今回は「電子ジャーナル」について知りたい方に向けた記事になります。
電子ジャーナルとは、紙媒体の学術雑誌を電子化したものです。
みなさんは、電子ジャーナルをしっかりと使いこなせていますか?
本記事では、電子ジャーナルについて、その定義から使い方まで網羅的にまとめています。
電子ジャーナルとは?
はじめに、電子ジャーナルの定義を紹介します。
電子ジャーナルとは、コンピューターの端末を利用し画面を通して閲覧する、電子化された雑誌のことです。
特に、学術系の論文誌を指す場合が多いでしょう。
インターネットを通じて閲覧できるものが多く、オンラインジャーナルと呼ばれることもあります。
電子ジャーナルには、紙媒体の雑誌と並行して出版されるものもあれば、電子版のみのものもあります。
また、後述する「オープンアクセスジャーナル」のように、無料で公開されているものもあります。
電子ジャーナルは、基本的に「目次」「抄録」「本文」「検索ツール」から構成されています。
目次から読みたい論文にジャンプすることができたり、キーワード検索ができるため、論文を読むうえでも非常に利便性が高いのが特徴です。
また、紙媒体の論文では不可能だった動画や高解像度の画像資料を添付することもできるほか、論文が訂正されたときは、すぐに訂正内容を確認することもできます。
参考:コトバンク「電子ジャーナルとは」
電子ジャーナルの歴史
次に、電子ジャーナルの歴史について紹介します。
電子ジャーナルは、1980年代に米国化学会が雑誌データを電子化したのが始まりといわれており、1990年代にインターネットの普及とともに本格的に利用されるようになりました。
その後、海外大手商業出版社によって本格的に提供が開始され、2000年前後になると日本でも利用されるようになりました。
すべての電子ジャーナルが無料で読めるわけではない
先述の通り、電子ジャーナルは利便性が高いのですが、残念ながらすべての電子ジャーナルが無料で読めるわけではありません。
電子ジャーナルが無料で読めるか否かはそのジャーナルの論文掲載料を誰が支払っているかが関わってきます。
誰でも無料で読める電子ジャーナルの場合、基本的には論文の著者が費用負担者となっています。
なお、無料で閲覧ができ、筆者の設定した条件のもと再利用ができる論文は「オープンアクセス」と呼ばれます。
オープンアクセスの論文は、無料で読めるとはいえ、決して質が低いわけではありません。
Springer、Nature、Elsevirなどの大手出版社も、傘下にオープンアクセスジャーナル(オープンアクセスの論文を掲載している電子ジャーナル)をもっていますし、ほとんどのオープンアクセスジャーナルは査読付きです。
オープンアクセスには掲載先や論文掲載料の支払い者の違いによって大きく5種類に分けられますが、読者が無料で読むことができるオープンアクセスには、主に以下の3種類があります。
参考:慶応義塾大学「オープンアクセスって何?」
ゴールド
オープンアクセスジャーナルに掲載されている論文のことをゴールドといいます。
著者が雑誌の管理費として論文掲載料を支払うため、読者は無料でオープンアクセスを読むことができます。
グリーン
購読誌(有料)に掲載された論文の中で、著者が並行して機関リポジトリ等に公開した論文のことをグリーンといいます。
公開された論文の著作権の条件が個々の論文によって異なるため、再利用等をする場合には、著者に許可を取る必要があり点で注意が必要です。
ハイブリッド
購読誌(有料)に掲載されている論文の中で、著者が掲載にあたる費用を支払っているため、大学や図書館といった機関を含んだ読者が購読料を支払わなくても読める論文をハイブリッドといいます。
電子ジャーナルのメリット・デメリット
ここでは、電子ジャーナルのメリット・デメリットを紹介します。
メリット・デメリットを踏まえて、電子ジャーナルと紙媒体の特徴を捉えましょう。
電子ジャーナルのメリット
電子ジャーナルのメリットには以下のような点が考えられます。
- 論文を探すための移動を省ける
- 論文を探すための時間を省ける
- オンライン上で検索することができるため24時間利用可能である
- 掲載誌によっては、発表された論文を紙媒体よりも早く読むことができる可能性がある
- 検索機能により該当箇所や関連文献の検索が容易になる
- 動画や高解像度の画像資料が添付されていることもあり、論文の情報量が紙媒体よりも豊富なことがある
電子ジャーナルのデメリット
電子ジャーナルのデメリットには以下のような点が考えられます。
- オープンアクセスジャーナル以外の電子ジャーナルは有料である
- 有料の電子ジャーナルの場合、購買価格が高いため、小さな大学では購入できない可能性がある
- ネットワーク環境によっては、必要な論文にアクセスできない場合がある
- メンテナンス期間中に利用できない
- 買い切り契約を除き、利用契約が終了すると閲覧できなくなる
- 契約によっては、論文を保存できないこともある
電子ジャーナルを探す方法
電子ジャーナルを探す方法について紹介します。
ここではScienceDirect、NII-REO、NDL-ONLINEを紹介します。
ScienceDirect
インターネット上には、電子ジャーナルを読むための専用のWEBサイトが存在します。
たとえば「ScienceDirect」は、有名な専用WEBサイトの1つです。
ScienceDirectは、エルゼビアというオランダの出版社によって運営されているWEBサイトです。
ScienceDirectは、1997年3月にサービスを開始しました。
このプラットフォームでは、約2,200種類の学術雑誌と、25,000冊以上の電子書籍にアクセスすることができます。
学術雑誌は「Physical Sciences and Engineering」「Life Sciences」「Health Sciences」「Social Sciences and Humanities」の4つの分野に分かれています。
ほとんどの論文において、アブストラクト(要約)は無料で閲覧できるのですが、論文の全文を閲覧するのは有料です。
参考:Elsevier「About ScienceDirect」
NII-REO
「NII-REO(NII電子リソースリポジトリ)」は、日本の大学等教育研究機関に対して、安定的・継続的に電子ジャーナル等の学術コンテンツを提供するサービスになります。
NII-REOには、以下の3つの機能が備わっています。
- 大学等が契約する電子リソース(電子ジャーナル、電子コレクション等)をローカルホスティングすることにより、安定的・継続的なアクセスを可能にする
- NII-REOに搭載された各出版社の電子ジャーナル等のコンテンツを横断検索することができる
- 電子ジャーナルアーカイブに搭載されたコンテンツの書誌情報・抄録までは誰でも利用できるが、本文の閲覧は別途出版社との契約が必要になる
NII-REOも、論文を読むのは有料である場合もありますが、非常に利便性に優れています。
参考:国立情報学研究所「NII-REO」
NDL ONLINE
「NDL ONLINE(国立国会図書館オンライン)」を利用する方法もあります。
NDL ONLINEは、国立国会図書館の所蔵資料及び国立国会図書館で利用可能なデジタルコンテンツを検索し、各種の申込みができるサービスです。
NDL ONLINEにある電子ジャーナルのうち、インターネットで無料公開されているものに関しては、どこからでもダウンロードすることができます。
また、契約有料電子ジャーナルの場合は、国立国会図書館の館内でのみ閲覧できます。
参考:国立国会図書館オンライン「1. 国立国会図書館オンラインについて」
まとめ
最後にこの記事の内容を要約します。
- 電子ジャーナルとは、コンピューターの端末を利用し画面を通して閲覧する、電子化された雑誌のこと
- すべての電子ジャーナルが無料で読めるわけではない
電子ジャーナルの登場によって、時間と場所の制約を受けずに、あらゆる論文を読めるようになりました。
特にオープンアクセスジャーナルは、無料で論文を読むことができるので、一度使ってみるとよいでしょう。