修論・卒論データのバックアップ、取ってますか?バックアップの方法を解説します

研究・大学生活

修士論文や卒業論文は1日や2日で仕上げることはできず、完成までに長い期間をかけて完成させます。
そのため、論文の原稿はもちろん、論文を執筆するために必要な実験結果のデータや先行研究の論文など、様々な資料のバックアップを取っておく必要があります。
論文の提出期限が迫る中でデータが消失してしまった場合、せっかくの努力が水の泡になってしまいます。
そこで今回のコラムでは、修論・卒論をはじめ、重要な研究データを失わないためのバックアップ方法について解説します。

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論文の執筆には時間がかかる

「修士論文(卒業論文)を書く」と言えば一言で済んでしまいますが、構成を練ったり、研究背景や既往研究に関する文献収集、研究データのとりまとめ、作図や本文の執筆など、その作業は多岐にわたり、時間もかかります。

また、提出期限も決められていることから、執筆に必要な作業量を見積り、計画的に執筆を進める必要があります。

それでも結局直前になって時間が足りず、結局徹夜で書くことになる、というのはよくある話です。

これから修士論文を執筆する大学院生、卒業論文を執筆する学部生はあらかじめ、論文の執筆は時間がかかるということを意識しておきましょう。

データ損失のリスク

修士論文や卒業論文に限らない話ですが、論文の執筆は基本的にコンピュータを使うことがほとんどです。

コンピュータで作成する以上、印刷しない限り、電子データとして保管することになります。

電子データとして保管されたデータは数百ページにわたる情報であっても、コンパクトに保管でき、編集も手軽に行える点で非常に便利です。

一方で、静電気や機械的な破壊による突発的な事故だけでなく、災害・犯罪やヒューマンエラー等の要因により予期せずデータを失ってしまうリスクがあります。

具体的には、ソフトウェアのバグ、コンピュータウイルスの感染、地震・火災、盗難などが考えられます。

ここで注意すべきことは、ヒューマンエラー、つまり人的ミスによってもデータを消失する可能性があるということです。

どれだけ注意を払っていても、重要なファイルをうっかり削除してしまうなどのミスは完全に起こらないとは言い切れません。

提出期限が近付く中、修士論文の原稿データが消失してしまった後に、再度同じ内容を執筆するのは容易なことではありません。

また、論文の執筆を進めていく中で、修正前のバージョンに戻したい場合や、修正前の内容を参照したいことが出てくるかもしれません。

使用しているドキュメントソフトによっては一度書き換えてしまった原稿を前のバージョンに戻せない場合もあるため注意が必要です。

ここで、筆者の友人の例をひとつご紹介しましょう。

研究室のコンピュータが共用だったため、データはUSBメモリに保管して持ち歩いていたようですが、ある日、コンピュータにUSBメモリを差し込んでも中身を認識せず、結局はじめから書き直したそうです。

それは、論文の執筆も終盤に差し掛かり、提出期限も間近に迫った時期でした。

冬は乾燥しており、特に静電気が起こりやすい時期です。

実際に静電気が原因でUSBメモリが壊れてしまったのかどうかはわかりませんが、何度も抜き差しをするUSBメモリにのみデータを保管することは避けた方がよいでしょう。

専門業者に頼めばデータを復旧できる可能性もある

ちなみに、損失したデータを復旧する専門業者も存在するようです。

いざとなれば頼るのもひとつの手かもしれません。

一般的に、ファイルを削除する場合は管理領域から、そのファイルの情報が消去され、アクセスできなくなります。

しかし、ファイルのデータそのものはまだ残っていることがあるため、別のデータが上書きされていなければ復旧できる可能性があります。

もしものときのために頭の片隅に入れておくと良いかもしれません。

参考: バッファロー「パソコンやハードディスクからうっかり削除したデータが復旧できる仕組み

未然の対策は バックアップを取ること

電子データとして保管する以上は、そのデータを失ってしまうリスクそのものは付きまといます。

もちろんアンチウイルスソフトを利用したり、PCにパスワードを掛けたりといった対策をとることで低減できるリスクも中にはありますが、データ損失のリスクを完全にゼロにすることはできません。

