なりますが、例えば、早稲田大学大学院の日本語教育研究科では、修士論文の「審査の視点」として、①独自性、②実証性、③論理性、④構成、⑤形式が挙げられています。

口頭試問では、上記の視点を中心に先生方から質問されることが想定されます。

それでは、口頭試問に臨むに当たってどのような準備をしておけばよいのでしょうか。

ここからは口頭試問の「対策のコツ」として、以下で5点ご紹介します。

参考:早稲田大学「修士論文・博士論文―早稲田大学大学院日本語教育研究科

対策のコツ①「結論をはじめに述べる」

自身の研究を説明する際には原則、「研究テーマ」と結論に当たる「研究の成果」を先に述べます。

先生方にとっては当然、当該研究内容の先行研究・背景については周知の事実として、論文の「独自性」となる結論を先に求める傾向にあります。

学術論文を読んでもわかるように、論文タイトルの直後に〈要旨〉として、テーマ・研究手法・研究結果・研究課題等が先に記述されています。

多くの学問領域における学術誌のルールとして、そのような要旨のまとめ方が採用されていますので、学術論文の〈要旨〉の形式を参考にして、口頭試問の冒頭の説明の構成を考えると良いでしょう。

また、先生方からの質問に対して応答する際も、まず質問内容に端的に回答するようにしましょう。

たとえば、「イエス・ノー」で答えられる質問であれば、まず「イエス」か「ノー」で回答するイメージです。

質問に端的に回答した後に、その回答に至った経緯や補足したいことを述べるようにしましょう。

そうすることで、こちらが意図したとおりに先生方にも回答が伝わるはずです。

対策のコツ②「他にとり得る研究方法を考えておく」

前述の早稲田大学大学院の「審査の視点」にもあったように、「実証性」については先生方からもよく指摘される内容です。

このことは筆者自身、大学院の研究報告会や学術学会等に参加した実感でもあります。

実際に口頭試問では、修士論文で採用した研究手法について詳細な説明が求められることになります。

その点を掘り下げていくことで、誰が研究しても再現できることを確認するのです。

したがって、自身の研究で採用した研究手法の概要と、研究手法の採用理由、課題点を整理しておきましょう。

とくに、他にとり得る研究手法を事前に検討しておき、その研究手法と比べて自身の研究手法の妥当性を説明できるようにしておくと指摘に対してうまくディフェンスできます。

自身の研究領域で、よく採用される研究手法を用いた場合には、近年試みられている新たな研究手法について検討しておくと良いです。

逆に、その研究領域で一般的ではない研究手法を採用した場合には、なぜ従来の研究手法を用いなかったのか、その理由と採用した研究手法のメリットを比較検討して挙げられるようにしておきましょう。

以上のように、実証的な研究であることを説明するために重要な要件となる「研究手法」は、丁寧に説明できるように準備しておくことが重要です。

対策のコツ③「先行研究にないという理由で新規性を強調するよりも、先行研究とのつながりから考える」

研究を進める際に、とくに難しく感じることは、研究の「新規性」を見出すことです。

新規性というと、これまでの研究とは異なる内容の新しい研究であると思いがちです。

しかし、新規性を見出すポイントは、先行研究との差異を強調することよりも、「先行研究と自身の研究とのつながり」を見出すことにあります。

「これまで研究されてこなかったから…」という理由で、新規性を見出そうとすると、「研究するに値しないからこれまでの研究が少ないのでは?」と指摘されてしまう可能性があります。

そのため、自身の研究の意義を先行研究の流れの中で捉えなおすことが有効です。

先行研究のどの部分に疑問を投げかけた研究なのか、あるいは、先行研究のどの部分を補足する研究なのかなど、先行研究で説明されてきた内容のうち、どの部分を説明しなおそうとしているのか意識することが重要です。

そのうえで、研究の新規性について問われたら、端的に「先行研究とのつながり」を言い表せるように準備しておきましょう。

対策のコツ④「先生方の質問・指摘に対して、真っ先に反論しない」

質問・指摘の内容は多岐にわたります。思いがけない質問が飛んでくる可能性も十分に考えられます。

その際に、自身の研究を否定されるような指摘であったとしても、真っ先に反論することは避けましょう。

なぜなら、大学院生とは言っても修士論文を執筆した一人の研究者としての「柔軟性」をみているからです。

否定的な指摘に対して一度、「たしかに…」というように意見を受け入れるかたちで、研究の課題点として口頭で整理します。

その後、指摘された課題点に反論できる点を列挙していきます。

そうすることで、研究の課題点を客観的に理解していることをアピールすることができるうえに、その課題の改善のために対処した点や、研究の展望として将来性を提示することができます。

