これから就職活動を行う機電系の学部、研究科に所属している学生の方は、どんな業界を目指せばよいか迷うことがあるかもしれません。機電系の学生は需要が高く、さまざまな分野に就職できる可能性があります。
今回は就活において機電系の需要が高い理由やおすすめの業界、人気の職種について紹介します。また、機電系専攻の方に人気の家電メーカーについても詳しく解説します。
「まだキャリアについて考えられていない」「おすすめの業界や職種を参考にしたい」と悩んでいる人は、最後までご覧いただきご自身のキャリアプランに役立ててください。
機電系とは
機電系とは機械・電子・電気系工学をまとめた言葉のことで、組み合わせたものを略して「機電系」と呼びます。ただ、機械と電子・電気系の学部に所属している人は、これらの専攻に共通項が少ないためまとめて呼ぶことに違和感があるかもしれません。
たしかに、学問分野でみたときに機械と電子・電気系はまったく異なりますが、就活では企業が該当する学生をまとめて呼ぶために使われることが多く、特定のシーンでよく使われる呼び方でもあるのです。
もともと「機電系」という言葉は重電メーカーに従事する技術職の人のことを指しており、現在それと似た職業に就く可能性がある学生のことを機電系と呼ぶようになったと考えられます。
機電系という言葉自体を不自然に思う人もいるかもしれませんが、就活で使われる可能性があるので覚えておくといいでしょう。
機電系の需要は高い
機電系の学生の需要は高く「就活では最強」といわれるほどで、企業からすると「採用できない」「採用枠に対して応募数が足りない」と頭を悩ませるタネにもなります。
理由は色々ありますが、最も大きいのは複数の業界で機電系の技術者を必要としているからです。もともと機電系は自動車業界や機械メーカーにおける採用が中心でしたが、今ではインフラ、技術系商社でも人気が高まっています。
さらに、機電系に詳しい人が少なく、社会に出て働きながらその分野の知識やスキルを習得する人が多いため、新卒のときに機電系の技術力があることでニーズが高まります。これが「機電系は最強」といわれる主な原因でしょう。
このように複数の業界から人気があることと、そもそもの人数が少なく需要に対して供給が足りないことが機電系が求められている主な理由です。
家電メーカーは機電系の学生に特に人気
家電メーカーはテレビやビデオカメラ等のAV機器や冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機などの生活家電をはじめとした様々な電化製品の開発や製造を行う企業のことを指します。
総合電機系メーカーの日立製作所や東芝、家電系メーカーのパナソニックやシャープ、ソニー。コンピューター・通信系のNECや富士通、カメラのキヤノンなど日本を代表する企業が多数存在します。
特に研究開発や設計開発エンジニアなどの技術系職種では機械、電気・電子系のニーズが高い傾向があります。
また近年ではAIやビッグデータ、IoTといった技術を活かした生産性向上を多くの企業が推進しており、これらの専門知識を有する学生は特に必要とされています。
家電メーカーの将来性は?
現在、家庭には様々な電気機器が普及し、そのニーズは絶えません。しかし、日本の人口減少が進む中、過去に比べ売上を大きく伸ばすことは困難です。日本の国内市場の現状を考えると、家電メーカーの展望は明るいとは言えません。
人口減少に伴い、中国や韓国から多くのメーカーが国内市場に参入していることも要因の一つです。さらに、商品の均質化、製造技術力の低下により、家電製品の低価格化が進み、競争力が高まっています。
また、消費者の嗜好が多様化し、かつてのカラーテレビのように、国産機を含むどのガジェットが爆発的に売れるのかが分かりづらくなっています。
家電製品は、技術の進歩が非常に早く、2、3年おきに革新的な技術が盛り込まれています。しかし、一般的には3年から10年程度の保管期間となるため、販売台数は伸び悩むことが現状となっています。
このような状況を踏まえ、各メーカーは適切な支出管理、製造、プロモーション計画を立てる必要があります。コモディティ化の中で、自分たちの立ち位置を変えるために、多くの家電メーカーが液晶やプラズマの開発に多額の資金を投入してきましたが、期待したような成果は得られていないのが現状です。
今後はロボットやAIの導入、作業の効率化により、さらに人手不足が進むと予想されます。そのため、大手電機メーカーは、日本国内だけで相手を圧倒するのは厳しいと考えています。多くの企業が、まだ需要のある海外に進出することで、さらなる高みを目指そうとしているのが現状です。
近年の家電メーカーの動向
