ポスドクの保活事情…のその後 「小1の壁②」

博士の日常

 前回は、子どもが小学校に入学すると、学校生活のサポートという新たな仕事が家庭にも課せられる、という面から「小1の壁」を見てきましたが、「小1の壁」になっているものはほかにもあります。

 そのひとつは、放課後や休日をどう過ごすかという問題です。

今回は、放課後時間の過ごし方にまつわる課題について、我が家の事例からご紹介したいと思います。

 保育園という、親の就労に合わせた時間帯で一貫した子どもの保育を提供してくれた施設を離れ、我が子は昨年度小学校に入学しました。この時から、生活の中心は「学校」になったわけですが、実際には時間でみると低学年の児童は学校に行っている時間よりも長い時間、放課後を過ごすことになります。この時間をどのように安全、安心、そして有効に使えるようにしていくか、それが「小1の壁」の課題のひとつです。 

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頼りは学童保育所

 まず頼りにするのが「学童保育所」(もしくは「放課後学童クラブ」などと呼ばれる施設)です。厚生労働省のウェブサイトには以下のように定義されています。

 児童福祉法第6条の3第2項の規定に基づき、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学校に就学している児童に対し、授業の終了後等に小学校の余裕教室や児童館等を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図るものです。

厚生労働省 放課後児童健全育成事業について https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/kosodate/houkago/houkago.html 

 つまりは、家庭に代わって子どもを見守ってくれるのが学童保育所です。放課後、親が勤務中の時間や、夏休み等の長期休暇の際や、運動会等の行事の振替えによる平日の休校日にも対応してもらえる、大変心強い存在です。

 自治体によっても異なりますが、公立小学校に連携して設置され、自治体の運営なので一般的に費用の利用者負担も高くはなく、保育園に通っていた子どもの多くが利用を希望します。ここでも「待機児童問題」は健全で、人数に制限があるため希望者全員が入所できるわけではなく、保育園の時と同様、申請書によって必要の優先度が審査され、入所の可否が決まります。幸いにして、我が子の入学した学校には十分な定員を確保した学童保育所が増設されたこともあり、保育園入所の時ほど苦労することなく、学童入所がきまりほっとしました。

学童保育所には馴染めたものの…

 学童保育所は休校の平日にも対応をしてくれるので、学童に入所が決まった新一年生の多くは、4月1日、小学校の入学式以前の春休みから学童保育所に通うことになります。保育園の頃のような慣らし期間というものもなく、我が子も初日からお弁当持参で朝の8時半から夕方の5時まで、学童で過ごしました。

 我が子の場合は、小学校入学までの間に、保育園、幼稚園、子ども園と、転園を重ねてきた経緯から、同じ学童保育所に通う同級生のなかにも友人が多くいたこともあり、スムーズに馴染むことができたようです。保育園のように迎え時に先生から一日の様子を聞くという機会はなくなるので、子ども本人の語るところでしか中の様子はわかりませんが、ボードゲームやカードゲームなど大人数で遊ぶゲーム類が用意されているほか、児童書やマンガも揃っているということでした。話を聞く限りでは、児童館、図書館、マンガ喫茶、ボードゲームカフェの要素をあわせたような、かなり遊び甲斐がある魅力的な施設にみえます。

 公立小学校に「学習指導要領」が定められ、ある程度均一化されているのとは異なり、学童の施設や備品、方針は自治体ごとの違いが大きいとききます。その意味では、我が子の通う学童保育所が整った環境にあったことには感謝しなければなりません。しかし、環境が整っていても、やはり通うのを渋る場合もあります。学校に通っている同級生には当然、学童保育所に通っていない子もいますし、放課後に学童児以外の友達と遊びたいということも出てきます。また、学童保育所の仲間のなかにも、習い事や親の就労の都合などで定期的におやすみしたり早く退所する子もいるので、保育園と異なり、「毎日通うのが当たり前」という感覚を持ちにくい面があります。

 環境に恵まれ、友人関係が良好であったとしても、毎日通っているうちに退屈することもあります。特に一年生の一学期は授業が短く、長い放課後時間を持て余しがちになります。そこにやってくるのが夏休みで、我が子は一日中学童保育所で過ごすことに飽きや疲れもでていました。しかも、夏休み前の学校での会話から、世間は夏休みで旅行や観光を楽しんでいる同級生も多いことを知っています。学童保育所でも登所を休む子も少なくありませんでした。

