「AJ出張版」は、株式会社アカリクが発行する「大学院生・研究者のためのキャリアマガジン Acaric Journal」の過去の掲載記事や、WEB限定の新鮮な記事をお送りするカテゴリです。今回はvol.4の掲載記事をお届けします。
TDSE株式会社は、データとAIを活用しながら企業のサービスやビジネスモデルにおける課題解決をサポートしています。アカデミック分野出身のデータサイエンティスト・エンジニアによる分析や製品活用支援など、コンサルティングから実装までのデータ活用のソリューションを一気通貫で提供しています。今回は、データサイエンティストでありプロジェクトマネージャーとして活躍される、K.K.氏とT.O.氏にお話を伺いました。
― 日々の業務について教えてください
T.O.氏:プロジェクトマネージャーとして、プロジェクトの管理と推進を行っています。数理最適化や、保険業界で機械学習を導入するといった案件を受け持っており、2~3個のプロジェクトを並行して進めています。期間や業務が明確に決まっている場合と、クライアント先に常駐して、その都度データ分析関連の依頼を受けて対応するような場合もあります。
K.K.氏:ウェブマーケティング企業におけるウェブサービスのUIの改善や機能追加を行う際の意思決定に対して、データ分析をしてロジックを作成する仕事を中心に行っています。私も同じくプロジェクトマネージャーですので、複数のプロジェクトの管理も並行して行っています。
― お2人はこれまでどのような道を歩まれてきたのでしょうか
K.K.氏:博士課程に3年通って中退しました。当時の専門分野は「ゲノム科学」と呼ばれる、生物の遺伝子情報をコンピュータで解析する研究をしていました。当時は、バイオインフォマティクス分野、つまり生物の情報をコンピュータで解析する分野にブームが来ており、面白そうだと思い進みました。大学に入学して以来ずっとどの分野に進むべきか迷っていて、そんな時に新しい分野が登場したので興味が湧いてチャレンジしてみたのです。大学院には研究者になりたくて進学したので、研究には熱心に取り組んでいました。しかし、なかなか成果が出ないということもあり、企業へ就職することを決意しました。
T.O.氏:もともとパソコンが好きだったので情報系の学部に入り、大学院もそのまま情報系に進みました。私は博士号を持っていますが、アカデミアの道へ進むことは考えていませんでした。修士の時に就職活動を経験しましたが、当時は情報系の修士であればシステムエンジニアの採用がほとんどで、さまざまな会社を見てみましたが、働いている方々の顔が明らかに疲れていて、大変そうだと感じました。結局、心惹かれる企業に出会うことができず、研究が好きだったので博士進学も悪くないと思い、進学しました。博士まで行けば、システムエンジニア以外の選択肢も広がるのではないかと期待もしていましたね。
― TDSE株式会社への入社の決め手をおしえてください
K.K.氏:一番の決め手になったのは、会社の雰囲気です。おそらくアカデミア出身者が多いことが要因だと思うのですが、ロジカルにコミュニケーションを交わしている印象でした。当時の私は、社会人になると全ての方が「グイグイと踏み込んでくるようなコミュニケーション」をとるものだと思い込んでいました。例えば、上司に誘われて無理やり一緒にラーメンを食べにいくというような感じですね。TDSE株式会社にはそのような感じがなかったのが良かったです。
T.O.氏:私も会社の雰囲気に惹かれました。博士の時の就職活動では、情報通信系の研究開発職をメインに探していたのですが、数が限られていて大手企業の求人しかないような状況でした。選考を進めていく中で研究所を見学したのですが、そこで働く人たちを見て、「自分には大企業は向いていない」と感じました。こうなりたいと思えるロールモデルがいなかったのです。そこで、人数が多くなくて、年齢層も低くて、自分が大学院までやってきた数学や培ってきたITスキルを活かせる、といった条件を総合的に考えて、データサイエンティストという職種を選びました。最終的には、どのような人たちが働いているかが大切だったので、雰囲気が良いと感じたTDSEを選びました。
ー 入社後にギャップを感じたことはありますか
K.K.氏:ギャップは特になく、入社前に感じていた会社の雰囲気そのものでした。少し想定外だったのは、入社1年目から色々任せてくれる環境で、いきなりメイン業務に携わるような感じで、戦力として期待されていると感じました。新卒であれば、もっと下積み期間があるのかなと想像していたので、驚きました。突然メイン業務に関わることに対してはあまり不安はなかったのですが、自分に自信があったというよりは、「何かあったら上司が助けてくれる環境が整っていた」ので、安心感がありました。自分がやりたいようにやってみて、ダメだったら上司がカバーしてくれるので、動きやすいように動けたと思っています。