柔軟性は共同研究の際の、「協調性」につながり、研究者としての臨機応変な対応をみていると言えます。

対策のコツ⑤「修士論文と今後執筆する博士論文のつながりを述べる」(博士課程に進学予定の場合)

博士課程に進学予定の大学院生の場合、博士課程進学後の研究計画を修士論文の口頭試問のなかで問われることもあるようです。

博士課程進学後の研究計画で重要なことは、提出した修士論文の研究とのつながりを持っていることです。

修士論文を基礎にして、あるいは、博士論文の一部分としてどのように博士課程の研究が構成されるのか構想を練っておく必要があります。

そのため、修士論文を執筆してでてきた研究課題を克服する方法まで考えておくと良いでしょう。

そこから博士課程進学後の研究計画に結びついていきます。

指導教員の立場からすれば、修士論文まで指導した内容と全く異なる研究の展望を語られると、またはじめから研究を指導することになり失礼にあたる可能性があります。

実際に、筆者の指導教員も「博士論文と修士論文はどうつながるの?」とよく大学院生に聞いていました。

したがって、博士課程へ進学予定の方は、博士課程での研究を構想しつつ、どのように修士論文とつかながるのか、修士論文の位置づけを考えておきましょう。

口頭試問を見据えた修士論文の執筆

これまで口頭試問について形式や内容についてご紹介してきましたが、口頭試問を見据えて修士論文を執筆していくとうまく構成がまとまるようになります。

言い換えれば、客観的に自身の研究を検討し、期待される独自性、新規性などを見通すことができます。

そこで、本記事の最後に口頭試問を見据えた修士論文の執筆方法と工夫について解説します。

まず、論文タイトルから研究の全体像が把握できるようにしましょう。

口頭試問の際にも、論文タイトルをはじめに言いますが、その一言で研究テーマが把握できるよう工夫すると良いです。

その際、主題に加えて、副題を活用して具体的な研究手法や研究対象を説明できると研究の全体像が把握できるようになります。

次に、「リサーチクエスチョン」を明確にしておく必要があります。

リサーチクエスチョンとはその研究における「問い」のことです。

口頭試問の際に、修士論文における「問い」を必ず述べることになります。

そのため、口頭でも使える端的なリサーチクエスチョンを論文中にも含めると良いです。

また、そのリサーチクエスチョンに答えるかたちで、結論を簡潔に述べられるよう論文執筆中に意識しておきましょう。

複数の結論が導かれた場合には、グループ分けやそれぞれの結論にナンバリングするなど口頭で伝わる工夫をしておきましょう。

さらに、「研究手法」は、「なぜその研究手法を採用したのか」について明示しておきましょう。

研究手法の採用理由は口頭試問でも問われる可能性が高いです。

また、論文で採用した研究手法が孕む課題があれば今後の研究の展望として論文の最後にまとめておきましょう。

最後に、修士論文の課題点については、口頭試問で指摘される内容を想定して考えてみるとうまくまとめることができます。

例えば修士論文の提出前に行われる中間報告会などで指摘された内容がある場合、改善できなかったものはメモをしておきましょう。

改善できなかった点については、修士論文の終盤で研究課題として書くこともできるうえ、口頭試問の際に改めて指摘される可能性が高く、想定問答を作りやすくなります。

口頭試問を見据えて修士論文の構想を練っていけば、客観的に研究を進められることに加えて、より整理された構成の論文に近づいていきます。

ぜひ、口頭試問から逆算した修士論文の執筆作業を心がけてみてください。

まとめ

本記事では、修士論文提出後の大学院生の多くが経験する、口頭試問についてまとめました。

修士課程では、論文執筆に向けた研究と、論文執筆に注意が行きがちですが、修了要件として最後に残るのが口頭試問です。

口頭試問をクリアしてはじめて修士号が与えられます。

そのため、口頭試問に向けた事前の準備が重要になります。

また、口頭試問を見据えて論文の執筆作業に臨むことも有効と言えます。

本記事で取り扱った内容は以下、5点です。

  • 口頭試問までのスケジュール管理の重要性
  • 口頭試問の形式
  • 口頭試問で問われる内容
  • 対策の5つのコツ
  • 口頭試問を見据えた修士論文執筆の方法

ぜひ、本記事を参考にして口頭試問の準備を万全に進めてください。

また、修士論文をこれから執筆される方、大学院に進学される方にとってもこの記事が研究の構想を練る際の参考になれば幸いです。

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