 幸か不幸か、ここ数年はコロナ禍の影響で自粛の風潮があり、我が子には「我慢しているのは自分だけではない」といった認識があったようですが、今後の長期休みについてはますます学童保育所にまかせきりとはいかなくなってくるのではないかと感じています。

習い事をさせるべきか…

 公立の学童保育所は、「遊びと生活の場を与える」制度です。基本的には、宿題の指導や大きなイベント事があるわけではなく、児童が過ごす空間の担保がその役割です。それに対し、送迎や宿題のフォロー、児童を預かる時間に英語やプログラミングなどの教育も行う、民間学童やアフタースクールと呼ばれる施設も存在しています。我が家では保育園探しの際に検討したことや、その後幼稚園に通っていた際の夏休みに利用したことがあります。

例:私立幼稚園年少の夏季休暇を乗り切ろうとした我が家の第一子の場合
ポスドクの保活事情(11) 幼稚園という選択肢
幼稚園は保育園と違う?子どもが3才以上になると、「保活」の選択肢に幼稚園が加わります。保育園が両親の就労などの事情により保育に欠く幼児を、家庭に変わって保育士免許を有した職員が預かる施設であるのに対して、幼稚園は教諭免許を有した教員によ...
 

 

 サービスが充実したところだと週5で一ヶ月の利用料が10万円を超えるところもあり、当然公立学童と比較して費用は高くなります。しかし送迎の必要や子どもだけでの行き帰りに対する心配もなく、放課後の時間を有効利用できるため、公立学童保育所に入所できなかった場合の代替えだけでなく、あえて公立学童保育所と併用して利用している人もいます。学校の長期休暇中にはサマープログラムやキャンプを企画するところもあり、一つの選択肢になります。そのほかにも、スポーツ教室やピアノ教室など、学校の時期に合わせた体験教室や短期コースを用意している場合が多いです。

 我が家の子どもたちは習い事をなにもしていません。英語や音楽は早くからはじめたほうがいいという話もよく聞きますし、保育園の頃から習い事をしている友達も周囲にはいるのですが、非常勤ポスドクの身には経済的にも時間的にも余裕がなく、「本人がなにかやりたいという意思を示しはじめたら検討しよう」ということにしてきました。しかしその後も、こちらが提案したり、友達の話を聞いたりしても、「いや、いいや」と、本人は興味なし。親が具体的なアクションをとらなければ、自発的になにかを習いたいという意識は湧いてこないのだということを悟りました。

長期休みと放課後の有効活用、その試行錯誤は続く…

 小学校の長期休暇中はわたしのほうも大学の非常勤もなくなり、多少の余裕も出てくる時です。且つ、やはりコロナの影響で現地調査等もできなかったので、普段より子どもに意識が向いていた部分もあり、少しばかり習い事らしいことにも挑戦してもらいました。普段は気乗りしない本人も、非日常感のあるイベントという雰囲気に押され、焚きつけるとその気になってきたようです。

 探してみると、特に夏休みの時期は自治体や博物館などが催すワークショップやオンライン講座なども結構見つかりました。無料のものは人気があり、抽選や先着にもれがちでしたが、それでも一年生の間に、水泳、プログラミング体験、科学講座、変わったところでは手妻ワークショップといった単発のイベントに参加できました。本人はそれぞれ、それなりに楽しんできたと思います。しかし、次回の講座や有料の連続講座への勧誘や営業がかかることがあっても、「また受けてみたい」「もっとやってみたい」という反応はなく、これを機に習い事を、というところには至っていません。

 学校の授業外の教育をどうするか、潤沢な放課後時間と長期休暇の時間をいかに有意義なものにしていくべきなのか、悩むところではありますが、我が家の場合は、学童保育所での異学年交流や、読書、ゲームの時間も、子どもにとっては貴重な経験、知識や技術修得の機会なのだと考えることにしました。飽きや退屈への対処は、単発のイベント参加のほか、図書館利用や週末の外出で多少の刺激を入れつつ、試行錯誤を続けています。

[文責:子育てポスドク(人文科学系・博士課程単位取得退学)]

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