【株式会社hoppin 滝沢頼子氏】中国自動運転事情 ―躍進する中国の自動運転事業―(2)

インタビュー

百度以外にも、目立つスタートアップの躍進

 中国で最も自動運転の先駆者でありトップを走るのはこの百度だと言えるが、それ以外の企業も多くが参入している。ここでは活躍が目立つ2社を紹介しよう。

 まずは配車サービスで有名なDidi Chuxing(滴滴出行)。2018年9月以降、北京、上海、合肥、蘇州、カリフォルニアなどで自動運転の公道実証実験ライセンスを取得し、2019年9月には上海で初めて有人自動運転試験の許可を取得した。2020年6月には一般客向けに自動運転タクシーの試験サービスを開始している。

 DiDiの配車アプリ内から自動運転タクシーの乗車を申し込めるのだが、筆者がみてみたところ、具体的にはアプリ内の「応募フォーム」のようなものに記入をして乗車を申し込み、承認されたら実証実験エリアに行き、そこで乗車体験をする形式だった。日常の中で一般客が気軽に利用するような段階ではないと言える。

DiDiアプリ内の自動運転試乗体験申し込みフォーム(筆者によるアプリのスクリーンショット)

 また、2017年設立のスタートアップのWeRide.ai。2019年に広州でタクシー事業を手掛けているBaiyun TaxiとジョイントベンチャーWeRide Robotaxiを設立すると、同年11月に有人で(セーフティドライバーの乗車つきで)一般客が乗車可能な自動運転タクシーの試験運用を開始。こちらは上記のDiDiのような面倒な手順はなく、アプリさえあれば誰でもすぐに乗ることができるものだった。

 2020年7月には、広東省広州市にて無人での自動運転の公道実験を開始している。

WeRideの自動運転タクシー(出典:WeRide公式サイト)

 同企業はコロナ禍においては隔離地域に物資を届けるための自動運転バスも提供していた。物資を乗せたバスは隔離地域まで自動で移動し、到着地点で住民が物資を下ろす。その後、バスは再び自動で隔離地域の外まで移動するのだ。コロナ禍においては、自動運転の「ドライバーと乗客との接触が不要」という今までには注目されなかった点が評価され、利用価値が高まったと言えるだろう。

WeRideの自動運転バス(出典:WeRide公式サイト)

 このほかにも、ここではご紹介しきれないが、2016年にシリコンバレーで設立されたAutoX、2017年に百度出身のメンバー2人が起業した小馬智行(Pony.ai)など、中国には数多くの自動運転スタートアップが存在し、一般客も乗車が可能な実証実験が各地で積極的に行われている。

様々なプレーヤーが意識する自動運転技術。技術開発のみならず、自動車メーカーに「なる」動きも

 このように、現状のサービスはエリアを限定した試験的サービスであるため日常利用にはまだ至っていないものの、クローズドな実験段階は終わり、大都市を中心に一般客も自動運転タクシーを使うことができる段階になっている。また中国政府は自動運転市場の拡大に向け、「2025年をめどに新車販売の半分を条件つきの自動運転車にする」という野心的な目標を2020年に掲げている。自動運転は米国が技術のリード役とされてきたが、世界最大市場を持つ中国も追い上げに本腰を入れ始めたと言えるだろう。

 この流れを受けて、近年は、自動車メーカー自身も自動運転技術の開発に積極的である。

 例えば、新興EVメーカーの蔚来汽車(NIO)は、自社でADAS(先進運転支援システム)「NIO Pilot」の開発・実用化をしており、高速運転時や渋滞時の自動運転支援、また自動車線変更や自動駐車機能を搭載している。

 また同じく新興EV(電気自動車)メーカーの小鵬汽車(Xpeng)は、2021年1月にカーナビと自動運転支援機能を組み合わせた独自技術「NGP(Navigation Guided Pilot)」のベータ版を発表した。これは完全な自動運転サービスではないが、制限速度の調整や、高速道路走行モードへの自動切り替え、最適な車線選択、自動追い越し等が可能となっている。先述の蔚来汽車の搭載機能は自動運転レベル2程度だが、小鵬汽車は自動運転レベル3に近い段階であると言われている。

 また、2021年3月末にはスマート家電大手の小米(Xiaomi)が自動車製造に乗り出すと発表。自動運転については直接的には触れられていないが、発表では自社で保有するソフトウェアとハードウェアの統合に関する豊富な知見を強調。将来的に自動運転が発展していく流れを見据えての参入であると考えられる。

 さらに、自動運転業界を引っ張る百度自身も、2021年の1月に中国自動車メーカー大手の吉利(Geely)と戦略的パートナーシップを締結し、EVの製造に乗り出すこととなった。

 様々なプレーヤーが参入し、しのぎを削る中国の自動運転業界。今後の動向に注目だ。

筆者プロフィール

株式会社hoppin 代表取締役
滝沢  頼子 氏

東京大学卒業後、株式会社ビービットに入社し、UXコンサルタントとして大企業を中心に多くの企業を支援。上海オフィスの立ち上げ期メンバー。その後、上海のデジタルマーケティング会社を経て、東京にてスタートアップへ。2019年に株式会社hoppinを創業。中国視察ツアー(休止中)、中国に学ぶUX研修/講演/勉強会、中国市場リサーチ、UXコンサルティングなどを行なっている。

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