理系公務員にはどんな仕事がある?国家公務員と地方公務員の違い

企業/業界研究

理系大学院生の就職先の1つとして、理系公務員という選択肢があります。

理系学生としての専門知識を活かした就活をしたい方や、研究職を志望する方にも人気のある就職先です。

しかしながら、「理系の公務員ってどんな仕事があるの?」「理系の公務員って難易度が高そう」と思う方も少なくないでしょう。

そこで今回は、理系公務員の仕事内容や応募条件などについて解説します。

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理系職の公務員は大きく2つに分かれる

まずは理系の公務員にはどのような種類があるか紹介します。

1つは理系の専門知識を活かして行政に関わる「技術系職員」です。

例えば、建築や土木が専門の技術系職員が国土交通省でインフラ整備に携わったり、数理科学が専門であれば総務省で統計調査に携わったりします。

地方公共団体の技術系職員であれば、災害に強いまちづくりや環境保全に取り組んだり幅広い業務に文系職員とともに行政に関わります。

このように、様々な領域の理系人材の知見は技術的な観点から政策を遂行するために必須であると言えます。

2つ目は「公的研究機関で研究や分析に関わる研究員」です。

公的研究機関で研究や分析に関わる研究員は、主に各省庁に属する国立研究所や地方公共団体の試験研究機関の研究員として勤務します。こちらについては後ほど詳しく解説します。

また、研究職そのものについてはこちらの記事で解説しています。イメージが固まり切っていない場合にはぜひチェックしてみてください。

技術系職員(技官)になるためには採用試験に合格する必要がある

公務員として技術系職員になるためには、国家公務員試験や地方公務員試験の理系区分に合格する必要があります。特に各省庁の技術系職員を目指す場合、国家公務員試験で技術系(理系)の区分に合格したのちに各省庁の採用試験に合格する必要があります。

その他の行政職と同様に国家公務員試験は総合職と一般職に分かれており、その中で例えば「工学」や「化学・生物・薬学」など自分の専攻や志望にあった専門区分を選択し受験することになります。

地方公共団体の技術系職員の場合、所属する自治体の特徴によって募集の傾向が異なります。具体的には、漁業が盛んな地域では水産系の分野の募集枠が多いなどの傾向があることがあります。

研究職の公務員は国家公務員と地方公務員の2種類がある

公務員は大きく2つに分かれており、国家公務員と地方公務員があります。

国家公務員の研究職

国家公務員の研究職は各省庁管轄の研究所で働くことができます。基礎研究をしている研究機関が多く、5年から10年後に生まれる技術や製品の基盤になる技術を研究しています。

バイオ系、水産系、工学系、医薬系、食品系、生物系などの理系分野だけでなく、財政や法律などの文系分野の研究機関もあり、幅広い研究が行われています。

国立の研究機関の中でもよく知られているのが警察庁が所管する科学警察研究所です。ドラマでよく見る科学捜査のための技術を開発したり、鑑定や検査なども行っている機関です。生物、物理、化学、犯罪行動科学、交通科学を扱っています。

他にも、

  • 気象研究所: 気象庁の技術基盤をつくる研究開発
  • 防衛装備庁: 防衛装備の研究開発
  • 国立医薬品食品衛生研究所: バイオ医薬品や生物系、化学系の研究
  • 財務総合政策研究所: 財政経済に関する調査や研究

など、理系や文系の研究所が多数あります。

このほか、独立行政法人による研究機関もありますが、国家公務員としての採用ではないので、こちらは公務員試験を受験することなく応募することができます。

地方公務員の研究職

地方公務員の研究職は、公設試験研究機関(公設試)で研究員として働きます。

公設試とは、地方自治体が設置している研究機関です。中小企業の技術支援や施設の貸出、成分分析などの受託試験や調査研究、民間企業ととも共同研究を行うなどさまざまな役割をもっている機関です。多くの公設試で地元企業への技術支援が中心的な業務となっていますが、並行して各研究者が自身の研究にも取り組んでいます。

公設試は北海道から沖縄県まで全国各地にあり、地域によって工業、窯業、農業、水産、建築など、さまざまな施設が存在します。

国家公務員と地方公務員の違い

国家公務員と地方公務員の違いは多く見られますが、主に年収や募集要項に違いが見られます。

年収の違い

国家公務員と地方公務員では年収が大きく違います。とくに、研究職では顕著に差が現れます。

国家公務員の研究職は 令和4年国家公務員給与等実態調査報告書によると、月収は約56万円(平均年齢46.6歳)です。

国家公務員のボーナスが4.45ヶ月分(令和2年実績)のため、想定平均年収は、約56万円✕12ヶ月+約56万円✕4.45ヶ月=約921万円となり、900万円を超える計算になります。

また、国家公務員全体の平均月収は約41万円で、年収は約41万円✕12ヶ月+約41万円✕4.45ヶ月=約674万円となりますので、研究職は国家公務員の中でも高収入であることがわかります。

一方、地方公務員の研究職は令和3年地方公務員給与の実態によると、月収は研究職が約38万円(平均年齢43.7歳)です。ボーナスは地域によって違うため一概には言えませんが、国家公務員と同様4.45ヶ月として計算すると、年収は、約38万円✕12ヶ月+約38万円✕4.45ヶ月=約625万円と600万円を超える計算となります。