近年、業績の好調を維持していたり、復調しつつある家電メーカーの多くは、採算の取れていない事業の整理に加えて、自社の強みを活かした事業分野に経営資源を集中することで活路を見出しています。特に、AIを搭載した家電製品を開発したり、製造現場でIoTを導入する企業の増加が業界全体の好調を後押ししています。
例えば、日立製作所は同社が持つITや製品の強みを活かし、デジタル技術を活用した社会インフラに注力すると発表しています。具体的には鉄道関係や発電所等の領域でこれらの技術を活かした事業が活発化すると予想されます。
家電メーカーの売り上げランキング
家電メーカーについて解説してきましたが、それではどのような企業が高い売り上げをあげているのでしょうか。
企業の売り上げを知ることは規模感を把握するうえで非常に重要です。
そこでここでは、日本の家電メーカーの売上高トップ10を紹介します。(2022年11月現在)
- 1位 株式会社日立製作所
- 2位 ソニーグループ株式会社
- 3位 パナソニック ホールディングス株式会社
- 4位 株式会社デンソー
- 5位 三菱電機株式会社
- 6位 富士通株式会社
- 7位 キヤノン株式会社
- 8位 株式会社東芝
- 9位 日本電気株式会社
- 10位 シャープ株式会社
参照:売上高ランキング :ランキング :マーケット :日経電子版
トップ10にランクインしている企業は聞いたことがあったり、普段から使っている製品を製造しているものも多いかもしれません。
気になる企業については実際にIR(investers relations:株主や投資家に対して行う広報活動のこと)などをHPで調べることで更に理解を深めることができるでしょう。
機電系の学生におすすめの就職先は?
機電系の学生はニーズが非常に高く「採用できない」といわれるほどです。そのため、学生から見ると就職できる業界は多岐に渡ります。おすすめの就職先を紹介しますので、興味があるところやスキルを存分に活かせる場所がないか探してみてください。
- 自動車業界
- 電力業界
- 化学業界
- その他
自動車業界
機電系の学生に人気がある業界の一つとして「自動車業界」があげられます。自動車業界では、名前のとおり自動車を作る機械エンジニアとして活躍することになります。
または、自動車の部品を製造するメーカーや、自動車を組み立てる会社などもあるので、さまざまな形で製造に携わることが可能です。
昨今では、カーナビや電子キーを搭載している車がほとんどなので、電子・電気系のスキルもこうした機器作りに活かせるでしょう。
自動車メーカーについてはこちらの記事も参考にしてください。
電力業界
電力業界は一般的な家庭や企業に必要な電気の供給の他、発電所や送電設備の運営・管理などを扱う分野です。その他に電気を用いた新たなエネルギーの研究や、より効率よく電力を使うためのエコサービスの開発も含まれます。
社会に不可欠なインフラを支えている業界であり、スケールが大きな仕事を任せられることもあるかもしれません。大学で電気系を専攻している機電系の学生は、特にスキルを活かしやすいでしょう。
化学業界
化学業界でも機電系の学生はニーズがあります。活躍する場としては化学メーカーにおける生産管理、設備管理といった部門が多いようです。具体的にはメーカーが商品を作っている工場における機械の運用・メンテナンスや、製品の管理などがあります。
「工場勤務はきつい」と思う人もいるかもしれませんが、勤務体制が整っている企業ならそこまで重労働になる可能性は低いでしょう。
化学業界というと化学系を専攻している学生が採用されるイメージがあるかもしれませんが、機電系の学生も求められています。大手の化学メーカーなど好条件が期待できるところもありますので、就活の際に視野に入れてみてはいかがでしょうか。
化学メーカーについてはこちらの記事も参考にしてください。
その他の業界
機電系は上記以外の業種でも活躍できます。いくつか例を紹介しますので、就活で業界を絞る際は参考にしてみてください。
金融業界
意外かもしれませんが、機電系の学生は金融業界にも需要があります。大学で学んだ機電系の専門的スキルではなく、勉学をする中で培った論理的思考力や数学的スキルが求められるのです。
金融業界では数字やマーケットの分析にもとづいて判断をすることが前提であり、理系である機電系の学生はそうしたスキルを持っていることが多いと考えられています。証券会社のアナリストや、保険商品の開発などに役立てられるでしょう。
公務員
機電系の学生の中には公務員になる人も一定数います。これは機電系の知識が活かせるというよりも、地元や地域の社会の役に立ちたい人が就職するためです。「エンジニアになるのはきつい」と考えて公務員を目指す人がいることも考えられます。
