大学院に進学したいけれどどうやって選べば良いかわからない、大学院をどんな条件で比較すれば良いのかわからない…。そんなお悩みに応えるべく、今回のコラムでは大学院選びのポイントをご紹介します。
地理的な条件や設備など、大学選びと同じものもあれば、研究力といった研究に割く時間が長い大学院ならではの視点もありますので、ぜひ最後までご覧ください。
大学院自体の選択
読者の皆さんは大学の学部生という方も多いかと思いますが、大学を選ぶ際はどのようなポイントで比較したでしょうか。
キャンパスのきれいさや立地条件といった部分は大学院選びでも共通しています。
しかし、一方で大学院では研究活動が学生生活の大部分を占めると言っても過言ではありません。
思う存分研究ができるかどうかを重視する場合には、研究の環境にも注目しましょう。
地理的な環境
大学院の立地に注目してみましょう。
駅からの距離、都市や繁華街に近いか、路線は通うのに使いやすいかなど、1人ひとりの好みが大きく表れるポイントですが、毎日のことですので少しでもストレスを感じない環境を選ぶのがよいかと思います。
また、実家から通う場合には実家からの距離や乗り換え、下宿をする場合には家賃の相場などもチェックしておきましょう。
カリキュラム
授業や学生の支援プログラムなどのカリキュラムは大学院によって大きく異なるため、自分のキャリアパスを踏まえて十分に確認しておきましょう。
例えば、リーディングプログラムやフェローシップなどが設置されている大学院も近年少なくありませんが、異分野融合を目的に掲げていたり、企業研究者の育成を目指していたりとその内容は大学院によって異なります。当然、履修を求められる科目や内容も異なります。
その大学院の特色や強みがよく現れる部分でもありますから、大学院に入ってからではなく事前によく考えておくと良いと思います。
また、こうしたプログラムや授業の選択肢が充実しているかどうかも大学院選びのポイントになるでしょう。
修了生の進路
行きたいと考えている大学院や研究室の修了生がその後どういった進路に進んでいるか調べてみましょう。
修了生の進路情報については大学院や学科のウェブサイトで情報が手に入ることも多いかと思います。
また、学科からの推薦をもらって内定を得るケースも少なくないため、代々その企業に就職しているというような例もあります。
もし将来就職したい企業が決まっているのであれば、大学院選びの段階で入念にリサーチしておくのも手かもしれません。
また、修了後は研究室の同期や先輩後輩も様々な進路に散らばって活躍していくわけですから、人脈づくりという観点からも修了後の進路は大学院選びにおいて重要なポイントといえます。
大学ランキングなどの情報
各種メディアに掲載されている大学ランキングの情報もチェックしてみましょう。
多くの場合「研究力」といった項目があり、その大学院で行われ、発表された論文数や影響力が評価されています。
分野にもよるかとは思いますが、特に理系の専攻では大学院生が研究の中心を担っているという場合が多いため、こうした研究力の指標は大学院選びの参考になるかと思います。
また、施設の充実度や福利厚生についての情報も得られるはずなので、ぜひチェックしてみてください。
研究室選びのポイント
大学院生の場合は、学部生と比べて研究に費やす時間が長く、大学院選びと同時にどの研究室に所属するかということが重要となります。
同じ大学院の同じ研究科や専攻に所属であっても、研究室によって学ぶことも活動も全く異なることが少なくありません。
そのため、大学名で進学先を決めることよりも、自分の入りたい研究室を中心に大学院を選ぶことが、その後の研究生活において重要な視点となります。
そこで、ここからは研究室選びのポイントについて紹介します。
研究内容
研究室を選ぶときは、まずは研究内容が自分の興味・関心と一致しているかに注目しましょう。
研究テーマによっては派手な研究成果が出るわけではなく、やりがいを見出せないというケースも人によってはあるかと思います。
そのため、まずは自分がどういった研究に興味があるのか一度考えてみましょう。
また、研究のゴールと同時に、実際に自分がすることになる作業がどういったものなのか知っておくと研究生活がイメージしやすく、ミスマッチが防げると思います。
そのためには、研究室訪問をするなどして情報収集すると良いと思います。
