工学博士の就職率や主な就職先を解説

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大学院は、修士課程と博士課程に分かれており、博士課程を修了すると博士号を取得できます。修士課程の場合、民間企業に就職しやすく、博士号まで取得してしまうと就職しずらいというイメージを持っているのではないでしょうか。

しかしながら、博士修了後の就職率については、専攻分野ごとに大きく異なるのが実情です。今回は、工学博士の就職率、主な就職先や年収について解説していきます。

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工学博士と博士(工学)の違い

大学の先生方の肩書を見た時、ご年配の先生方は“工学博士”、中堅から若手の先生方は“博士(工学)となっている場合が多いのではないでしょうか。

このように表記が異なるため、同じ博士号であっても違いがあるように感じる人もいるかもしれませんが、この表記の違いは、法律の改正によるもので、1991年以降に授与された博士号については、博士(○○)という表記にすることが定められています。

この法改正の理由は、多様化する学問領域(特に学際的領域や新たな分野)の学位にも柔軟に対応できるようにするためであると言われています。なおこの表記の違いは、博士号のみではなく、修士号や学士号でも同様であり、現在では修士(○○)や学士(○○)と学位記に表記されます。

工学博士になっても、就職しにくい?

博士の正規雇用の就職率は低い

博士課程修了後の正規雇用率は、修士課程修了者や大卒者に比べて低いことが知られています。実際に、令和元年度の学校基本調査によれば、修士課程修了者および大卒者の正規雇用率が75.9%および75.3%であったのに対し、博士課程修了者の場合54.8%と低い値になっています。

参考: 令和元年度学校基本調査(確定値)の公表について

このように、博士課程修了者の正規雇用率が低い原因としては

  • 修了者本人がアカデミア職を目指したいために、ポスドク研究員など不安定な職に就かざるをえないことが多い
  • 民間企業では博士人材を受け入れる体制が整っていない場合もある

という理由から、修了時点の正規雇用率が博士課程修了者の場合、低くなっているものと考えられます。

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工学博士は他の博士と比べて、就職率は高い

なお、工学博士のメリットとして、他の分野、特に社会科学分野に比べ就職率や年収が高い傾向にあることです。

この理由として、工学分野における博士課程修了者に占める大学教員の割合が17.8%(社会科学分野では46.5%)と低い一方

  • 民間企業など(教員以外の専門職)における就職者が71.8%

と、大学以外にも活躍の場がある点が、工学博士のメリットと言えるでしょう。

一般に、博士人材が就職しにくいと言われる原因は

  • 博士号保持者の就職先がアカデミア(大学など)に限られる場合

であると言われています。一方、工学博士の場合には民間企業にも活躍の場があるというメリットから、他の分野に比べ就職率が良いものと考えられます。

さらに、社会科学分野に比べると、工学博士の年収(400~500万円程度:修了後1.5年経過時)は高い傾向にあります。

 参考:資料3-3.未来を牽引する大学院教育改革(審議まとめ)参考資料 3-68

「博士人材追跡調査」第2次報告書

博士が就職しにくい理由

博士課程修了者が、修士課程修了者や大学卒者に比べ、就職率が低い理由として

  • 企業が積極的な採用を行っていないこと
  • 博士課程修了者が増加した一方、大学教員ポスト数は増加しなかったこと

が原因となっていることが知られています。

企業が積極的に採用していない

博士課程修了者が就職しにくい理由の1つ目として、企業が博士人材を採用しない・活用できていないという点があげられます。民間企業のうち、博士人材を毎年採用しているのは5.3%、採用した経験があるのは24.8%と低い水準にとどまっています。

なお、企業が博士人材を採用しない理由について行った調査があり、その結果では

  • 特定分野の専門的知識を持つが、企業ではすぐには活用できないから
  • 企業内外での教育・訓練によって社内の研究者の能力を高める方が効果的だから

という回答が目立っていました。

博士卒は年収は高くせざるをえない一方、博士人材の持つ能力を企業では活かしきれないことが、博士人材の民間企業への就職が進まない背景となっているようです。しかしながら、この風潮は徐々に変化しつつあります。

 参考:資料3-3.未来を牽引する大学院教育改革(審議まとめ)参考資料 3-84

博士が増えたが、大学教員のポスト数は少ないまま

1990年代以降の大学院重点化政策以降、博士課程修了者の数は急増した一方、大学などにおけるアカデミックポストは増加しなかったことも、博士課程修了者が就職できない原因の1つとなっています。

