『Podcastアカリク』は『知恵の流通の最適化』を担う株式会社アカリクの「放送部」が課外活動としてお届けするポッドキャストです。会社や大学院生の就職、博士人材採用などについて幅広くお話します。今回は、アカリクを経て現在は日系コンサル企業にて活躍中の野村さんによる持ち込みテーマで「大学院生が専門外就職すること」についてディスカッションしました。
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はじめに
鬼頭:皆さん、こんにちは。「ポッドキャストアカリク」です。今回はディスカッションをしたいと思いまして、ゲストを2人呼んでいます。アカリクの平田さんと、以前アカリクにいて、今はコンサルタントとして働いている野村さんです。よろしくお願いします。
平田:株式会社アカリク経営企画部事業推進グループでマネージャーをやっております平田と申します。事業推進グループを率いつつ、Acaric Journalの編集長も務めております。今日はどうぞよろしくお願いします。
野村氏:2018年頃までアカリクにいました。今は、日系のコンサルファームで働いています。過去に発行していた「Acaric Report」に名前が残っていたりします。あと、コンサルタントとして働いている傍ら、大学院でキャリア関係の非常勤講師として授業もしています。よろしくお願いします。
※Acaric Report https://acaric.co.jp/news/2018/08/acaric-report-201808/
鬼頭:今日は、野村さんからテーマとして「研究職以外で就職すること」をご提案いただいております。大学院生の研究職での就職は一般的ですが、研究職以外の就職について雑多な議論ができればと思っています。平田さんは博士号所持者で、野村さんは博士課程単位取得退学、私は理系修士で就職しているのですが、野村さんからテーマについて気になるポイントをご説明いただけますか?
野村氏:最近のSNSを見ていると、大学院生、特に博士の人について、「博士には道があるんだ」、「ポスドクのコンサル」や「アントレプレナーとして起業」などのニュースやトピックが出てくるようになりました。私自身は、コンサルとして働いているので、やはり大学院生が周りに多いです。ですので、研究職以外にも大学院生はいろいろなところにいて、いろいろなことをやっているのだなと思うようになりました。
では改めて、大学院生は専門性が活きない中でどこに強みがあるんだろうか、と考えていまして。その中の一つとして、「特殊環境がないと大学院生は活きないのではないか」というネガティブな仮説を持っていたりもします。
特に博士の人は「主体性と実行力」が強みだと言われますが、これらが発揮できる環境では強いけれど、規律を重んじる自由度が低い環境では活躍するのが難しいのではないかと。故に、大企業とかはやはり博士を取りたがらないのでは、といったことをふわっと考えています。
鬼頭:まず、研究職以外でどのような就職先があるかと言うと、いろいろあると思うんですけど、今回はビジネス系職種を想定されますか?エンジニアやデータサイエンティストだと、専門職と言えますね。
野村氏:情報系の方がデータサイエンティストやエンジニアになって研究しているなら専門性を活かしていますが、そうではない方々もいらっしゃると思います。これらは話す時には分けた方がいいですが、わざわざテーマとして分けなくてもいいと思います。
平田:難しいですね。専門性は特定研究分野の専門性に限定されますか?例えば、情報学分野なら情報学分野の知識を活用する職、という認識です。データサイエンティストもいろいろなバックグラウンドの方がいらっしゃるので、自身の研究の専門分野を活かせなければ、職種としては研究職でも非研究職とみなすという感じでしょうか。
野村氏:研究分野としてライフサイエンスをやっていて、今はデータサイエンティストばりばりの研究職というのも含んでいいのではないでしょうか。
大学院生が研究職以外の就職をする際のポジティブ・ネガティブな側面
野村氏:まず、大学院生が研究職以外の就職をする際のポジティブ・ネガティブな点を、お2人はどのように捉えているのかを教えてほしいです。
鬼頭:大学院生が研究職以外に就職することについては、選択肢としては大いにありだと思います。専門分野で得た知識が使えない場合でも、考え方や身につけたスキルが役に立ちます。データサイエンス分野やエンジニアは分かりやすく役に立つ場合もあります。また一定の専門分野を学んだ人がさまざまな業界のさまざまな職種で働く点は、ポジティブに考えています。一方で、ネガティブな点は、カルチャーギャップがそれなりにあると思っています。厳しい規律があったり、「こういうものが良い」とされる規範が決まっているとか。専門分野に長く浸って得た考え方が、その会社の目指すべき姿や規範とコンフリクトすることもあり得るのではないかと思います。
野村氏:ビジネスを学部生からやってきた人たちと比べると、大学院生はアカデミア独自の価値観を内包していて、その価値観が良きにも悪しきに働くこともある、というのが鬼頭さんの考えですね。