また、地方公務員全体の平均月収が約36万円で、年収は、約36万円✕12ヶ月+約36万円✕4.45ヶ月=約592万円

となり、地方公務員全体の平均年収より研究職の平均年収は30万円ほど高いことがわかります。

国家公務員の研究職と地方公務員の研究職の年収を比較すると、300万円近く差があり、国家公務員の研究職の方が待遇の面では良いと言えます。なお、一般企業の研究職の平均年収は約500万円と言われており、地方公務員でも各自治体のボーナス次第では一般企業を上回る収入も期待できます。

参考: 人事院(2022-09)「令和4年国家公務員給与等実態調査報告書
参考: 総務省(2022-08-05)「令和3年地方公務員給与の実態

募集要項や採用の違い

国家公務員と地方公務員では募集要項や採用の違いもあります。

国家公務員は国家公務員試験に合格した上で研究機関へ訪問して応募する流れになっています。大卒以上が応募条件となっていますが、院生以上でないと基本的には採用されません。専門知識や研究の実績が求められます。

しかしながら、そもそも国家公務員の研究職の新卒採用自体あまり多くありません。防衛装備庁など毎年15人程度採用している機関もありますが、基本的には1名から2名の採用またはまったく新卒採用をしない機関がほとんどです。

ただし、総合職(一般職)採用で就職したとしても、人事異動によって後に研究機関に配属されるケースもあります。文系の人でも研究機関で働くこともあるでしょう。

一方、地方公務員は定期的な採用がなく、人材が不足した時に募集されることがほとんどです。特に最近は期間雇用による研究職の採用が増えており、新卒の採用は少なくなっています。

ただし、国家公務員の総合職と同様に、地方公務員の総合職になることで、異動により研究職に就ける場合があります。

また、公務員ではありませんが、独立行政法人の研究機関にも新卒採用があります。決して難易度が低いわけではありませんが、公的機関の研究職に興味がある人にとっては選択肢のひとつとなるのではないでしょうか。

公務員の採用スケジュールは民間企業と異なる

公務員就活の特徴として、一般的な民間企業の選考よりも遅いことが挙げられます。

年度によって多少前後することがありますが、国家公務員総合職試験の申込みは3月中に行い、第1次試験を4月上旬に実施し、合否は4月下旬に発表されます。続いて第2次の筆記試験は5月上旬に、政策課題討議・人物試験が5月中旬から下旬に行われます。これらを経て最終合格発表は6月上旬に行われます。

さらに、ここでの最終合格がそのまま「採用」を意味するというわけではないことも注意が必要です。

参考:総合職試験採用情報|国家公務員試験採用情報NAVI

志望する官庁に採用されるためには「官庁訪問」が必須

「官庁訪問」とは、受験者が志望する官庁を訪問し、各官庁の職員から業務説明や面接などを受けていただくもので、志望する官庁に採用されるための重要なステップ(採用選考活動)です。

先ほど述べたように、 国家公務員採用試験の最終合格がそのまま採用を意味する訳ではありません。

志望する官庁に採用されるためには必ず官庁訪問へ参加し、志望官庁から、採用の内々定や内定を得る必要があります。

参考: 人事院人材局企画課(2022-02-09)「2022年度版 庁訪官問ガイド: 一般職試験(大卒程度試験)

民間企業への就職も意識

公務員を志望する場合、一般的な民間企業の採用スケジュールよりも遅い時期に本格的な就職活動をすることになります。複数回の試験を経て最終的な合否結果の発表は6月になり、この頃には民間企業での採用活動は既にかなり進んでいることが考えられます。

選択肢を広げるためには、公務員として研究職に就きたいと考えている方も民間企業への就職を視野に入れて就活を進めることがおすすめです。選考スケジュールが違うことから、公務員への応募と並行して民間企業への就活を進めることができます。

公務員としての就職を志望する理由は待遇や業務内容、勤務地など人によって様々と考えられますが、民間企業においても様々な条件で応募を募っているところがあります。

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以下の記事では、当初公務員を志望していた方が民間企業に就職された際の事例をご紹介しています。併せてぜひご覧ください。

事前準備や募集を確認して狭き門を突破しよう

理系公務員の新卒採用は狭き門で、容易とは言えません。しかし、事前準備をしっかりすることで、採用試験や面接に合格する確率を高めることができます。

国家公務員を目指すか地方公務員を目指すかで仕事の内容は大きく変わります。自分がどのような仕事に就きたいのか、自分の専攻がどのような業務に活かせるのかを募集要項等を通してきちんと調べておくことも重要です。

また、前述のとおり公務員と民間企業の就活時期は異なるため、公務員を目指しながら民間企業の就活も並行できます。キャリアの選択肢を広げるためにも、ぜひ積極的に民間企業の情報も収集しましょう。その際は、アカリクを使って効率よく進めるのがおすすめです。

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アカリクリポーターズとは、大学院生としての経験や知識を「リポート」するライター集団です。全員大学院在籍経験があり、これまでの研究経験や知識を活かして、大学院生の皆様に役立つ情報をお届けしています。専門分野は工学・化学・生命科学・心理学・社会学等様々です。

【監修】アカリクお役立ちコンテンツ編集部
博士号所持者/博士課程在籍経験のある編集者が監修しています。

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