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博士が目指すべきは、スペシャリストではなくプロフェッショナル

2016/09/15 掲載

博士課程学生の採用事情

今回は、自分の体験も交えながら博士課程学生の採用事情についてお届けいたします。

博士課程学生の採用事情

アカリクをご利用いただく企業の方(経営者や採用担当)から、

「博士課程まで進んでいる方は、研究内容が専門的すぎて、うちの会社では使いこなせない」
「他の分野にあまり関心が無さそうで、融通が利かないイメージがある」
「修士でも十分にスキルや素養があるし、無理に博士を取るメリットがない」

といったお話を耳にすることがあります。もちろん誤解や風評被害も多々あるかと思いますが、結局のところ採用する側の印象を覆すことが出来なければ厳しい戦いとなります。

博士課程へ進む学生の多くは大学や研究機関での教職や研究職を目指しているので、研究への情熱は強く大きく、取り組んでいる研究課題の第一人者として名をあげることに尽力しているでしょう。私も大学院生時代は基本的に同じでしたし、周りにいた同期や先輩後輩もほとんどがそうでした。

そういった博士学生が、いざ民間企業へ就職しようと考えても、やはり「研究」という呪縛にとらわれてしまい、特定分野の専門家としての自分が活躍できる仕事や企業に引き寄せられがちです。しかし、社員教育というコストが掛かる前提である新卒採用において、多くの企業で「専門家」枠は修士学生が集まれば充足してしまうという悲しい現実があります。博士学生を優先的に求めている企業は本当にごく僅かです。

企業から求められる人材とは

これまで日本企業では何でもそつなくこなせる便利な人材が大量に必要とされていたので、「ゼネラリスト」を育てる仕組みが確立されました。新卒一括採用という採用方式、定期的な異動や配置換え等です。
それが近年では何かに特化した能力を持つ人材の価値が見直され、「スペシャリスト」を囲い込んで製品やサービスの高度化・精緻化を進めている状況に変化しています。そこで修士課程を修了した人材がスペシャリストとして重宝されているのです。

それでは博士学生は企業から求められていないのでしょうか?この疑問を解くには、修士と博士の「違い」を考えなければなりません。
私の考えでは、修士学生が特定の分野で活躍する高度な知識や技能を備えたスペシャリストであるならば、博士学生が目指すべきなのは「プロフェッショナル」です。プロフェッショナルとは「その仕事で生計を成り立たせることができる人」、言い換えれば「仕事を成果に直結できる人物」であると定義できます。

プロフェッショナルとスペシャリストの違い

多くの場合プロフェッショナルは企業に勤めている中で磨かれていくことで培われるもので、それは業務内容(専門的・総合的)に限らず管理職に必要とされる資質です。

プロフェッショナルとスペシャリストの違い

つまりスペシャリストとプロフェッショナルな資質は同時に持つことができます。修士課程を経ている博士学生が既にスペシャリストであることは間違いないので、だからこそ次に目指すべきはマネジメント能力に長けたプロフェッショナルなのです。そこが博士と修士の決定的な差になるはずです。

例えば、ある研究プロジェクトを進めているとして、スペシャリストは特定の研究課題に対して取り組んでいきますが、プロフェッショナルはプロジェクト遂行のために必要なあらゆる課題に対応することが求められます。
これは、研究費獲得のための申請書類作成、必要な人員の調整や管理、プロジェクト全体の進捗確認、成果発表シンポジウムの企画から実施、不測の事態への対応など、純粋な研究活動を越えた様々な活動が含まれています。これらは自立した研究者、つまりPI(principal investigator)や大学教員に求められる業務でもあります。

企業における事業運営も同じで、目的を達成するためには幅広い業務が関係してきます。もちろん専門的な知識・能力・技術を持ったスペシャリストは重宝されますが、組織として目的を果たすためには自分自身だけではなく、他者やプロジェクト全体のマネジメントが出来るプロフェッショナルが必要とされるのです。
「プロフェッショナルなスペシャリスト」であれば、専門的な知識や技術にも精通していることから、他のスペシャリストの意見を掬い上げて理解することも出来るはずなので、円滑なコミュニケーションが取れることでしょう。

おわりに

プロフェッショナルの資質が早くから開花する方もいますが、通常であれば長年その業務に従事することでようやく得ることが出来るものです。でも博士学生は卒業研究も含めれば5年以上「研究」に従事しているはずで、その過程で種々の非研究活動にも携わっていることでしょう。
あなたが「当然のこと」としてやってきた仕事は、社会全体から見ると意外なほど高度なモノ、希少なモノであったりします。そこに気付くことが出来れば、研究成果以外の、自分自身のセールスポイントが見えてくるのではないでしょうか。

研究に専念している博士学生にとって、確かに就職活動は負担が大きく難しいと思います。しかし一流の研究者を目指すのであれば、当然ながらPIや大学教員も視野に入っているはずです。自分の研究室を構える研究者となるための努力や経験は、博士学生にしか出来ない就職活動の武器となるのです。

博士学生の皆さん、プロフェッショナルを目指しましょう。

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