大学院の入試では多くの場合「面接」が行われます。
大学院入試の面接において「大学院の志望理由」はもっともよく聞かれる質問です。
また、大学院に進学する人であっても、修了後は民間企業等に就職することを希望する人も多いと思われます。就活時の面接において「大学院への進学理由」は、よく聞かれる質問です。
大学院入試や企業等での面接において、大学院への志望理由や進学理由を聞く「目的」や回答する際の「注意点」について見ていきましょう。
大学院入試で面接をなぜ実施するのか?
大学院入試における面接では「論理的思考能力」や「研究に対する姿勢」を見られていると言われます。
大学院は、2〜5年間にわたる研究教育を通じて、研究者を養成していくことを目的とした教育機関です。そのため、大学院の面接においては、研究者として歩んでいくにあたり重要な能力である「論理的思考能力」などについて、評価されていると言われています。
また、大学院に進学し研究を進めていく中で、必ずしもすべての実験がうまくいくということはありません。むしろ、失敗も非常に重要であり、失敗の中から次の仮説を見出していく、というような柔軟な考え方が大切です。このことから「研究への向き合い方」もまた、面接で聞かれることが多いでしょう。
大学院の志望理由を聞く目的は?
大学院入試における面接で必ず質問される「志望理由」。志望理由を聞く目的としては
- 大学院でどのような研究をしたいのか知りたい
- 本当に進学したい熱意があるのか確認する
ためであると考えられます。それぞれ、詳しくみていきましょう。
大学院でどのような研究をしたいのか知りたい
志望理由を聞く目的の1つ目として、学生が行いたい研究内容と、研究室の研究内容のミスマッチを防ぐためというものが挙げられます。
大学院に進学すると、朝から晩まで毎日のように研究を行う日々が、短くとも2年間は続きます。万が一にも、学生が望む研究が出来ないということになると、学生にとっても大学院にとっても良くないことです。
そこで、学生が大学院において「どのような研究を行い何を得たいのか」を確認するとともに、受け入れる大学院の研究室で「指導することが可能か」判断するために、どのような研究を行いたいのか質問されることが多いと考えられます。
本当に進学したい熱意があるのか確認する
志望理由や進学理由を聞く2つ目の目的としては、本当に大学院で研究したいのか意思確認したいという点もあるでしょう。
大学院は、大学のような既知の事実を座学で学ぶ場とは異なり、学生本人が主体性を持ち、研究課題に対し取り組んでいく必要があります。研究では、既知の事実を学ぶのではなく、これまで知られていないことを明らかにしていく必要がありますが、まだ知られていないことだからこそ、答えを教えてくれる人はいません。もちろん、指導教員に相談に乗ってもらったり、アドバイスをもらったりする形でサポートを受けることはできるでしょう。しかし、直面する問題は、指導教員が答えを知っているものばかりではありません。
この答えを導き出していくためには、学生本人が主体的に動くしかなく、本当に進学して「研究」に取り組む意思があるかどうか確認するために、進学理由を聞かれることも多いと言われています。
志望理由を回答するうえで気を付けるべきポイント
志望理由については
- これまでの学修や研究経験(過去)
- 大学院を志すきっかけや理由(現在)
- 入学後に何をしたいか(未来)
- 大学院修了後のキャリアをどのように考えているか(未来)
というように、大学院進学を志すに至った「過去」から、「将来のキャリア設計」まで質問されることが多いことから注意が必要です。
大学院を志すきっかけや理由
まず、大学院に進学する理由が明確な人とそうでない人は、研究への向き合い方が大きく異なるのは事実で、面接ではその人の本気度が見られているかもしれません。
大学院では、特定の研究課題について多くの実験や調査を繰り返し、これまで知られていなかったことを明らかにしていくことが求められます。程度の差こそあれ、様々な実験を行っていくなかで、上手く研究が進まない時期が出てきます。
そのようなときに「なぜ大学院進学を志したか」という背景が明確になっていた人の場合、あきらめずに研究を進めることができ、研究成果に繋がることも少なくありません。一方、進学理由が明確でない場合や、消極的な理由で進学した人の場合、研究が進まないという壁にぶつかると、途中で退学してしまう人がいるというのもよく聞く話です。
安易な気持ちで進学しようと考えているわけではないとしても、自分自身がどのように考え、どういうキャリアパスを思い描いて進学を選ぼうとしているのかを「自己分析」により言葉にしておくと良いでしょう。
入学後に何をしたいか
