「通年採用ってなんだろう?」
「通年採用って、留学した人のための制度でしょう?」
このように、通年採用と聞いても、自分にはあまり関係ないと感じたり、そもそも制度についてよくわからない方も多いと思います。
通年採用は、一昔前まで「秋入学の学生」や「留学生」向けの採用方法でした。
今、通年採用に知っておくべきは以下のような方々です。
- 大学院生
- 既卒者や留学者
- 就職浪人生
今や通年採用は、多くの方々の選択肢のひとつになっています。
この記事では、大学院生が知っておくべき「通年採用の基本知識」から「通年採用で内定を得るための方法」まで、幅広くご説明します。
あなたの就活に、新たな選択肢をもたらすことができれば、幸いです。
通年採用とは
通年採用とは、企業が年間を通じて、採用活動を行うことです。
一般的に、企業は新卒採用を「春から夏にかけて」行っています。
ところが、その後も応募を締め切らず秋から冬の期間も採用活動を継続する企業が増えています。
もともと、この秋冬の時期に採用される学生の多くは、一般的な採用時期に就職活動ができなかった既卒者や留学者でした。
近年通年採用が一般的になってきている理由としては、以下のようなことが考えられます。
- 近年の売り手市場による採用の難化
- 内定辞退者が出た場合のリカバリーのしやすさ
- より多様な人材を求める企業側の意向
通年採用の導入率
採用の難化にともない、通年採用を導入する企業が増えています。
就職白書2021(就職みらい研究所)によると、2022年卒採用において、通年採用を導入した企業は、全体の27%にのぼります。
前年の2021年卒採用と比較して、通年採用を導入する企業が、7.8ポイントも増加する見通しであることからも、いかに注目されているかがわかります。
また、この通年採用の導入率を従業員規模別、地域別に表にしたものが以下になります。
表1. 従業員規模別の通年採用導入率(%)
300人未満(前年差) | 300~999人 | 1000~4999人 | 5000人以上 |
33.7(11.9) | 24.6(5.9) | 19.7(3.7) | 30.0(9.7) |
まず、表1で示された従業員規模別でみると「300人未満」と「5000人以上」の企業において、最も導入率が高く、前年からの差も大きくなっています。
通年採用と一括採用のちがい
ここからは、通年採用と一括採用のちがいについて説明します。
通年採用と一括採用のメリットとデメリットを比較することで、それぞれの特徴がみえてきます。
そのうえで、状況に応じて2つの採用方式を併用することをオススメします。
学生側のメリット・デメリット
学生側のメリット・デメリットについてまとめた表が以下となります。
表2. 学生側のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
ESの締め切りに追われない | 採用されるハードルがやや高くなる |
一社ごとの選考に集中できる | 能動的な姿勢が求められる |
他社との選考日程がかぶらない | 就職活動が長期化する可能性がある |
まず、学生側のメリットについて、最も重要なポイントは1社ごとの選考へ集中することができるということにあります。
一括採用の場合、複数の企業の応募をいっせいにおこなう必要があります。
たとえば、あなたが一括採用で、20社にES(エントリーシート)を出すとします。
その場合、約1、2か月のあいだに、20社分のESを作成し、適性検査をこなさなくてはなりません。
また、面接の段階においても、他社と選考日程が重なり、1日に数社の面接を受けなくてはならない可能性もあります。
そのような状況下において、1社ごとの選考に集中するのは難しいといえます。
通年採用の場合、そのような期間の制約がないため、1社ごとの対策に時間をかけることができます。
次に、学生側のデメリットについて、最も注意するべきポイントは、採用のハードルです。
通年採用では、企業側が慎重に選考を進めることができるため、選考基準が高くなることがあります。
そのため、しっかりと選考対策を立てることが重要です。
また、通年採用の場合、より自発的に行動することも必要です。
