就職活動で使われるES(エントリーシート)には、研究内容を記載する箇所があることが多いです。
しかしながら、「ESの研究内容ってどうやって書けばいいの?」「人事の人たちは何を知りたいの?」と悩んでいる人も少なくないでしょう。
そこで今回は、内定を1つでも多く手に入れたい理系大学院生のために、ESの研究内容について書くべき内容や押さえておきたいポイントを紹介します。
書類選考の通過率を少しでも上げるためにぜひ最後までご覧ください。
企業のES(エントリーシート)に研究内容は必要?
理系院生であればESに研究内容を記入するのは必須です。しかしながら、なぜ企業は研究内容を記入してほしいのでしょうか?
理由としては主に以下の2つがあります。
・企業は授業や研究活動を通じて何を学んできたか知りたい
・企業は取り組みから何を学んだか知りたい
2つの理由について詳しく見てみましょう。
企業は学生の時何を学んだか知りたい
企業はあなたに対して「なぜこの研究科に興味をもったのか」、「なぜ数ある研究テーマのうち、この研究を選択したのか」を知るために研究内容について聞きたいのです。
また、研究内容を問うことでどれだけ真剣に研究に取り組んできたかを知ることができるという理由もあるでしょう。学生の本業は学業のため、学業面で頑張ったことについて書くことを求めるのは当然です。
研究内容を見ることで研究を頑張っているかどうかある程度判断できます。ちゃんと研究に取り組んでいることが伝われば、良い評価がもらえるでしょう。
企業は取り組みから何を学んだか知りたい
企業が知りたいのは単なる研究内容だけではありません。あなたが研究に真剣に取り組んだことによって「どのようなことを学んだか」を知りたがっています。
研究に取り組むうえでさまざまなことが学べます。例えば、研究で課題解決を行うためにロジックを組み立てる必要があるため、論理的思考力を学ぶことができます。
他にも、
・教授や共同研究の相手と研究をスムーズに進めるためのコミュニケーション能力の大切さ
・研究の実行と改善を繰り返すことによるPDCAサイクルの重要性
・成果が出るまで諦めずに研究を行ったことによる諦めないことへの大切さ
など、研究を通して学べることはたくさんありますよね。研究を通じてこれまでに直面してきた課題をあなたがどのように乗り越えてきたか、というエピソードによって、企業の担当者はあなたがこれから仕事上で直面するであろう課題や企業が現在抱えている課題をどのように解決できるかを想像することができます。
企業はあなたが研究を通して学んだことを知ることで、仕事への考え方や取り組み方を把握できるのです。
研究内容を簡潔にまとめて盛り込もう
企業が研究内容を聞きたいのは、あなたが「どのような研究をしているのか」と「研究でどのようなことを学んだか」を知るためです。したがって、企業が知りたいこれら2点についてを簡潔にまとめて盛り込むとよいでしょう。
ただし、研究室に配属されて間もないうちは、研究自体が決まっていない人もいるのではないでしょうか。まだ研究テーマが決まっていない場合、研究を始めていないことを素直に伝え、「今後どのような研究を行う予定か」「どのようなことに関心があるか」などを記入することをおすすめします。研究活動をしていないという理由で採用されないというケースは少ないため安心してください。
ESに研究内容を書く際のポイント
企業がESの研究内容で求めていることを踏まえて、実際に書いていきましょう。
研究内容を書くときのポイントとして、以下のようなものがあるので詳しく紹介していきます。
・書式や文字数はそれぞれの企業の規定を守る
・簡潔にわかりやすくまとめる
・質問されることを想定してまとめる
・内容以外に工夫した点や学んだことも書く(文字数に余裕がある場合)
書式や文字数はそれぞれの企業の規定を守る
基本的なことですが、書式や文字数の規定は必ず守ってください。企業から指定された方法で書かないと、そもそも読んでもらえない可能性もありますので、意識して書きましょう。
研究内容はES内の記入欄に書くか、「研究概要書」としてA4サイズの紙1~2枚で提出するのが一般的です。
文字数は企業によって異なりますが、ESでは400字以内のケースが多く、研究概要書の場合は1000字以上記入するケースが多いです。
指定された文字数内で書かなければなりませんが、少なすぎてもよくありません。最低でも9割は記入することをおすすめします。
また、書くことがないからといって空白にするのはNG行為です。 空白にして提出した場合、書類選考は通過できないといっても過言ではありません。研究内容がはっきり決まっていない場合でも必ず自分の興味のある研究テーマや分野について記入しましょう。 記入するだけでも研究の解像度を上げることができ、印象は良くなるものです。
簡潔にわかりやすくまとめる
研究内容はわかりやすく簡潔にまとめましょう。採用担当者はあなたの研究について全く知りません。そのため、教授や同じ研究科の友人に見せて伝わる文章だったとしても、採用担当者には内容が伝わらない可能性があります。できるだけ専門用語は避けて、 全く研究分野が違う人にも伝わるような文章を書きましょう。