研究室訪問についてはこちらの記事もぜひチェックしてみてください。
研究資金
研究を進めるうえで研究資金があるに越したことはありません。
研究式に関しては研究テーマによって金額の規模も必要性も大きく異なるので分野ごとに検討が必要です。
例えば、ものづくりを対象にするような研究では分析を行うにもお金がかかり、そのために分析があまりできないとなると思うように研究が進まない、というケースも考えられます。
その研究室が研究に十分な資金を持っているかどうかをチェックすることは研究室選びで重要なポイントとなります。
その研究室から発表された論文があれば、謝辞に研究資金についての記載がされていることがありますので、どういった研究資金に採択されているのか知ることができます。
また、科学研究費であればCiNii Researchで検索することができますので参考にしてみてください。
参考:国立情報学研究所「CiNii Research」
スタッフ
研究室に所属する教員が誰なのか、どんな人なのか、何人いるのか、ということを調べておくのも研究室を選ぶ際のポイントとなります。
研究室には主宰の教員以外にも、研究補助員や技術職員、ポストドクターなどが在籍していることもあります。
こうした研究室のスタッフは研究を進めていくうえで助けになってくれるはずです。
例えば、直属の指導教員が忙しくてなかなか研究の相談ができない、といった場合にも他の教員やスタッフが相談や議論に付き合ってくれるかもしれません。
研究室はひとが集まって運営されているわけですから、研究室の雰囲気というのはそこに集まるスタッフの人柄によって変わるものです。
研究室の雰囲気という観点からも研究室訪問の際に研究室に所属するスタッフについてチェックしてみてはいかがでしょうか。
ゼミの頻度
多くの研究室では定期的に研究進捗の報告会を行ったり、雑誌会と呼ばれる持ち回りでの既往研究の勉強会を行ったりしています。
こうした研究室での集会の頻度は研究室によってまちまちで、毎週のように開催されるところもあれば月に1回など、大きく異なることもあります。
ゼミで発表を行う前にはそのための資料を作成したり、キリの良いところまで実験を進めるなど、発表に向けた準備も必要になります。
アルバイトや旅行などでプライベートの予定をたくさん入れたい場合はゼミの頻度にも注意をしましょう。
修了後の進路
大学院や専攻ごとの進路とは別に、研究室のOBがどのような進路に進んでいるのかについてもチェックしてみましょう。
研究室のウェブページがあればその研究室のOBの進路が記載されていることがあります。
研究室のOBが就職先の様子について話してくれたり、就職活動のノウハウを教えてくれたりすることもあるかもしれません。
また、就職活動の面談や面接では自分の研究についての説明が求められることも少なくありません。
その際、研究内容とその企業のマッチングを考えると、自分が行きたい企業に就職している先輩がいる研究室のほうが、希望職種への近道と言えるかもしれません。
大学院を選ぶ際には研究室訪問を必ず行おう
既に述べたように、研究室や教員の雰囲気は実際に会って話してみないとなかなかわからないものです。
研究室の教員にメールを送りアポイントメントを取って…などと段階を踏んで研究室訪問に行くのは少し億劫に感じるかもしれませんが、進学した後に後悔するリスクを少しでも減らすためにはぜひ研究室訪問をしてみることをおすすめします。
メールでは質問しづらいことも、直接会うことでさりげなく質問することができるかもしれません。
また、研究室に大学院入試の過去問題や先輩たちの答案が蓄積されていれば、そういったリソースも提供してくれるかもしれません。
研究室訪問についてはこちらの記事もぜひチェックしてみてください。
まとめ
今回のコラムで大学院の選び方について解説しました。
まとめると、大学院を選ぶポイントとしては以下の4点があります。
- 地理的な環境
- カリキュラム
- 修了生の進路
- 大学ランキングなどでの「研究力」
また、研究室選びのポイントは以下の5点になります。
- 研究内容
- 研究資金
- スタッフ
- ゼミの頻度
- 修了後の進路
進学を検討している大学院が複数ある場合はこれらの観点について比較してみるとよいでしょう。
この記事を読んだ皆さんの進路決定の一助になれば幸いです。