一括採用の場合、大学側が就活セミナーを開催したり、周囲と一緒に就職活動をすることができますが、通年採用の場合は、ひとりで就職活動を進めなければなりません。
また、通年採用では1社の選考に集中できる一方、不採用が続いた場合に就職活動が長期化する可能性があるので、注意しましょう。
企業側のメリット・デメリット
もし、あなたの行きたい企業が通年採用を導入していた場合、「通年採用を導入する企業には、どのような意図があるのか」と気になる方も多いと思います。
ここからは、企業側のメリット・デメリットについて、紹介します。
企業側のメリット・デメリットについてまとめた表が以下になります。
表3. 企業側のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
一括採用では出会いにくい学生を採用できる | 採用担当者の負担が増える |
慎重に選考を進めることができる | 採用コストが高くなる |
数合わせで内定出しする必要がない | 採用広報が難しくなる |
まず、企業側のメリットについて、最も重要なポイントは、「一括採用では出会いにくい学生を採用できる」ということです。
一括採用では、学生側に時間の制約があるため、現時点で興味のある企業(業界)にしか応募できないというケースがあります。
通年採用では時間の制約がないため、広い視野で幅広く企業を見てもらえる可能性が高まります。
もちろん、一括採用では出会うことのできない留学者や既卒者を採用したいという意図もあります。
多様化への対応やグローバル人材を求める企業にとっては、大きなメリットになります。
次に、企業側のデメリットについて、採用者担当者の負担の増加や、採用コストの増加は注目すべき点です。
採用活動をおこなうために、企業側ではナビサイトへの求人の掲載や、広告宣伝、就職イベントへの出展などをおこないます。
年間を通して採用をおこなう場合、これらのコストが常時発生することになるので、採用コストが高くなります。
また、入社時期が統一できないことで、一度に研修をおこなうことができず、研修コストが高くなる可能性もあります。
そのようなデメリットをふまえたうえで通年採用をおこなう企業に対しては、真剣に選考にのぞみましょう。
通年採用で内定をもらうためには
通年採用の募集に応募する際には、「通年採用で受かるのは難しそうだ」「何か特別なことをしていないといけないのか」と考える人がいるかもしれません。
結論からいえば、必ずしも留学などの特別な経験が必要なわけではありません。
しかし、通年採用では時間の制約がない分、採用担当者も慎重に学生を見極めることができます。
通年採用で内定を獲得できる学生とは
通年採用で内定をもらうために、以下の3つのことを意識しましょう。
- 誰もが納得できる志望動機がある
- 素直である
- 良好な人間関係を築ける
まず、1つ目の「だれもが納得できる志望動機がある」ということについて説明します。
誰もが納得できる志望動機を話せるようにするには、しっかりと自己分析をおこない、「社会になにをもたらしたいか?」という点を、志望動機の軸にしましょう。
給与や福利厚生も重要ですが、志望動機には「自分がサービスを提供する側としての視点をいれること」が大切です。
興味のある方は、そちらもチェックしてみてください。
次に、2つ目の「素直である」ということについて説明します。
通年採用で応募する就活生の中には、就職浪人生や既卒者も、多く含まれます。
もし、「一括採用で1つも内定がもらえなかった」など、失敗とも捉えられる事由がある場合、採用担当者は「なにか問題があるのではないか?」と不安に思われるケースもあります。
ただし、失敗自体に対して、減点評価されるわけではありません。
むしろ、失敗してしまったあとの反省や取り組み方を、評価されることの方が多いのです。
そのため、採用担当者に自分の失敗を指摘されても、素直に受け取ることが大切です。
失敗経験を素直に認める「謙虚で、おごらない姿勢」を意識しましょう。
最後に、3つ目の「良好な人間関係を築ける」ということについて説明します。