また、わかりやすくまとめるためには論理的な構成を立てることが重要です。
・何についての研究を行っているか
・どうしてその研究が必要なのか
・その研究がどのように社会で貢献できるのか
・あなたが研究で取り組んでいることは何か
など順序を立てて、書いていきましょう。
質問されることを想定してまとめる
ESで記入した研究内容はたいてい面接の際に触れられるため、質問されることを想定しながらまとめましょう。
理系学生の場合、上位の選考に進むと理系職に携わってきた会社役員など技術に詳しい人物が面接を行うケースもあります。そこで、研究内容について深く掘り下げた質問をされたり、技術的なことや学問的なことを聞かれる場合も少なくありません。
そのため、事前に何を聞かれるか予想して、回答を準備しておくことをおすすめします。
難しい質問にスムーズかつわかりやすく答えることができれば、面接で高い評価がもらえます。
例として、
「他の研究との差別化は?」
「自社でこの研究はどのように活かせるの?」
などの質問があるので、自分で答えを作ってみましょう。
工夫した点や学んだことも書く
記入できる文字数が多い場合、研究内容だけでなく工夫した点や学んだことを多く書きましょう。
・研究の目標達成のために行ったこと
・研究に対してどのような課題や障壁があったか
・目標達成や障壁を乗り越えるためにどのような工夫を行ったか
・工夫を行ったことでどのような結果が得られたか
・目標達成や障壁を乗り越えたことでどのようなことを学べたか
などを具体的に書くことがおすすめです。
なお、目標を書く際は、「わかりやすく、定量的に書くこと」が大切です。研究によっては、目標が数値化されていないと、基準が曖昧で伝わらないケースもあります。具体性を出すためにも、数値を意識して書くことをおすすめします。
ESに研究概要を書く時の流れ
ESに研究概要を書くときの流れについて解説します。
具体的な流れは以下の通りです。
・研究に関する簡単な内容説明
・研究の背景、目的
・自分が学んだり工夫したりしたところ
・研究結果や成果
研究に関する簡単な内容説明
まずはあなたの研究がどのような研究かを簡潔に書いてください。
「私は現在◯◯に関して◯◯の研究を行っています。」というような形で研究テーマを記載します。
この際、研究テーマはわかりやすく記載する必要があります。論文や文献などに書いてある専門用語を引用して、研究内容を書いたとしても採用担当者には伝わらないでしょう。
そのため、専門用語はかみ砕き、誰が読んでもあなたが取り組んでいる研究内容がわかるような文を心がけてください。
研究の背景・目的
次に研究背景や目的を記載します。
研究背景は以下の2つを意識して書くことをおすすめします。
・あなたの研究や先行研究が行われるようになった理由や目的は何か
・あなたがなぜこの研究を選んだのか
ほとんどの研究は社会に役に立つことを目的に行われています。そのため、あなたが行っている研究の必要性については必ず書きましょう。
また、企業は「なぜその研究テーマを選ぼうとしたか」についても知りたいと感じます。選んだ理由を知ることで、あなたの人間性や価値観を知ることができるためです。
研究テーマが決まっていない場合は、研究室のOBが執筆した研究論文などを借りて書くといいでしょう。教授や先輩に相談することで的確なアドバイスをもらえるのでおすすめです。その際、なぜその研究を選んだのかもメモしておきましょう。
自分が学んだり工夫したところ
研究内容・研究目的を書いたら、研究で取り組んだことや学んだこと、工夫したところを書いていきます。企業はあなたが研究を通して学んだことを知りたがっています。特に問題解決のために学んだことを求めているでしょう。
先述した「目標達成するために工夫したこと」や「障壁に対して取り組んだこと」を記入しましょう。
順序として、
①研究に対しての目標
②目標を達成するため行ったこと
③目標を達成するうえで起こった問題
④問題解決のために取り組んだことや工夫したこと
⑤問題解決を行った結果目標達成ができたこと
⑥目標を達成したことで学んだこと
⑦志望企業で学んだことをどう活かすかについて
などストーリーを展開して説明すると読み手に伝わりやすい構成になりおすすめです。⑦に関しては、文字数に余裕がある場合に書くと良いでしょう。
なお、ESの中には「研究内容」ではなく、「学業で頑張ったこと」という項目が用意されている場合もあります。その時は、「学業で頑張ったこと」の欄に自分が研究で学んだことや工夫したことを書くといいでしょう。
研究結果や成果
最後に研究結果や成果を記載します。研究の最終目標は学会の発表や論文の執筆です。そのため、学会で発表したり、論文が学術誌等に掲載されていれば、実績として記入しましょう。学会などで受賞していれば、記入するだけで印象が良くなります。
まだ実績がない人でも、すでに学会発表に申し込んでいれば、出る予定があることを書きましょう。
