学振申請書作り2021 with Cloud LaTeX

学振申請研究・大学生活

今回の記事は学振申請書作りの話題です。

博士後期課程に進学予定の皆さんや既に在学中の皆さんは今年の学振の申請書を提出された頃かと思います。(編集部注:この記事は2021年7月に公開されました)
お疲れさまでした。
かくいう筆者も進学を予定しておりまして、初めての学振申請書作りに挑戦しておりました。

この記事では、同じように初めての申請書作りに挑戦する皆さんや「博士に進もうと思ってるけどよく聞くガクシンってなんなの?」、「自分に書けるかなぁ…」などといった皆さんをターゲットに、筆者が体験した学振申請書作りルポをお送りします。

また、LaTeXで申請書を作る人が少ないのかあまり情報がなく、そのあたりにも触れたいと思います。

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学振とは

学振は「学術振興会 特別研究員制度」を指す言葉として使われています。

この特別研究員制度にはD1を対象とした「DC1」とD2及びD3を対象とした「DC2」の2つの区分があり、 それぞれ700名、1100名程度が採用されます。

採用されると研究奨励金として生活費相当の月額20万円が支給されるというだけでなく、 別途研究費の応募が可能であったり、職歴にもなることから、 将来アカデミアポストを目指す博士課程学生にとっては誰もが(?)ほしいカタガキです。

学振の申請書

そんな学振ですが、採択率は約20%程度。

つまり、実際に採用されるのは5人に1人という狭き門というわけです。

どのような審査で選抜が行われるのでしょうか。 「申請書」を作成してこれをネットで送信するのですが、審査に使われる情報はこれだけ。 昨年度(2021年度採用分)までは面接採用枠がありましたが、コロナの影響でしょうか、今年から書面による審査だけになりました。

この申請者は所定の雛形があり、変更は認められません。 たった10ページほどの書類で決まってしまうため、自分の想いを遺憾なく書き込んだ完成度の高い書類を作る必要があります。

科研費LaTeX

科研費と同様に学振もWordだけでなく、 LaTeXでの作成ができるように「科研費LaTeX」版の雛形が用意されています。

LaTeXなら文献番号や図表番号の振り間違いもありませんし、数式も美しいです。
LaTeXを使ったことがないという人も論文執筆に便利なのでこの機会に勉強してみても良いかもしれません。

ちなみに科研費LaTeXの雛形は空欄に文字を流し込めば上手く配置してくれるので、この点でもLaTeXの練習としては良いかもしれません。
Cloud LaTeXでは科研費LaTeXもサポートしていますので、お使いのデバイスにLaTeX環境を導入しなくても手軽に使い始めることができます。

申請書作り

某掲示板の情報によれば審査員は膨大な申請書を驚くほど安い謝金で審査するそうです。

ぱっと見て魅力的な申請書を作りたいものです。

つまり、

  • よく練られた研究計画
  • 見た目に美しい申請書

という2点が採択を得るための重要なポイントではないでしょうか。

申請書作りのスケジュール

初動は早い方が良いに決まっている!ということで確か1月くらいから取り掛かったように思いますが、なかなか筆も乗らず、実際に初稿が完成したのは2月19日でした。

その後、先生にコメントをもらい、図を書き直し、友達に見てもらい、後輩に見てもらい…という感じです。

Gitのログを見ると、それ以降は約3週間ごとに先生に見てもらっていたようです。

筆者の体感としては時間が足りない…!という気持ちにはなりませんでしたが、この辺りは分野とか先生の面倒見とか、そういった部分も大きいと思います。

個人的に一番苦労したのはポンチ絵の作成です…。

申請書作りのコツ

申請書作りの基本的な戦略はインターネット上にもたくさん情報があります。

有名なところでは東京工業大学の大上先生が学振特別研究員になるために」という資料を毎年公開されており、書籍も執筆されておられます。

また、実際に使われた申請書を公開している人も何人かいますから、こうした申請書を参考にするのも良いと思います。

読みやすい申請書がどのような工夫をされているか、どういう風に書けば自分の研究が魅力的に見えるか、研究してみると良いでしょう。

LaTeXでカラフルな紙面を作る(モノクロ)

