就職活動の前に、企業の実情を知る上でも大切なインターンシップ。インターンシップとは本来、「企業現場での職業体験などを行うことで、学生のキャリア教育に対する効果をあげる」ことが目的であり、「企業の広報活動や、その後の選考活動につながるようなインターンシップは実施しない」という原理原則がありました。しかし企業は、採用を有利に進めるために、早く自分たちを知ってもらうという目的で、インターンシップを実施するケースが増えてきています。
そうであるとするならば、インターンシップを選ぶ時に一番気をつけるべきは、インターンシップに参加する学生の目的と、インターンシップを運営する企業の目的が合致しているかどうかではないでしょうか。ここではインターンシップのパターンを理解していただく事で、学生の皆様が間違うことなく自分の目的が達成するインターンシップを選ぶことができる情報を提供したいと考えています。
「内定が取りやすいこと」と「自分の適職を探しやすいこと」は違う
就活が学生有利の「売り手市場」が定着したことで、学生は就職氷河期とは比べものにならないほど「内定を取る」ことは容易となりました。容易になるということは努力をしなくても結果を得られやすいということにつながるかもしれません。結果、表面的なイメージや、先輩が入社した会社だということだけで、応募企業を決めてしまい、自分の希望や性格に本当に合っているかどうかを検討する時間も減ってしまっています。いくら「内定を取る」ことが容易になったとしても、「適職を探す」ことに時間をかけるべきだと思います。「適職探し」に最大の効果が期待できるのが“インターンシップへの参加”です。
インターンシップ参加の最大の効果は、指標を手に入れられること
物事を判断するのに、絶対評価をすることは難しいです。しかし、何かと比較する評価方法であれば、途端に容易になります。多くの学生は、企業で仕事をするということはどういう事なのかを知らない(体験していない)ので、企業研究をしてもそれが自分にとって向いているかどうかを判断するのは難しいです。しかし、長期インターンや企業内アルバイトを経験すれば、仕事内容だけでなく仕事の進め方や社員の雰囲気等を体感することができます。その結果、他の企業を見た時に、自分に向いているかどうか、を考えるのは容易くなります。インターンシップに参加した企業と比べてどうなのか、を考えれば良いからです。もしインターンシップに行った企業を気に入れば、似たような会社を探すということもできます。これが「自分の指標」を手に入れるということ。そう言った比較検討を繰り返していくことで、だんだん「自分の適職」がどのようなモノなのかが見えてきます。
インターンシップにはそれぞれ特徴がある
インターンシップの実施目的について、2つの判断軸を基に整理してみました。
【判断軸:その1】
●旧来企業型(メーカー・金融など)
目的は『広報宣伝』。 つまり企業の事を学生に知ってもらう事です。
某部品メーカーやゼネコンが、企業イメージ向上のため、学生向けにTVコマーシャルをうっているのと同じ類の戦略ですね。「お父さんがあのビルを作ったんだよ」って言っているアレです。『広報宣伝』目的インターンシップはイメージUP戦略であるため、企業(業界)の良い部分しか触れないようなプログラムになっていることが多いのです。
企業はイメージ向上の為に最善なプログラムを用意するので、その結果「実際の業務体験ができる」というインターンシップ参加目的とは程遠い内容となります。1 dayや 3 daysといった短期のインターンシップを実施する例が多いのは、多数の学生に会うことを目的としているため、同じ学生に多くの日数を費やすのではなく、何回も実施してより多く学生に接することで、『広報宣伝』としての効果を高めています。
●新興企業型(IT・ベンチャー)
目的は、『(仕事視点での)優秀な人材の見極め、そして早期囲い込み』。
実際にその企業の社員が行なっているような業務内容に限りなく近い実務をやってもらうことで能力のある人間を見極めます。そこで優秀な学生だと判断すれば、仕事の中で人間関係などを構築し実際に入社に至るように導いていくのが最終目的です。
現場に入って実際に一緒に仕事をするインターンシップを通じて、良くも悪くもその企業の「働き方」を身を以て知ることになるでしょう。そのために期間として最低1週間、多くの場合は1ヶ月以上のロングランとなる場合が多いです。
【判断軸:その2】
●仕事理解型
