大学院生の収入事情をわかりやすく解説|フェローシップ・学振・奨学金の違いとは?

研究・大学生活

学部生や修士課程の大学院生にとって、「就職か進学(修士・博士課程)か」は大きな選択です。

ところで、大学院生の収入事情についてはご存じでしょうか?
大学院生たちの暮らし向きを把握することで、進学後のイメージが沸き、不安も和らぐのではないかと思います。
そこで今回のコラムでは大学院生の収入事情を解説します。

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大学院生の収入事情

2022年に実施された全国院生生活実態調査の結果をみると、大学院生の収入源は「アルバイト収入」だけに限りません。むしろ、生活を支えているのは アルバイトに加えて、仕送りや奨学金、RAやTAなどを含む定職、さらにはその他臨時収入といった複数の収入が挙げられます。

特に大学院生は研究時間が読みにくいため、長時間のアルバイトに頼れないことも多く、結果として「少しずつ複数の収入源に支えられている」と理解できるでしょう。

以下は、全国大学生協連「第12回全国院生生活実態調査(2022)」を基にした、自宅生・下宿生の収入項目別の平均額です。

住まい別・大学院生の収入

自宅下宿
仕送り・小遣い1万1,620円6万1,810円
奨学金2万390円3万1,030円
定職1万5,010円2,250円
アルバイト収入3万5,010円2万9,490円
その他6,550円5,650円
収入合計8万8,580円13万240円
引用元参考:全国大学生協連「第12回全国院生生活実態調査 概要報告」

大学院生の生活は、世帯状況によって「どこから収入を得るか」が大きく変わります。特に下宿生の場合は家賃負担が重いため、家族からの支援額が増える傾向があります。一方、自宅生は経済的負担が比較的少ないものの、自分自身の収入でまかなう割合が高くなる傾向があります。

こうした傾向を踏まえると、大学院生活を始める前に「自分の場合、どの収入源に頼るのか」を把握しておくことが、生活設計を立てるうえで重要なポイントです。

大学院生の生活費はどれくらい?支出の平均と内訳

大学院生の生活費は、居住形態や研究分野によって大きく変わります。特に下宿生や研究活動が活発な理系院生は、一般的な生活費に加えて学会参加費や書籍代といった「研究にかかる支出」が重くのしかかるケースも少なくありません。

ここでは、全国大学生協連「第12回全国院生生活実態調査」のデータをもとに、大学院生の平均的な生活費と主な支出項目、さらに研究費の自己負担についてわかりやすく整理します。

生活費の平均額

大学院生の生活費は、全国大学生協連「第12回全国院生生活実態調査」によると、自宅生の場合で8万7,060円、下宿生の場合で12万8,120円と、月平均で10万円前後が目安となっています。

特に下宿生は家賃の負担が大きく、生活費全体が高くなりやすい傾向があります。一方、自宅生は家賃が不要な分だけ支出は抑えられるものの、食費や交通費などの出費は引き続き発生します。

さらに、第12回調査では自宅生の生活費が2020年調査より1万4,960円増加しており、食料品や日用品の値上げによる物価高騰の影響を強く受けていることがわかります。家賃がない自宅生であっても、以前より生活費がかさむ傾向が見られ、院生生活の負担が増しているのが現状です。

参照元:全国大学生協連「第12回全国院生生活実態調査 概要報告」

住まい別・大学院生の支出の主な項目と目安

全国大学生協連「第12回全国院生生活実態調査(2022)」の傾向を参考に、自宅生と下宿生の支出項目別の目安をまとめると、以下のようになります。

住まい別・大学院生の支出の主な項目と目安

自宅下宿
食費1万6,030円2万7,960円
住居費4,680円4万9,800円
交通費9,090円3,830円
教養娯楽費1万3,260円1万3,250円
書籍費2,870円2,350円
勉学費2,180円1,660円
日常費6,340円7,400円
健康保険・社会保険等3,320円1,320円
通話料・通信料2,810円3,840円
その他4,370円2,800円
貯金・繰越金2万2,100円1万3,910円
支出合計87,060円128120円
引用元:全国大学生協連「第12回全国院生生活実態調査 概要報告」

自宅生と下宿生を比べると、やはり下宿生では住居費が大きな負担となり、生活費全体が高くなる傾向が明確となっています。一方で、自宅生は住居費がほとんどかからないものの、食費や交通費、日常費といった基本的な支出は下宿生と大きく変わりません。また、物価高騰の影響を受け、食費や光熱費といった日常的な支出項目が全体的に増加している点も特徴です。

