実験ノートを解説!目的や内容、書き方も紹介

アカリクコラム
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研究室に配属され、実験をするようになると実験ノートの記入があります。

研究室で実験ノートを書くように言われたけれど、書き方がよくわからないという人も多いのではないでしょうか。

あるいは、実験ノートのルールや何のために書いているのかわからないという人もいるかもしれません。

今回のコラムでは実験ノートについて解説します。

これから実験に挑戦する皆さんの参考になれば幸いです。

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実験ノートとは

実験ノートとは、研究者が日々の実験について記入するノートのことです。

ラボノートとも呼ばれ、研究における日記帳だと考えてもらえば、実験ノートに馴染みのない人にもイメージしやすいかもしれません。

実験ノートは、後から見返すことができるように研究の進捗や生データを記録しておくものです。

注意すべき点としては、実験ノートの記録は記入者自身が理解できればよい、というものではなく、自分以外の後輩や指導教員、第三者が読むことも考えて書く必要があります。

今回のコラムでは主に理工系で用いられる実験ノートについて、その目的や書く内容、書き方について解説します。

実験ノートをつける目的

研究の進捗に応じて随時書き込まれる実験ノートは実験が実際に行われたことを示す根拠となります。

また、学会発表や執筆論文に書くほどでもないような細かい実験操作やノウハウなどといった実験により得られるデータ以外の情報を指導教員や後輩などに伝える引継ぎ資料としての側面も実験ノートにはあります。

発表した研究に不正疑惑が持ち上がった場合、実験ノートは潔白を示すことができる唯一の物的な証拠となります。

日本学術会議では事後検証に備え、研究試料と同様に実験ノートの長期保管を求めており、学術誌によっては論文発表後、定められた期間は実験試料や実験ノートを保管することを求めていることもあります。

また、日本の特許審査では先願主義といって、同様の発明で競合する複数の出願があった場合には最初に発明した人ではなく最初に出願した人に特許権が認められます。

一方、海外では最初に発明した人に特許権を認める考え方(先発明主義)を採用している国もあり、この場合には実験ノートが発明日を特定するために重視されるようです(ただし、近年では多くの国が先願主義を採っています)。

参考: 文部科学省(2015-03-06)「回答「科学研究における健全性の向上について」(日本学術会議)

実験ノートの位置付け

実験ノートは試料やデータと同様に、実験そのものを事後検証するための材料です。

実験ノートの記載がずさんだったり、書き込まれた実験ノートが破棄されているケースでは研究不正が疑われた際に否定できなくなります。

不正を行わない潔白な研究者にとって、実験ノートの記録はまさに自衛手段に他なりません。

2014年12月に公開された理化学研究所の研究不正についての調査報告書を見ると、研究者本人だけでなく同僚や上司の実験ノートまでもが実験データの正当性を検証する材料として活用されていることが分かります。

しかし、調査報告書の中には、「実験ノートに記載が見つからず、不明であった」という記述も複数回登場し、実験ノートがしっかりと書かれていない場合は、事後検証が難航するということがわかります。

参考: 理化学研究所(2014-12-26)「STAP細胞論文に関する調査結果について

実験ノートに書くべき内容

実験ノートには様々な書き方があります。

基本的には所属する研究室で指導している実験ノートの書き方の方針に従うのがよいと思います。

前述の通り、実験ノートは研究室に残していく研究資産ですから、指導教員など最終的にノートを受け継ぐ人にとって管理しやすい形で書くのが良いでしょう。

ここでは、実験ノートに書くべき一般的な内容を解説したいと思います。

記入日

ノートに書き込んだ日付を書きます。

実験について書き込む場合には基本的には実験日と一致することになります。

実験結果の考察などを書く場合にはそれがいつ書き込まれたものなのか明示しましょう。

実験目的

実験を行う前に何のための実験なのか書いておくと、自分以外の人がその内容を見たときに前後の実験との関係が分かりやすくなります。

自分の実験ノートであっても、1年後に見たら何の目的でやった実験だったか思い出せないこともあるので、実験の目的を丁寧に書いておくとよいでしょう。

また、実験前に目的をはっきりさせておけば、頭の整理にもなり、余分な実験を減らすことにも役立ちます。

実験の方法

実験の方法を記録する際に、何をどこまで記載するかの目安は、実験ノートの記載を読んだだけで後から再現実験ができるかどうかを判断基準とするとよいです。

また、実験の内容にもよりますが、実験前にこれからやる実験操作を書き込んでおき、それを見ながら手を動かすのがおすすめです。

予定外のことが起こって操作を変更した場合には、あらかじめ書いておいた実験操作に、変更した内容や理由を忘れないうちに書き加えていくとよいでしょう。

測り取った試薬の質量や加熱時間などはもちろんですが、試薬のメーカーや等級なども記録しておくことをおすすめします。

また、分析を行う際には加速電圧や走査速度など、各装置に応じて分析条件を記録しておきましょう。

実験の結果

実験ノートには、実験の結果得られたデータも記録します。

手書きで記録する場合にはノートに書き留める人が多いと思いますが、機器分析で得られた電子データも印刷してノートに貼っておくと、見返すときにわかりやすいのでおすすめです。

