大学院進学を決めた皆さまは、大学院の生活について、どの程度イメージできているでしょうか?
修士課程に入学してもアルバイトは続けられるのか、就職活動はできるのか、プライベートを充実させることはできるのか…このようなことは、些細なことながらも気になる方は多いと思います。
そこで本記事では大学院生の1日のスケジュール例を示しながら、大学院生の忙しさを解説することで、大学院生活のイメージをより明確にしていきたいと思います。
もうすぐ研究室に入る方や、院進学か就職かで迷っている方もぜひ参考にしてみてください。
大学院生の研究時間は平均8時間超え
大学院生の拘束時間は社会人と同等レベルか、それ以上です。
よく「モラトリアムの延長」や、「まだ学生で羨ましい」などと言われることがありますが、不本意に思う大学院生の方は多いのではないでしょうか。
研究室にも会社と同じように「コアタイム(研究室で研究をしていなければいけない時間)」が設けられている場合もあり、自身の自主性が大切にされるとはいえ長時間の拘束を強いられる場面が多々あります。
具体的なデータで示すと、全国大学生協連が25大学、3244名の大学院生に対して行った2020年の調査では、平均登校日数は5.1日であり、平日のみならず休日も登校している人が多いことがわかります。
また、コアタイムがある大学院生28.5 %(文系3.6 %、理系33.4 %、医歯薬系38.3 %)の1日あたりの平均研究時間は修士で7.8時間でした。
一方でコアタイムがない大学院生の平均研究時間は修士で8.8時間であったため、コアタイムの有無にかかわらず長い拘束時間には覚悟しておいた方が良いでしょう。
ただし、コアタイムがない場合には自身の好きな時間や、1日の中にまとめて研究ができるため比較的自分の予定に合わせて研究ができるという利点もあります。
コアタイムの有無によって予定の立て方も変わると思いますので、研究室に入る前の方は事前に確認しておくようにしましょう。
参考:全国大学生協連「院生の1日」
大学院生は普段何をしているのか
それでは、研究室に配属された大学院生は普段どのように生活しているのでしょうか。
ここでは、コアタイムと、それ以外の自由な時間に分けて紹介していきます。
コアタイムで行うこと
コアタイムで行うこととしては、学生の本分である研究活動や講義への参加といった学びの部分と、それ以外の雑務の部分の活動があります。
ここでは、研究、講義、研究室内の雑務の3つの観点から紹介いたします。
研究
当然ですが、大学院生にとって最も重要なことは研究活動です。
修士課程2年生の修了前には修士論文を学内で発表する必要があり、修士課程を修了するためにはこの審査を通過しなければなりません。
そのために、普段は研究室にもよりますが進捗発表が週1回~月1回ほどあるため、常に研究を進めていく必要があります。
このようにコンスタントに研究が忙しい中、更に学会発表前は必要なデータを揃えるために特に忙しい時期となります。
大学院生は研究の他にもやらなければならないことが山ほどあるため、発表前に慌ててデータをとる必要がないように、常に全力で打ち込んでいきたいものです。
講義
大学院でも学部時代とは別に、取らなければいけない単位数、授業が決まっています。学部時代に学んだことを元に、より専門的なことを学びます。
大学院では学んだことを発展させて自分自身で考えることに重きをおくようになるため、評価方法もテストだけではなく自分自身の考えをまとめたレポートを提出することも増えます。
したがって忙しい大学院生の生活の中でも研究だけでなく講義に時間を割く必要があります。
ちなみに、大学によっては学部時代に院生で取らなければならない単位を先取りできる制度もあります。かなり有効な制度なので、学部生の方で大学院進学を考えている方は、自身の大学にはこのような制度が有るのか一度チェックしてみることをお勧めします。
研究室内の雑務
研究室は1つのコミュニティなので、配属されたからには自分のことだけやっていれば良いというわけではありません。
下級生が雑務を課されることは一般的ですが、上級生になっても研究室全体を仕切る役割や大きな責任のある役割を任されることが多くなります。
