企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化が進む中で、データサイエンティストは、ITをはじめとした多くの業界で需要が高まりつつある職種です。
特に近年では、AI(人工知能)などの高度な技術が広く活用されるようになっており、ますます、多くの業界でデータサイエンティストが必要とされてきています。
この記事では、データサイエンティストの年収や、データサイエンティストと類似の職業との違い、データサイエンティストにはどのようなスキルが求められるのかについて詳しく紹介します。
データサイエンティストの定義
一般社団法人データサイエンティスト協会では、データサイエンティストを以下のように定義しています。
「データサイエンティストとは、データサイエンス力、データエンジニアリング力をベースにデータから価値を創出し、ビジネス課題に答えを出すプロフェッショナル」
引用:一般社団法人データサイエンティスト協会「データサイエンティスト協会、データサイエンティストの ミッション、スキルセット、定義、スキルレベルを発表」
データサイエンティストとは、データの分析に関する高度なスキルと専門性が必要な職業といえるでしょう。
データサイエンティストについてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
データサイエンティストの仕事内容
データサイエンティストの仕事内容について紹介します。
市場を調査し、データを分析することが、まずは重要な業務のひとつです。
また、分析によって得られた知見を通して、顧客にコンサルティングすることも重要な仕事のひとつです。
データの分析・市場調査
データサイエンティストは、新たな商品やサービスを生み出したり、業務プロセスの革新のため、大量に蓄積されたデータ(ビッグデータ)を分析することが主な仕事です。
対象企業の営業活動などで得た膨大なデータを分析し、営業や経営の戦略を経営で判断、決定する際に必要な情報を提供します。
また、自社内のデータやクライアント企業のデータの分析だけではなく、市場調査を行い、自社やクライアントのビジネスに活用していくことも重要な業務のひとつです。
調査・分析によって得た結果を用いたコンサルティング
調査・分析により得られた結果を用いて、データをどのように活用すればクライアントの課題解決につながるのかといった、コンサルティングも含めた提案をすることも業務のひとつです。
データサイエンティストの平均年収は?
国税庁の「令和2年分民間給与実態統計調査」によると、日本人の平均年収は約433万円です。
これに対して、厚生労働省が提供している職業情報提供サイトの「jobtag」で紹介されているデータサイエンティストの平均年収は、約531.9万円となっており、日本人の平均年収と比べて高い傾向があります。
データサイエンティストの年収が高くなる理由としては、需要に対しての人材不足が要因として考えられます。
データサイエンティストの業務は、業務上重要な意思決定の局面で、データに基づいた合理的な判断を行うため、高度な専門性が求められます。
また、膨大なデータや情報を適切に扱うスキルだけでなく、ビジネスやマーケティングなどに関する幅広い知識が必要となります。
このような高度な専門性を持つ人材はまだまだ少なく、その結果として年収が高くなっているのではないかと考えられます。
ただし、データサイエンティストの年収が後述のデータエンジニアやアクチュアリーなどの他の類似職種と比べて突出して高いわけではないことも念頭に置きましょう。
また、単に年収のみで職業を比較するのではなく、自身のスキルや適性を比べて、どの職種が向いているかも含めて総合的に判断する必要があるでしょう。
参考:国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
参考:厚生労働省 job tag「データサイエンティスト」
データサイエンティストと近い職種の年収
データサイエンティストと近い職種には代表的なものとして以下の3つの職種があります。
- データエンジニア
- アクチュアリー
- マーケティング・リサーチャー
以下では、これらの職種についてデータサイエンティストとの違いと、それぞれの職種の年収について概観します。
データエンジニア
データサイエンティストに似た職業に、データエンジニアというものがあります。
「job tag」で紹介されているデータエンジニアの平均年収は、約558.8万円となっており、データサイエンティストと比べると若干高い傾向にあるようです。
データサイエンティストが、実際の業務に関するデータを分析し、新たな商品やサービス価値を生み出したり、業務のプロセスを刷新するための知見を引き出したりするのに対して、データエンジニアはこの前段階となる、データの収集・整理・管理・情報基盤の構築や運用などを円滑に行うポジションです。
参考:厚生労働省 job tag「データエンジニア」
アクチュアリー
アクチュアリーとは、確率や統計などの数理的手法を用いて、年金分野、保険分野、官公庁などのコンサルティングを行う専門職です。
「job tag」で紹介されているアクチュアリーの平均年収は、約1029.5万円です。
データサイエンティストとの違いは、データサイエンティストが、特定の分野に限定されない職種であるのに対し、アクチュアリーは、生保・損保会社や信託銀行、官公庁で働き、「金融分野」というより限定された範囲で数学的な分析業務に特化している職種であるという点です。
アクチュアリーについては以下の記事でも紹介しています。
参考:厚生労働省 job tag「アクチュアリー」
マーケティング・リサーチャー
マーケティング・リサーチャーとは、企業のマーケティング活動において、その市場の背景に併せて、消費者の好みや関心の動きを追いかけ、競合他社を含めた、業界全体の動きなどをリサーチする職種です。
厚生労働省「job tag」で紹介されているマーケティング・リサーチャーの平均年収は約620.9万円となっています。
企業が打ち出した広告の効果や、企業の販売戦略などに基づき、依頼主がターゲットとする市場(マーケット)のデータや情報を収集・分析し、報告することが主な仕事内容です。
参考:厚生労働省job tag「マーケティング・リサーチャー」
データサイエンティストになるために必要なスキル
ここからはデータサイエンティストになるために必要なスキルについて紹介します。
一般社団法人データサイエンティスト協会では、データサイエンティストに求められるスキルセットとして、「ビジネス力(business problem solving)」、「データサイエンス力(data science)」、「データエンジニアリング力(data engineering)」の 3 つを挙げています。
一点目の「ビジネス力」とは、「課題背景を理解した上で、ビジネス課題を整理し、解決する力」のことで、顧客から提示された問題を解決するための思考力も含めた、問題解決能力のことだと言えます。
二点目の「データサイエンス力」は「情報処理、人工知能、統計学などの情報科学系の知恵を理解し、使う力」のことを指します。
数理統計的な専門性を活かして、データを見える化した上で解釈したり、結果を数理的に解釈したりといった力とも言えるでしょう。
三点目の「データエンジニアリング力」は「データサイエンスを意味のある形に使えるようにし、実装、運用できるようにする力」です。
将来データサイエンティストとして働きたいと考える大学院生は、在学中に、これらのスキルを磨くことを意識しながら過ごすことが重要であると言えるでしょう。
参照:一般社団法人データサイエンティスト協会「データサイエンティスト協会、データサイエンティストの ミッション、スキルセット、定義、スキルレベルを発表」
データサイエンティストを目指すなら海外も視野に
海外でデータサイエンティストとして働く場合、年収は国内よりも高くなる可能性が高いともいわれています。
日本でも近年ビックデータの活用はビジネスにおいて重要な位置づけになりつつありますが、アメリカをはじめ諸外国ではデータの分析や活用がビジネスにとって重要なカギとなると考える傾向が強いです。
データサイエンティストを目指すなら、海外での活躍も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
まとめ
データサイエンティストは、ほかの職業に比べて年収が高い傾向があります。
その分、専門的な知識やスキルが必要なため、しっかりと勉強してキャリアを積む必要があります。
また、データサイエンティストと類似した職種もいくつかあります。
それぞれの特徴を比較した上で、自身の適職を分析することで、大学院で培った自分のスキルを活かせる職種がどれなのかを知ることができるでしょう。