はじめに
博士という言葉にはどんな印象があるだろう。「大学の先生」「頭は良い」「社会常識がない」といったあたりだろうか.。映画やドラマ、漫画で描かれるような「変わり者」の姿を思い起こす方もいらっしゃるかもしれない。
もちろん、博士の中にも「変わり者」はいる。しかし、博士の大半は、研究者という仕事に就いただけのごく「普通の人々」である。博士の大口の雇用先は大学だが、企業やNPOなどで活躍する博士もたくさんいる。研究は頭を使う仕事ではあるが、IQ200の天才ばかりというわけではない。博士は社会常識には疎いところもあるかもしれないけれど、それは大学と企業の風習や習慣の違いによるところが大きく、フィクションのようにエキセントリックな博士はほぼいない。基本的には博士もまた「普通の人々」なのである。
博士が「普通の人々」だとすれば、博士に固有の特徴、特に博士の強みはどこにあるだろうか。博士学生の⺠間企業就職に向けた機運が高まりつつある昨今、この問いは博士育成や企業人事の場面で、徐々にそ重要度を増してきている。この問いに対して、一つの答えを提示することが本稿の課題である。
こうした課題に応えるために、本稿では改めて博士という人材の持つ強みについて検討する。検討は大きく2つのステップで行う。
1つめのステップでは大学・大学院で博士学生のキャリア支援を行う中で得られた知見をもとに博士の強みに関する仮説を設定する。そして2つめのステップでは、この仮説をたたき台として企業向けのアンケート調査を実施し、企業の方々が暗黙的に抱かれている博士人材像を掘り起こすこととする。2つのステップを経ることで、大学の博士人材像と企業の博士人材像をすり合わせていくかたちで博士人材像を多角的に理解することを意図している。
また、こうした工夫によって、実際に企業で博士とともに働かれている方々、博士の採用に関わっていらっしゃる方々にも「博士の見方」「博士の取り扱い方」についての気づきを得てもらえるのではないかと期待している。もちろん、博士採用に興味をお持ちの企業の方々にとっては、本稿は博士の採用選考のあり方を検討するための手がかりとなるはずである。本稿が一つのきっかけとなり、博士の持つポテンシャルを企業の方々、広く社会の方々に理解してもらえればと願っている。
(レポート「1. はじめに」より)
詳細は以下レポートをご覧ください。
博士人材像の検討 −博士育成によせる大学の思い・博士人材への企業の期待−
【文責】
⻄村 君平(東北大学大学院理学研究科)
吉野 宏志(広島大学大学院人間社会科学研究科)
※本稿は筆者が株式会社アカリクの協力のもとで実施した「新卒博士人材に期待する能力に関する調査」の分析結果を取りまとめ、アカリクに寄稿したものです。
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