平田:まず、前提として、私も野村さん同様、研究職以外の就職をしています。ポジティブな点は、私の場合、専門分野をそのまま活かせる職はアカデミア以外に存在しないので、就職の間口がものすごく広がる点です。ネガティブな点は、民間企業で専門性を活かさない分、今まで色々大学院でやってきたことは置いといて、一から頑張りましょう、という形になりますので、端的に「時間の無駄」になる点だと思います。
鬼頭:なるほど。では、この流れで野村さんからも伺ってもいいですか。
野村氏:専門分野をやることによって培ってきた能力が活きる環境・活きない環境の落差が激しいのだと思います。わたしの会社では論文エントリーという形で、修士・学部生の書いた論文を読んで、面白かったら選考をスキップさせるという採用を行っていて、アカデミアからのウケが良かったりします。
その中でも、活きる博士と活きない博士がいます。就職後にどんどん業績を上げていく人もいれば、全然業績が上がらなくて苦しんでいる人もいます。この要因について考えた時に、「主体性と実行力」の良し悪しが関係しているのではないかと。
研究は、基本的に自分がある程度主体的に進めていくものだと思うのですが、「自分がやるんだ」という主体性と、実際にやる実行力がポジティブに評価される人と、ネガティブに評価される人がいます。ネガティブなケースとは、例えば上司の言うことを聞かずに勝手にやってしまうようなパターンです。だから、そこが見極められれば、全てポジティブな就職になるのではないかなと思っています。
もう一つは、大学院生は入社した時は学部生よりは確かに優れているのですが、同じ年齢と比べた時に果たしてどうなのか、は疑問に思います。採用する側の心理として、27歳新卒と22歳新卒を比べると確かに優れているのですが、27歳入社5年目と27歳新卒を比べると、果たして「5年間でアカデミアで身につけたもの」が差別化要因になるだろうか、という点は、ネガティブというか疑問に感じています。
鬼頭:そこは実際に追跡調査ができてないのでしょうね。同じ年齢で比較した際に、それぞれの能力が各バックグラウンドによるパフォーマンスの違いとして出ているかどうかとか。あえてそのような観点で見ようとすることはあまりなく、入社何年目である基準に到達しているか、あるいは単純にパフォーマンスだけを捉えるのが主流で、そこまで厳密に評価されてる感じはしないです。
野村氏:そこまで評価されないのだとすると、やはり大学院生は専門職以外に就職した瞬間に不利になるのでしょうか。専門外就職を否定しているわけではないのですが。鬼頭さんが仰っていた、「アカデミア独特の感性がポジティブに活きること」はどのタイミングでどう測られるのだろうと思っていて。
大学院生がフィットする企業文化
鬼頭:そこまで計測されている感じはしないですね。カルチャーとのマッチングだと思うので、企業が合いやすいカルチャーを持っているかどうか、というところは、野村さんが仰る「合う合わないがはっきりする」という点に繋がるのかもしれません。
野村氏:平田さんはアカデミアから民間に転職した時に、会社との相性を気にして転職されました?
平田:私は過去3社ほど転職しているのですが、最初のうちは研究者のことを分かってくれたり、既に会社の中に、アカリクもそうですけれども、研究者がいるところに行きたいと思って、実際に行っていました。そこでは文化の差は感じなかったと思います。
あと、博士課程から新卒で民間企業に就職された方へのインタビューでも、会社を選んだ一番の目的として「体育会系の人がいない」ことを挙げていらっしゃいました。その方は、民間企業はウェットなコミュニケーションがあるところだと思っていらっしゃって、ただこの会社はどうもそうじゃなさそうなので選びました、と仰っていました。昔ながらの民間企業の雰囲気が合わないと思っている大学院生が多いだろうなというのは感じていました。私もあまり好きじゃないですけども。
野村氏:研究者文化とはどういうものだと思いますか?
平田:アカリクもそうなのですが、エモーショナルではない、ロジカルな議論が一定できるところは、研究者文化がある、研究者コミュニティと似ていると思います。理不尽な押し付けが少ないとか。でもそれは、別に研究者コミュニティ以外でも、企業でも持っているところはたくさんあることを後々知るんですけれども。院生であれば、やはりそういった雰囲気を欲しがるのだろうなと思います。
野村氏:研究者コミュニティでは「結局ファクトは何なの」「一次資料に当たったのか」といったことばかり言われるので、やはりそこが気になってしまうのですかね。そういうコミュニケーション、例えば何かを指摘された際や、自分が誰かに何か言う時にも、まず事実に立ち返ってロジカルに話を組み立てるところに一定以上の説得力を感じる、と。単純に「気合いと根性と勘」みたいな世界だと、なんでやねん、と思ってしまう。
平田:話の組み立て方やロジックはアカデミアと一緒だと思うので、同じであれば安心するのではないですかね。感情で動いてない、ロジックで動く文化であれば。コンサル業界は、ロジックできちっと物事が進む雰囲気がして、大学院生と親和性は非常に高いのではないかなと思っていたりします。
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