ノーベル賞とは?成り立ちや選考方法を紹介!

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2022年のノーベル賞は10月3日(月)~10日(月)にかけて受賞者が発表されます。毎年、報道で大々的に取り上げられるノーベル賞を知らない人はいないでしょう。

今回は「ノーベル賞」をあらためて知りたい方に向けた記事になります。

ノーベル賞の成り立ちや選考方法まで知っている人はどれくらいいるでしょうか?今回の記事では、ノーベル賞がどのようなものなのか、成り立ちや選考方法について紹介したいと思います。

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ノーベル賞とは?

はじめに、ノーベル賞とはどういったものなのかについて紹介します。

ノーベル賞は、物理学、化学、生理学・医学、文学、平和、経済学の各分野で「人類に最大の貢献をもたらした人々」に授与される賞です。

ノーベル賞は、スウェーデンの発明家アルフレッド・ノーベル氏の遺言に基づき創設されました。

ノーベル賞の受賞者には、賞金、賞状、メダルが授与されます。

ノーベル賞の賞金額は、ノーベル財団が行っている資産運用によって変動します。

かつては1つの賞につき、1000万クローナ(※)(約1億2640万円)でしたが、リーマンショックを受けて、2012年から2016年までは、800万クローナ(約1億120万円)にまで下がったこともあったようです。

2017年からは900万クローナ(約1億1380万円)まで戻り、2021年は1000万クローナ(約1億2650万円)となりました。

※2022年1月16日(執筆時)時点で、1クローナ12.65円

ノーベル賞の最年少受賞者は、2014年にノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイ氏(当時17歳)です。

ユスフザイ氏は、故郷パキスタンで女性が教育を受ける権利の重要性を訴えていた2012年(当時15歳のとき)に、武装勢力タリバンにスクールバスで襲われ、頭を撃たれました。

回復後は、家族とバーミンガムに移り住み、その後、オックスフォード大学へ進学し、人権活動家となりました。

2021年には、パートナーのアッセル・マリク氏とイスラム教の結婚式「ニッカ」を挙げたことで話題になりました。

参考:文部科学省「ノーベル賞ってなに?

参考:日本放送協会 (2018)「ノーベル賞 やっぱり気になる賞金

参考:英国放送協会 (2021)「マララさん、結婚式「ニッカ」を挙げたと報告

ノーベル賞の成り立ち

次に、ノーベル賞の成り立ちについて説明します。

先述のとおり、ノーベル賞は、スウェーデンの発明家のアルフレッド・ノーベル氏(以下、ノーベル氏)の遺言に基づき創設されました。

ノーベル氏は、ダイナマイトを発明したことで、巨万の富を得ました。

戦争の兵器の1つとして知られるダイナマイトですが、もともとは、トンネル建設のようなインフラ整備に使用されていました。

しかし、当時(日本は江戸時代末期〜明治時代)、ヨーロッパ各地で戦争が勃発し、安全で破壊力のあるダイナマイトは軍事兵器として、利用されることになりました。

ノーベル氏の兄が死去したときに、当時の新聞記者が、ノーベル自身が死去したと誤報し、新聞の見出しに「死の商人、死す」と記載してしまう事件が起きました。

この新聞の見出しに、ノーベル氏はショックを受けます。

ダイナマイトが人の役に立っていないと感じたノーベル氏は、亡くなる前年の1895年に遺書を残しました。

遺書には、自身の換金可能な全財産を有価証券に投資し、その資本をもとに基金を設立することや、投資された資本から生まれた利子を賞の形で、毎年5つの部門で貢献した人たちに配分することなどが記載されました。

なお、この5つの部門とは、物理学、化学、生理学/医学、文学・平和のための活動の5つの部門です。

参考: 株式会社フォーグッド:「ノーベル賞はどう選ばれる?ノーベル賞の始まりから種類まで丸わかり

ノーベル賞の種類

ここからは、ノーベル賞における6つの賞の内容、受賞例、選考組織を紹介します。

参考:日本経済新聞社 (2015)「ノーベル賞はどのように決まる?~選考の仕方や日本の研究環境の課題を知る

物理学賞

物理学の分野で最も重要な発見、発明をした人に与えられます。

選考組織は、スウェーデン王立科学アカデミーです。

有名なノーベル物理学賞の受賞例として、1901年受賞のレントゲン氏(X線の発見)や、1903年受賞のマリー・キュリー氏(ポロニウムとラジウムの発見研究)、1921年受賞のアインシュタイン氏(理論物理学の諸研究)などの受賞があります。

