オーバードクターとは?ポスドクとともに不安定な立場

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オーバードクターという言葉をご存じでしょうか?あるいは皆さんの周りにいるでしょうか?

博士課程修了後の進路としてポスドクの問題はしばしば話題になりますが、その陰に就職に悩むオーバードクターの存在も問題になっています。

この記事ではオーバードクターとは何なのか、ポスドク問題にも触れながら博士課程修了後の就職先について考えてみたいと思います。最後まで読んでいただけると幸いです。

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70年代~80年代オーバードクター問題とは

オーバードクターとは学位(博士号 / ドクター)取得のために所定の年限在学したものの、学位を取得せずに退学したり、その後研究者として雇用されない人たちのことを指します。彼らは大学の研究室で「研修員」などといった肩書で無給で研究を行っていたのです。

大学院生を定員通り受け入れたい大学側と、不況による卒業後のポストの不足が重なり、高度経済成長期からオイルショックによる経済成長低迷期への移行期に多くのオーバードクターが発生しました。

生計を立てるためにアルバイトを余儀なくされ、研究に専念することが難しいなどといったことが問題視されていました。また、オーバードクターが問題となり、博士課程への進学を断念するという動きもみられました。

オーバードクター問題を解決するために

増えすぎたオーバードクターを雇用するために、文部省は1996年度に「ポストドクター等1万人支援計画」という施策を実施しました。この施策では博士号の取得者を1万人創出するために任期付きの非常勤研究員(ポストドクター / ポスドク)の雇用資金を大学などの研究機関に配布しました。

オーバードクター問題からポスドク問題へ

ポスドクは1-2年ほどの期限付きの職であるため、学位取得後、研究者として任期の定めのない定年(パーマネント)制の職を得るまでのトレーニング期間と位置づけられます。

この定年制の研究職が充分にあれば問題ないのですが、ポスドクの多くがこうした安定した職を見つけられず、任期が切れる度に研究現場を転々とせざるを得ない状況が生じており、これがポスドク問題と呼ばれています。

このポスドク問題の背景には1990年代の大学院重点化以降、博士号の取得者が増加しているにも関わらず、定年制の職のポストが充分に増加していない(減少している)ということが挙げられます。

また、理系分野であれば大学以外にも国立や民間の研究機関が多数ありますが、文系分野では大学以外での研究機関が少なく、ポスドク問題がより深刻な状況になっているといわれます。

限られた任期の間に実績をあげ、同時に次の職場を探さなければならないことで、ストレスを感じながら研究に取り組んでいる人も多いようです。

現在のオーバードクターの定義

ポスドクのポストが創出されたことで、1990年代までに言われていた「オーバードクター問題」はほぼ解消され、ポスドク問題に移行していると言えますが、依然として多数のオーバードクターが存在しています。

文科省のデータ[1]によれば、「単位取得満期退学後に学内で研究を継続している」人が特に文系分野でたくさんいます。また、その数は文系分野では増加傾向にあるようです。

なぜ卒業できずオーバードクターになってしまうのでしょうか。博士課程の卒業要件として、論文の掲載実績が求められます。「査読付き論文を学術誌に○本掲載する」などといった規定があり、筆者の学部(物質工学)では3本の論文が求められます。これは大学や学部によって異なり、英語論文でなくてはならない場合や1本の論文掲載で良い場合など様々です。

こうした博士号取得要件を満たせず満期退学し、学内に残って研究を継続している人がオーバードクターという形で多数存在していると考えられます。

ポスドク問題が話題になりやすいですが、その陰にオーバードクター問題もくすぶり続けていると言えるでしょう。

オーバードクターの就職先

オーバードクターの就職先はどのようなものがあるでしょう。

研究を続けるためにオーバードクターを選ぶ人が多いので、ここでは研究職に就くという観点から就職先を見てみましょう。

他にも、非常勤講師を掛け持ちする、大学以外の教員や公務員を目指す、などの選択肢もあります。

ポスドクを目指す

大学や研究機関の研究職や技術職へのキャリアパスとしてポスドクを目指すという選択肢があります。前述のポスドク問題もありますので、自分自身の分野の状況を充分にリサーチする必要がありますが、公的な機関での研究職を目指すのであれば重要な選択肢となります。

研究職への登竜門とも言えるポスドクですが、ポスドク後のキャリアをしっかりと見据えておきましょう。

民間企業に就職する

近年では博士号を持つ研究者を積極的に採用しようとする民間企業も増えてきています。研究活動を通して養われたコミュニケーション能力やプロジェクト管理能力などが評価されているようです。企業によっては新卒採用だけでなく、中途採用や第二新卒といった採用枠を用意している場合もあります。

企業が求めているスキルと自分自身がこれまでの研究活動で培ってきた能力とのマッチングが重要です。

まとめ

今回のコラムではオーバードクターについてご紹介しました。

  • 学位取得ができず大学に残って研究を続ける「オーバードクター」
  • 博士課程修了後の受け入れ先としてポスドクがある。
  • ポスドクの任期終了後のポストが不足している「ポスドク問題」
  • オーバードクターの就職先としてはポスドクや民間企業への就職が挙げられる。
    • 民間企業での採用は近年増加してきている。

参照文献

[1] https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/004/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2019/05/28/1216899_001.pdf

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