研究の計画、進捗、成果の発表と、研究生活に発表はつきものです。
発表は、聴衆に自分の研究のことについて知ってもらう良い機会です。
効果的なスライドを作成することで、より自分の伝えたいことが伝わるようにしましょう。
効果的なプレゼンテーションの3つのポイント
今まで聞いた発表や講義の中で、印象に残った、分かりやすかった、もっと知りたいと思った発表はどのようなものでしたか。
発表の上手な研究者は分野を問わずいるものです。
お手本となるような人のスライドを観察し、自分の発表を積極的に改善していきましょう。
効果的なプレゼンテーションの特徴として、次の三点が挙げられます。
1.発表の全体像が分かり、進行状況が分かる
2.スライドを見ていてストレスがない
3.話者が伝えようと熱意を持っている
スライドはあくまで視覚的「補助」です。
話し手の邪魔をせず、うまく助けてくれるように作るのがポイントです。
1.発表の全体像が分かり、進行状況が分かる
次に何が起こるか分からない小説とは異なり、研究発表では、序論、方法、結果と発表される物事が決まっています。
この道のりを最初に示しておくことで、聴衆に、今から何の話題を提供し、どのように進めるのかを共有します。
進路を明確にすることで、聴衆も話に集中しやすくなります。
進路を明確にするために目次、区切り、総括スライドを作成しましょう。
これらはプレゼンテーションの道しるべとなります。
目次
何の話をするのかを伝えると、相手の記憶に残りやすくなります。
発表タイトルはタイトルスライドに書きますので、ここで再度示す必要はありません。
区切り
次の話題に移るときは、今までの話題からいったん離れることを伝えるため、区切りスライドを表示します。
スライド枚数が増えることを恐れる必要はありません。
今からこの部分の話をしますよ、と示すのには10秒もあれば充分ですが、この区切りがあるかないかで聴衆の理解度が違います。
さっと飛ばせるスライドは、リズムの変化を生み、聞き手の注意を引く効果もあります。
総括
プレゼンテーションの最後には総括スライドを表示し、一番伝えたいことを再度強調します。
何度も発表練習していると、繰り返しすぎていると感じるかもしれません。
しかし、聴衆が発表を聞くのは一度きりです。
二度三度重要な部分を強調してもらった方が、より記憶に残ります。
発表時間は厳守する
後の発表者や司会者に迷惑をかけるのはもちろんですが、あせって最後まで早口で発表してしまうと、計画性がないという印象を与え、話も伝わりにくく、まったく良いことはありません。
練習して、時間を計り、質疑応答の時間もきちんと取れるような時間配分を意識しましょう。
発表する内容を削った方が、時間的に余裕が出る場合もあります。
話題が多すぎて80%の理解度となるよりも、厳選した内容を100%理解できる方が聞き手にとっても好ましくなります。
2.スライドを見ていてストレスがない
口頭発表では、スライドを見せつつ、話も聞いてもらうという2つの行為を同時進行しなければなりません。
スライドに何か問題があると、聴衆は聴く方よりも見る方に一気に注意を向けてしまいます。見ていて、できるだけストレスがないスライドにしましょう。
効果的な資料を作成するのに、芸術的センスは不要です。
気をつけるべきポイントを押さえ、聴衆の立場に立って推敲していくことで、分かりやすいスライドを作成することができます。
スライドは発表者の話の「視覚的補助」
研究発表は、あくまで発表者の行う口頭発表が主体です。
人と話しているとき、「紙とペンがあって図を書けたら、もっと簡単に説明できるのに」と思ったことはありませんか。
口頭発表はまさに、その図があらかじめ用意されているものです。
したがって、スライドは一目見て分かるように、もしくは説明が必要なら丁寧に説明しましょう。
文字が小さい、図が細かくて理解できない、などのストレスがかかると、それだけで聴衆の集中力は削がれてしまいます。
以下に、スライド作成時に気をつけることを列挙します。
フォントの種類と大きさに気を配る
フォントによって与える印象が異なります。
文章に使用されるフォント(明朝や教科書体など)は避け、スライド上で見やすいフォント(メイリオなど)を使用しましょう。
