企業から期待が高まる博士・ポスドク、そのわけとは?

博士の日常

企業から期待が高まる博士・ポスドク、そのわけとは? 昨今、博士号取得者やポスト・ドクター達の民間登用の傾向が強くなりつつあります。このような傾向は、なぜ起こっているのでしょうか。本コラムでは、その要因について考えます。

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新卒採用に伴う状況の変化

少子化に伴い、若者の人口が減り続けています。必然的に大学を卒業してすぐに就職する、いわゆる新卒人口の数も少なくなっています。とはいえ、民間企業やその他の組織は、組織存続のために人手が必要であるため、優秀な新卒人材の熾烈な取り合いが発生しています。就職時期の多くの企業がインターンや様々なイベントを通じて、必要な人材を確保しようと躍起になっています。

新卒採用は、個々人の個性をあまり加味せず、決まった教育フローに載せて時間をかけて独立までサポートをしていくことを想定して採用するところがほとんどかと思います。そのため、教育フローが確立しているところであれば、新卒を採用してその企業ごとのカラーに染めていくことが一般的でした。しかしながら、現状としては新卒人口の数が少ないため、新卒だけで必要な人員を確保することが難しい状況です。そのため、採用の枠組みを柔軟に変化させられる企業や、元々国内の枠組みに囚われない外資系企業は、新卒以外からも積極的に採用するところが増えてきているのです。

データ分析スキルのニーズの高まり

以前からも理系企業の中でも、独自の研究所を持つところであれば、博士号取得者を研究者として雇用する風潮はありました。ただ、それは「研究者を研究者として雇用する」ことが一般的であり、それ以外のプレイヤーとして雇用する例はあまり多くはなかったと言えます。

現在、データ分析の需要・データサイエンティストの台頭を機会として、業界を問わずデータ分析ができる人材のニーズが高まっています。そのため、これまで「研究者として雇用されうる」はずであった各分野の博士号取得者・ポスドクたちが、研究の過程で身につけてきたスキルであるデータ解析技術を買われ、様々な業界でデータサイエンティスト・データアナリストとして雇用されています。データサイエンティスト達のかつての専門分野はさまざまであり、物理学や生物学などのサイエンス寄りの分野から、社会科学系などの文系寄りの分野まで、幅広くなっています。

アカデミアと民間企業の流動性が高まる

また、情報系分野においては、研究活動とそれによって得られる知見の商用利用の溝が限りなく狭まっており、アカデミアと民間企業の流動性がかつてなく高まっています。そのため、大学で研究を行っていた大学教員が民間へ移動したり、あるいは企業に就職してから社会人として博士課程に在籍し研究を行うケースも稀ではなくなっています。工学など、一部分野では以前よりあった流れだと思われますが、この流動性が適用可能な分野に情報系が加わった、という印象を受けます。

キャリアパスの選択肢が少ない博士・ポスドク

海外では博士号取得者やポスドクを公的機関や政府において積極的に雇用したり、各種専門資格の取得の要件として、博士号所持を挙げているところもあります。そのため、研究機関以外で活躍する博士号取得者が多く、日本と比較すると博士人材の活用が進んでいると考えられます。このように、博士号取得者のキャリアパスが多様化している国であれば、博士課程を終えた後も様々な道が選択可能ですが、日本は大学院自体が「研究者養成の場」の意味合いが強く、新たな活躍の場を提示できずにいるために、ポスドク問題が長期化しています。このような状況から、博士号取得者は「これまで培ってきた自らのスキルを活かす場」を、場所を問わず探していると言えます。

博士やポスドクを雇用する利点とは

彼らを「研究者として」ではなく雇用する利点とは何なのでしょうか。もちろん、業界と専門分野が合致する場合は、研究者の持つ専門性が大いに発揮できると考えられますが、そのようなマッチングができることは難しい場合が多いです。そのため、そのような場合は専門性のみではなく、研究者の持つ「総合力」の部分を活かして、プレイヤーとして動いてもらうことを期待することになります。例えば、研究者は研究を行うにあたり文献を調べて読み込む「調査力」や、調べた事柄を根拠として論を組み上げていく「構成力」、それらをわかりやすく記述し発表する「プレゼン力」を分野問わず獲得していることが多いです。また、先述のデータ解析力や、海外で研究活動を行える語学力、野外調査に耐えられるフットワークなど、研究テーマによって様々な個別スキルを持っています。そのため、新卒人材とは異なる視点で、彼らを迎えるメリットを見極める必要があります。また、体制を柔軟にする、適応をサポートするという点は、企業側が変化を必要とする部分とも言えます。

情勢の変化がめまぐるしい昨今においては、個人も組織も変化に適応できることが重要であると言えます。どちらかが変わらなければならない、どちらか片方に変化を押しつけるのではなく、研究者側も、受け入れる企業側も変化していく覚悟を持つことで、研究者の多様性が発揮されるダイバーシティ環境が整い、その結果として新機軸の創出・イノベーションの実現がなされるのではないかと思います。

[文責・平田 佐智子(博士(学術))]

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