ただし、分析量が多くなってくると貼り付ける紙も増え、ノートが分厚くなったり重くなるので、ご自身の研究内容に応じて適切なスタイルを探ってみるとよいでしょう。

また、実験結果を踏まえて簡単な感想を書き留めておくと他の人が読み返したときに研究の進捗が追いやすくなり、前後の実験との関係が理解しやすくなります。

実験ノートに書いておくと便利なその他の情報

実験ノートに書くべき内容について解説してきましたが、これ以外にも

  • 指導教員や共同研究者との打ち合わせの内容
  • 学会発表時に受けた質問や討論の内容
  • 文献調査
  • 研究計画

なども研究の進捗に合わせて書き込んでおくと良いと思います。

これらの事項は研究の方向性が変化するきっかけになるので、後から他の人が見返したときにどうしてこのような軌道修正があったかを追うために役立ちます。

ただし、実験ノートは研究室に置いていくことになりますので、卒業・修了後に自分自身の資料として手元に置きたい勉強のノートなどは個人のノートに書くほうが良い場合もあるかもしれません。

実験ノートの書き方

ここまで実験ノートの内容について触れてきましたが、ここからは実験ノートの書き方について解説します。

実験ノートは改ざんができないような形で長期的に保管できるようにすることが重要です。

糸綴じノートを使う

実験ノートは、文具メーカー各社から実験ノート用のノートが発売されているのでそれを使うと書きやすいですが、必ずしも専用のノートでなくても構いません。

一般的には糸綴じのノートを使うことを要件とすることが多いです。

なぜ、糸綴じノートなのかというと、糸綴じノートは後からページの入れ替えができず、改ざんが行われにくいためです。

反対にルーズリーフは任意のページを取り去ったり、後からページを加えることが容易にできてしまうので実験ノートとしては不向きです。

後からページの差し替えが行われていないことを示す目的で同じ理由でページ番号を振るのも有効です。

実験ノート用として販売されているノートにはページ番号が予め振られているものもあります。

途中で次のページに移るとき

ページは上端から下まで書き切るのが望ましいですが、余白を残して次のページに移る場合は「以下余白」と書いておくことで、それ以下には何も書かれていないことを明示することができます。

これは、後から別の人物がノートの余白に追記することを防ぐためのものです。

消えない筆記具で書く

改ざんを防ぐ目的で(あるいは自分が改ざんしていないことを示すため)書き換えができない筆記具で書き込みましょう。

消えてしまうと研究不正の証拠としてだけでなく、資料として後から読み返す人が困ることも少なくありません。

一般的には耐水性のインクを使ったボールペンが使われます。

なお、化学系など分野によっては、インクが有機溶媒で消えてしまうことがあるため鉛筆を使うように指導されることもあるようです。

そのような場合、ラミネートフィルムで完全に書き換えができない状態で保管するということもあるようです。

紙の貼り付け方

コンピュータで作成したグラフや顕微鏡写真などのデータを印刷してノートに貼ることが必要になる場合もあります。

貼った後に簡単にはがせるタイプの糊も市販されていますが、実験ノートに使用するには不向きです。

紙片を貼る際には割印や署名・日付を書き込んでおくことで、無理やりはがしても、その痕跡がノートに残るため、改ざん防止の観点からもよいのですが、実際にここまでやるのは大変なので、実践している研究者は多くないように思います。

また、付箋もはがれやすいため、研究の内容の記録には向きません。

ただし、実験操作を記載しているページのように、頻繁に見返すページには目印として付箋を貼ることは問題ありません。

まとめ

今回のコラムでは実験ノートについて解説しました。

実験ノートには

  • 研究の引継ぎ資料
  • 研究の正当性を示す証拠資料

としての意味合いがあります。

そこで実験ノートは研究の進捗に合わせて

  • 記入日
  • 実験目的
  • 実験内容
  • 実験結果

を随時記録していきます。

実験ノートの資料性を保つため、

  • 糸綴じノートを使う
  • 消えない筆記具を使う
  • はがせない糊を使う

ようにして、改ざんができないような形で実験の記録をとりましょう。

一般的なルールについてご紹介しましたが、色々と試してみながらご自身の研究内容に合ったスタイルを探してみると良いでしょう。

完璧なノートを追求してだんだん疎かになってしまうよりも、継続できるような内容でしっかり記録する方が重要だと思います。

はじめて実験ノートを使う皆さんの参考になれば幸いです。

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アカリクリポーターズとは、大学院生としての経験や知識を「リポート」するライター集団です。全員大学院在籍経験があり、これまでの研究経験や知識を活かして、大学院生の皆様に役立つ情報をお届けしています。専門分野は工学・化学・生命科学・心理学・社会学等様々です。

【監修】アカリクお役立ちコンテンツ編集部
博士号所持者/博士課程在籍経験のある編集者が監修しています。

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