審査員に自分の申請書をアピールするという意味でカラフルな申請書にしたいところですが、申請書はグレースケールで配布されるということになっています。

そこで無彩色でも網掛けや太字などを効果的に使った申請書になるように心がけました。

この辺りはLaTeXよりWordのほうが得意な処理になりますが、LaTeXでも十分可能です。

ここでは筆者が実際に使った表現をご紹介します。

見出し

文字の多くなりがちな紙面の中で見出しを一目で見分けられるように網掛けにしました。

\newcommand{\mysubsection}[1]{\vspace{1.5mm}\noindent\textbf{\large\sffamily\gtfamily{$\blacktriangledown$#1}}}
\newcommand{\mysubsubsection}[1]{\vspace{1.5mm}\noindent\colorbox[cmyk]{0,0,0,0.2}{\textbf{\sffamily\gtfamily{#1}}}\hspace{1zw}}

改行位置の調整

読みやすさを考慮すると中途半端なところでの改行は避けたいところです。

Wordの両端揃えであれば半角スペースをいくつか入れれば上手く改行してくれますが、LaTeXではどうすれば知らなかったので、申請書を書くときに少し悩みました。

強制改行\\を入れると両端揃えが効かなくなってしまうので美しくありません。

結局、次のようなコマンドを定義して改行位置を指定しました。 つまり改行したい位置に50文字分の空白を入れるというものです。

空白の大きさは適宜調整してもらえば結構です。

\newcommand{\kaigyo}{\hspace{50zw}}

フォント

フォントは本文にヒラギノ明朝、強調や見出しにはヒラギノ角ゴW6を採用しました。 ヒラギノしか勝たん!!

欧文はComputer Modern Roman(デフォルト)とHelveticaを使いました。

LaTeXではヒラギノがインストールされているマシンで

$ sudo kanji-config-updmap-sys –ja hiragino

としてやればヒラギノファミリーを適用できます。

詳細はkanji-config-updmapのドキュメントをご覧ください。

欧文はパッケージで設定しました。

\usepackage{helvet}

文献

文献は長くなりがちで2行に渡ってしまうと紙面を消費してしまうのでフォントサイズを本文より小さめにしました。 また、行間も少し詰めました。

\renewcommand{\refname}{\vspace{0.4zh}\noindent\textbf{\large\gtfamily $\blacktriangledown$参照文献}\vspace{-0.4zh}}% 見出し「参考文献」のフォントを\mysubsection に揃える
\begin{thebibliography}{1}
    \small
    \setlength{\itemsep}{-1pt}
    \bibitem ...
\end{thebibliography}

業績

業績のアピールも重要です。

筆者は「4. 研究遂行力の自己分析」に業績リストを掲載し、文中ではその番号を引用しました。

\newcommand{\gyosekicitei}[1]{(業績\ref{#1})}
\newcommand{\gyosekiciteii}[2]{(業績\ref{#1},~\ref{#2})}
\newcommand{\gyosekiciteiii}[3]{(業績\ref{#1},~\ref{#2},~\ref{#3})}

としてやれば、文中では

\gyosekicitei{ref:RSURFI}

とすれば引用できます。

Gist

ここでご紹介したLaTeXのプリアンブル部分はGistで公開しておりますのでそちらもご参照ください。 https://gist.github.com/atsuyaw/0d1204efc0d701622c2cb25cd6c1a628

Cloud LaTeXで論文を書こう!

Cloud LaTeX」では、LaTeXを使って論文をオンライン上で執筆することができます。

いくつかの学会テンプレートが予め用意されているほか、Cloud LaTeXでは現在非対応の学会誌も、スタイルファイルやクラスファイルをアップロードすることで、様式に沿った原稿の作成が可能です。

おわりに

今回の記事では科研費LaTeXを使った学振申請書作りについてご紹介しました。
この記事にたどり着いたということは、きっとあなたも申請書を書くのでは…?
健闘をお祈り致します!

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アカリクリポーターズとは、大学院生としての経験や知識を「リポート」するライター集団です。全員大学院在籍経験があり、これまでの研究経験や知識を活かして、大学院生の皆様に役立つ情報をお届けしています。専門分野は工学・化学・生命科学・心理学・社会学等様々です。

【監修】アカリクお役立ちコンテンツ編集部
博士号所持者/博士課程在籍経験のある編集者が監修しています。

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