さらに、「貯金・繰越金」の項目からは、自宅生の方が将来の出費や研究活動に備えやすい状況にあることもわかります。しかし、研究費用や学会参加費などの「院生ならではの追加コスト」は別途発生するため、生活費だけで判断しないことが重要です。

研究活動にかかる追加費用

大学院生が生活費以外に特に意識しておきたいのが、研究活動に必要となる追加費用です。

全国大学生協連「第12回全国院生生活実態調査」によると、研究費の自己負担は前回調査より増加傾向にあり、特に学会参加費や旅費・宿泊費などの負担が家計を圧迫しやすいことがわかっています。一方で、研究費を学生に負担させない研究室も一定数存在し、54.8%の院生は自己負担がゼロ という結果も示されています。

つまり、研究費の負担状況は「研究費のほとんどを研究室が支援するケース」 と「院生が自費でまかなうケース」の二極化が進んでおり、研究環境によって学生の支出に大きな差が生まれているのが現状です。

第12回全国院生生活実態調査が公表した大学院生の直近半年間における書籍の自己負担額は、次のとおりです。

全体文科系理工系医歯薬系
参考文献・教科書などの書籍代2万6,430円3万7,820円1万4,700円2万4,840円
学会費・学会参加費・学会参加のための交通費や宿泊費2万3,150円2万6,160円1万7,900円4万1,500円
フィールドワークなどの調査費3万4,280円3万6,550円2万8,890円4万6,670円
文具などのその他費用9,220円1万2,780円6,850円1万1,580円
引用元:全国大学生協連「第12回全国院生生活実態調査 概要報告」

上記のデータからも明らかなように、大学院生の研究にかかる自己負担額は、専攻分野によって大きく異なります。特に文科系では参考文献・書籍代の負担が重く、年間で数万円規模に達するケースが一般的です。一方、理工系では実験設備や研究費が大学・研究室から支給されることも多く、書籍代は比較的抑えられる傾向がみられます。

一方で、学会参加費や調査費といった項目では状況が大きく異なります。研究の特性上、遠方での学会発表が必須となる専攻では学会参加に関連する交通費・宿泊費が数万円単位で発生するケースも多くみられます。また、文科系でもフィールドワークが多い研究テーマでは、調査費が数万円単位で必要になるケースが少なくありません。

このように、研究費の個人負担は「専攻」「研究テーマ」「研究室の支援方針」に大きく左右されます。大学院進学を考えている方は、研究室選びの段階で「学会費・調査費は補助があるのか」「研究費の使い方はどう決まるのか」といった点を確認しておくことが、経済的な不安を軽減するうえで大切なポイントです。

大学院でアルバイトはできる?研究との両立の難しさとは

大学院生にとって、生活費を確保しながら研究を続けるためにはアルバイトとの両立が大きな課題になります。学部生のように授業中心の生活ではなく、大学院では「研究室での実験」「データ解析」「指導教員とのミーティング」「学会発表の準備」など、スケジュールが日ごとに変動し、拘束時間が読みにくいのが特徴です。

そのため、働く時間を増やした分収入も増えますが、実験の延長や突発的な対応が入れば、予定していたシフトに入れないケースもあるでしょう。研究分野によっては、実験器具の使用時間や実験サイクルに合わせて研究を進める必要があり、決まった時間に働くアルバイトとの両立が難しくなりがちです。

文系でも状況は同じで、資料調査やフィールドワーク、ゼミ準備などでまとまった時間を取りにくく、長時間のアルバイトが続けにくい傾向があります。実際の調査でも、「思うように働けず収入が安定しない」「アルバイトの疲れで研究に集中できない」といった声が多く挙がっています。

そのため大学院生は、働き方そのものを工夫する必要がある場合もあります。短時間で働ける学内のTA(ティーチング・アシスタント)、研究に関連したRA(リサーチ・アシスタント)、スキマ時間にできる単発アルバイトなど、柔軟な働き方を選ぶことで、無理なく研究時間を確保しやすくなるでしょう。

研究と両立できるかどうか

生活には収入が必要ですが、アルバイトと学校生活との両立が課題となります。
特に大学院生については、授業よりも研究による負担が大きいかと思います。
バイトを増やせば収入は当然増えますが、そう簡単にはいかないのが大学院生といえそうです。

大学院生の収入源

大学院生の収入源としてどのようなものが考えられるでしょうか。
学外で一般に求人がされているアルバイトの他に、学内での ティーチング・アシスタント (TA)や試験監督の仕事、奨学金などが挙げられます。
以下、順にご紹介します。