後ろの方の席で聞いている人にも読めるよう、フォントの大きさが適切かどうかは必ず確認しましょう。
一般的に、20ポイント以上が望ましいと考えられています。Microsoftの 「PowerPoint」 や Googleの「Google Slides」 では、 Ctrl + Shift + > または < のショートカットで、文字の大きさを変更することができます。
使用するフォントによっては、アルファベットや記号と日本語を併記するとバランスが悪くなったり詰まって読みづらくなる場合があります。
チェックする習慣をつけ、半角スペースを入れるなどして工夫しましょう。
文を短くする
長い文章は、聴衆が聞くことよりも読むことに集中してしまう典型例です。
短い箇条書きにする、キーワードだけにするなど工夫しましょう。
適切な箇所で改行することで、見やすさが格段に上がります。
箇条書きを一文ずつアニメーションで表示していくのも、話されている話題に聴衆の注意を向けるのに効果的です。
図も簡潔にする
図も細部を確認しなければならない込み入ったものではなく、ポイントを押さえたものにしましょう。
図が二つ並んだスライドなら、一つずつ示し、説明した方が分かりやすくなります。
表は図にできないか考える
論文に載せるような大きな表は、見づらい上に話者の論点が不明確となりがちです。
図やグラフにしたり、どの部分に着目すればよいか示すなど工夫しましょう。
色は使いすぎないよう厳選する
色は意味づけ性の強いツールです。
同じ色で書かれていたり強調されている事柄は、関連性を想起させます。
テーマカラーを二色程度決めてスライドを作成しましょう。
たとえば、最も強調したい部分には赤、補足的に強調したい部分には青という具合です。
複数回出てくる事柄に色をつける場合は、発表資料を通じて一貫性を持たせましょう。
四隅には余裕をもたせる
昨今では会議や学会がオンラインで行われることも多くなってきました。
オンライン会議の際、発表しているスライドの上部や下部に会議アプリのメニューが表示され、スライドの内容が見えなくなることがあります。
発表するまで気づかないこともありますので、本番で使用する会議アプリを使用してリハーサルを行いましょう。
3.話者が伝えようと熱意を持っている
話者の熱意、発表を理解してもらおうとする気持ちも大切です。
本を読んだり講義動画を見るのとは異なり、プレゼンテーションは話者と聴衆が時間を共有する特別な機会です。
聴衆にどうすれば伝わるかが吟味されている発表では、そのメッセージが伝わりやすくなります。
聴衆を事前に理解する
聞き手が同分野の研究者か、一般の人か、顧客か、学生かによって話し方は変わってきます。聴衆の知識レベルに合わせた発表資料を作成しましょう。
聞き手に近い人の前でリハーサルをするのが近道です。
見やすい資料+伝えようとする話し方 = 効果的な発表
見やすい効果的な発表資料を使用するとともに、発表内容を理解してもらおうと情熱を持って説明することが大切です。
聞いてもらいたいと思って発表している人の方が、仕事だからここにいる、という事務的な調子で発表する人よりも聞きやすいということは経験があると思います。
写真や小道具など、見て面白いものを織り交ぜる
人が実際に実験している写真や、研究対象の写真などがあればスライドに載せましょう。
また、実際に手に持って見せられるものがあれば、壇上でそれを見せるのも効果的です。
こういった物は聴衆の興味を引き、分かりやすく印象に残りやすい発表となります。
写真の入ったスライドは、数字やグラフの入った考えさせられるスライドとは異なり、気分転換にもなります。このような「仕掛け」に対する聴衆の反応をリアルタイムで見られるのも、口頭発表の醍醐味です。
まとめ
少しの点に気を付けることで、効果的な発表資料を作成することができます。
そして、先述の通り、効果的な発表資料を作成することに芸術的センスは必要ありません。
まずは発表の全体像を示し、進行状況が明確に分かるようにします。
フォント、色づかい、レイアウトなどをチェックし、見やすいスライドにします。
見やすいスライドを後ろ盾に、熱意を持った口頭発表を行いましょう。
自分の研究内容を知ってもらうことで、新たなアイデアが生まれたり、アドバイスをもらえたり、人脈が広がることも期待されます。