高等専門学校(以下、高専)という存在は皆さんにとって身近でしょうか?
聞いたことはある、よく知らない、友達が高専の卒業生…色々かと思います。
このコラムでは、高専卒業生の筆者が高専に進学するという選択肢をご紹介するとともに、高専卒業後の進路をご紹介します。
そもそも…高専とは?
高専は5年一貫の高等教育機関です。
中学を卒業して入学し、5年間通うことになります。
高専では専門教育を受けることになります。
工業系の高専が多いですが、商船高専もあります。
ちなみに商船系の学科では航海実習があり、5年半の修業年数となっています。
卒業すると「準学士」が与えられ、短期大学卒業と同等の扱いということになっています。
実際には企業によっては大学卒業と同等の待遇というケースや逆に高校卒業と同等の待遇になるケースもあるようです。
高専の授業
高専は学年制です。
学校にもよると思いますが、筆者が通っていた学校では各学年で必修科目があり、それを落としてしまうと留年ということになります。
一般的な高校で留年してしまう人はごく少数のケースですが、学科によっては40人中十数人が単位を落として留年するといったケースもありました。
教員はあまり多くありませんでした。
5年制ということもあり、同じ先生が担当する授業をいくつか受けました。
先生との距離も近いので気軽に質問したり相談できたのは良かったなぁと感じています。
高専の雰囲気
5年一貫で学科制なのでクラスメイトは基本的にずっと同じです。
クラスメイトとの連帯感は普通高校と比べるとかなり強いのではないでしょうか。
部活動も5年間継続できるので同じメンバーで打ち込める環境といえると思います。
一方で、同じメンバーの中だけで完結してしまうので「井の中の蛙」になってしまわないように注意が必要です。
全く外部と交流を持たなくてもやっていけるので、その点では二極化してしまうのかなと思います。
卒業後の進路
冒頭にも書きましたが、高専を卒業すると短大卒相当の扱いとなります。
卒業後の進路としては、
- 就職
- 進学
* 他大学に編入
* 専攻科に入学
といった道があります。
3年次編入という形で一般的な大学入試を受けることなく大学に入ることができます(編入試験はあります)。
これは高専卒の大きな特徴と言えるでしょう。
中にはカリキュラムなどの関係で2年次への編入となるケースもあります。
筆者が通っていた学校では約2/3が就職し、約1/3が進学しました。
3年次編入と専攻科の比率は2:1くらいでしょうか。
ちなみに筆者は他大学に3年次編入しました。
就職
高専に入学するときには卒業後の就職を意識している人が多いように思います。
実際に筆者も卒業後は早く働きたいと思って高専への進学を決めました。
高専ではインターンシップで単位を認めているところが多いと思うので、興味のある企業にアプローチしてみるのも良いと思います。
筆者の同級生でもインターンシップ先に就職した人が何人かいます。
高専への求人は多く、就職先で困ったという話は(少なくとも国立高専では)聞いたことがありません。
※筆者が私立高専にあまり詳しくないためです。
学校や学科によるかと思いますが、多くの同級生が大手企業に学科推薦で内定をもらっていました。
一方、待遇については十分に確認しておく必要があります。
高専は高校・大学卒業レベルの人材を中学卒業後の5年間で育成するという点が「売り」です。
若くて優秀な人材が欲しいという企業から高く評価されているわけです。
大卒の人材と同等、またはそれ以上の働きを短大卒の待遇でしてくれるのであればこれほどのことはありません。
その分、入るのが難しい企業からも声が掛かることもあり、一概にどちらが良いというものではありませんが、不本意な結果にならないよう、就活の際には高専卒がどのような待遇で雇用されるのかしっかり確認しておきましょう。
進学
他大学に編入
3年次編入する人も少なくありません。
多くの大学が3年次編入試験を実施しており、合格すれば編入することができます。
編入試験の内容や難易度は大学や学科によってまちまちです。
高専によっては先輩の編入試験の体験記が蓄積されている場合もあることでしょう。
編入試験では筆記試験と口頭試問が課される場合が多いようです。
その学科に通う2年生たちが学んでいる内容から出題され、3年生から合流してもついていけるか判断されるといった様子です。
大学のセンター試験のようなものではなく、各大学が実施するので日程さえ重なっていなければ複数の候補を受験することができます。
ただ、基本的にはその大学のキャンパスで実施されるので、移動も大変です。
筆者は
- 大阪府立大学
- 富山大学
- 長岡技術科学大学
- 熊本大学
を受験しましたが、移動にかなりの時間を費やしました。
交通費も掛かりますから、どの大学を受験するかは慎重に考えた方がよさそうです。
また、大学によって必要な書類も違ったり、それぞれに成績証明書を用意したりと手間も掛かりますし、当然試験勉強も必要です。
過去問題はインターネットで公開していたり、郵送で請求できることが多いので、早めに準備しましょう。
出題傾向を分析して、同じ分野の勉強で対策できる大学を受験するのも良いと思います。
ちなみに長岡および豊橋技術科学大学(技科大)は多数の編入生を受けて入れており、進学を希望する多くの高専生が併願します。
編入試験では数学と専門科目が課されることが多いですが、技科大入試の特色として、国語の試験が課される点が挙げられます。
専攻科に入学
高専の専攻科に進学することもできます。
最大のメリットは本科で5年間を過ごした環境でさらに2年間研究に取り組める点でしょう。
大学に編入した場合、1、 2年生の分の授業は高専の履修科目からいくつかを振り替えることになります。
その際、高専での専攻と大学の専攻が十分に合致していれば良いのですが、そうでない場合あまり振り替えができず、たくさん授業を取らなくてはならないケースがあります。
専攻科の場合はカリキュラムがしっかりフォローされていますから、こういった心配はありません。
専攻科卒業後の進路としては、
- 就職
- 他大学院に進学
があります。
本科と比べると少し見劣りするかもしれませんが、専攻科も求人倍率は良いです。
また、他大学の修士課程に進み、研究を続けるという人も多くいます。
この場合、大学院ではこれまでとは別の研究室に所属することになります。
高専を卒業して進学を希望する場合には、高専での研究を専攻科で続けるのか、大学に3年次編入してその研究を修士でも続けるのか、といった自分がどの進路を選ぶかを2手先まで考えておくと良いでしょう。
(中退して)大学に入学する
ごく少数ですが、高専を中退して大学に入りなおす人もいます。
中学卒業の段階で専門分野を決めて高専に入学するわけですから、中には選んだ専門分野が合わない、馴染まないという人もいます。
高専の3年生を修了することで高校卒業と同等の資格が得られます。
そこで、3年生のうちに大学受験をして高専を中退するという方法があります。
しかし、3年生から専門教育も本格的に始まるので、最も忙しい時期に高専での学習と受験勉強を両立するのはかなり大変です。
1、 2年生のうちに高卒認定資格を取ってしまうというのも一つの手です。
いずれにしても大学の受験勉強は必要になります。
専門分野を大きく変えたいという人には選択肢になりうるのかもしれません。
まとめ
今回は高専卒業後の進路についてご紹介しました。
あまり身近な存在ではないという人も多いかもしれませんが、産業界からは高い評価を受けている高専です。
もし高専に進もうと考えているのであれば、その後の進路としてどのタイミングで就職するのか、どんな仕事に就きたいか、などと早めに考えておくことが重要です。