就活を行っていると、企業から「研究概要書」の提出を求められることがあります。しかし、研究概要書を作成したことがない場合、どのように書けばいいのかわからないですよね。
さらに、就活では研究概要をスライドでプレゼンすることもあるでしょう。
今回のコラムでは、企業は研究概要書を通して「何を知りたいのか」を解説するとともに、研究概要書を作成する際の注意点について紹介します。
研究概要書はなぜ必要?
民間企業への就活にあたり、研究概要書はなぜ必要なのでしょうか。研究概要書の提出が必要な理由について紹介します。
取り組んでいる研究について簡潔に把握してもらうため
技術開発職や研究職などの専門職を目指す場合、面接を行うなかで「大学や大学院で行っている研究」についての質問をされることが多いでしょう。
企業の面接において、このような質問をされる理由としては
- 研究内容を把握する
さらに、この研究を通じて得てきているであろう
- 理論的に考える力
- 問題解決能力
などを探るため、という点が挙げられます。
大学院生は就活で提示を求められることもある
とくに大学院生の場合、技術開発職や研究職などの専門職を志望することが多いことから、研究概要書の提出を求められることが多いのではないでしょうか。
この研究概要書は、就活生が持つスキルや能力の判断材料となります。なお、専門分野に精通していない人も研究概要書を見る可能性がある点や、企業ごとに書式が存在することもある点など、研究概要書を作成する際の注意点は多くあります。
求められる用途に合わせて伝え方を変える
研究概要書の作成方法について指定がない場合には、使用する場面に合わせて作り方を調整することが大切です。
一方、文字数や書式に指定がある場合には、指定にしたがって作成しましょう。場合によっては、研究概要書で利用するフォントを指定されていることもあるため注意が必要です。
研究概要書のフォントに指定が無い場合には、ゴシック体やTimes New Romanが良いでしょう。
また、印刷して提出するような研究概要書であれば、テキストで作成することが大半ですが、文字だけで構成すると情報過多になってしまうこともあるため、図表をうまく活用するとよいでしょう。
さらに、就活では研究概要をプレゼンする機会もあるかもしれません。
そのような場合には、プレゼンの内容自体はスライドで作成し、重要な図表を中心にテキストで作成する研究概要書に抜粋し記載するのがよいのではないでしょうか。
まだ研究概要書を書いていない!なぜ必要なのか
就活をしていて研究概要書をまだまとめていないという人もいるでしょう。しかしながら
- 今後必要になることもある
- 就活における質問対策にもなる
ことから、自分自身の研究について、時間のあるうちにまとめておくことは大切でしょう。
研究概要書はコミュニケーションツール
研究概要書は民間企業へ就活を行うにあたり、就活生の「研究に対する考え方」を把握できるコミュニケーションツールであると言えるでしょう。
研究概要書の中に記載することが多い
- 研究遂行における課題
- 課題解決のために行った手法
などは、研究に対しどのように向き合い解決を目指していったのか、その人の「人となり」が表れる箇所となります。民間企業に就職した際、大学や大学院で行っていた内容と同様の研究を行うことは稀ですが、研究への取り組み方は、入社後の課題解決場面でも通用するものでしょう。
このようなことから研究概要書は、就活生の考え方やスキルなどを理解するためのコミュニケーションツールと言えるのではないでしょうか。
就活では面接官が質問するために見る
また、就活における面接では、研究概要書は面接官の判断材料にもなります。
そのため、研究概要書に記載する内容は、面接で深堀りされることを想定したうえで作成するとよいでしょう。
まだ研究概要書を作成していないのであれば、自分自身が質問に答えやすい分野を中心にまとめることができれば、質問対策も容易になるのではないでしょうか。
なお、面接官が全員、専門分野に精通しているとは限らないことから
- 専門用語を使用せず
研究概要書を作成するということも非常に重要でしょう。
まとめ力や論理的思考能力を見られるツール
さらに、研究概要書の書式は、提出する企業によって指定があることが一般的です。
時には、短文でまとめたり、図表などを利用せず文章のみで作成する必要がある場面も出てくるのではないでしょうか。
数年間にわたる研究やその中で解決してきた課題を、決められた長さの文章でまとめることは難しいことです。そこで必要なのは、自身の研究の中で重要な点を見極め、まとめる力です。
また、大学におけるゼミや学会における研究発表では、図表などを駆使しながら、自身の研究内容を発表しているのではないかと思います。一方、企業によっては文章のみで研究概要書を作成する必要があるでしょう。文書のみで情報を正しく伝えるためには、物事を論理的に伝える能力が大切になると考えられます。
よって、研究概要書を作成するには
- まとめる力
- 論理的思考能力
が必要であり、これらの能力を見られるツールであるといえるでしょう。
就活での研究概要書は短い?