また、入学後にどのような事をしたいのか、例えば「解決したい課題」や「得たい技術や経験」など、出来るだけ明確にしておきましょう。
同時に大学を卒業し、就職した同級生たちは、多くが会社で働き給与を得ることになります。一方、大学院に進学し、学生生活を2年以上続けて得たいものはなんでしょうか。例えば「ある問題に対して、自分自身が解決策を導き出したい」とか「海外での共同研究などの経験を積みたい」など、人によって志望理由は様々だと思います。こういった未来に向けた問いでは漠然とした答えになってしまいがちですが、過去の経験や目指す将来像など前後のキャリアパスと結び付けるなど、なるべく具体的な答えを用意できると良いでしょう。例えば、興味を持って取り組んだ講義や演習、高校・大学学部時代の部活動、受賞経験などに触れて説得力のある志望理由を考えてみましょう。
せっかく学問に専念できる2年間もしくは5年間だからこそ、在学中に何をしたいか明確にし、大学院での学びを有意義なものにしていくことが大切です。先生方も、出来るだけ大学院での学びが有意義なものになるよう助力したいため、志望理由を聞くことも多いようです。特に、博士後期課程への進学を前提にしているのであれば、その旨についても予め伝えておくと良いでしょう。
大学院修了後のキャリアをどのように考えているか
修了後の進路選択についてもイメージしておくことが重要です。
大学院で得た知識・経験をもとに、どのような所で活躍することを目標としているでしょうか。大学院の面接であっても、進学する研究室を探す段階であっても、修了後のキャリアはよく質問される内容です。修了後のキャリアをイメージ出来ているということは、大学院における研究を進めるためのモチベーションにもなるでしょう。また、大学院の研究計画を立てる段階であれば「将来のキャリアに役立つ研究」が出来るようにアドバイスを貰えることもあるでしょう。
外部進学の場合は志望理由が重要視されることも
外部進学の場合には「なぜこの大学院を選んだのか」という志望理由が重視されることも少なくありません。
内部進学であれば、現在行っている研究をさらに継続していくことが多いと思われ、これまでの経験を基にその研究を深化させていきたい、というような志望理由が考えられますが、外部進学の場合には、指導教員も変わり、研究内容も多かれ少なかれ、これまでとは変化することになります。
このような場合、選考にあたる先生方からすれば、なぜ出身大学ではなく他大学の大学院を志望したのかという点が気になるのではないでしょうか。そのため、外部進学時の面接の場合には、受験に合格した際にお世話になる予定の研究室で
- なにを学びたいのか
- どんな研究をしていきたいのか
内部進学をする時以上に、明確にしておく必要があるでしょう。 事前に研究室訪問や受入教員との面談を通じて所属学生や自分がこれから取り組もうとする研究内容、所有する研究設備などについて意見交換し、進学後のビジョンを具体化しておくと良いでしょう。
研究室訪問についてはこちらの記事もご覧ください。
就活面接のときに企業から質問されるケースもある
就活時の面接において、大学院への進学理由を質問されることもあるでしょう。
大学院修了後の進路として、民間企業への就職を目指す人も多いでしょう。
- なぜ大学院に進学したのか
- 大学院で学んだことを活かせないかもしれないが大丈夫か
といったような質問をされることが多くあります。
特に「なぜ大学院に進学したのか」という質問の意図は、大学院進学〜修了後における就職までのキャリアに一貫性があるかどうか判断される材料でもあるようです。そのため、大学院に進学を決める段階から「どのようなキャリアを歩みたいか」「キャリア形成において大学院進学はどのような意味を持つのか」など、大学院修了後のことを念頭において、進路選択をすることが重要といえるでしょう。
自己分析を行い志望理由・進学理由を明確にしよう
大学院入試で行われる面接では、志望理由を問われることが多いです。この志望理由を聞く目的として
- 過去:なぜ進学を志すのか
- 現在:進学することで何を得たいのか
- 未来:自分自身のキャリアをどのように考えているのか
というような、大学院進学を決めた「過去の背景」から、将来の自分は何をしたいかという「将来設計」までを知るためであると考えられます。
さらに大学院修了後、民間企業等への就職を目指す場合には
- 就活時の面接において大学院の進学理由を問われる
ことも多く、大学院進学から修了後の就職までのキャリアに一貫性があるかどうかを判断する材料になっています。
そのため、大学院進学にあたっては、過去(進学を志す理由)から未来(なりたい将来像)まで、しっかり自己分析を行い、明確にしておくことが大切といえるでしょう。