重要なのはデータを失わないことではなく、そういった状況に陥った場合でもデータを復旧できることなのです。

バックアップの方法

重要なデータを失わないためにバックアップが重要であることはお分かりいただけたかと思います。

それでは、どのようにしてバックアップを用意すれば良いのでしょうか。

バックアップの考え方として、「3-2-1ルール」を紹介し、具体的なデータのバックアップ方法を紹介します。

3-2-1ルール

アメリカ国土安全保障省は、バックアップに関して「3-2-1ルール」を推奨しています。

これは、

3: ファイルのコピーは3つ用意する(本体1つ、バックアップ2つ)

2: 2種類の異なる媒体に保存することでタイプの異なるリスクに備える

1: オフサイトへのコピーを1つ確保する(自宅と研究室など)

というものです。

「オフサイト保管」という言葉はあまり聞き馴染みがない人も多いかもしれませんが、遠隔地に保管するということです。

もしいくつバックアップを作成していたとしても、全てのバックアップが研究室にまとめて保管されていれば、火災などにより建物が焼失した場合には全て失われてしまうことになります。

大きな企業で重要なデータを扱う場合には複数の国のデータセンターにデータを保管することで大規模災害や戦争などによるリスクを低減しています。

このように、保管場所や保管方法を複数用意することでリスクを分散し、最悪の場合でもデータを完全にロストすることがないように工夫することが重要です。

ここからは、いくつかのバックアップ方法を具体的にご紹介します。

引用: US-CERT(2013-02-06)「Data Backup Options

手作業で複数のファイルを保存しておく

重要なファイルをコピーして保存しておく方法です。

最も確実ですが、手間がかかるのが欠点と言えそうです。

また、手作業なのでうっかり作業を忘れてしまうといったことも起こりそうです。

バックアップ用に作成したファイルにはいつコピーしたものか分かるようにファイル名に日時を入れておくと便利です。

また、ファイル名に「新」や「改」あるいは「最新」などという相対的な命名をつける人も多いですが、後からファイルが増えてきたときにどれがどれだったか分からなくなりがちですので、気をつけましょう。

また、既に述べたように、USBメモリの中だけに保管しておくのではなく複数のデバイスに保存することを忘れないでください。

バックアップツールを使う

定期的にバックアップを作成してくれる専用のツールを使う方法です。

フリーソフトとして公開されているものも多数あります。

この方法の利点はバックアップを取り忘れる心配がないことです。

しかし、バックアップ先の容量が不足していたり、PCの再起動後にツールが起動していなかったなど、何らかの理由で気が付かないうちにバックアップが取られていないことも考えられますので、バックアップツールを使う際には、定期的にバックアップが取れているか確認しましょう。

クラウドストレージを使う

クラウドストレージを使用することで自動的にバックアップを作成することもできます。

サービスによっては過去のバージョンに遡ることができたりと便利な機能が搭載されているものもあります。

所属している大学や研究室によっては、MicrosoftやDropboxのクラウドストレージサービスを契約しているケースもあり、容量の心配なく利用できる場合もあります。

保存したデータはクラウド上に保存されるので、どこでもアクセスが可能で共有もできるため、作業の効率も高まるのではないでしょうか。

ただし、研究内容によっては研究データの持ち出しが禁止されている場合もあり、クラウドストレージ上でのバックアップには注意が必要です。

また、大学での契約がない場合でも、クラウドストレージサービス自体は無料で使えることも多いです。ただし、無料で使う場合には、使える容量が最小限となっており、バックアップのためには十分ではない可能性もあるため注意が必要です。

オンラインツールを使う

修士論文や卒業論文を執筆する際には、オンライン上でドキュメントの編集が可能なGoogleドキュメントやCloud LaTeXなどのツールを使うことも可能です。

これらのドキュメントサービスはデータをオンライン上にアップロードして編集するため、定期的にダウンロードすることでバックアップをとることもできます。

また、サービスによっては過去のバージョンを記録するなどの便利な機能が提供されている場合もあります。

他にも、ファイルのバージョン管理ツールであるGitを使う場合はGithubなどのオンラインホスティングサービスも活用することでクラウドストレージのように利用する方法も考えられます。

まとめ

今回のコラムでは修士論文や卒業論文など重要な研究データを失わないためのバックアップについて解説しました。

要点をおさらいしておくと、重要なデータは

  • コピーを作成し、
  • 複数のメディアに
  • 複数の場所で

分散して補完しましょう。

皆さまの修士論文や卒業論文執筆のお役に立てれば幸いです。

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