就活における研究概要書は、概して短文でまとめる必要がある場合が多いでしょう。時には、数百文字の短文でまとめる必要があることもしばしばあります。どのように研究概要書を作成するのがよいのでしょうか。
200文字や400文字など文字数が少ないところも
企業によっては、エントリーシート(ES)の一部に研究概要書が含まれており、非常に短い文(200~400文字程度)でまとめることに迫られることもあるでしょう。
このような場合には、研究テーマやその概要を簡潔に説明したうえで
- 課題解決における最大の問題
- この課題解決に向け、実施した取り組みとその成果
という点に的を絞り、研究概要書を作成するのがよいのではないでしょうか。
200~400字文字程度だと、多くの研究を実施していたとしても、1つの話題(課題解決における最大の問題とその解決に向けての取り組み)のみに絞って作成しなければ、まとまりのない文章となってしまう可能性があるでしょう。
研究概要書の提出先による内容の違いとは?
今回のコラムでは「民間企業」に就職する場合の研究概要書を例に紹介を行っていますが、ポスドクや研究機関の研究員として応募する場合には、この内容は変わってくる可能性があります。この点について詳しくみていきましょう。
ポスドク・研究員の応募時には「どのような研究ができるか」を伝える
ポスドク、研究機関の研究職および大学におけるアカデミックポストを目指す場合
- どのような研究ができるか
という点を重視して研究概要書を作成する必要があるでしょう。
もちろん、これまでの自分自身の研究課題における課題やその解決法などの項目も、判断材料となっていると考えられます。
しかしながら、ポスドクをはじめとした任期付きの職種では、特定のプロジェクト推進に向け採用される場合もあることから、どのような研究手法が使えるのか、どのような研究を行ってきたのかという点が重視されます。
そのため研究概要書では、これまでどのような手法で実験・研究を進めてきたのか分かるようにしておく必要があるのではないでしょうか。
また、これらの研究職に応募する場合には、主要論文の添付を求められることもありますが、必要とされている技術が明確な場合は、自分がそれを有していることがわかる論文を選ぶのがよいと考えられます。
民間企業の応募時には「会社で何ができるか」を見られる
民間企業での就職を目指す場合には、大学や大学院で行っていた研究内容やその手法を、そのまま企業で活かせる例というのはあまり多くないでしょう。そのため、民間企業に就職する場合の研究概要書は多くの場合
- 研究遂行における課題
- 課題解決のために行った手法
から、問題に直面した際の考え方などを見られている可能性があるのではないでしょうか。
さらに、大学院生が得てきたと考えられる、高度な汎用的能力である
- 論理性や批判的思考力
- 自ら課題を発見し設定する力
などがどの程度備わっているか、研究概要書から見られている可能性があるでしょう。
参考:博士課程修了者が実際の仕事で役に立ったと感じる、大学院で得たものの筆頭は「高度な汎用的能力」
研究概要書の書式は提出先の希望に合わせて作成
なお、研究概要書の作成様式は、企業によってさまざまです。200文字程度と非常に短いこともあれば、A4数ページ分の研究概要書を求められることもあるでしょう。
また、発表の際の形式を指定されることもあるでしょう。さらに、研究概要書内で使用するフォントが定められていることもあるため注意が必要です。
研究概要書を短文でまとめる必要がある場合には、自身の研究課題の概要とその解決にあたりどのようなことを行ったかを端的にまとめる必要があります。一方、書式がある程度自由な場合は、図表などを織り交ぜた方が理解しやすい研究概要書となるでしょう。
このように、研究概要書の作成様式は、提出先の企業によって大きく変わってくることが想定されるため、様々な文字数や形態での提出に対応できるよう
- 研究概要の中で伝えたい優先順位
を明確にしておき、文章の長さなどによって調整していくのがよいのではないでしょうか。
研究概要書でNGなこと
実際に研究概要書を作成するにあたっては、単に自分自身の研究を記入していけばよいというわけではなく、行わない方がよいことがいくつかあります。
これから研究概要書を作成する人の参考になるよう、研究概要書作成における注意点とその理由について詳しくみていきましょう。
要点をおさえずに長くなる