研究室の掃除を仕切る掃除係、足りなくなった実験用具を注文する注文係、危険な廃液をキャンパス内の決まった場所へ捨てに行くゴミ捨て係など、具体的な仕事は大学や研究室によって異なりますが、様々なものがあります。
研究室によっては研究室の保有するサンプル作りなども雑務として全員に課されるため、それ以外の活動が殆どできない日もあります。
このように、大学院生活では自分の研究だけに注力できないこともあるためよりスケジュール管理が重要となってきます。
コアタイム外で行うこと
続いて、コアタイム外で行うことを紹介します。コアタイムが長いとどうしても自由な時間が短くなってしまうため、以下に紹介する項目を効率よく行っていく必要があるでしょう。
就職活動
一般的に、民間企業への就職を希望する大学院生は大学院に進学しても学部生と同じように就職活動を行わなければなりません。
一部の研究室にはこれまでの研究活動の中で企業との繋がりがあり、推薦のような形で就職が決まることもあるようですが大半は通常の就職活動を行うことになります。
そして既に述べてきたように、大学院に進学したから時間に余裕ができる、ということは決してありません。
学部生と同じように就職活動を始めると、早い人で修士課程1年生の4~5月頃からサマーインターンへの応募が始まります。この時期を境に大学院生の就職活動も急激に忙しくなります。
就職活動を始めるのならば、研究の時間を確保した上で、プライベートの時間を削って就職活動に当てる覚悟が必要となります。
一方でインターンの参加が決まると、日程がコアタイムと被ってしまうという事態も発生することとなり教授に許可をとらなければなりません。
教授によっては就職活動を行うことに対して反対意見を持つ場合も少なくないため、できるだけコアタイムと被らない日程のものに応募する、普段の行いを正す、休日に研究室に来て補填する、といった対策をしながら、教授とうまく折り合いをつけて就職活動を行っていく必要があるかもしれません。
アルバイト
先述の全国大学生協連の調査では、大学院生の約65.1%がアルバイトを行っており、平均で¥27,700程の収入を1ヶ月で得ているようです。
大学院生活が忙しすぎてアルバイトができない、ということはないですがコアタイム外で勤務時間を確保しなければならないとなると、かなり忙しい生活となってしまいます。
少しでも移動時間を減らしてアルバイトをしたいと考えている場合は、大学には教育・研究目的の一環として、大学内で雇用されるティーチング・アシスタントまたはリサーチ・アシスタントという一種のアルバイトもあるので、うまく活用して自由な時間を確保するのもお勧めです。
参考:全国大学生協連「第11回全国院生生活実態調査 概要報告」
1日のスケジュール例
ここからは大学院生の1日のスケジュールの例を紹介します。
筆者自身もコアタイム有りの生物系の研究室に所属しているため、ここでは平日のスケジュール例について紹介します。
6:50 起床
7:30 家を出る
8:50 研究室到着
9:00-10:45 授業
10:45-13:00 研究
13:00-13:30 昼食
13:30-15:00 研究室の雑務
15:00-16:00 研究
16:00-19:00 ゼミ(週1回程度)
19:00-20:30 帰宅
21:00-22:00 ホットヨガ(趣味の時間)
22:30 帰宅
24:00-1:00 就職活動
1:00 就寝
こちらに示したのは大学院生活の1例ですが、かなり研究室での仕事や拘束時間が多いことが分かると思います。
もちろん研究分野や研究室によっても生活スケジュールは違いますが、私個人としては自分自身でスケジュールを管理しつつ、いかに効率よく物事をこなすかが、大学院生生活を充実させられるかのカギだと考えています。
まとめ
本記事では
・一般的な大学院生の拘束時間
・大学院生の普段の生活
について詳しく紹介しました。
研究室選びに迷っている方、研究室が決まって今後の生活の予定の立てたい方などは、自分が大学院生で何を一番に重要視したいのかを考えながら大学院生生活をより具体的にイメージしていきましょう。