目的は『仕事の内容を知ってもらい企業の理解を深めること』。そのうえで就職先のひとつとして応募先リストに載せてもらうものです。したがって講義形式で行われることが多いようです。金融業界では一日かけて全ての職種について実際に働いている人が説明をしたりといった内容で実施されたり、製造業界では工場見学などがセットになっているケースもあります。先輩社員との座談会なども行われます。短時間で知識は増える一方で実体験にはつながらないので「指標」を作るまでには至らないことが多いです。
●課題協働型
目的は『能力の把握』。そして自分自身の適性に気付くことが大切になります。アイディアソンやハッカソンなどといった形式を取って行なわれることもあります。グループワークを実施することで、仕事(プロジェクト)の疑似体験をする形式です。課題が与えられチーム単位で解決するための情報を集め、仮説を立て、検証し、戦略まで落とし込み最終日にプレゼンするという内容です。数日かけて行なうことが多いようです。
例えば「アカリクに登録する学生を2倍にするためにはどのような施策をたてるべきか」といった課題が出ます。作業やプレゼンの途中などで、実際に現場で働いている社員から指摘や指導を受けることができるので自己成長にもつながります。
●業務補助型
目的はずばり『仕事体験』。そして良い学生がいれば内定に持っていき入社してもらうことです。IT業界やサービス系の企業の場合、人手不足解消の一手として、完全に仕事の戦力となって働いていただく事も目的の一つとなっているケースも多くあります。内容は、実際に社員が行っている仕事と同じ(多くの場合は補佐業務だが、裁量を与えられて主体的な仕事を任せられることもある)内容を行うことになるため、必然的に半年から数年といった長期にわたるケースが多く、そのまま入社に至る人も少なくないです。
●事業参画型
目的は『創造性の高い学生の発掘』。良い学生がいればそのまま事業に参画してもらい社員として採用することです。“業務補助型”と“課題協働型”を合わせたような形式です。必然的に半年から数年といった長期にわたるケースが多くなります。インターン向けに課題を考えてインターン中に完結させるようなものから、実際に進行しているプロジェクトの補佐として資料作成や情報収集などを行い社員と一緒に商談に同行するといったケースもあるようです。インターンシップとはいえ責任の重い業務を遂行することになりますので、参加するにはしっかりとした心構えが重要です。
業界・職種ごとのインターンシップについて解説
エンジニア向けのインターンシップについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
IT技術を持つ学生の方なら、ハッカソン型のインターンシップについてもぜひチェックしてください。
研究職志望者を対象にしたインターンシップも実施されています。こちらの記事では応募方法や注意点等を解説しています。
メーカーが行うインターンシップの内容やメリットについてはこちらの記事で詳しく解説しています。是非合わせてご覧ください。
技術職を志望している学生の方なら、ぜひこちらの記事もチェックしてください。
企業と学生の思惑はもともと違うので、完全一致はありえない
民間企業とは営利団体です。インターンシップの目的がいくら「企業現場での職業体験などを行うことで、学生のキャリア教育に対する効果をあげる」ことだったとしても、自らの利益につながらないことは行いません。「学生の目的の為」には設計されてはいません。学生の立場からすれば、自分の目的をはっきりさせ、その目的に一番合致していそうな内容のインターンシップを選び、「企業を利用してやろう」くらいの気持ちが必要なのかもしれませんね。
少なくとも
・仕事体験を通じて、経験を積みたい
・職種についての適性を計りたい
・どうしても入りたい会社があるのでインターンシップ経由で入社したい
というように目的をはっきりさせて、インターンシップを選んでください。
おわりに
お薦めのインターンシップをひとつ挙げるとすれば、それは「社員と机を並べて実際の業務を経験できるタイプのもの」です。アカリクでは毎年、長期インターンの方を採用し一緒に机を並べて仕事をしていただいているのですが、インターンに来ている学生が就活の際にしっかりと企業を見極めて適職を見つけていらっしゃる姿を良くみかけます。これは社員と机を並べて仕事をしていることで、しっかりと「社会人の仕事とはどんなことか」をイメージできているからだと思います。就活で一番大切なのは「社会人になった時の自分をイメージできているか」なのです。ぜひインターンシップを有効活用し「自分の適職」を見つけてください。