まず注意が必要な点の1つ目として、要点をおさえずにダラダラと長く書いてしまうという点でしょう。研究概要書は時に、短文(200~400文字)でまとめざるをえないこともあります。
このような短文を求められる場合、要点をおさえずに長く書くと、指定の文字数内に研究概要をおさめることは不可能でしょう。そのため、何を伝える必要があるのか(要点)を明確にし、研究概要書をまとめる必要があります。
一方、A4で数ページ分など、比較的長めの研究概要書であっても、読み手のことを考えて作成する必要があるでしょう。全文を読まずとも内容がわかるよう、各段落の初めに伝えたい内容をまとめるなど、長文になればなるほど、読み手に負担を与えない工夫というのも大事なのではないでしょうか。
読み手を意識していない
次に、読み手を意識して研究概要書を作成するというのも重要なポイントです。
先ほど伝えたような、長文の研究概要書を中心に、読み手の負担を軽減するため
- 段落の初めに伝えたいことを簡潔に記入
することはもちろん重要となってくるでしょう。
また、研究概要書は確かに、自分自身の研究概要を魅せる場のように思えるかもしれませんが、この研究概要書から企業が評価したいと思っているのは
- 問題解決能力
- 論理性や批判的思考力
などの応募者の能力であることを意識して作成する必要があるでしょう。
そのため、企業で役立つようなスキルなどがわかるような研究概要書となっているか意識して作成する必要があるでしょう。
専門用語のオンパレード
また、専門用語ばかりの研究概要書というのもおすすめできません。この理由としては、研究概要書に目を通す面接官が全員、専門分野に精通しているとは限らないためです。
そのため、専門外の人(家族や友人など)に研究概要書を読んでもらい、理解してもらえる内容に仕上げるのが大切です。また、どうしても専門用語を使用する必要がある場合には、注釈を併記しておくという方法もあります。
なお、民間企業に就職する際の研究概要書は、研究内容を伝えるという目的もありますが
- 就活生のスキルを知る資料
でもあります。そのため、専門用語が多くては研究内容が伝わらないばかりか、企業側が就活生のスキルを確認することも困難な資料となってしまうこともあるでしょう。
自分の視点が入っていない
研究概要書における自分の視点というのも非常に大切です。ここまでに述べてきているよう研究概要書から企業が知りたいのは
- 問題解決能力
- 論理性や批判的思考力
などの就活生自身の能力・スキルです。
そのため、研究概要書を作成するにあたり、研究内容や成果を伝えることのみに偏らず、研究を行う中で生じた実例をもとに
- 研究遂行における課題
- 課題解決のために行った手法
を織り交ぜて作成することが重要でしょう。このような、就活生が実際に経験してきた課題やその課題への向き合い方も含め記載しておくと、企業の面接官が就活生の潜在能力やスキルを見つけるきっかけとなるため、自分自身の視点がしっかり入っているかという点も重要といえるでしょう。
文体がバラバラ(ですます、だ、など)
文体には、「です・ます調(敬体)」と「だ・である調(常体)」の2種類がありますが、文章作成にあたってはこれらの文体を統一することは基本中の基本です。そのため、これらが統一できていないというだけでもマイナス評価となることは否めないでしょう。
研究概要書の作成にあたって、文体について指定がある場合には、指定に従いましょう。一方、特段指定が無い場合にはどちらの文体を選択しても構いませんが、文体を統一するということは最低限のマナーであることから注意して研究概要書を作成しましょう。
また、似たような例として、誤字・脱字も気を付けたい点です。こちらもまた、マイナス評価になる点であることに加え、推敲が足りていないことがすぐに分かってしまうミスです。
これらの文体の統一や誤字・脱字をさけるためには、提出前に一度読み直すのが大切でしょう。
要点をおさえて提出先に合わせて研究概要書を書こう
就活における、研究概要書の提出形式は企業によって異なり
- 200~400文字の短文
- A4で数ページ
- スライドを利用したプレゼンも行う
など多様な形式があるのは事実です。
一方、民間企業が研究概要書の作成を求める理由としては、就活生の
- 問題解決能力
- 論理性や批判的思考力
などを見るためであると考えられています。
そこで、自分自身を十分に理解してもらえるようにするためには、研究概要書内に、自分自身が会社で役立てる能力・スキルを
- 要点をおさえて
明確にすることが大切でしょう。