ただし、虚偽の実績を記入するのは絶対にやってはいけません。実績や成果のあることについてのみ記入しましょう。
研究概要を伝える時の注意点とコツ
ここまでは研究内容について、「何を書けばいいか」と「どのような流れで書けばいいか」を紹介しました。しかしながら、他の就活生と差別化をはかるためにも、より読みやすい文章にしたり、よりわかりやすく研究内容を伝える必要があります。
そこで、研究概要を伝えるときの注意点やコツを説明します。ひと工夫するだけで印象が変わるものもありますので、参考にしてみてください。
注意点とコツとして、以下のことを詳しく紹介します。
・語尾は統一する
・図やグラフを用いる
・ポスターにまとめるようなイメージで書く
・専門用語は使わない
なお、企業との共同研究を実施している場合には、その内容を無断で共有することが禁止されている場合があります。特に、競合企業の選考資料にそういった機密情報を記載してしまうと大きな問題となることもあります。心配がある場合には事前にしっかりと確認しておくことも重要です。
語尾は統一する
研究概要に限ったことではありませんが、語尾は必ず統一しましょう。一般的に語尾は「ですます調」か「だである調」の2種類が存在していますが、これらが混じってしまうと違和感のある文章になり、頭に入りづらくなってしまいます。
そのため、必ずどちらかに統一してください。
おすすめなのは「ですます調」です。丁寧で優しい印象を感じさせることができます。
さらに読みやすい文章を心がけるのであれば、「~ます。」「~ます。」「~ます。」と3つ以上連続で同じ語尾にならないようにすることを意識しましょう。同じ語尾が続いてしまうと、文章が単調になり読みづらくなってしまうためです。
「です」「ます」「でした」「ました」をうまく使い分けることをおすすめします。
図やグラフも用いる(書式自由な場合)
文章での説明には限界があり、専門性の高い研究だと伝えるのがかなり難しいかもしれません。そこで、もし書式の規定がなく、罫線が引かれていないESであれば図やグラフを用いて説明することをおすすめします。
図やグラフを用いることで、ESの見栄えがよくなったり、あなたの研究についてよりイメージがつかみやすくなるはずです。
ただし既に述べたように、企業との共同研究などを行っている場合、秘密保持の観点から載せてはいけない場合もあります。必要に応じ共同研究先の許可を得てから使用するようにしましょう。
また、図やグラフの数が多いと研究内容を記入できる欄が少なくなり、結果として内容の薄い文章になってしまう場合もあります。文章内で参照されていない図表があったり、重要度の低い図が並んでいると印象が悪くなりがちです。写真やグラフ、表などはあくまでも補助的な使用に留め、文章できちんと説明することを意識しましょう。
ポスターにまとめるようなイメージで
ESであれば書式が決まっていることが多いため規定に沿って書けばいいですが、研究概要書で書式の規定がない場合、どのように書いたらいいかわからない方もいるのではないでしょうか。
どうしても文章でまとめるのが難しいのであれば、ポスターにまとめるようなイメージで書くことをおすすめします。ポスターをイメージすることで構成を作成しやすくなり、どのような内容をどれだけ書けばいいか把握できます。
なお、ポスターの作成も難しいと感じるのであれば、ポスターで発表する形式の学会資料を参考にするのがおすすめです。研究室の先輩やOBでポスター発表経験のある人がいれば、資料をもらったり、いなければ実際に学会へと足を運んでみたりしましょう。
専門用語は使わない
あなたの研究がどれだけ専門的な内容だとしても専門用語は極力使わずに説明しましょう。あなたのESや研究概要書を評価する担当者は、専門知識を有しているわけではありません。
あまりにも専門用語をたくさん使ってしまうと、研究内容がわからずどのようなことを頑張ったのかさえ伝わらないこともあるでしょう。
専門外の人にも伝わりやすい文章は、専門分野の人にとっても分かりやすいものです。
そのため、確実に伝わるよう、専門用語はかみ砕いて記述すると良いでしょう。
誰もがわかる文章を書くために、違う学科の友達や家族など、あなたの研究について全く知らない人に研究内容を見てもらって添削してもらうことをおすすめします。中学生でも理解できるような文章を意識し、色々な人に読んでもらうと良いでしょう。
伝わりやすさ重視で研究内容をESに盛り込もう
ESの研究内容の書き方について紹介しました。
ESは、自分がこれまでにどんな研究を行ってきて、その結果どのようなことを学んだかを伝えるツールです。ESを書くときは書式を必ず守り、面接で質問されることを想定して書くことがポイントです。指定された文字数に余裕があれば、研究で取り組んだことや工夫したこと、学んだことをより具体的に書くと良いでしょう。
専門外の人にもわかりやすい文章を心がけることも忘れないでください。
伝わりやすさを重視して研究内容を書いて、書類選考を目指してみましょう!