機電系だからといって必ずしも関連する業界に行く必要があるわけではないので、一つの選択肢として持っておいてもいいかもしれません。
研究職の公務員として働くという場合もあります。この場合の働き方についてはこちらの記事で解説しています。
機電系に人気の職種
機電系に人気の職種は主に研究職・技術職の2つがあげられます。具体的な仕事内容や求められるスキルについて見てみましょう。
研究職
1つ目の人気の職種は研究職です。新たなサービスを開発したり、既存の商品をより便利になるよう改良したりすることが主な仕事内容です。
「研究職はきつい」というイメージを持つ人もいるかもしれませんが、体制がしっかりしている企業ならブラックな労働にはなりにくく、待遇がいいことも期待できます。
研究職は一つのことを突き詰める職種なので、就活では諦めずに成果を出すことにコミットする力や、現状の課題を把握してPDCAを回せるスキルなどをアピールできるといいでしょう。
技術職
技術職は名前の通り、機械の製造などサービスの技術面に関わる仕事を行います。新規サービスの開発・納入だけでなく既存サービスのメンテナンスを行うことも大切な仕事内容です。
技術職では機電系の知識があることはもちろん、デジタル化が進む中でAIやプログラミングなどの技術を身につける意欲的な姿勢も求められます。就活の際は、現状にとどまらず新たな分野の知識を習得できていると有利になるかもしれません。
家電メーカーで必要なスキルとは?
家電メーカーに就職するにあたって必要となるスキルには、専門的な知識の他にも語学力やITの知識などがあります。ここから詳しく解説していきます。
電気・電子への知識
電子機器メーカーでの技術系職種の配属先は、主に「研究開発」、「生産管理」、「販売」などがあります。
どのセクションでも、電気機器に対する高度な理解と専門知識が必要です。
また、AIやビッグデータ、IoTなどの専門知識をもっていることで、最近のトレンドや技術へのアドバンテージがあるとみなされ期待されることでしょう。
より高度な知識は配属後にOJTで身に着けることが可能ですが、あらかじめこれらのスキルに対する素地があることは必ず評価されるはずです。
英語をはじめとした語学力
多くの電機メーカーが海外に製造・販売拠点を設けているため、海外との打ち合わせや出張の機会も多くなっています。
そのため、英語力はもちろんのこと、グローバルに動き回れることが必須条件となります。
また、電気・電子関連の専門用語に関する英語に慣れていることも採用のポイントになりますので、技術英検などの資格も有利になります。
外国人労働者がいる企業では、職場で英語を話すことが避けられない場合もありますので、学生のうちから英語に慣れ親しみ、TOEICなどの英語試験を受けておくこともよいでしょう。800点近い結果が出れば、無理なく英語での対話ができる応募者であることがわかります。それほど高い英語力を必要としない場合でも、在学中に学習しておくことで、エントリーシートの段階でのTOEICスキルによる落選を避けられるでしょう。
基本情報処理技術者資格などのITスキル
基本情報処理技術者の資格は通常、IT系の職種の資格として認識されていますが、電子機器メーカーでの仕事内容にも親和性が非常に高くなっています。
IoTをはじめとした、家電とITを融合させた製品が普及している現在、製造と販売の両方で活用できる資格です。
国家資格であるため、取得は容易ではなく、勉強にもかなりの労力がかかると言われているので、時間のある学生のうちに取得しておくことで就活時に有利になります。
なお、試験は年に2回しか実施されないので、就活前に取得できるよう計画を立てておくとよいでしょう。
まとめ
機電系の就職について、需要が高い理由やおすすめの業界、人気の職種などを紹介しました。内容を再度見てみましょう。
- 機電系とは機械・電子・電子系工学をまとめた用語で、就活で使われることが多い
- 機電系は人材不足であり、複数の業界で求められているのでニーズが高い。「就活では最強」ともいわれる
- 家電メーカーは様々な電化製品の開発や製造を行う企業のことを指し、機電系の学生から人気が高い
- おすすめの業界は自動車、化学、電機、電気系など。金融や公務員も選択肢の一つとして有効
- 人気の職種は研究職・技術職の2つ
機電系は就活の市場ではニーズがあり「採用できない」といわれるほどの人気の高さです。考え方によっては、希望する仕事に就きやすいとも捉えられます。ぜひ、ご自身が何をしたいのかを深堀りして、キャリアプランを実現させるための就職先を見つけてください。
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