学外のアルバイト

まずアルバイトです。コロナ禍のあおりを受け、飲食店、特に居酒屋の営業時間は短くなり、それに伴い雇用も減少しています。
筆者の周りでは、授業や研究を切り上げて夜は居酒屋でアルバイトをしているという友人もいましたが、昨今の情勢で求人が少ないようです。
特にコアタイムが設けられている研究室に所属していたり、実験で忙しい大学院生にとってはアルバイトと研究の両立が大変なケースも多いと思います。
筆者の研究室では、コンビニで夜勤をしている先輩がいましたが、シフトの時間までに実験が終わらず、アルバイトの休憩時間に研究室に来て実験を継続するなど、かなり大変そうでした。

大学でのTAや試験監督

学外でのアルバイトが厳しい中、大学でできるTAや試験監督のアルバイトは心強いものです。時給も決して低くなく、大学院生の貴重な収入源になっています。
担当科目の授業に毎回参加し、業務をこなすということになるのですが、1科目担当しても週に1時間半の勤務です。複数科目を担当すれば勤務時間を増やせますが、それでも居酒屋のアルバイトと同等の収入にはなりえません。
そのため、貴重な収入源であるのは間違いありませんが、残念ながらTAで生活していけるような収入は得られません。

奨学金

先ほどご紹介した第11回全国院生生活実態調査においても、多くの大学院生が奨学金によって収入を得ているということが示されています。

ちなみに学部生の場合、学生支援機構の奨学金の審査は扶養者(一般的には両親)の収入と本人の収入を併せた額で行われますが、大学院生は本人の収入で審査されます。
したがって、多くの大学院生が貸与の対象になると考えられます。
ただし,仕送りを受けている場合や配偶者に収入がある場合にはそれらが収入として見なされるので注意してください。
もちろん、貸与型の奨学金には修了後に返還義務があります。
それでも利率は民間の金融機関とは比べ物にならないくらい低いですし、経済的な事情で進学を悩むのであれば、奨学金は重要な選択肢であると言えます。

参考: 日本学生支援機構 「大学院で受ける第二種奨学金の家計基準(在学採用)
参考: 日本学生支援機構 「第二種奨学金の貸与利率

日本学術振興会特別研究員

博士後期課程の大学院生が対象となる制度ですが、 日本学術振興会の特別研究員制度(通称:学振)というものもあります。特に「学振」や「DC1・DC2」といった言葉は、大学院生や大学院進学を検討している学部生の方は聞いたことがある人もいるかもしれません。

採択率20%前後と狭き門ではありますが、特別研究員に採用されると月20万円の生活費相当額と研究費が支給されるため、毎月安定した収入が得られ、お金の心配をせずに研究に打ち込むことが出来るようになります。

参考: 日本学術振興会(2021-07-01)「採用状況 | 特別研究員

大学フェローシップ創設事業

大学院生の収入問題を打開するため、また博士課程に進む学生を増やすため、政府は2020年末にフェローシップ創設事業を打ち出しました。これは採択された大学に文科省から財源を割り当て、学生1人あたり年間200-250万円を支給するという趣旨の事業です。

また、対象の学生は修了後のキャリアパスにつながる支援を受けることができます。
これにより年間千人程度の大学院生が新たに支援を受けることができるようになります。
とはいえ博士課程の学生は全国に1.5万人ほどいますから、選抜に漏れてしまう学生も少なくないのは事実です。こうした動きが今後活発になれば、進学に悩む学生にとって大きな後押しになりますね。


参考:文部科学省 (2020-12) 「科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業

どうやって選抜されるのか?狭き門を勝ち抜くためには?

特別研究員(学振)もフェローシップ事業も選抜を勝ち抜かなくてはなりません。

選抜はものにより異なりますが、一般的には書類審査で自身の研究の独自性や将来の展望をアピールできるかどうかが重要になります。

特に基礎系の研究テーマでは非常に難しいポイントではありますが、日頃から自身の研究と社会との関わりという観点をもって研究を進めていくことが重要です。

学振申請書の作成についてはこちらの記事もチェックしてみてください。
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まとめ

今回の記事では大学院生の収入事情についてご紹介しました。
特にフェローシップ創設事業は動き始めたばかりの事業で、今後大学院生の待遇は大きく変化する可能性もあります。
もしあなたが大学院への進学に悩んでいるのであれば、最新の情報にアンテナを張って積極的に情報収集してみてください。

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