2021年には、米プリンストン大学の真鍋淑郎氏がノーベル物理学賞を受賞したことで話題になりました。

真鍋氏はコンピュータを駆使し、大気と海洋の循環を考慮した気候変動のモデルを開発しました。

ノーベル物理学賞は、日本人の受賞者が多いという特徴があります。湯川秀樹氏(1949年受賞)や、朝永振一郎氏(1965年受賞)、江崎玲於奈氏(1973年受賞)、小柴昌俊氏(2002年受賞)など、教科書で名前を見たことがある人も多いのではないでしょうか。

参考:日本放送協会 (2021)「「真鍋淑郎さん ノーベル物理学賞決定」(時論公論)

化学賞

化学賞は化学の分野で最も重要な発見、改良を成し遂げた人に与えられます。

選考組織は、スウェーデン王立科学アカデミーです。

有名なノーベル化学賞の受賞例として、2019年受賞の旭化成株式会社の名誉フェロー 吉野彰氏が挙げられます。

吉野氏は、リチウムイオン電池の開発に取り組みました。

吉野氏は「充電できる電池」の小型化と軽量化を目指して開発に取り組み、当初はノーベル化学賞の受賞者である白川英樹氏が発見した電気を通すプラスチック「ポリアセチレン」を電極に利用する研究を行っていました。

ほかにも、日本人の受賞者は多く、福井謙一氏(1981年受賞)や、白川英樹氏(2000年受賞)、野依良治氏(2001年受賞)、田中耕一氏(2002年受賞)、下村脩氏(2008年受賞)が挙げられます。こちらも物理学賞と同様、教科書で見たことがある方がたくさんいます。

参考:日本放送協会 (2020)「2019ノーベル化学賞 吉野彰さん受賞

生理学・医学賞

生理学・医学賞は、生理学、医学の分野で最も重要な発見を行った人に与えられます。

選考組織は、カロリンスカ研究所です。

有名なノーベル生理学・医学賞の受賞例として、1945年受賞のフレミング氏(ペニシリンの発見)や、1962年受賞のワトソン氏とクリック氏(DNAの二重らせん構造の発見)などがあります。

日本人では、やはり山中伸弥氏(2012年受賞)が有名でしょう。

山中氏は、iPS細胞の作製に成功し、多くのメディアに取り上げられました。

iPS細胞とは、ヒトの皮膚などの体細胞に初期化因子を導入して作製され、体のほぼすべての細胞に分化する能力と、ほぼ無限に増殖する能力を獲得した多能性幹細胞のことで、再生医療・創薬の可能性を広げています。

ほかにも、日本人の受賞者は多く、利根川進氏(1987年受賞)や、大村智氏(2015年受賞)、大隅良典氏(2016年受賞)、本庶佑氏(2018年受賞)など、多くの研究者が受賞されてきました。

参考:京都大学iPS細胞研究所 CiRA「iPS細胞とは?

文学賞

文学賞は文学の分野において理想主義的な傾向にあって最も優れた作品を創作した人に与えられます。

選考組織は、スウェーデン・アカデミーです。

有名なノーベル文学賞の受賞例として、1911年受賞のメーテルリンク氏『青い鳥』や、1946年受賞のヘッセ氏『車輪の下』、1954年受賞のヘミングウェイ氏『老人と海』などがあります。

日本人では、『ノルウェイの森』や『1Q84』といった作品で有名な村上春樹氏が注目されていることで有名ですね。

過去には、川端康成氏(1968年受賞)や、大江健三郎氏(1994年受賞)などが受賞されています。

参考:日本放送協会 (2020)「なぜ村上春樹さんが注目されているの?