実際に、博士課程へと進学した人数は、1990年度の7813名から2000年度には17023名と2倍以上に増加しました。その一方で、大学教員の雇用に関わる予算となる、国立大学法人運営費交付金は年々減額されており、そのあおりをうけ常勤教員の人件費も平成18年度(2006年度)の6882億円から平成25年度(2013年度)の5974億円と徐々に減少し、常勤雇用の減少が進んでいるのが現状です。

このようなことが背景となり、博士が就職しにくい現状へとつながっていると考えられます。

参考:大学における工学系教育の在り方について(中間まとめ)」1P

 参考:資料3-2 国立大学法人の財務運営についての考え方 4P

博士の待遇改善のために国からの支援策が拡充

博士課程院生や修了者の待遇改善のため、国も支援策を検討し始めました。

最近では、博士課程院生約1000人に、生活費や研究費として1人あたり年230万円程度を支給する方針が打ち出されました。なお、この支援策自体は博士課程に在籍中の院生に対するものではあるものの、この支援策を通じ大学が生活費や研究費を支給するにあたっては

  • 博士号を取得した院生のキャリアパスを確保すること

が求められています。このことから、博士課程修了後の博士人材の待遇改善に寄与することが期待される政策と言えるのではないでしょうか。

参考:科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事

工学博士の主な就職先

工学博士の主な就職先としては

  • 民間企業や公的研究機関
  • アカデミックポストを目指す(まずはポスドク研究員を目指す)

といった例が多いです。なお、工学分野の博士課程を修了した場合の特色として、他の分野に比べ民間企業に就職する割合が比較的高いという点があげられます。

民間企業や公的研究機関へ就職

近年、民間企業による博士課程修了者の採用意欲は強まっており、ソニー株式会社のように博士課程修了者やポスドク経験者用の採用を行っている企業や、採用情報内に大卒や修士卒のみでなく、博士卒の初任給や年収についても記載がある企業が増えてきています。

このことを示すように、博士課程修了者のうち民間企業等において専門的・技術的職業に就いた者は平成3年(1991年)の919人から平成26年(2014年)の4358人と4倍以上まで増加しています。

また工学分野の場合は、民間企業に就職する割合が他の専攻分野に比べ高いことが知られています。平成24年度(2012年度)博士課程修了者に占める民間企業への就職割合は、博士学位取得者全体で見た場合には23.7%であった一方、工学分野では44.7%と他の分野に比べ高いことが知られています。

このようなことから、工学分野における博士卒の場合

  • 民間企業への就職

も視野に入れて就職を目指すことで早い段階から高い年収を得ることも可能でしょう。

参考:資料3-3.未来を牽引する大学院教育改革(審議まとめ)参考資料 [3-36] [3-71]

ポスドク

また、博士号取得者の一般的な進路の1つとして、大学教員をはじめとしたアカデミックポストがあげられます。しかしながら、近年では修了後すぐに助教をはじめとしたアカデミックポストに就くことは困難であることから、まずは“ポスドク研究員”として大学や研究機関で研究を続けることからそのキャリアを始めることが多いと考えられます。

しかしながら、ポスドク研究員は“任期の定めのある職”であることから、博士課程修了後、不安定な職につかざるをえない“ポスドク問題”をはじめとした、博士課程修了者のキャリアパス問題が近年問題となっています。

特任助教が抱える任期切れ問題とは?仕事内容及び年収とともに解説 

工学博士の場合、民間企業も視野に入れキャリア形成を行うとよい

大学院重点化による

  • 博士課程修了者の増加

国立大学法人運営費交付金の削減による

  • アカデミア職における常勤雇用の減少

により、博士課程修了者がアカデミアの世界で職を得るのは困難な状況にあるのは事実です。 

その一方で、工学分野における博士課程修了者の就職動向を見てみると、他の分野に比べ

  • 民間企業への就職率が高い

ことが特徴的であると言えます。そして、近年では民間企業による博士人材の採用活動も徐々にではありますが積極的になってきています。

これらのことから、工学分野における博士人材の場合

  • 民間企業への就職

も視野に入れてキャリア形成を考えていくことが大切となってくるでしょう。

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