T.O.氏:私もギャップは感じませんでした。アカデミック出身者は、自主的にいろいろやる人が多いイメージがあったのですが、TDSEの人たちはまさにその通りで、楽しく働けています。
ー 今後のキャリアの展望について教えてください
K.K.氏:マネジメントに慣れてはきましたが、まだまだレベルが低いと思っている部分もあるので、マネジメント能力のレベルを上げていきたいです。私は、細かく指示を出し過ぎてしまうタイプなので、メンバーのプレッシャーにならないように気をつけています。最近はなるべく相手に任せるように意識しています。
T.O.氏:本格的にマネジメントをやり始めて、まだ2か月程と日が浅いのでもっと経験を積みたいです。特に、メンバーの一人ひとりのレベルに合わせて仕事を振ることに課題を感じていて、タスクが簡単すぎるとコミュニケーションコストがかかって仕事が進みませんし、あまり大雑把な指示ではよくわからない方向に進んでしまうことがあります。そのあたりの伝え方を模索しているところで、これから見極められるようになりたいです。
ー TDSEのアピールポイントを教えてください
K.K.氏:1つの会社にいながら、様々な業界や企業の話を聞けることが面白いと思っています。私は、性格的には飽きっぽいのですが、案件によって常駐先や業務内容もガラリと変わりますし、1年目から様々な案件に携わって様々な会社の内実を見られるのは魅力的だと感じています。
T.O.氏:K.K.さんと同じで、いろいろな案件があるので、いろいろな経験ができることだと思います。早い人では3ヶ月単位でやることが大きく変わるので、豊富な経験を積むことができます。
― どのような方がTDSEに向いていますか
T.O.氏:地頭が良くて、物事をロジカルに考えられる人が弊社の雰囲気に合うのではないでしょうか。また、好奇心が旺盛な人であれば、異業種の知識やその背景を学んで素早くキャッチアップできます。データサイエンティストに必要なスキルはもちろんですが、クライアントの業界知識があれば、良い提案につながるので、そのような方に是非来ていただきたいです。
K.K.氏:TDSEには「学びたい時に学びなさい」という社風が色濃くあります。実際に、進学と就職で悩んでいる応募者がいたら、進学を進めることがほとんどです。以前、採用選考会が途中から進路相談会のようになったこともありました。学べる環境があることはとても幸せなことなので、学べるうちに学んで欲しいというスタンスをとっています。弊社のデータサイエンティストの半数が博士号を取得していますし、研究を続ける人を応援しています。そういった意味で、何かを突き詰めて考えることが好きだったり得意な人が多く働いていますし、そのような方が弊社に向いていると思います。
ー データサイエンスは今後どのように発展すると思いますか
K.K.氏:とても難しい質問ですが、どうなっていくか予測できないという点で非常に面白いテーマだと思っています。まだ発展途上の技術なので、新しいやり方や技術がこれからどんどん登場します。そのような知識のキャッチアップも重要ですが、どれだけ新しいツールが出てきても、根幹の統計学の知識が何より重要だと思います。TDSEにはその部分が強い人が集まっていて、課題に対して数理で解決することにこだわりを持っているので、このようなスタンスはこの先もブレずにいると思います。
T.O.氏:「データサイエンス」という言葉はマジックワードのように使われていますが、データを使って既存のビジネスを良くする試みは、まだ発展途上の段階です。既存のものをデータを使って良くするのではなく、「データから何をするか決める」という転換が起これば面白いなと考えています。
ー 大学院生へメッセージをお願いします
T.O.氏:就職活動をされる大学院生の皆さんは、最初から選択肢を狭めないで欲しいです。私も最初は自分の専門分野にあわせてエントリーする企業を絞っていましたが、就職活動を進める中で徐々に幅が広がって、結果的にTDSEに入社しました。専門以外の仕事に就いてもどうにかなりますので、視野を狭めないで積極的に情報収集してみてください。
K.K.氏:研究が面白いと思うのであれば研究をやれば良いですし、面白くなければ他のことをやってもよいと思います。例えば、博士修了後に別分野を学ぶために修士に入り直すのもよいですし、そのようなやり直しや転換を躊躇せずに、今の気持ちに素直に行動すれば自然と道が拓けると思います。
※本記事はTDSE株式会社の協力のもと、作成いたしました。
プロフィール(取材当時)
K.K.氏
2017年入社。データサイエンティスト・プロジェクトマネージャー。1988年静岡県生まれ。東京大学大学院 新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士課程退学。
T.O.氏
2018年入社。データサイエンティスト・プロジェクトマネージャー。1990年静岡県生まれ。大阪大学大学院 情報科学研究科情報ネットワーク学専攻。博士。