平和賞

平和賞は国家間の友愛関係、常備軍の廃止か縮小、平和会議の開催および促進のために大きなあるいは最良の仕事をした人に与えられます。

選考組織は、ノルウェー・ノーベル委員会です。

有名なノーベル平和賞の受賞例として、1901年受賞のデュナン氏(赤十字の生みの親)や、1964年受賞のキング牧師(人種差別をなくすために尽力)、1991年受賞のアウン・サン・スー・チー氏(ミャンマーの民主化に貢献)などがいます。

日本人では、1974年に佐藤栄作元内閣総理大臣が非核三原則を提唱し、ノーベル平和賞を受賞しています。

ほかにも、ノーベル平和賞では、マララ・ユスフザイ氏(2014年受賞)や、バラク・オバマ元米国大統領(2009年受賞)、アル・ゴア元米国副大統領(2007年受賞)など、有名な受賞者がたくさんいます。

経済学賞

経済学賞は経済学上の優れた理論を作り出した人に与えられます。

経済学賞は他の5つの賞とは異なり、ノーベル氏の遺言をもとに作られたものではなく、1968年にスウェーデン国立銀行が創立300周年を迎えたことをきっかけに新設されました。

選考組織は、スウェーデン王立科学アカデミーです。

有名なノーベル経済学賞の受賞例として、1970年受賞のサミュエルソン氏(経済分析)や、1976年受賞のフリードマン氏(貨幣理論)、1994年受賞のナッシュ氏(ゲーム理論)などがあります。

なお、2021年現在、ノーベル経済学賞を受賞した日本人はいません。

ノーベル賞の選考方法

最後に、ノーベル賞の選考方法について紹介します。

受賞者の選考過程は受賞の50年後まで明かされません。

参考:日本経済新聞社 (2015)「ノーベル賞はどのように決まる?~選考の仕方や日本の研究環境の課題を知る

<前年9月>推薦依頼状の発送

ノーベル賞の選考は前年9月からはじまります。

まずは、選考組織(スウェーデン王立科学アカデミー等)が設置する「ノーベル委員会」が、それぞれの分野の専門家ら(過去の受賞者を含む)に受賞候補者の推薦依頼状を送ります。

<1月末>推薦状の締め切り

この推薦依頼状の受付は、翌年の1月末に締め切られます。

推薦依頼状の受付期間は、およそ5ヶ月あります。

<2月~>候補者の絞り込み

2月から候補者の絞り込みをはじめます。

具体的には、委員会等が以下の観点から候補者の絞り込みを行います。

  • 候補者がはじめに行った研究であるか(新規性があるか)
  • 同じような成果を出した研究者が候補者以外にいないか

このような厳密な調査を何ヶ月もかけて行います。

<10月中旬~下旬>受賞者の発表

10月中旬〜下旬にかけて、ノーベル賞の受賞者が決定します。

最終的な受賞者は、多数決による投票で決まります。

なおノーベル平和賞だけは、個人ではなく団体が対象となることもあります。

<12月10日(ノーベルの命日)>ストックホルムとオスロで授賞式

毎年12月10日にノーベル賞の授賞式が行われます。

実は、あまり知られていませんが、12月10日はノーベルの命日です。

ノーベル平和賞以外の5つの賞は、スウェーデンのストックホルムで行われます。

一方で、ノーベル平和賞はノルウェーのオスロで開かれます。

ノーベル氏は、遺言の中でノーベル賞の選考委員会に至るまで様々なことを詳細に書き残していましたが、平和賞をノルウェーで行う理由については記載していません。

一説によると、ノーベル氏が生きていたころは、スウェーデンとノルウェーは1つの国であり、両者に敬意を払ったためといわれています(1814年から1905年までノルウェーはスウェーデンに統治されていました)。

参考:毎日新聞「疑問氷解:平和賞、なぜノルウェーで?

まとめ

今回の記事では、ノーベル賞がどのようなものなのか、その成り立ちや選考方法について紹介しました。

最後にこの記事の内容をまとめます。

  • ノーベル賞は、スウェーデンの発明家アルフレッド・ノーベル氏の遺言に基づき、物理学、化学、生理学・医学、文学、平和、経済学の各分野で「人類に最大の貢献をもたらした人々」に贈られる賞である
  • ノーベル賞の選考は、1年かけて行われ、受賞者の選考過程は受賞の50年後まで明かされない

あらためて、ノーベル賞について調べてみると面白いですね。

さて、次のノーベル賞受賞者は誰になるのか注目です。

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