企業は「多様な人材」を求めていますが、それは決して「ただ個性的であればよい」という意味ではありません。
周囲と異なる考え方や、バックグラウンドをもっている方々と互いにリスペクトできなければ、よい仕事はできません。
企業は、協調性をもち、周囲とよい関係を築ける人材を求めています。
通年採用を実施する企業例
最後に、通年採用を実施する企業を紹介します。
従業員規模が「5000人以上」の企業の約3割が、通年採用を導入しています。
ここでは例として、その中の数社をご紹介します。
ソフトバンク株式会社
ソフトバンク株式会社では「ユニバーサル採用」を導入しています。
ソフトバンクが提唱する「ユニバーサル採用」では、日本の従来の新卒一括採用とは異なり、挑戦する意欲ある方には広く門戸を開き、自由な時期に自己の意思で活動を行えるようにします。また、募集対象は新卒・既卒は問わず、一度就職をした方でも、再度挑戦することが可能です。
引用)ユニバーサル採用
新卒採用の場合、雇用形態は「入社時30歳未満の新卒/既卒/就業者」です。
入社時期は「4月」と「10月」になるそうです。
ヤフー株式会社
ヤフー株式会社でも、選考時期は「通年」となっています。
ヤフーは2016年10月から「新卒一括採用」を廃止し、新卒、既卒、第二新卒など経歴にかかわらず30歳以下の方であれば応募できる「ポテンシャル採用」として、通年採用を行っています。
これまでの「新卒採用」と就業経験を重視する「中途採用」では、第二新卒や既卒などの方に対して平等な採用選考機会を提供できないこと、また昨今、海外留学生や博士号取得者など就職活動の時期が多様化していることから、従来よりも柔軟な採用の枠組みが必要であるとヤフーは考えています。
引用)ポテンシャル採用
ポテンシャル採用の場合、雇用形態は「新卒・既卒・就業者(応募時30歳以下かつ入社時18歳以上)」です。
入社時期は「4月」と「10月」になるそうです。
日立製作所
日立製作所では「通年入社(365日入社)制度」を導入しています。
通年入社(365日入社)制度
- 新卒採用において、原則、卒業後1年以内の自由な時期に入社することを可能とします。大学卒業後、海外留学や長期ボランティア、自己啓発など各自が自己成長のために使う時間を認めます。
入社式の取り扱い
- 従来の「メンバーシップ型の働き方」を背景とした会社への入社を祝す式典から、「それぞれが遂行する仕事を通じて社会課題を解決するという目標の共有の場」とし、Hitachi Career Kickoff Session(仮称)として新たに開催します。
引用)ジョブ型人財マネジメントの実現に向けた2021年度採用計画について
国内大生の場合、募集対象は、「高等専門学校または、大学学部・修士・博士課程を2022年3月末までに卒業(修了)見込みの方、 および既に卒業された方で新規卒業予定者と同等の枠組みでの採用を希望される方(職歴の有無は問いません)」です。(2022年卒採用)
海外大生の場合、募集対象は、「大学学部・修士・博士課程を2022年9月末までに卒業(修了)見込みの方、および既に卒業された方で新規卒業予定者と同等の枠組みでの採用を希望される方(職歴の有無は問いません)」です。(2022年卒採用)
株式会社ファーストリテイリング
株式会社ファーストリテイリングでも、選考時期は「通年」となっています。
一人ひとりが仕事について真剣に考え、主体的に行動し、納得した将来が送れるように、ユニクロでは、一年中いつでも応募を受けつけています。
学年、新卒・中途、国籍を問わないオープンな採用方法にすることで、みなさんが、自分にふさわしい仕事とは何かを考えるチャンスを増やし、一人ひとりが主体的に、自由に応募できるようにしています。
ファーストリテイリングでは、大学1、2年時に応募することも可能です。
また、一度選考に落ちても、一年に一度、期が変われば、再チャレンジ可能になります。
入社時期は、毎年「3月」と「9月」の年2回です。
まとめ
通年採用は、近年広く門戸が開かれるようになりました。
通年採用を有効に活用することで、あなたの可能性はこれまで以上に広がるはずです。是非通年採用制度を利用した就職活動も検討してみてください。